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あやして、あやして
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しゃくり上げるノヴェムの背をポンポンと叩き、あやしてやっているせいで着替えも出来ない。ジロっと歌見を睨むと、彼はバツが悪そうに目を逸らした。
「いや……悪かった。言い過ぎたよ、途中からからかい半分だった」
「パイセンのせいでノヴェムくん泣いちゃったじゃないですか!」
《怒らないでぇ……ふぇえんっ》
「あーノヴェムくん、ノヴェムくんよしよし」
「怒らないでって言わなかったか?」
「パイセン英語分かるんですか!?」
「簡単なのなら何とか分かる、ゆっくり言ってくれてたし。現役大学生だぞ?」
歌見が英語が分かるだなんて意外だ。しかし「怒らないで」か。やっぱり俺の大声が原因だったんだな。
「ノヴェムくんって言うのか?」
「はい、ご近所のシングルファーザーさんの息子さんでそ。最近よく預かってるのです」
《……ノヴェム、ごめんなさい。彼が怒った理由、それは私にあります》
「おぉ、カタカナ英語」
リスニングテストの際、歌見のような発音だったら簡単に聞き取れるのにな。
「えー……バイトって英語か? 先輩って……英語でなんて言うんだ? 自己紹介が出来ないぞ」
「もうボロが出ましたか……ふむ、先輩、先輩……えぇと……オールド、マン?」
「古い人間? なんか違う気がする」
「英語苦手民だけで話してても埒が明きませんぞ、ここは言語の鬼セイカ様に頼らねば」
一ヶ月足らずで異国語の中でも難易度が高いとされるロシア語を習得し、英語もペラペラ。そんな俺と同じ人間とは思えない天才に頼るため、俺は着替えを諦めダイニングへと向かった。
「おや、居ませんな……」
ダイニングには誰も居ない、キッチンでは母が料理中だ。歌見が挨拶に向かった。アキとセイカはまだ部屋かな? そう予想しつつも何気なく辺りを見回し、アキとセイカの姿をリビングに見つけた。
「おっ、居ましたぞ」
「ただいま。居たか?」
挨拶を終えた歌見と共にリビングへ。なんて大層に言ってみたが、数歩で彼らの座るソファに着く。
「んっ……ん、ぁっ……は……秋風、もう終わりっ……ぁ、だめ……」
ソファに座ったアキの膝の上に腰を下ろしたセイカは、アキの首に腕を回し、アキに後頭部を押えられてキスに耽っていた。もう片方の手で尻を揉まれ、足で股間を刺激され、口では嫌がりながらもセイカは確かに発情している。
《わっ……お兄ちゃん? なにぃ……前見えないよぉ》
俺はすぐにノヴェムの目を隠した。服をはだけさせてはいないとはいえ、甘えた喘ぎ声や蕩けた表情は教育に悪い。
「……!? なっ、鳴雷!? お、ぉ……おか、えり」
「おかえりー、です。にーに」
「ゃんっ……揉む、なよぉっ、もう終わりぃ……」
「終わるする、ダメです。すぇかーちか、十分言うするしたです」
「た、ただいま……えと、ノヴェムくん向こう行こっか。あっ、泣き止んでるね。お兄ちゃんお着替えしてくるから、先輩と待っててくれるかな」
強引にノヴェムを歌見に抱かせ、俺を呼ぶ幼い声を背に受けながら、後ろ髪を引きちぎられる思いで部屋に駆け込んだ。ベルトを外し、シャツを脱ぎつつ腰を振ったり足を擦り合わせたりでズボンも脱ぐ。大慌ての着替えが始まった。
《ゔああぁああああんっ! おにぃぢゃぁあああんっ! みづぎおにぃぢゃあぁああっ! おにぃぢゃがいいぃーっ! やだぁああおろしてぇええ!》
ノヴェムの大絶叫が聞こえる。まだ離すのは早かったかと後悔しつつ、着替えを終えた俺はモール製の指輪を忘れずはめてノヴェムの元へ走った。
「ノヴェムくん!」
《……! おにいちゃんっ!》
両手両足を突っ張って歌見から逃れようとしていたノヴェムを受け取り、しゃくり上げる彼をまたあやす。
