冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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日暮れ時の出発

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二日目の大阪観光も楽しいものだった。昨日少し話した十円パンや、イカ焼き、肉まんなどを食べた。

「豚まんがある時~、言うてな」

「うん……? 美味しかったな、あの肉まん」

「豚まん」

「な、なんかこだわりあるんだな……豚まんな、豚まん」

立ち食いだけでなく、ちゃんと店に入ったこともあった。昨日は鍋で食べたから今度は生がいいと言い出したサンの希望を聞き、フグの刺身を食べたのだ。

「てっさ?」

「鉄砲の刺身やからてっさ」

「なるほど」

「薄ぅ切っても身ぃしっかりしてるんよなぁフグは」

とても学生に払える値段ではなかったのでヒトにサンの金で全て支払ってもらった。それなのにヒトが昨日よりも上機嫌に見えるのは、俺の気のせいではないだろう。

「なんか兄貴ずっと機嫌良くて気持ち悪い……」

「そぉ~?」

だってサンもそう感じてるみたいだし。

「お腹だいぶ膨れてきたな~、そろそろデザートにしようよ。甘い系がいいなぁ、洋菓子……ケーキとか!」

「あー……チーズケーキとかどないです? スフレチーズケーキ。ええ店近くにありますわ」

「チーズケーキ! いいね、好きだよ。食べたい食べたい」

食後のデザートはチーズケーキに決まった。ケーキを選ぶとなったら生クリームかチョコクリームを選んでしまいがちなので、チーズケーキを食べるのは久しぶりかもしれない。

(ママ上焼き菓子作るのは好きっぽいんですけどケーキは作ってくれないんですよな……一ホール焼いても二人じゃ食べきれないなんて理由でしたっけ。今は家族は五人に増えましたし、今度頼んでみましょうか。作り方を習ってわたくしが彼氏達に振る舞ってみるのもいいですな)

なんて考えながらリュウに着いて行き、チーズケーキの名店に到着。またもやヒトに支払いを任せることになってしまった。

「すいません毎度毎度」

「構いませんよ。その分癒されるつもりですから」

ヒトの笑顔は昨日より自然に見える。俺が抱く彼への印象が変わったからだろうか、それとも俺と付き合ったことで心象に変化が? どちらだとしてもいい変化だ。

「ケーキにおじさんの顔の焼印が……」

「えっ何それ。せーくん怖いこと言わないでよ」

「あ、いえ、そんな怖い感じじゃなくて、可愛いおじさんです」

「可愛いおじさん? 矛盾の類義語?」

《スェカーチカあ~ん》

《ん、うま…………お前な、話してる最中にケーキ突っ込むのやめろよ》

セイカにはマイペースな弟組を任せてしまっているが、楽しそうに過ごしている。表情をコロコロ変えているセイカを見ていると何だか幸せな気持ちになれる。

「……セイカさんでしたか、あの方の手足は生まれつきですか?」

声のトーンとボリュームを落としてヒトがそう尋ねてきた。

「いえ、事故で……」

「…………そうですか」

「……イジメっ子に、追い立てられて……囃し立てられて、車道に飛び出させられたらしいんです。来学期から俺と同じ学校に転入することになったんですけど、その時は同じ学校じゃなくて……少し前に、アキの定期検診の時に病院で出会ったんです」

「なるほど……」

「まだちょっと精神的に不安定なんですけど、アキと居るとそんな暇ないのか結構落ち着いてて旅行も出来てるんです。アキも母語で話せてリラックス出来てますし……いいコンビですよ。兄兼恋人としてはちょっと嫉妬することもありますけどね」

「……色々あるんですね。鳴雷さんは世話が面倒な男が好みなんですか?」

それはフタのことを揶揄しているのか、自虐なのか、どっちなんだ?

「割とそうかもしれません……」

腹が膨れた俺達は昨日と同じように雑貨屋を巡った。ヒトはアマガエルを模した置物やトカゲのぬいぐるみのティッシュカバーを買っていたが、フタとサンは欲しいものが見つからなかったようだ。

《たまには黒以外のサングラスどうよ》

《似合わねぇな……お前が欲しいならいいけど紫外線カットの表記あるもんにしろよ》

アキとセイカも楽しんではいたが、何も買わなかった。



日が傾き始める前に俺達はリュウの家に戻った。今日中に京都へ行く予定なので、寝室として使わせてもらった部屋に荷物を取りに行った。サン達兄弟も着いてきた。

「え~、みつき帰んの~?」

「次の彼氏の実家に顔出すんです」

「改めて考えると意味分かんない台詞だね~」

フタは首を傾げているし、サンはくすくす笑っている。可愛い。ヒトは特に目立った仕草はないが、今日ずっと俺に視線を注いでいた。嬉しい。

「ハルん家行くんか?」

「いや、なんか親御さんにダメって言われたらしいからホテル予約した」

「ほな俺ん家泊まってから行きゃええやんけ」

「まぁそうなんだけどもう予約しちゃったし、母さんの奢りだし……連泊は迷惑かなーって思っちゃってさ、ほら、お前も連泊してかないだろ?」

「……遠慮される側なると複雑やね」

「…………私達は夕飯代出してるのでセーフですよね?」

「あっ、す、すいませんなんか……」

「セーフも何もないんですて、部屋余っとんのやし好きなだけ泊まってってください」

《ぬいぐるみ入んねぇ》

《なんでお前ギリギリを責めたんだよ。俺の鞄入れとくから貸せ》

「にーに! よーい、終わるするしたです!」

俺は今日観光に行く前に荷物をまとめておいたので出発の準備はすぐに済んだ。私物を散らかしていたアキと服を畳むのに時間がかかるセイカ待ちの時間だったのだ。

「終わったか? じゃあ挨拶してから行こうな」

ぽんぽんとアキの頭を撫でながら、アキが荷造りを長引かせたおかげでセイカが気に病まずに済んだんだよなと思い至る。

「……あえてか天然か知らないけど、よくやったぞ」

アキもセイカも俺が何を褒めたのかは分からないだろう。それでいい。俺達は荷物を持ってリュウの家族の元へ向かった。

「もう行ってしまうん? ゆっくりしてけばええのに~」

「ちょっと無茶な近畿観光日程組んじゃいましたね……お世話になりました!」

「気ぃ付けて行きや。痛たた……頭痛い」

「ありがとうございます、お大事にしてくださいね」

リュウの祖父は二日酔いで寝込んでいるらしい、父の方も具合が悪そうにしている。俺はやはり酒は良くないものだと認識を固めた。

「さようなら!」

三人での挨拶を終え、俺達はリュウの実家を後にした。日が傾き始めている今夜の山道は暗く、危険だ。

《そろそろサングラスの要らねぇ時間だな》

《駅は眩しいだろうから鞄とかに突っ込まず持っとけよ》

危険を感じているのは俺だけのようでアキの足取りは昼間と変わらず、セイカもアキの背で不安を感じていない様子だ。俺はテディベアが落ちないように気を配りながら軽い車椅子を押して山道を下りていった。
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