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趣味に合ったプレゼント
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水着は割と簡単に決まった。だが、アキへのプレゼントが決まらない。彼氏達と被ることなく、願わくば俺の個性があり、アキが喜びそうな物……分からない。そもそもアキの趣味って何だ? 筋トレ、サウナ、他は?
(恋人兼兄からの誕生日プレゼントが筋トレグッズなんて色気がなさ過ぎません?)
デスメタルが好きなんだっけ、でもショッピングモールにデスメタルバンドのグッズなんて売ってない。CDを見繕うか? もう持ってたら? そもそも俺にメタルとヘビーメタルとデスメタルの区別が付くのか?
(……デスメタに関しちゃDMCの知識しかねぇでそ)
CDショップを素通りしてため息をつき、ウロウロと無意味にショッピングモールを徘徊する。
(お、これは……これはいいのでは? アキきゅんこういうの好きですよな、悪趣味な感じなの。ふほほっ、いいの見つけちゃいましたぞ)
アキの趣味に合い、日本らしさもある良さげな物を購入。プレゼント用のラッピングを行い、ウキウキで自宅に帰った。
「たっだいまぁ~」
すぐに自室に入ってプレゼントを旅行鞄の奥に隠し、何食わぬ顔でリビングに向かう。
「今日はこっちに居たのか」
「あ、鳴雷……あの、言っとかなきゃならないことが」
「え、何、怖いんだけど……覚悟いる話?」
「いや、そこまでは、多分。鳴雷が出てすぐ、その……来客があったんだ」
セイカはソファに座っているのに、アキはセイカに引っ付かずダイニングに居る。机に置かれた平たい箱の中身を夢中で眺めているようだ。
「来客? 宅配便とかじゃなくてか?」
「うん、あの……鳴雷も知ってる人。ほら、木芽が前に付き合ってた人の兄弟……だっけ? 似てる人。ほら、鳴雷が一発ヤらせろって言って店内地獄みたいな空気にした……」
「えっ!? ウ、ウチに来たのか?」
彼とは出がけにすれ違った。てっきりこの周辺に用事があるのだと思っていたが、まさか我が家に来ていたとは……母が居ない我が家に何の用だったんだ?
「もう帰ったのか? 何しに来たんだ?」
「帰った。えっと……スカウト、だってさ。秋風があの人にハサミ投げたり蹴りかかったりしたろ? あの時に何か将来性的なの感じたらしくて……秋風鍛えたいって。説明したら名刺とプレゼント置いてすぐ帰ってった」
「スカウトって、あの人も製薬会社勤務だろ? なのにハサミや蹴りで……ヤクザの方か? うわ、やばいのに目つけられたな」
「……ごめんなさい。何かあったら連絡するって約束したのに……来客中にスマホ弄るのはダメだよなって思って。特に何もせずすぐ帰ったから……鳴雷に言うのは帰ってきてからでいいかなって」
「謝らなくていいよ、セイカの判断は間違ってない」
落ち込むセイカの頭を撫で、アキの隣へと向かう。あの男のプレゼントが俺よりもセンスのいい物かどうか見てやるつもりだった。
「アキ、何もらっ……は?」
大きく平たく頑丈そうな箱の内側には上品な赤色の布が敷かれ、その上には三本のナイフが並んでいた。
「な、何これ。ナイフ? はぁ……? 何でこんなのっ、こんなデカいの銃刀法違反だろっ!?」
必要以上に大きなナイフをアキは嬉しそうに眺めている。
《お、兄貴。興味あるか? 見ろよこれ、もらったんだ。すげぇだろ。サバイバルナイフにダガー、最後のこれは仕込みナイフだ》
