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厄介な大人 (水月+ヒト・サン)
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どうにかヒトを慰められた。まだぐずってはいるけれど、俺に抱きついているから拗ねるのは終わったらしい。
「鳴雷さん酷い……私何もしてないのに、私に怒って……」
サンの三つ編みを顔に当てられたフタの悲鳴を、俺はまたヒトがフタを殴ったのだと勘違いして怒鳴った。ヒトは拗ねてしまって「フタに構ってやれ」なんて言い出したけれど、今はもう恨み言を吐く余裕が生まれている。
「プレゼントの時だってフタが悪いのに……私悪くないのに……」
「ほら水月、兄貴鬱陶しくなった。下手に構わない方がいいんだよ」
「サン、そういうこと言わないの」
「鳴雷さん……私の味方はあなただけです。ずっと味方でいてくれますよね?」
「ヒトさんがダメなことしない限りは。たとえば、暴力はダメですよ? 怒鳴るのも控えてください、物に当たるのもダメ」
「…………多いですね」
心底不満そうな声だ。当然のことを言っただけのつもりなのに。
「立ちっぱ疲れません? ちょっと座りましょ、ヒトさん」
「……ん」
ヒトは小さく頷いて俺に抱きつくのをやめ、その場に腰を下ろし、俺のベルトを掴んで引っ張り乱暴に自分の足の上に座らせた。
「うわっ!? ちょ、ヒトさん……もー、危ないでしょ! 言ってくれればしますから、無理矢理しないでください。俺みたいなデカいの落ちてきたらヒトさんだって痛いでしょう?」
「…………」
ヒトは何も言わず、俺の腹に腕を回して俺のうなじに顔を押し付けた。落ち込んだ時のセイカがテディベアを抱いてよくこうしている。
「………………怒らないで」
だんまりを決め込むつもりかとため息をついた直後、震えた声が聞こえた。俺はヒトの頭に手を回し、見事に固められた髪を撫でる。
「怒ってませんよ。危ないよって注意しただけです。俺もヒトさんも痛いかもしれなかったから」
「水月ぃ、兄貴は自分のやることに文句付けられるの嫌いなだけだからそういう説得効かないよ~?」
「そんなことないよ。ね、ヒトさん。ヒトさんのこと思って言ってるんですから、聞いてくれますよね?」
「……私のこと、思って?」
「え? は、はい、だから、俺が落ちてきたら、ヒトさん足痛いかもだから、無理に引っ張らずここに座れって言ってくれたらいいんですよって……俺、言いましたよね?」
「…………私のこと、否定してるのかと……ちゃんと聞いてませんでした。そう……鳴雷さん私のこと心配してくれてたんですね、嬉しい……今度から気を付けます」
マジかよ。本当にサンの言う通りだったのかよ。
「……ほら。ボクの兄貴は二人とも人の話聞けないんだよ。フタ兄貴は聞こうと頑張った上で無理だから、あんまり強く言わないであげて欲しいけどさ~……ヒト兄貴は途中で聞く気失って聞いてないだけだから、もう殴っていいよ」
「な、殴りはしないよ……聞いてもらえるように頑張る」
「…………そ? 水月はいい子だねぇ」
「そうかな……そんなことないよ。冤罪かけちゃったし。恋人とコミュニケーション取りたがるのは普通のことだと思う」
「ま、好きにすればいいけどさ~。ボク、ヒト兄貴嫌いだから水月とイチャついてんのムカつくだけだし」
自分の気持ちがよく分かっているようで何よりだ。
「あーにきっ、構って~」
ヒトから俺を奪い取れないと判断したサンはフタの元へ向かった。見えない何かと戯れていたフタは喜んでサンを受け入れ、仲良さげに話し始めた。
(フタさんとサンさんは仲良し兄弟って感じでかわゆいのですが、ヒトさん……)
自業自得とはいえ末の弟にあれだけ嫌われているのは哀れだ。俺は腹に回ったヒトの手に手を重ね、触り心地のいい手の甲を親指ですりすりと撫で続けた。
明確に飼い犬に舐められているネザメや、やっぱりカンナと腕を組んでいるカミアなど、彼氏達の可愛い様子を眺める。
(彼氏の膝に座って、彼氏眺めて……最高でわ?)