《ひっく、ひっく……ぅええぇ……おにぃちゃん、おにぃちゃあん……いっちゃやだぁ……おにぃちゃんノヴェムのおよめさんなの、およめさんおむこさんからはなれちゃダメなのぉ……》
「ぶやいと……? りぶ……んー? ダメだ、こんなに泣いてちゃ聞き取れない。そもそも発音が本場過ぎるし……」
「よしよし、よしよし、ごめんねー……」
「俺子供に嫌われやすいんだよな……なんでだろ」
そりゃガタイがよくて顔が怖いからだろう。レイの元カレほどではないが、歌見は十二分に三白眼と呼べる目をしている。キリッとした眉や鋭い目つき、無表情だと不機嫌に見える顔つきは子供には不人気だろう。
「パイセンは笑顔が太陽のようですので、ニコニコしてりゃあ大丈夫だと思いまそ」
「そうかなぁ」
「落ち着いたらセイカ様に頼んで紹介してもらいまそ、きっと仲良くなれますぞ」
「……そうか。しかし、なんだ……ふふっ、いいなぁ、お前が子供を抱いてるのは。似合うよ」
「子供抱っこするのに似合う似合わないあります?」
「あるさ。お前は似合う。顔が優しい、いつもに増して可愛いよ」
歌見は俺の肩を抱き寄せると、もう片方の手で俺の頬を撫で、額にキスをした。
「……なぁ、ちょっと気持ち悪いこと言ってもいいか?」
「はぁ……なんでしょう」
「こうしてると、お前と家族になったみたいで……なんだか、その……すごく、いい。アレじゃあ男役はお前だし、いくらヤっても子供なんか出来ないって分かってるんだが……なんだ、こう……本能? みたいなのが……お前を妻にして、妻が子供抱いてるって感じの……なんか、嬉しさが」
「…………ふふ」
「その顔だ、その顔がダメなんだ……優しくて、可愛くて、父性なんだか母性なんだか出してる理想の妻顔……はぁー、おかしくなる」
歌見はもたれかかるように俺をノヴェムごと抱き締める。
「……パイセン、結構わたくしのこと好きですよな」
「結構ってなんだ結構って。めちゃくちゃ好きだぞ、お前のことは」
「へへ……ね、パイセン。わたくしも幸せな気持ちですことよ。だってパイセン、すっごくいい旦那様になってくれそうですし」
「からかうなよ……」
「からかってなんていませんよ」
「…………大事にするさ、そりゃ……大好きなんだから」
俺を抱き締めるたくましい腕の力が強まる。確かな力と体温に癒された俺は、力を抜いて彼の胸元に頭を預けた。
「いや……悪かった。言い過ぎたよ、途中からからかい半分だった」
「パイセンのせいでノヴェムくん泣いちゃったじゃないですか!」
《怒らないでぇ……ふぇえんっ》
「あーノヴェムくん、ノヴェムくんよしよし」
「怒らないでって言わなかったか?」
「パイセン英語分かるんですか!?」
「簡単なのなら何とか分かる、ゆっくり言ってくれてたし。現役大学生だぞ?」
歌見が英語が分かるだなんて意外だ。しかし「怒らないで」か。やっぱり俺の大声が原因だったんだな。
「ノヴェムくんって言うのか?」
「はい、ご近所のシングルファーザーさんの息子さんでそ。最近よく預かってるのです」
《……ノヴェム、ごめんなさい。彼が怒った理由、それは私にあります》
「おぉ、カタカナ英語」
リスニングテストの際、歌見のような発音だったら簡単に聞き取れるのにな。
「えー……バイトって英語か? 先輩って……英語でなんて言うんだ? 自己紹介が出来ないぞ」
「もうボロが出ましたか……ふむ、先輩、先輩……えぇと……オールド、マン?」
「古い人間? なんか違う気がする」
「英語苦手民だけで話してても埒が明きませんぞ、ここは言語の鬼セイカ様に頼らねば」
一ヶ月足らずで異国語の中でも難易度が高いとされるロシア語を習得し、英語もペラペラ。そんな俺と同じ人間とは思えない天才に頼るため、俺は着替えを諦めダイニングへと向かった。
「おや、居ませんな……」
ダイニングには誰も居ない、キッチンでは母が料理中だ。歌見が挨拶に向かった。アキとセイカはまだ部屋かな? そう予想しつつも何気なく辺りを見回し、アキとセイカの姿をリビングに見つけた。