背の部分がギザギザしたナイフ、両刃のナイフの持ち手をつまんで軽く傾けてその光沢を俺に見せつけると、アキは一本のナイフを握った。
「うわっ!?」
アキがナイフを握り込むと刃が柄を置いて飛び出し、壁に刃だけが突き刺さった。
《な、なっ、すごいだろ。発射式だ。しかもこれウチの国のと違って何回でも打てるんだぜ! その分威力は下がってるらしいけど。一回きりの不意打ち用なんだから飛ぶのも一回きりでいい気がするけど、どう飛んでくか練習しておけるのはデカいよな。ぶっ刺した後抜いて回収すりゃ経済的だしな》
アキは楽しげに話しながら壁に刺さった刃を抜き、柄に押し込む。壁に穴が空いてしまった……縦長の穴を見ているとムラムラしてくるので早めに視線を逸らした。
「こんなめちゃくちゃなもん寄越すなんて何考えてんだあの人、やっぱり常識人なんかじゃなかったんだ。どうしようこれ……返す? 持ってちゃダメだろこのサイズのナイフ。名刺ももらったんだよな、連絡してみよう」
セイカに手を向けると彼は手のひらに収まる紙切れを渡してくれた。
「……これ名刺じゃないな」
バースデーカードだ。メッセージはご丁寧に日本語とロシア語両方で書いてあるらしい。
「やっぱり? でも名刺ですって渡してきたんだぞ」
「誕生日おめでとう、だけ……裏面なし、電話番号なんて書いてない。はぁー……母さんに言うかぁ?」
「その辺は任せる」
「……警察に通報しちゃうとかどうだ? 怖いじゃん、持ってたら銃刀法違反だろこれ。細かい規定とかよく知らないけど見て一発アウトって分かるぞ。今ならまだ変な人からのプレゼント開けたらナイフでしたで済まないか?」
「さぁ……」
どうするにせよ、先に母に相談するべきだな。ひとまず忘れて旅行の準備をしよう。
「……旅行鞄、準備出来てるか? いるもん詰めていこう」
「分かった」
セイカは俺が判断を放棄し数時間後に帰宅する母を待つと決めたことを察してくれたのだろう。
「何持っていけばいいんだ? 俺旅行とか初めてだから分かんないんだけど」
「まず、日数分の着替え……は向こうに洗濯機あるだろうしちょっと少なめでもいいな。スマホに充電器、はセイカは持ってないか。旅行用の歯ブラシは彼氏泊まった時用に何個も置いてるからそれ持ってこう」
チラ、とアキの方を見る。
「……アキのプレゼントはこっそり持ってけよ」
「分かってる、秋風が喜んでくれる自信全然ないけど」
「アキはセイカからのプレゼントなら喜ぶよ」
軽く励まし、三つの鞄を持ち寄って準備を進めていく。アキはナイフに付属のカバーを被せて鞄に入れた。
「ちょっ、アキ、それ持ってくのか? 置いて行こう? 母さん帰ってきたら渡そう?」
「…………は? なんで? 嫌。だってよ」
態度悪っ。
「そんなナイフは法律的に持ってちゃダメなんだ」
「…………持ってちゃダメなもん持ってくんのおかしいだろ」
「それは、あの人がおかしいだけだ。アキはいい子だろ? 返そう。な?」
俺の言葉を翻訳したセイカの言葉を聞き、アキは大きく舌打ちをして鞄からナイフを取り出すと机の上に置きっぱなしにしていた箱の中に叩き入れた。
「アキ……ありがとう。気に入ってたのか? ごめんな?」
わしゃわしゃと頭を撫でたが、アキは不機嫌なままで俺を見ることすらなく鞄の手前にどっかりと腰を下ろした。
(恋人兼兄からの誕生日プレゼントが筋トレグッズなんて色気がなさ過ぎません?)
デスメタルが好きなんだっけ、でもショッピングモールにデスメタルバンドのグッズなんて売ってない。CDを見繕うか? もう持ってたら? そもそも俺にメタルとヘビーメタルとデスメタルの区別が付くのか?
