冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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大人気ないひと

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目玉焼きにはシロップがかけられていたが、トーストはトースターで焼くだけだし、レタスはちぎって置くだけ。レイの奇抜なアレンジは行われていない。

「ごちそうさまでした」

シロップ以外のアレンジはなかった。体液は……精液の味はしなかったから、それは入っていない。先程見た感じでは爪の長さも変わっていなかったから、爪も入っていない。食感から考えて髪もない。あっても唾液くらいだろう。レイの料理も常識的になってきたな。

「せんぱい、今日はどうすんすか?」

「どう? んー……今日も勃たないし、宿題でもするよ。あっ、ヒトさん、相談があるんですけど。あなたの本業の方で」

「本業……分かりました。あなたも色々と大変ですねぇ、一難去ってまた一難……という訳ですか。それで? どこの誰を消して欲しいんです?」

「……えっ? いや、あの……建設の方の相談、なんですけど」

ドヤ顔のまま固まったヒトはじわじわと顔を赤くし、ゆっくりと俯くと「ふぅーっ……」と深く息を吐いた。

「…………それで? 何をして欲しいんです?」

「祠、建てて欲しくて」

「……ほこら」

「旅の扉欲しいんすか?」

「めっちゃ欲しいけど違う。コンちゃん……ミタマ、あの、狐の子。やっぱり祠とか欲しいかなーって思って。今日聞いてみるつもりなんですけど、もし欲しがったら建ててあげたくて。建てるって確定じゃなくて悪いんですけど、祠って建てられるか聞いておこうかなって」

「確かに……なんか、神社の人に何かしてもらわないとみたいな感じするっすね。建設の人だけで建てていいもんなんすか?」

俺とレイの視線がヒトに向く。目元を怪我しているアキはともかく、セイカはどうなんだって? 彼ならピルケースを人差し指でつついていて俺達の話なんて聞いてないよ。

「……おいセイカ、ちゃんと飲めよ?」

「わ、分かってるよ……」

「結論だけ言えば、建てられます。建てたことがあります」

「……結論だけって何すか?」

「神社の人にどうこうという、あなたの質問には答えられないということです。穂張興業で以前建てた時は神主などは呼びませんでした、本当に祠を建てただけだったんですよ」

建設業の者からの生の情報を創作の土壌にしたかったのだろうレイは目に見えて落胆した。

「当時はオカルトなど信じていませんでした、お化けも神様も何もね。何の疑問も抱いていなかった……今考えれば、ミタマとかいう意味の分からない存在を殴り倒したボスの姿を思い出せば……彼が居たから神社関係者が必要なかった、とも考えられますね。だから、木芽さんの質問への答えは、分かりません。なんですよ。他の業者も祠を建てるのか、そうだとしたらどんな手順なのか、それらを私は知りません」

「……真剣な回答、ありがとうございます」

レイのまともな敬語、レアだな。

「技術的には可能ですし、祀る本人が居るなら神主なども必要ないでしょう。建てられますよ、鳴雷さん」

「ありがとうございます! コンちゃんに欲しいか聞いた後、建てることになったら予算とかの話させてくださいね」

「鳴雷さんの頼みであればタダでやりますよ、恋人ですから」

「ちゃんと払いますよ、恋人だからこそ」

「イラストレーター的にせんぱいのそういうとこめっちゃ好きっす」

「……意見が違いますね、好意を無下にされた気分ですよ」

「えっ、ご、ごめんなさい……」

レイとヒトで意見が別れてしまった。素直にタダでやってもらうべきか? いや、でもそれは……やっぱり気が進まない。

「払うってのはせんぱいの好意っすよ、ヒトさん。好意と好意の押し付け合いっす、どっちの好意を通すかはともかくとしてどっちも好意なんすから、そんなふうに不機嫌になるのは違うっすよ」