「おっ、居ましたぞ」
「ただいま。居たか?」
挨拶を終えた歌見と共にリビングへ。なんて大層に言ってみたが、数歩で彼らの座るソファに着く。
「んっ……ん、ぁっ……は……秋風、もう終わりっ……ぁ、だめ……」
ソファに座ったアキの膝の上に腰を下ろしたセイカは、アキの首に腕を回し、アキに後頭部を押えられてキスに耽っていた。もう片方の手で尻を揉まれ、足で股間を刺激され、口では嫌がりながらもセイカは確かに発情している。
《わっ……お兄ちゃん? なにぃ……前見えないよぉ》
俺はすぐにノヴェムの目を隠した。服をはだけさせてはいないとはいえ、甘えた喘ぎ声や蕩けた表情は教育に悪い。
「……!? なっ、鳴雷!? お、ぉ……おか、えり」
「おかえりー、です。にーに」
「ゃんっ……揉む、なよぉっ、もう終わりぃ……」
「終わるする、ダメです。すぇかーちか、十分言うするしたです」
「た、ただいま……えと、ノヴェムくん向こう行こっか。あっ、泣き止んでるね。お兄ちゃんお着替えしてくるから、先輩と待っててくれるかな」
強引にノヴェムを歌見に抱かせ、俺を呼ぶ幼い声を背に受けながら、後ろ髪を引きちぎられる思いで部屋に駆け込んだ。ベルトを外し、シャツを脱ぎつつ腰を振ったり足を擦り合わせたりでズボンも脱ぐ。大慌ての着替えが始まった。
《ゔああぁああああんっ! おにぃぢゃぁあああんっ! みづぎおにぃぢゃあぁああっ! おにぃぢゃがいいぃーっ! やだぁああおろしてぇええ!》
ノヴェムの大絶叫が聞こえる。まだ離すのは早かったかと後悔しつつ、着替えを終えた俺はモール製の指輪を忘れずはめてノヴェムの元へ走った。
「ノヴェムくん!」
《……! おにいちゃんっ!》
両手両足を突っ張って歌見から逃れようとしていたノヴェムを受け取り、しゃくり上げる彼をまたあやす。
《ひっく、ひっく……ぅええぇ……おにぃちゃん、おにぃちゃあん……いっちゃやだぁ……おにぃちゃんノヴェムのおよめさんなの、およめさんおむこさんからはなれちゃダメなのぉ……》
「ぶやいと……? りぶ……んー? ダメだ、こんなに泣いてちゃ聞き取れない。そもそも発音が本場過ぎるし……」
「よしよし、よしよし、ごめんねー……」
「俺子供に嫌われやすいんだよな……なんでだろ」
そりゃガタイがよくて顔が怖いからだろう。レイの元カレほどではないが、歌見は十二分に三白眼と呼べる目をしている。キリッとした眉や鋭い目つき、無表情だと不機嫌に見える顔つきは子供には不人気だろう。
「パイセンは笑顔が太陽のようですので、ニコニコしてりゃあ大丈夫だと思いまそ」
「そうかなぁ」
「落ち着いたらセイカ様に頼んで紹介してもらいまそ、きっと仲良くなれますぞ」
「……そうか。しかし、なんだ……ふふっ、いいなぁ、お前が子供を抱いてるのは。似合うよ」
「子供抱っこするのに似合う似合わないあります?」
「あるさ。お前は似合う。顔が優しい、いつもに増して可愛いよ」
歌見は俺の肩を抱き寄せると、もう片方の手で俺の頬を撫で、額にキスをした。
「……なぁ、ちょっと気持ち悪いこと言ってもいいか?」
「はぁ……なんでしょう」
「こうしてると、お前と家族になったみたいで……なんだか、その……すごく、いい。アレじゃあ男役はお前だし、いくらヤっても子供なんか出来ないって分かってるんだが……なんだ、こう……本能? みたいなのが……お前を妻にして、妻が子供抱いてるって感じの……なんか、嬉しさが」
「…………ふふ」
「その顔だ、その顔がダメなんだ……優しくて、可愛くて、父性なんだか母性なんだか出してる理想の妻顔……はぁー、おかしくなる」
歌見はもたれかかるように俺をノヴェムごと抱き締める。
「……パイセン、結構わたくしのこと好きですよな」
「結構ってなんだ結構って。めちゃくちゃ好きだぞ、お前のことは」
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