冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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距離の詰め方には気を付けて (〃)

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まずは互いのゲーム機を見せ合い、持っているソフトを確認する。

「パッケージ版買ったのはこの辺ですねー」

「あ、わ、分かる。これは俺もパッケージ買った……特典が、ね。へへっ。で、でもやっぱりダウンロード版買いがち……配信されたらすぐやれるし」

「ソフトの入れ替えの手間もありませんしね」

「うんうん……」

「でもパッケージを並べた時の満足感は無視出来ません」

「分かる~!」

俺の隣で頷いている繰言は今、立っている。ダウンロードしたソフトを見せ合うには横並びが一番、けれどゲーミングチェアには一人しか座れない。

「……あの、俺もベッド座っていいですか?」

「へっ!? で、でもこの椅子好きって……」

「隣に居た方が色々やりやすいでしょう? 先輩立たせてるのもアレだし……他人がベッドに触るの嫌じゃなければ、一緒に座りたいです」

「ぁ……ごっ、ごめんね気を遣わせちゃって! 俺は別に立ちっぱでもいいから……あっ鳴雷くんがベッド触るの嫌とかじゃなくてっ、あの、えっと……す、好きなとこ、座って……」

俺に不快感を与えないように必死なようだ。俺はにっこり微笑んで立ち上がり、ベッドに腰を下ろした。ぽんぽんと隣を叩くとそろそろと繰言が隣に腰を下ろす。

「わや近ぇ……ひぃい……この距離でも全くブレないイケメンっぷりやべぇ……なんかいい匂いするしぃ、なんなんだよもぉ怖いよぉお……」

「ね、繰言先輩」

「ひゃいっ!?」

「繰言先輩って下のお名前なんて言うんですか? そういえばまだ聞いてなかったんですよね」

「あっ……カ、カサ、ネ。カサネ……重い、音って書いて、カサネ……」

繰言 重音か。

「可愛いお名前ですね。じゃあこれから下のお名前でお呼びしてもいいですか? 俺のことは水月でお願いします」

「えっ? えっ、えぇ……? グイグイ来るぅ……」

「……嫌ですか?」

「いっ、嫌じゃない嫌じゃない! 全然嫌じゃない!」

押しに弱いな、この人。多少の躊躇いや戸惑いなら我慢してしまうタイプだ。我を通して他人を不快にさせるなんて考えられないのだろう、やっぱり簡単に落とせそうだな。

「じゃあカサネ先輩……カサネさん? どっちがいいですかね」

「ぇ、えっと……えっ俺が決めるの」

「ええ、俺のことじゃないですし」

「……お、俺はそんな……先輩面出来るような人間でも、さん付けしてもらえるような人間でもないし」

「先輩なのは事実ですし、歳上なんですからさん付けは当たり前ですよ」

「産まれたのが早かっただけで……ずっと、病院に居て……経験とかは、多分数年分浅いし」

もう少し攻めてみるか。

「……もしかして、呼び捨てがいいです? カサネ、って呼ばれたかったり? ね、どうなんです? カ、サ、ネ」

「ひぃぃっ……!? そっ、そそそっ、そんないい声で人の名前呼ぶなんてどういうつもりだ無差別耳孕ませ犯めっ!」

ズザザッ、とベッドの上を逃げていく。

「えー? 先輩の名前しか呼んでないじゃないですかぁ、無差別じゃないですー。っていうか孕ませって、ふふ……俺の声、キュンと来ちゃいました?」

繰言、いや、カサネが逃げた先は壁だった。部屋の隅にぴったりと置かれたベッドの上で、壁を背にした彼に迫っていく。きっと色気があるはずの鎖骨を見せつけるように四つん這いで進み、震えている繰言の頬に手を添える。

「……俺の声、好きですか?」

「ちちちちちがうっ! いい声だから! いい声だからってだけ! お、俺が、俺が好きとかじゃ、なくてっ……」

「……違うんですか?」

「客観的にっ! 客観的に、孕ませボイスだって言ってんだよお前の声はっ……! ぇ、ASMRとかやれば、ウケるんじゃないの……その声ならガチ恋勢大量に出るって、ダミヘ代すぐ取り返せる……」

「不特定多数の人に好かれたくないです、お金稼げても窮屈で厄介なのは嫌なんです。俺は俺が好きな人にだけ好かれたい……ねぇ先輩、だから教えて欲しいんです。先輩が好きな、先輩の呼び方」

「は……? な、何、なんなの……それじゃまるで…………かっ、からかうなよ! いい加減にしろっ! ぉ、お、俺が非モテのキモオタだからってナメやがって……! ふ……普通、に、遊べるっ、と……友達、出来ると……おもった、のに……」

ぼろぼろと溢れ出した涙を見て血の気が引いた。

(……やっべぇ攻め過ぎましたぞ! や、やり過ぎた、押しに弱いオタクの好感度なんか簡単に稼げると思ってたのに! わたくしならそうなのに! わたくしとは違いますぞカサネたん、カサネたん思ってたより疑り深いでそ! あぁ~違うんです違うんですからかってないんですよぉ!)

照れて逃げるのを面白がっていたのは認めるが、語った言葉に嘘はない。

「せ、先輩……違います、からかってなんていません。確かに、その……先輩すぐ顔真っ赤になって、可愛いから、いじめたくて……追い詰めちゃいましたけど、嘘じゃないんです」

「ぅ、うるさいっ、どっか行けっ、帰れイケメン! やっぱりお前とは住む世界が違うっ……オタクに優しいイケメンなんか居ないし、オタク仲間になれるイケメンも居ないっ! イケメンはイケメンだからサブカルなんかハマらなくてもリアルで生きてけるんだっ!」

「そんな、先輩……」

「……っ、触るな! 帰れよぉっ……噛め! コイツ噛め! フランク噛め! フランク寝てやがるちくしょう……クソぉっ……」

蹲るカサネに触れればその手を払われる。まずい……本格的に嫌われてしまう。この顔なら嫌われることはないと思ってきたけれど、この顔だからこそ嘘臭いと言われることもあるのだ。どうしよう、どうすれば挽回出来る?

「…………ごめんなさい、距離の詰め方間違えて……先輩に好かれたかっただけなんです。本当に、嘘じゃありません」

「嘘だっ、イケメンはすぐ嘘をつくっ!」

どんな偏見持ってるんだよ、自分だってかなりの美形のくせに。

「嘘じゃありません……」

「…………本当に?」

おっ?

「は、はい! 本当です、俺先輩に好かれたかったんです、それだけなんです……」

「……じゃあ、アレだ、俺に好かせて、仲良くして、弄んで、仲間内で笑ったり捨てて遊んだりするアレ……そ、それとも、財布にしようとか? ゲーミングPCに食いついてたもんなっ、俺が金持ってると思ってんだろっ、残念だったなそんなことねぇよっ!」

「…………どれだけひねくれてるんですか」

「は……?」

「俺が間違えたのは認めますし謝罪します。なんでそんなにひねくれた受け取り方しかしてくれないんですか! ずっと入院しててろくに友達も居ないなら裏切られたこともないくせになんでそんなに疑うんですかっ……太ってた頃の私だって、虐められた後の私だってそんなひねくれた物の捉え方してなかった!」

「なっ、なんだよ急に! 思ったように遊べないと分かったら逆ギレ人格否定か!? やっぱりお前は何でも自分の思い通りになると思ってる横暴なヤツだ第一印象の通りだっ!」

ずっと俯いたり顔を背けたりして俺を見てくれないでいたカサネが、ようやく真正面から俺を睨んだた。
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