「……大人びた口を利きますねぇ。歳下のくせに」

ヒトはため息をついて俺をじっと見つめた後、再び見せつけるように深く息を吐いた。

「半額、でどうですか」

「ちょっと気が引けますけど……でも、それがヒトさんの好意なら、受け取らないとですよね」

「そうしてください。あなたと私では稼ぎも違いますし……バイトとかしてるんですか?」

「はい、一応」

「へぇ……十二薔薇ってバイトとかOKなんですね」

俺の彼氏達は誰もやっていないし、他の生徒にもバイトをしている者は少ないだろう。何せお坊ちゃま学校だ。

「……そういえば、あなたイラストレーターなんですって?」

「はいっす。でも穂張さんとこのポスターとか絶対描かないっすよ」

「先手を打ってきますね、ちなみに理由を聞いても?」

「反社だからっす」

「……リスク管理が出来ていて素晴らしい限りです」

皮肉たっぷりにそう言ったヒトの顔は不機嫌そのものだ。付き合う前はもっと外面を作るのが上手い人だと思っていたけれど、感情がすぐ顔に出ている。いや、今は外面を作っていないのかな? だとしたらリラックスしてくれているように感じられて嬉しい。

「そろそろ会社に戻った方がよさそうですね」

「あ、俺もご一緒していいですか? コンちゃん迎えに行かないと」

「俺も行くっす、家近くなんで」

「……鳴雷、秋風も行きたいって。親父さんにお別れくらい言いたいみたいだ」

「え? うーん……俺としては会わせたくないんだけど、なんか……意外と会話は普通みたいだし……しょうがないな。ヒトさん、いいですか?」

「はい、ここに来た時と同じですし……」

「ありがとうございます。みんな、準備しよう」

出かける準備を整えてすぐ、俺はキッチンに戻って弁当箱を二つ取った。

「レイ、ほら昼飯」

アキの部屋から着替えなどを取って戻ってきたレイに弁当を渡す。

「へっ? お弁当……? 俺に、っすか?」

「お前以外誰が居るんだよ。ちゃんと好みのもん詰め込んでやったから、昼に食えよ。栄養バランスも考えてあるんだ、残すなよ」

「せんぱいからのお弁当残す訳ないっす! えへへへへ……せんぱいのお弁当っ、お弁当っ、お弁っ当~っ」

喜んでくれたみたいで何よりだ。

「見てくださいっす見てくださいっす! せんぱいが俺のために作った俺だけのお弁当っす! もう死んでもいい……! あっ食べるまでは死にたくないっす。でも食べるのもったいないっすねぇ……」

それぞれ準備を終えて集まった他三人に見せびらかし始めた。セイカは素直に祝福しているが、ヒトの表情は険しい。

「……ふん、馬鹿らしい。弁当一つで小躍りまでして」

「嬉しいっすもん。ヒトさんだってもらえたら踊っちゃうっすよぉ」

「そんな訳ないでしょう! 弁当なんてもらったって少しも嬉しくありません、素人の弁当に価値なんてありませんよ!」

「ヒトさんっ……」

慌てて口を噤んだが名前は呼んでしまった。何とか彼が振り返るまでに手を背に回すことは出来た。

「鳴雷さん? 何ですか?」

「………………えっと」

「何か用があるならさっさと仰ってください、暇じゃないんです。早く会社に戻りたいんですよ、夏休みのあなた達と違って私は今日も忙しいので!」

「俺も忙しいっすよ。ハロウィン系のイラストの駆け込み依頼めっちゃ来るんすから」

「黙れピンク野郎!」

「なっ、なんなんすかぁっ! 急に機嫌悪くなってぇ! 当たり散らさないで欲しいっす!」

爪が風呂敷越しに手のひらに食い込む。

「機嫌は普通ですし当たり散らしてなんかいませんよ失礼な! 鳴雷さん、早く用件仰ってください!」

怒りを孕んだ声に身体が固まり、鼓動が早まる。

「……ごめん、なさい」

超絶美形なのは見た目だけ、一皮剥けば虐められっ子。そんな俺が不機嫌な大人に対して出来るのは、辛うじて言葉に出来たのは、謝罪の言葉だけだった。
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