冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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ゲームしましょう

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スマホが鳴っている。電話だ。俺はアキに断りを入れてゲームをポーズ状態にし、ソファに置いていたスマホを取った。画面に表示されていたのはミフユの名前だ。

「ミフユさん……? はい、もしもし、水月です」

『鳴雷一年生、今少し時間いいか?』

「あ、はい。別に何もしてないので……」

「にーにぃ、続きするですぅ!」

「アキ、お兄ちゃん電話中! ちょっと待っててくれ! すいませんミフユさん……」

むくれるアキを引き剥がし、通話に戻る。

『貴様……こんな明るいうちから。全く節操のないヤツだ』

「え? えっと…………あの、今……アキとゲームしてたんですけど」

『………………貴様のことだからどうせ勉強はおろか夏休みの課題すらろくに手をつけていないのだろう! 学生の本文は勉強だ! ゲームなどという無意味な娯楽に時間を浪費している暇などないと知れ!』

「わっ……きゅ、急に大声出さないでくださいよ。むっつりさん……いえ、ミフユさん」

『誰がむっつりだぁ! 続きと言うからミフユはてっきり……! き、貴様がそういう男だから悪いのだ!』

続きと聞いただけでセックスを中断しての通話中だと思い込むミフユの方がよっぽど脳内ピンクだろう、とは思ったがこれ以上逆らってもいいことはない。アキの視線が痛いし、本題に入らせよう。

「はいはいすいません……で、何の用です? アキに睨まれてるんで早めにお願いします」

『……うむ、用件はな、別荘地で見つけた白骨死体のことだ。鑑定結果が出た、ミフユの祖父との血縁関係が認められたのだ。年積家の近年の行方知れずなど一人しか居ない、ミフユの祖父の父親の兄……サキヒコだ』

「……! そう……ですか」

『何故貴様がサキヒコの名を知っていたのか、それは分からん。あの写真……帰る前に撮った集合写真に写った十三人目の少年、ネザメ様のひいおじい様に見せたら涙を流して「サキヒコに違いない」と仰った。一体どういうことなんだ? まさか霊魂は想像上のものではなく、実在し、貴様に死体の場所を告げたとでも?』

ネザメの曽祖父は生きているのか。サキヒコは彼に会えたのだろうか、夢の中ででも話せただろうか、未練がなくなってきたんじゃないだろうか、俺の彼氏のままで居られないのでは、成仏してしまうのでは……それなら、その方がいいよな。

『…………すまない、混乱しているんだ。不思議なことがあるものだな……鳴雷一年生、火曜日に紅葉家に顔を出せるか?』

「火曜日ですか? 大丈夫……だと思います、けど、なんで……」

『ネザメ様のひいおじい様が貴様に会いたいと仰っているのだ』

「……分かりました、必ず行きます」

『うむ、時間などは追って連絡する。では失礼する……娯楽ばかりにうつつを抜かさず、課題くらいはちゃんと済ませるんだぞ』

スマホを耳から離すとアキが待ってましたと言わんばかりに飛びついてきて、俺にゲームのコントローラーを握らせてきた。

「アキぃ……ふふ、こんなに気に入ってくれるんだったらもっと早く貸してあげればよかったな」

その後、俺の体力が尽きるとアキは残念そうな顔をしつつ、シングルプレイに切り替えて一人で遊び始めた。昼食を食べた後、また対戦をねだったので仕方なく付き合った。

「ただいまぁー……あら? 何、テニス?」

夕方頃、母がデートから帰った。今日の相手は義母ではなく俺のバイト先の本屋の店長だ、義母は今日も求職活動に走り回っているらしい。

「ママ上おかえりなさいませ、後ろ向きのまま失礼しまそ。はい、現在テニス中でそ。さっきはゴルフでまだ楽だったんですがテニスはっ、ふんぬゎっ! ラリーが早くて辛いでそぉ~」

「いいわねぇ、私も後でやりたいな」

「後でと言わず今変わってくだされ!」

「無理よ、今から晩ご飯作るんだもの」

母の手には買い物袋がある。ビニール袋特有の音で気付いてはいた、言ってみただけだ。



夕飯の後、俺は皿を洗い母はアキと遊んだ。母はよく俺と対戦ゲームで遊んでくれていた、子供の頃にゲームに全く触れてこなかったからとゲームに関する勘の鈍さを言い訳していたけれど、流石完璧超人と言うべきかすぐに慣れて俺より上手くなってしまう。アキは負けっぱなしのようだ。

