冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

文字の大きさ
1,392 / 2,315

土曜日のご予定は

しおりを挟む
つん、つん、と控えめに肩をつつかれる。

「どうした、セイカ」

「……繰言先輩今日は来てるんだよな、どうする? 鳥待としないなら、昼休みって都合良さそうだけど」

「あぁ……会いに行くかって? んー……とりあえずどこに居るか聞いてみるか」

教室か、保健室か、はたまた便所飯の最中か、なんて考えながら居場所を問うメッセージを送る。送った直後に既読が付き、返信もすぐに来た。

『ごめんなさい!! 行こうと思ったけどなんか辛くなったからやめました! 明日は! 明日は行きます!!!』

相変わらずうるさい文章だな。

「……休みみたいだな」

「え? 来るって言ってただろ? 鳴雷……俺会わせたくないんだったら、俺は待ってるから……」

「本当に休みなんだって! ほら」

「…………ほんとだ、ごめん。どうしたんだろ、一昨日からずっとって……風邪かな? こじらせてるんだな」

昼から行く、やっぱり休む、は不登校の常套句だ。体調不良とは俺は思えない。けれどその考えは心に留め、セイカには「そうかもな」と伝え繰言には『お大事に』と送信した。



セイカを家まで送り届けて、バイトのため本屋へ向かう。それなりに働いて、歌見と軽く話す。いつも通りの平日の夕方。そんな日常を壊す、非日常の象徴からの電話。

『もしもしみぃくんっ? 時間ある? 今周り誰か居る?』

テレビだとかを見るのなら聞き慣れているのだろうが、テレビを見ない俺にとっては久しぶりに聞く可愛らしい声。

「ある。一人だよ、道端で」

『よかった。あのねっ、再来週の土曜日空けておいて! 何時になるか分かんないんだけどちょっとだけ時間取れそうで、交通費は出すから後で送るとこ来て欲しいんだ!』

「分かった、久しぶりに顔見れそうかな」

『……! えへへ、僕の顔だけなら色んなとこで見れるけど……あっもうリハ戻らなきゃ。またね!』

「あぁ、また……って、もう切ったのか」

俺の返事を待たず電話は切られた。忙しない電話の相手は俺の彼氏の一人、国民的アイドルのカミア。カンナの弟。彼はその職業ゆえ多忙なため、彼との約束は最優先だ。ハーレム内で共有しているカレンダーに記しておこう。

「予定埋まったマークだけでいいか……」

何でもない平日がワクワクの始まりの日になった。カミアに直接会った回数はまだ片手で数えられる程だ。彼は多忙さと孤独さと疲労から後孔での遊びの玄人になっている、俺と会えない間も開発を進めてくれていただろうから、来週こそ抱けるかもしれない。



スキップをしながら帰った、木曜日。金曜日だという特別感以外に特別なことのなかった金曜日。いや、彼氏達と過ごす日常はどれも大切なものなのだけれど──体育祭の練習、繰言の休校確認、昼休みのシュカとのセックス、休み時間並び授業中に行ったリュウへのイタズラ──などなど木曜日と同じイベントばかりだったからな。

「え、今日会社行くんですか?」

土曜日の朝食中、先週のようにセイカを勤め先に連れていくと母が話した。

「私今日予定あるんですけど……」

「別にアンタはいいわよ。セイカだけで」

「そうですか? アキも着いてくなら、まぁ……安心かな」

アキは俺の方を向いてにっこり笑った。話の内容は分かっていないだろう、きっと自分の名前だけ聞き取れたんだ。けれど俺には「安心してにーに」と返事をしてくれたように感じられた。

「あ、そうそう。コンちゃんも連れて行きたいんだけど」

俺が口を開くよりも早く、俺の背後に隠れるようにしてミタマが姿を現した。

「……あの恐ろしいところへ行くのか?」

「何もさせないから。ね?」

「ダメだよ母さん、コンちゃんは今日の約束に組み込まれてるんだから」

「あら……絶対?」

「絶対!」

ミタマの祠を建てるたに穂張興業に見積もりを聞くんだ、本人が居なくては判断出来ないこともあるかもしれない。

「あらあら……んー、まぁこっちは絶対じゃないし…………いっか。コンちゃん、また今度でいいわ」

「ほっとしたのじゃ……しかし、ぅう……今度とは…………くぅうん……」

いつまでも逃げられはしないことに落ち込み、動物病院の前に立った犬のような情けない声を漏らしつつ、姿をすぅっと透けさせた。

「……コンちゃん、今日ヒトさんとこ言って祠のこと詳しく聞くからね」

「ありがたいのぅ……怖くて冷えて、嬉しくて温まり、ワシの胸はべコッと鳴っておるわ」

「コンちゃんの胸ってシンクに熱湯零した感じで鳴るんだ……?」

母が今日セイカとアキを連れて会社に行かなければ、彼らは俺の外出に着いてきただろうし、そうなっていればヒトが酷く不機嫌になっていただろう。これでよかったのかもしれない。