当初は背を丸めていたけれど、気分が持ち直したのかヒトの姿勢も良くなってきたので、今は俺の方からもたれられる。
(歌見パイセンと比べると足も胸もムチムチ度が低くて硬いですが、それもまたよし。ザ・男って感じの座り心地がたまりませんぞ)
太腿に手を這わせる。よく鍛えられた男の足だ、筋肉質な揉み心地に興奮してきた。
「……あ、あの、鳴雷さん……どうして、足を」
「へ……? あっ、すいません、つい」
「ついって……」
「ヒトさんがつい触りたくなる身体してるのが悪いんですよ?」
「鳴雷さんが性欲旺盛なだけでしょう」
呆れ声だ。けれど、どこか嬉しそうにも感じる。俺の自惚れだろうか。
「……もう一回言ってください」
「へ?」
「鳴雷さんは性欲旺盛ですねって」
「は、はぁ……鳴雷さんは性欲旺盛ですね」
「ふむ……鳴雷さんのえっち、もください」
「え? な、鳴雷さんのえっち……」
「……鳴雷さんのスケベ、も」
「鳴雷さんのスケベ……あの、これ何なんですか?」
「たまんねぇっ……!」
「何なんですか本当に」
今夜のオカズにさせてもらおう。となれば記憶を頼りにするより録音した方がいいかな。
「すいません、録音するんでもう一回言ってくれますか?」
「本当に意味が分かりません……別に構いませんけど」
「よっしゃあ!」
スマホを構えるとヒトは照れくさそうに咳払いをし、俺が願った通りのセリフを録音させてくれた。
「鳴雷さん酷い……私何もしてないのに、私に怒って……」
サンの三つ編みを顔に当てられたフタの悲鳴を、俺はまたヒトがフタを殴ったのだと勘違いして怒鳴った。ヒトは拗ねてしまって「フタに構ってやれ」なんて言い出したけれど、今はもう恨み言を吐く余裕が生まれている。
「プレゼントの時だってフタが悪いのに……私悪くないのに……」
「ほら水月、兄貴鬱陶しくなった。下手に構わない方がいいんだよ」
「サン、そういうこと言わないの」
「鳴雷さん……私の味方はあなただけです。ずっと味方でいてくれますよね?」
「ヒトさんがダメなことしない限りは。たとえば、暴力はダメですよ? 怒鳴るのも控えてください、物に当たるのもダメ」
「…………多いですね」
心底不満そうな声だ。当然のことを言っただけのつもりなのに。
「立ちっぱ疲れません? ちょっと座りましょ、ヒトさん」
「……ん」
ヒトは小さく頷いて俺に抱きつくのをやめ、その場に腰を下ろし、俺のベルトを掴んで引っ張り乱暴に自分の足の上に座らせた。
「うわっ!? ちょ、ヒトさん……もー、危ないでしょ! 言ってくれればしますから、無理矢理しないでください。俺みたいなデカいの落ちてきたらヒトさんだって痛いでしょう?」
「…………」
ヒトは何も言わず、俺の腹に腕を回して俺のうなじに顔を押し付けた。落ち込んだ時のセイカがテディベアを抱いてよくこうしている。
「………………怒らないで」
だんまりを決め込むつもりかとため息をついた直後、震えた声が聞こえた。俺はヒトの頭に手を回し、見事に固められた髪を撫でる。
「怒ってませんよ。危ないよって注意しただけです。俺もヒトさんも痛いかもしれなかったから」
「水月ぃ、兄貴は自分のやることに文句付けられるの嫌いなだけだからそういう説得効かないよ~?」
「そんなことないよ。ね、ヒトさん。ヒトさんのこと思って言ってるんですから、聞いてくれますよね?」
「……私のこと、思って?」
「え? は、はい、だから、俺が落ちてきたら、ヒトさん足痛いかもだから、無理に引っ張らずここに座れって言ってくれたらいいんですよって……俺、言いましたよね?」
「…………私のこと、否定してるのかと……ちゃんと聞いてませんでした。そう……鳴雷さん私のこと心配してくれてたんですね、嬉しい……今度から気を付けます」
マジかよ。本当にサンの言う通りだったのかよ。
「……ほら。ボクの兄貴は二人とも人の話聞けないんだよ。フタ兄貴は聞こうと頑張った上で無理だから、あんまり強く言わないであげて欲しいけどさ~……ヒト兄貴は途中で聞く気失って聞いてないだけだから、もう殴っていいよ」
「な、殴りはしないよ……聞いてもらえるように頑張る」
「…………そ? 水月はいい子だねぇ」
「そうかな……そんなことないよ。冤罪かけちゃったし。恋人とコミュニケーション取りたがるのは普通のことだと思う」
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自分の気持ちがよく分かっているようで何よりだ。
「あーにきっ、構って~」
ヒトから俺を奪い取れないと判断したサンはフタの元へ向かった。見えない何かと戯れていたフタは喜んでサンを受け入れ、仲良さげに話し始めた。
(フタさんとサンさんは仲良し兄弟って感じでかわゆいのですが、ヒトさん……)
自業自得とはいえ末の弟にあれだけ嫌われているのは哀れだ。俺は腹に回ったヒトの手に手を重ね、触り心地のいい手の甲を親指ですりすりと撫で続けた。
明確に飼い犬に舐められているネザメや、やっぱりカンナと腕を組んでいるカミアなど、彼氏達の可愛い様子を眺める。
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当初は背を丸めていたけれど、気分が持ち直したのかヒトの姿勢も良くなってきたので、今は俺の方からもたれられる。
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「……あ、あの、鳴雷さん……どうして、足を」
「へ……? あっ、すいません、つい」
「ついって……」
「ヒトさんがつい触りたくなる身体してるのが悪いんですよ?」
「鳴雷さんが性欲旺盛なだけでしょう」
呆れ声だ。けれど、どこか嬉しそうにも感じる。俺の自惚れだろうか。
「……もう一回言ってください」
「へ?」
「鳴雷さんは性欲旺盛ですねって」
「は、はぁ……鳴雷さんは性欲旺盛ですね」
「ふむ……鳴雷さんのえっち、もください」
「え? な、鳴雷さんのえっち……」
「……鳴雷さんのスケベ、も」
「鳴雷さんのスケベ……あの、これ何なんですか?」
「たまんねぇっ……!」
「何なんですか本当に」
今夜のオカズにさせてもらおう。となれば記憶を頼りにするより録音した方がいいかな。
「すいません、録音するんでもう一回言ってくれますか?」
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