冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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想定外の暴露

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焼肉はとても美味しい。けれど隣に元カレの兄であろう男が座った今は、その美味しさも上手く感じられない。もったいない話だ。

(リラックスするのでそ、リラックス! 向こうはレイどののゴタゴタを知らないのですから、今は大丈夫でそ、少なくとも今だけは……ぅうぅ、泣きそう。なんでわたくしとわたくしの彼氏達がこんな目に……美しいから神様が嫉妬なすっていらっしゃるのでしょうか)

男の方は極力見ないようにしよう。そうだ、フタが来たのだからサンが可愛い顔をしているのでは? 見なければ。

「やっぱ牛肉やらけぇなぁ、美味ぇ」

「今兄貴に取ってあげたの鶏の胸肉だよ」

端っこに座ったフタは机の真ん中にある網に手が届かない、サンに肉を取ってもらっているようだ。サンの向かいに座っている俺も、フタの向かいに座っている彼に肉を取ってやるべきなのだろう。

「あ、あのー……お肉、取りましょうか」

「取ってくれます? ありがとうございます」

腕を伸ばし、適当に肉をいくつか皿に盛り、男に渡す。男は再び礼を言って微笑み、美味しそうに肉を頬張った。

(元カレさんと違って表情コロコロ変わりますな)

レイの元カレは表情変化がとても分かりにくかった、常に不機嫌なのかと思うほどに。けれど今目の前に居る彼は表情がよく変わる、肉の美味さに喜んで……俺の視線に気付いて、不思議がって、なぁにと表情で尋ねている。

「す、すいません……」

慌てて視線を自分の皿に移し、男が俺から意識を外したらこっそりと男を眺めた。

(和服ってイイですな、今度誰かに……誰が似合いそうでしょう、ハルどの? セイカ様も顔立ちが和風ですからお似合いになられますぞ、アキきゅんも逆にイイかもですな)

黒い着流しは男の色気を増幅させている。首筋に胸元……そういえばアキが飛びかかった時には足が見えていた、褐色で筋肉質で健康的な生足が。

「……水月さん? お母様の会社での様子とか聞きたいんですか? 何か要望があれば何でも仰ってください」

「一発ヤらせてください……」

「嫌です」

「………………俺今何言いました?」

「一発」

「わぁあああっ!? ごめっ、ちがっ、あのっ、エロいから!」

大声で何を言っているんだ俺は。彼氏達+フタの視線が全て俺に向いている、顔が熱い、蹴られた跡が痛い、頭が回らない、汗で服の中がぐしょ濡れになっていく。

「ち、ちが……違うっ……ちが……あのっ」

「サン、和服持ってましたよね。次アレ着てあげたらどうです? 彼氏さん好きみたいですよ」

「そうなの? 水月」

「混乱して俺に一発申し込む程度には好きみたいです。サンと付き合ってることからもデカくてゴツい男が趣味なのは分かりますけど……俺は流石に見境なくし過ぎでしょ、しっかりしなさいよどうて……水月さん、恋人の前であんな言動したらフラれちゃいますよ?」

「フっ、フラっ!? フララっ……サァン!」

「フラないフラない、落ち着きなよ水月。今度和服着てあげるから」

「……っ!? ケガノコーミョー!?」

やばい、人間の言葉を失いかけている。落ち着け、落ち着け俺、落ち着け。

「はぁ、はぁ……ふぅ…………すいません、取り乱しました……あの、さっき俺のこと童貞って言いかけませんでした?」

「聞き間違いでしょう」

「サンちゃんサンちゃん童貞って何?」

「目的地までの距離とかそういうの」

それは道程だな。

(えっていうかフタどの童貞をご存知ない? エッッ)

座り直し、深呼吸をしていると不意に男が立ち上がった。

「俺やっぱ自分で好きなもん焼きたいですし、飯は一人で食う方が好きなんで席別で用意してもらいますね。お邪魔でしょうし……じゃ、ごゆっくり~」

ヒラヒラと手を振って席を離れていく。

「水月がドセクハラ発言かますからだよ、せっかく元カレくんの弱点とか聞き出せたかもしれないのに」

「弱点ってそんな、そんなの……多分、ないよ。っていうか仮に弱点見つけて倒せたとしても、元カレがあの人に泣きついたら……組の人達も出てきて俺達潰して、レイは攫われるんだ……どうしようもない」

「うーん……」

「サンちゃんなんか悩んでんの?」

肉が焼き上がるまでの待ち時間が退屈なようで、特に意味もなく左右に身体を揺らしていたフタがピタリと止まり、サンの顔を覗き込んだ。

「ボクの友達が不良に攫われてね。水月が頑張って取り返したんだけど、今後も狙われそうで困ったなぁって」

「へぇー、俺でなんとか出来そう? 兄貴として弟の悩みは解決したいぜ~」

「……その不良が形州 國行なんだよね」

「あー、ボスのぉ、俺で言うサンちゃん」

弟と言いたいのかな? 俺の名前は覚えていないのに元カレの名は覚えているのか……レイ以外を理由にヤツに嫉妬することになるとはな。

「えーと……みつき!」

フタはスマホで確認することなく俺の名前を呼んだ、ようやく覚えてくれたようだ。

「みつきボコったんが、ボスの弟?」

「そ。ボクの友達を攫って取り返しに行った水月を殴ったのが形州。だから下手なこと出来ないなーって話を……」

「弟が悪いことしたらさ~、兄貴に謝ってもらわねぇとだよなぁ」

そう言いながら立ち上がったフタの次の行動を察し、俺は青ざめながら立ち上がった。

「ボ~スぅ~!」

「うわぁあああっ!? 待って待って待ってぇっ!」

「……ごめん水月、フタ兄貴変なとこ常識あって……本当にごめん。とりあえずレイちゃん机の下に隠れな」

「はっ、はいっす!」

スニーカーに踵を入れず、後ろを踏み潰して履いて走り出したフタを慌てて追う。全身の鈍痛に耐えて走って何とか追い付き、サンと同じくらいに背が高い彼に飛び付いた。

「うわっ、みつき? 何? 危ねーなぁ……」

「あの人には話さないでください! あのっ、ほら、俺らの問題で……こっ、子供の喧嘩に大人が頭突っ込むのはっ、ねっ? 兄弟とはいえ、ねっ!?」

「フぅ~タぁ~……店で大声出すな、今日は貸切だけどな?」

フタは大声で「ボス」と叫んでいた、その声は彼の席まで届いてしまったようだ。

「あ、ボスぅ。みつき殴ったのボスの弟だってよ」

俺の説得はフタに全く届いていなかった。

「……っ、な、なんでこんな時に限ってちゃんと覚えてるんだよぉっ、忘れてろよぉっ!」

「俺大事なことは忘れねーぜ」

「俺言いましたよね話さないでってぇ!」

「……言ったぁ?」

どうしてそっちは覚えてくれていないんだ、聞いていなかったのか? フタの肩を揺さぶる最中、目を見開いていた男が目を閉じて眉間に皺を寄せ、ため息をつく。そしてゆっくりと目を開ける──俺は全力で彼氏達の元へと走った。
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