(……デスメタに関しちゃDMCの知識しかねぇでそ)
CDショップを素通りしてため息をつき、ウロウロと無意味にショッピングモールを徘徊する。
(お、これは……これはいいのでは? アキきゅんこういうの好きですよな、悪趣味な感じなの。ふほほっ、いいの見つけちゃいましたぞ)
アキの趣味に合い、日本らしさもある良さげな物を購入。プレゼント用のラッピングを行い、ウキウキで自宅に帰った。
「たっだいまぁ~」
すぐに自室に入ってプレゼントを旅行鞄の奥に隠し、何食わぬ顔でリビングに向かう。
「今日はこっちに居たのか」
「あ、鳴雷……あの、言っとかなきゃならないことが」
「え、何、怖いんだけど……覚悟いる話?」
「いや、そこまでは、多分。鳴雷が出てすぐ、その……来客があったんだ」
セイカはソファに座っているのに、アキはセイカに引っ付かずダイニングに居る。机に置かれた平たい箱の中身を夢中で眺めているようだ。
「来客? 宅配便とかじゃなくてか?」
「うん、あの……鳴雷も知ってる人。ほら、木芽が前に付き合ってた人の兄弟……だっけ? 似てる人。ほら、鳴雷が一発ヤらせろって言って店内地獄みたいな空気にした……」
「えっ!? ウ、ウチに来たのか?」
彼とは出がけにすれ違った。てっきりこの周辺に用事があるのだと思っていたが、まさか我が家に来ていたとは……母が居ない我が家に何の用だったんだ?
「もう帰ったのか? 何しに来たんだ?」
「帰った。えっと……スカウト、だってさ。秋風があの人にハサミ投げたり蹴りかかったりしたろ? あの時に何か将来性的なの感じたらしくて……秋風鍛えたいって。説明したら名刺とプレゼント置いてすぐ帰ってった」
「スカウトって、あの人も製薬会社勤務だろ? なのにハサミや蹴りで……ヤクザの方か? うわ、やばいのに目つけられたな」
「……ごめんなさい。何かあったら連絡するって約束したのに……来客中にスマホ弄るのはダメだよなって思って。特に何もせずすぐ帰ったから……鳴雷に言うのは帰ってきてからでいいかなって」
「謝らなくていいよ、セイカの判断は間違ってない」
落ち込むセイカの頭を撫で、アキの隣へと向かう。あの男のプレゼントが俺よりもセンスのいい物かどうか見てやるつもりだった。
「アキ、何もらっ……は?」
大きく平たく頑丈そうな箱の内側には上品な赤色の布が敷かれ、その上には三本のナイフが並んでいた。
「な、何これ。ナイフ? はぁ……? 何でこんなのっ、こんなデカいの銃刀法違反だろっ!?」
必要以上に大きなナイフをアキは嬉しそうに眺めている。
《お、兄貴。興味あるか? 見ろよこれ、もらったんだ。すげぇだろ。サバイバルナイフにダガー、最後のこれは仕込みナイフだ》
背の部分がギザギザしたナイフ、両刃のナイフの持ち手をつまんで軽く傾けてその光沢を俺に見せつけると、アキは一本のナイフを握った。
「うわっ!?」
アキがナイフを握り込むと刃が柄を置いて飛び出し、壁に刃だけが突き刺さった。
《な、なっ、すごいだろ。発射式だ。しかもこれウチの国のと違って何回でも打てるんだぜ! その分威力は下がってるらしいけど。一回きりの不意打ち用なんだから飛ぶのも一回きりでいい気がするけど、どう飛んでくか練習しておけるのはデカいよな。ぶっ刺した後抜いて回収すりゃ経済的だしな》
アキは楽しげに話しながら壁に刺さった刃を抜き、柄に押し込む。壁に穴が空いてしまった……縦長の穴を見ているとムラムラしてくるので早めに視線を逸らした。
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セイカに手を向けると彼は手のひらに収まる紙切れを渡してくれた。
「……これ名刺じゃないな」
バースデーカードだ。メッセージはご丁寧に日本語とロシア語両方で書いてあるらしい。
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「さぁ……」
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「……旅行鞄、準備出来てるか? いるもん詰めていこう」
「分かった」
セイカは俺が判断を放棄し数時間後に帰宅する母を待つと決めたことを察してくれたのだろう。
「何持っていけばいいんだ? 俺旅行とか初めてだから分かんないんだけど」
「まず、日数分の着替え……は向こうに洗濯機あるだろうしちょっと少なめでもいいな。スマホに充電器、はセイカは持ってないか。旅行用の歯ブラシは彼氏泊まった時用に何個も置いてるからそれ持ってこう」
チラ、とアキの方を見る。
「……アキのプレゼントはこっそり持ってけよ」
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軽く励まし、三つの鞄を持ち寄って準備を進めていく。アキはナイフに付属のカバーを被せて鞄に入れた。
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