《唯乃強ぇな……》

《アンタ武術やってたくせに動体視力微妙なのね》

《るせぇ、弱視なんだよ俺。視覚頼りのもん苦手なの》

会話の内容は残念ながら聞き取れない。

《クッソまた負けた……全然惜しい勝負にすらならねぇし、つまんねぇ。実力拮抗してねぇと何でも面白くねぇもんなんだな》

《負け惜しみぃ~》

《うっぜぇなクソ!》

アキが座り込んだ、疲れたのか? いやアキの体力は無尽蔵と言ってもいい。勝てなくて拗ねたのだろう。

「……ね、セイカくん、ゲームしない?」

母はアキが持っていたコントローラーを取ると、ダイニングで勉強中だったセイカに話しかけた。意外な行動に皿を洗う手が止まる。

「…………へっ? お、俺……ぁ、私っ、ですか?」

「俺でいいわよ気持ち悪い……」

「ぁ……ごっ、ごめんなさい、ごめんなさいっ、あの、俺っ、俺……は、ゲーム? なんて……」

「コントローラーは片手で持つタイプだし、出来るわよね。おいで」

「え……ぉ、れ……試験が……」

「ん? なぁに? 声ちっちゃいのよ、聞こえない。もう少し大きい声出せる?」

「…………分かり、ました。すいません……」

立ち上がったセイカの顔がキッチンから一瞬だけ見えた、酷く青ざめた顔はこれから処刑でもされそうで、とてもゲームに誘われた少年の表情とは思えなかった。

「これ握ってー、Aボタンここね。それで……ぁ、私が説明するよりチュートリアル見た方が分かりやすいわよね。ちょっと待って」

皿洗いを急いで終えた俺は早足でリビングへと向かい、微かに震えているセイカを見つめた。

「そこでA! そうそうそう、反射神経いいじゃない。ルール分かったわよね、対戦やりましょ。加減してあげるから」

「は、はい……」

母はどういうつもりでセイカとゲームをしようと思ったのだろう。大人としての良識と俺への愛情でセイカの養育を請け負ってくれたけれど、俺への愛情が深いからこそ母はセイカに殺意すら覚えていたはずだ。

「……っ! わ……む、難し……ぁっ」

コントローラーを握り締めた左手を振り回していたセイカがバランスを崩す。俺の方が近かったのに、俺は立っていたのに、座っていたアキの方が早かった。

《あ、ありがと……秋風》

《支えといてやろうか? コメディ定番の、何だっけ、ニンニンバオリー?》

《二人羽織……かな? どこで知ったんだよそんなもん……いいよ、一人で立てる》

「あらー……勝っちゃった。不戦勝みたいなもんねぇ。やっぱり腕振ると立ってらんない? 座って出来るのにしましょうか。釣りあったわよね」

「……釣りは別のパーティゲームでそ。このソフトはオリンピックにあるような競技しか収録されてなかったかと」

「そうだっけ? んじゃそっち持ってきて」

「別に構いませんが……」

セイカに視線を移す。セイカはチラチラと母の様子を伺いながら怯えた様子で俺を見つめ返した、この場から解放されたそうな様子だ。

「……セイカ様、明日試験ですし……セイカ様とのゲームはまた今度にされては?」

「十分勉強してたし十分だとは思うけど……ま、それもそうね。明日だし。また今度ね、セイカくん」

「は、はい……」

母がスっと右手をセイカの頭の上にやると、セイカは両腕で頭を庇って丸まった。

「…………試験、頑張ってね」

母は一瞬眉を顰めたが、すぐに温和な笑みを浮かべてセイカの腕の隙間から彼の頭をくしゃくしゃと撫でた。

《アキも私と戦りたきゃもう少し上達しなさいね》

《ムカつくぅ~!》

セイカを撫でたその手でアキの頭も撫でる。ダイニングへの帰り道で俺の頭も通り魔的にサッと撫でていった。

「にーに! とくんー、するです! にーに、とくん、たいしょするです!」

特訓、対象……かな? いや、対処?

「あぁ、ちょっと待ってくれ。ちょっとだけだから」

俺は母の本意を探るため、母を追って踵を返した。
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