「ミツキの母君には悪い気もしますが、幸いでしたね。あのような恐ろしい場所へ行くなんて心臓がいくつあっても足りません」

「そうじゃのぅ、安全そうだと話を聞く分には思うのじゃが……恐ろしいもんは恐ろしいからのぅ」

いかに母の会社が恐ろしいかを話し込む二人を背に、俺は髪と服を整えた。ヒトが好みそうな、頭が良く見えそうなカッチリした髪型と服装にしてみた。ヒトは俺をしっかり見て褒めてくれるだろうから楽しみだ。

「ワンチャンヒトさんとヤれるかも……ゃー事務所は無理かな~、どうかな~……い、一応ゴム持ってっとこ……ぅへへ。あ、コンちゃん、見積もりとかの祠の話終わったら、消えるかフタさんの飼い猫のとこ行くかしてね、ヒトさんは二人きりの方がいいタイプの人だから」

「あいわかった」

「あの化け猫達は私の師匠だ。今日は実体化のコツを聞いてみたい」

「俺一切見えないから勝手にやっててとしか言えないかな。さ、行くよ」

二人は背後をふよふよと着いてきて……いや、憑いてきているのだろう。傍から見れば一人で、しかし本当は三人で、駅へ向かうため家を出た。

「……あ、水月くん。こんにちは」

家を出てすぐ、スーツ姿のネイに声をかけられた。今は昼前、普段なら彼はもう出社しているはずの時間だ。

「ネイさん! どうされたんですか? 遅番、ってヤツですか?」

「いえ、今日は家でのお仕事です。水月くんはお出かけですか? どちらへ?」

リモートワークだろうか、ビデオ通話をするから自宅での仕事だろうとスーツが必要とか? 何故外に? 買い物にでも行くのか?

「俺は、はい、ちょっと遊びに……ネイさん、大変ですよね。毎日朝早く出て夜遅くに帰ってきて……土曜日まで仕事なんて。そういえば全然聞いた事なかったんですけど、ネイさんって何のお仕事されてるんですか?」

ネイの視線が一瞬鋭くなる。しかしすぐに元の温和な笑みに戻った、あの目は俺の見間違いだろうか、きっとそうだ。

「……水月くんはこの国が好きですか?」

「えっ? え、えぇ、まぁ、他の国住んだことないし、比べようがないですけど」

「日本は世界的に見てとても安全で、秩序の保たれた国です。私は血こそ日本人とは言えませんが、この国で生まれ育って……この国を愛しています」

俺、仕事聞いたんだけどな。

「……ですから、私は誇りを持って働いていますよ。国のため……安寧のため」

「はぁ……ご立派ですね」

自衛隊? いや、もう少し身近な感じがする。警察とか? 公務員っぽい言い方だった。なんでハッキリ教えてくれないんだろう。

「………………水月くん」

「は、はい……なんでっ、わっ!?」

ネイはじっと俺を見つめたままポケットに手を突っ込んだかと思えば、すぐに手を出して俺にぎゅっと抱きついてきた。

「なっ、なな、何……なんっ、ですか? ネイさん……?」

「……行ってらっしゃい。気を付けてくださいね」

「は……はい」

抱き返す勇気は出ず、俺は家に帰っていくネイを見送った。

「………………ただの、ド美人社畜シングルファーザーだと思ってたけど……なんか、よく分かんない人だな」

「好かれとるんじゃないかのぅ」

「だとしたら好意の表し方が少々変わっていらっしゃいますね」

呑気に話す二人を背に、俺は悩むのは後だと思い直して穂張興業へと急いだ。
しおりを挟む
感想 535

あなたにおすすめの小説

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード

中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。 目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。 しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。 転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。 だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。 そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。 弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。 そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。 颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。 「お前といると、楽だ」 次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。 「お前、俺から逃げるな」 颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。 転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。 これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。 続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』 かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、 転生した高校時代を経て、無事に大学生になった―― 恋人である藤崎颯斗と共に。 だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。 「付き合ってるけど、誰にも言っていない」 その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。 モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、 そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。 甘えたくても甘えられない―― そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。 過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。 今度こそ、言葉にする。 「好きだよ」って、ちゃんと。

男子寮のベットの軋む音

なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。 そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。 ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。 女子禁制の禁断の場所。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新! Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新! プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

一人の騎士に群がる飢えた(性的)エルフ達

ミクリ21
BL
エルフ達が一人の騎士に群がってえちえちする話。

イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした

天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです! 元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。 持ち主は、顔面国宝の一年生。 なんで俺の写真? なんでロック画? 問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。 頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ! ☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。

水泳部合宿

RIKUTO
BL
とある田舎の高校にかよう目立たない男子高校生は、快活な水泳部員に半ば強引に合宿に参加する。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

処理中です...