冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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好物を前にすると出ちゃう

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ハルに勧められるがままにシャツを一着買ってしまった。ちゃんと断れていたセイカとミタマを尊敬する。

「アキくん難しいよね~。UVカットってそもそもメンズだとちょっと少なめだし~、秋服冬服だと更に減るし~……今のに上着羽織る感じになるかな~」

「……ロシア出身だし寒さに強かったりしないかな?」

「え~、でも道民とか東京の方が寒いとか言うじゃ~ん」

「それは家の構造の差だろ……あれ、ってことは冬場アキの部屋ってめちゃくちゃ寒いのか? 掘っ建て小屋だもんな」

「掘っ建て小屋って……ちゃんと作ってあるよ秋風の部屋は。ちゃんと冷房効いてるんだから暖房も効くよ。お前のお優しいママ上のことだ、暖房の方もちゃんと使わせてくれるんだろ?」

「使わせてくれるってセイカ、空調の使用制限なんて命に関わるよ。当たり前だろ?」

「……そっか」

からかうように話していたセイカの表情が僅かに曇る。

「セイカ……?」

《兄貴、腹減った》

「ん……鳴雷、秋風がお腹すいたって」

「え、あぁ……そろそろそんな時間か。一階にフードコートあるからそこで食べよっか」

さんせ~! とハルの元気な返事に癒されつつも俺はセイカの表情に明るさが戻らないのが気にかかった。しかし理由が分からない俺に何を言える訳もなく、モヤモヤを抱えたままフードコートへ降りていった。



フードコートには様々なチェーン店が軒を連ねている。俺は……何食べようかな。

「俺ドーナツにしちゃお~、みんなは?」

《俺肉》

「秋風はステーキがいいって。俺は…………鳴雷、一番安くて腹にたまるのってどれかな」

「値段気にせず食べたいの食べていいよ、大して変わらないし」

「…………じゃあ、俺も……ドーナツ」

やはりセイカは甘いものが好物になったようだ。味が分からないなんて言っていた彼に好物が出来たのはとても喜ばしい。

「ん。ハル、セイカと一緒に行ってやってくれ」

「はいはい。行こ、せーか」

「ぁ……う、うん」

セイカは不安そうな顔でハルに着いて行った。何かと気まずい彼らがこれで少しは仲良くなってくれると嬉しいのだが。

「アキはステーキだったね、あっちのお店か。一人で大丈夫? 行っておいで」

「だ! 行ってきます、するです、にーに」

「行ってらっしゃーい……コンちゃんは何食べる?」

「何……と聞かれても、よく分からんな。ヌシは何を食べるのじゃ?」

「俺はうどんでもしようかなって」

「ふむ、ではワシもそうするとしよう」

フードコートのシステムに慣れていない様子のミタマは俺に着いてきた。

「コンちゃん何うどんにする? 俺は月見かなぁ」

「ではワシもそれ……むっ? あぶらげ! あぶらげがあるではないか!」

「きつねうどんにする?」

「狐!? 違っ、ワシはにんげっ……ぁ、うどんの名前か……うむ、ワシはきつねうどんにするぞぃ」

ホント分かりやすいなこの子……

「月見うどんときつねうどん一つずつ。あと、イカ天といなり寿司も」

ミタマの分まで注文を済ませ、完成を待って席に戻る。まだ誰も戻ってきていない、ドーナツの方が早く済むと思っていたがどうやら人気店らしく行列が出来ている。

「いなり寿司まであったのか……」

「うん、コンちゃん油揚げ好きみたいだし頼んでおいたよ。いらなかったら俺もらうけど」

「何を言う、あぶらげは全てワシのじゃ!」

「ふふ、そんなに好き? もうしばらくしたらみんな戻ってくると思うから、もう少し待とうか」

「うむ……」

早く食べたいと顔に書いてある。第一印象のミステリアスさも、今もある顔つきの胡散臭さも、彼の性格を語るものではなかったようだ。

(かわゆい……ん?)

雰囲気とは違い無邪気で間抜けで可愛らしいミタマを瞳だけで愛でつつ隣に座り、視界の端にチラつく黄色っぽい何かを視界の中心に移す。

(……!? こ、これはっ……!)

ミタマと椅子の背もたれの隙間でブンブンと激しく揺れているこれは、太く大きく金色で先端だけは白いこの毛の塊は、まさしく狐の尾。

(…………犬みたい)

食事を前にして尻尾を振るなんて、まるで犬だ。

(……耳も出てるし)

ミタマの頭に目を移すと、先程までは確かになかった黒い三角形が髪の隙間からぴょこんと飛び出ていた。ケモ耳キャラがケモ耳を生やしているあの位置だ、人間の妄想って結構正しかったんだな。

(ケモ耳キャラってだいたい髪で人間の方の耳がある位置が隠れてるんですが、コンちゃんは人耳丸出しなんですよな……耳が四つある~)

音はどっちの耳で聞いているんだろう、なんて考え始めてハッとする。早くミタマに耳と尻尾が出ていることを気付かせてやらなければ、と。

(まぁ周りの方々はコスプレくらいに思ってくれるでしょう、尻尾動いてますけど電動だろうとかで勝手に納得してくれると思いまそ。問題はハルどの達でそ、最初からあったならともかく急に生えてきたらコスプレだと誤魔化すのは難しいでそ)

ハル、セイカ、アキが帰ってくる前に耳と尻尾を引っ込めさせなければ。しかしどうやって? どう気付かせる? ミタマはきつねうどんに夢中だ。咳払い程度では意識は逸らせないだろう。尻尾に手を当ててみるとか? それなら俺も気付いていないフリが出来る、自前だろうし感覚はあるよな?

(そーっとそーっと、視線は外して手だけを……ぬぉぉぉぉ!? もっふもふ、もっふもふ! ひょえええ……! たまらねぇでそこのもふもふっ!)

ぽふっ、もふっ、と手に当たる尻尾の感触に思わず叫び出してしまいそうになった。ミタマはまだきつねうどんに夢中だ。そもそも背もたれに擦り付けるように振っているのに尻尾が出ていることに気付いていない時点で、手を当てたくらいで気付く訳がないと先に察するべきだった。

「……コンちゃん、コンちゃん。コンちゃん、ねぇ、コンちゃん……! コンちゃんってば」

「む……? 何じゃみっちゃん、何をそんな必死な顔になることがある。飯時は落ち着くもんじゃぞ、野生動物じゃあるまいし」

「…………尻尾、出てるんだよ……! 耳もっ」

「しっぽ……? みみ…………ほぁっ!?」

ポンっ、と前足が人間の手に変わった時にも聞こえた軽い音が再び聞こえ、尻尾と耳が消えた。

「……………………いっ、いりゅーじょ~ん、じゃ。たまげたかのぅ?」

わぁ、びっくりしたよ、マジック上手いんだね。と言え。言うんだ俺。そう言いさえすれば、度の過ぎた鈍感を演じさえすれば、異種族の嫁に逃げられる数多の昔話のようには──

「な、なんだマジックか……いやいやいや無理がありますぞいい加減に! あぁクソ言っちゃったぁちくしょうっ!」

──あぁ、ダメだ、ダメだった、我慢し切れなかった。
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