冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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交渉成功!

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フタへの暴力をやめるようヒトに頼むのはダメ元だったが、何とかなった。ヒトが案外泣き落としが通用する人間だったのと、フタに暴力を振るって悦に入っていた訳ではなかったこと、予想外にも孤独を感じていたこと──ありとあらゆる状況が俺に味方した。

「そろそろ私も仕事を始めないと……」

「あ、ですね。じゃあ俺帰ります、すいません押しかけちゃって」

「いえ……お気を付けて」

この場合、幸運だったのは俺なのか、フタなのか。しかし気の合う話し相手を演じるだけで止められるのなら、何故今まで止まらなかったのか……いや、周りの人間がそれを演じることすら出来なかったから、その程度で止められるほどにヒトが孤独だったと考えるべきだろうか。

「妻子持ちのくせになぁ」

まぁいいか。特定のジャンルだけだとしても、オタク話を出来るのは俺としても嬉しい。俺は人外でも割とシコれるタイプの人間なので、爬虫類への劣情は見せないように、それだけは気を付けなければな。

「フタさーん……」

エレベーターを降り、フタを探す。煙草を吸っている者や、机に足を乗せている者、麻雀をしながら通話をする者など、とても仕事場とは思えないその中にフタは居た。

「みつきぃ、どったの?」

「帰るので挨拶をと……あ、今お仕事中ですよね。ちょっと話しても大丈夫ですか? もしアレなら手空くまで待ちますけど」

「いいよぉ」

「伝えたいことが……あのですね、ヒトさんと話して、フタさんに酷いことしないって約束してもらえました! もう痛いことされませんよ、多分……」

眠たそうな目が丸く見開かれる。

「マジ!?」
「すっげぇ!」

話を盗み聞きしていたらしい社員達がぞろぞろと寄ってくる。

「何したの?」
「金? やっぱ金?」
「あの短気なヒトさんが約束守るかね……」

「あ、それなんですけど……フタさん殴っても改善する訳じゃないし、本人も虚しくは思ってたみたいで……だから、フタさんが遅刻してたら皆さんが電話して、何か忘れてたら言ってあげたりして欲しいんですけど……」

社員達は顔を見合わせる。

「も、もちろんタダとは言いません! フタさんのとこに遊びに来たり、デートのお迎えに来る時は……その、何かお菓子とか持ってきますから、それで……」

言いながら、これじゃ大したメリットを提示出来ていないなと呆れる。俯いて目頭の熱さを感じ、不意に気付いて顔を上げる。

「そんなのじゃ、ダメですか……?」

今の自分は超絶美形だと思い出した俺は潤んだ瞳が光を反射するように灯りに顔を向けつつ、社員を見つめた。斜めから見上げるようにすると社員達の顔がぽっと赤くなる。

「なんつー顔面力……! ゆ、歪む、性癖が歪むっ」
「やべぇマジやべぇ何でもしてあげたくなるっ!」
「……っ、お、お菓子食べるぅ?」
「堕ちたぁーっ!? やめろお前フタさんのだぞ!」
「顔が良過ぎて全部吹っ飛んだ……何して欲しいって?」

酒のツマミなのだろうナッツ系のお菓子を一袋握らされた。ありがたくいただきながら先程ヒトに言われたフタのお守りとやらを説明すると社員達はメモを取ってくれた。

「OK! フタさんのサポートは俺らがする!」

今までなんでやってなかったんだよリスペクトしてる兄貴分なんだろ? と言いたくなる気持ちを抑え、笑顔で礼を言う。

「え~っとぉ、つまりぃ、みつきのおかげで、俺もうヒト兄ぃに殴られねぇってことぉ?」

「そうですね。ぁ、フタさん、今から言うこと絶対に守って欲しいので、メモしておいてくれますか?」

「おっ、いいよぉ。OK、何ぃ?」

メモを取る準備を整えたフタは真剣な眼差しで俺を見つめた。

「俺がヒトさんに頼んで、ヒトさんはフタさんを殴らないって約束してくれましたけど、短気だから確実じゃありません。だから、ヒトさんを怒らせないように、フタさんはヒトさんの部屋に行ったりしちゃ、ダメなんです」

「ふんふん……ヒト兄ぃの部屋行っちゃダメなのね。分かった。でもさ~、用事ある時あるじゃん? どうすりゃいいの?」

「そんな時は……」

社員達に視線を向けると代表者が一人前に出た。

「俺が代わりに行きます! 報告とかっすよね、正直怖いんすけど頑張りますよ」

報告なんかフタにやらせるなよ。どう考えても不向きだろ。

「おー……じゃあよろしく、田中」

「あっ、田中さん? 遊園地のチケットくれた方ですよね、ありがとうございました」

「あ、うん……確かにチケット譲ったのは俺だけど、俺アキタってんの」
「田中は客っすよフタさん」

どうやらフタが旅行中の俺をデートに誘ってくれた時、同時に田中という客から電話がかかってきており「田中~!」と叫んでいたらしい。それをフタが勘違いしたのだ。それくらいしか間違えて覚える心当たりがないと社員が話してくれた。

「……田中さんがお客さんになる前から居らっしゃるんですよね? 今年入ったとかじゃなくて」

「四年目っすね」

フタ、酷くない? 四年間一緒に働いてきた仲間の名前を覚えていない上に、今更間違って覚えるなんて……俺の名前はすぐ覚えられた方だったんだな。好意の表れと見ていいのか?

(……今まで覚えてなかったのに突然間違えて覚えたんですよな、私とのデート用のチケットをもらったから名前を覚えようと)

フタの中での自分の大きさを実感し、口角が勝手に持ち上がった。
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