冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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神ここに在り

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総当たり戦、四チームならば全六戦。一チームが戦うのは三回。三戦中二勝では引き分けになる可能性があるが、その場合は再戦となるとミフユが今決めた。

「よしみんな、作戦会議だ」

俺は同じチームのハルと歌見と密着し、ヒソヒソと作戦会議を始めた。ハルの背中丸出しパレオは本当に目に毒だ、作戦会議なんて投げ捨てて背中に指を滑らせたくなる。

「相手はシュカ、カンナ、レイのチーム。誰を狙うべきかは分かるよな?」

「しぐしぐ~? しぐしぐ狙うのちょっと可哀想だけど~……フナムシ握るとか絶対やだもん」

「うん……カンナ狙うの可哀想なんだよな」

オロオロして対応し切れないのは分かっている、試合終了後自分のせいで負けたのだと落ち込むのも目に見えている。カンナを狙うのは気が引ける。

「木芽も運動嫌いだから狙い目ではあると思うが」

「ですね。そこは臨機応変にやります。警戒すべきはシュカだ、運動神経がいいから単純に脅威だ。アタッカーは多分アイツだよな、狙ってくるのは多分……」

「霞染だな」

「え~、俺ぇ~? やっぱり~?」

「頑張ってくれ、先輩もカバーしてやってください」

作戦会議は終了だ、向こうも会議中のようだから少し待とう。コートの端と端じゃ聞き耳を立てても聞こえない、作戦の盗み聞きなんてせず正々堂々とやるしかないということだな。

「アタックは私に任せてもらって構いませんが、三回以内に回せなさそうならあなた方で打ってももちろん構いません」

「うん…………ねぇ、ぼくの……こと、カミアって、呼んでみて」

「……どうしてです?」

「いい、から……今だけ」

「分かったっすよカミアくん! これでいいっすか?」

「……うん」

「ほら鳥待せんぱいも」

「よく分かりませんが……おそらく水月達はあなたを狙います、頑張って耐えてくださいよ、カミアさん」

「うん、ぼくは……カミア。ありがとう、もう大丈夫」

お、三人顔を突き合わせるのをやめたぞ。作戦会議は終わりかな? シュカとレイが首を捻っている、会議に収穫がなかったと見える。チャンスだ。

「ぼくはカミア……ぼくは、僕…………僕が、本物のカミア。カミアは失敗しない……負けない。何でも出来る。神に愛された子でカミア……? バカらしい、神ここに在りで神在なんだよ。分かってないなぁ偽物……可愛いカンナ、僕の弟……僕が、カミア」

カンナ、大丈夫か? フードに生えたウサミミを掴んで引っ張って……既に思い詰めているように見えるが……狙うのはレイの方にするべきかな。

「今試合の審判はミフユが務める。では、始め!」

コートの境界線に立ったミフユによってボールが高く飛ばされる。俺とシュカは自陣とは逆のコートに入り、相手よりも高く跳んでボールを自分のコートの方へ叩き入れるため、ほぼ同時に跳んだ。身長は俺が有利だったが、要領の悪い俺はジャンプのタイミングを間違えてしまった。

「っしゃオラァ! 取れてめぇら!」

「あーっ! 先手取られたじゃんみっつぅんっ! やっぱりよりデカいナナさんに任せるべきだったぁ!」

「いや水月の方が身軽だから……俺でも多分負けてたから……」

シュカが叩いたボールをトスで綺麗に拾ったのはカンナだった。ボールが飛んできてもオロオロして頭にでも当たるんじゃないかという俺の想像は外れた。

「鳥くん! 打って!」

「上手いじゃないですか時雨さん、その調子でお願いします……よっ!」

シュカのアタックはやはりハルを狙ったものだったが、ハルは何とか地面に落ちるのを防ぎ、跳ねたボールを歌見が高く飛ばした。

「スカート広げて受け止めましたよ! 審判! 今のいいんですか!?」

「保持する行為以外は全てアリだ! 髪、服も身体の一部と見なす!」

どうやらハルはパレオを掴んで広げてトランポリンのようにボールを跳ねさせたらしい。手と違って狙った方向や強さでのトスは出来ないだろうけど、手よりもずっと広い範囲をカバー出来る。案外いいやり方かもしれない。

「よし……行けっ!」

アタックは俺の役目だ。レイを狙ってみよう。

「わわっ……! 危なっ」

拾われたか。いや、地面に落ちなかっただけだ、レイが自身の斜め前へと弾いたボールはシュカとは反対の方へ飛んでいく。

「……っ! クソっ……! 時雨さん!」

シュカはそのボールを拾おうと走り、波打ち際特有のぬかるんだ地面に足を取られて転んだ。しかし転びながらもボールはしっかりと弾き飛ばした。

(カンナたん……アタックではないでしょうな、パスみたいなもんでそ)

三回以内に相手コートに返すというルールがある以上、カンナはこちらに渡すしかない。トスされた訳でもない軌道のボールでアタックを決めるのはカンナには無理だろう。俺は、いや、俺のチームは全員そう考え、油断した。

「……えいっ!」

だから、まさかのアタックに対応出来ず点を取られた。

「クソっ……悪い水月、拾えなかった」

「い、いえ……俺が下がって受けるべきでした」

カンナがあの難易度の高いボールでアタックを決めるなんて思わなかった。俺はカンナを舐め過ぎなのか?

「ナイスですよ時雨さん!」

「すごいっすよ! 一点先取っす!」

「……当然」

ボールについた砂と泥を払っていた俺は、カンナのシュカ達への返事に「えっ」と声を漏らした。カンナならあんなふうに褒められたら真っ赤になって何も言えなくなるはずだ。

「僕に出来ないことはない、僕が負ける訳がない」

「…………誰だ?」

気付けば口が勝手に動いていた。

「何を言うんです水月、時雨さんですよ。自己暗示で一生懸命頑張ってくれてるんです。そんなふうに言うなら代わりに私が怒りますよ?」

自己暗示? なんだ、そうか……気の強いことをあえて声に出して頑張っているだけなのか。バカなことを言ってしまった。

「そっか……ごめんな、カンナ。変なこと言って」

「……僕はカミアだ」

「へっ?」

カンナは俺が持っていたボールを奪い、立てた中指の上に乗せてクルクルと回した。バスケ選手とかがたまにやってるヤツだ、生で見たのは初めてかもしれない。

「おぉ、それ出来るのか、すごいなカンナ」

「……カミアだってば」

「そっかそっか、ごめんごめん」

自己暗示の内容はカンナとカミアを一時的に再び交代させることなんだな。そもそも硫酸事件の際に入れ替わってしまったそうだから、今は元に戻っている訳だ。

「カミアに勝てる人間なんか居ない、ボロ負けさせて、フナムシ掴ませてあげるねみぃくん★」

忌まわしい事件が起きず、着々と実力を付けて双子でトップアイドルになれていたとしたら、カンナの……カミアの性格はこうだったのかもしれない。彼はそう想像して自己暗示をしているのだろう。

「……ふふっ、そっちも可愛いよ、カミア」

そう考えると切なくなる、自分の無力さが嫌になる、彼ら双子がますます愛おしくなる。彼の健康な肌と輝かしい未来を奪った犯人への憎悪は、ボールを打つ手に込めよう。
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