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あぶないから (〃)
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本人が望むのは中性的な可愛らしい顔立ちだそうだ、だからスイは自分を醜いと評している。でも俺からすれば彼は決して醜くなんかない、美しい。俳優だとかも含め、今まで見た中で最高の塩顔イケメンだ。
「お、俺じゃダメって……何言ってんの、口説いてるみたいなこと言ってぇ」
「口説いてるんですよ」
「そんなぁ…………えへ」
いい反応だ、イケる! 口説き落とせるぞ! 愛に飢えているタイプの男子は反応が良くて可愛いからな、一人手に入れると癖になる。
(荒れた生活を送ってきたシュカたま、虐待同然の訓練を強要されたアキきゅん、愛されず傷付けられ続けたセイカ様……理不尽な大人達に顔も名前も奪われたカンナたん、家を飛び出しようやく見つけた恋人に粗雑に扱われたレイどの、彼らのは愛は特に深く強く重いのでそ。わたくしを離したくないという思いが痛いほど伝わってきて気持ちいいのでそ~)
半生を思うと心が痛むが、俺がこれから幸せにしてやるのだとやる気と責任が湧く。スイもその一人にしてやる、俺にベタ惚れし依存し幸せになるがいい!
「出会ったばかりでこんなことを言うと、真剣な気持ちなのかと疑ってしまうかもしれませんが……俺は本気であなたに惚れました。交際を申し込みます、スイさん。返事は今すぐである必要はありません、ホントは早く欲しいけど……頑張ってスイさんの気持ちが固まるの待ちます!」
「えっ、えぇ~? ホントにぃ? 本気でぇ? ナルちゃんみたいな人の理を外れたレベルのイケメンがぁ、アタシなんか…………ぁ?」
赤らんだ頬に手を添え、身体をくねらせて嬉しそうにしていたスイの表情がスッと冷たくなり、雄々しい手がソファの上にぽとりと落ちた。
「…………アンタ、フタちゃんの彼氏じゃなかった? えっどういうこと」
「あ、それは」
「あっ! そういえばフタちゃんもデカくて顔が怖い……なるほどそういうのがタイプってことね。気持ちは本当にすごく嬉しいんだけど浮気はダメよ? もっと早く出会いたかったなぁ」
優しいな。もっと怒るべきところじゃないのか?
「残念がるのはまだ早いぞぃすーちゃん、みっちゃんは恋人が十七人居る! はぁれむというヤツじゃ。不貞行為ではない、誰とも揉めん、安心して十八人目になるがよい」
「は?」
「ちょっ、コンちゃん!」
「なんじゃ、はよ言うとかんとまずいじゃろ」
「人に言われるのもダメなんだよこういうのは! 俺から話すべきなの! 今言おうと思ってたのに……!」
「……遅いんが悪い」
ぷい、と顔を背けられた。拗ねやがったな。
「す、すいません。今コンちゃんが言った通りなんです……俺、彼氏いっぱい居ます。あっ、もちろん一人一人に説明して、納得してもらった上での交際なので……ぇと、だからいいって訳じゃないとは思うんですけど、俺もみんなもそれがすごく楽しくて幸せで……すいません何言ったらいいか分かんなくて、ダラダラ喋っちゃって。スイさんに一目惚れしちゃったのは本当なのでっ、付き合えたらすごく大事にしますし楽しませてみせます! 考えてみてくれると嬉しいです」
「…………考えとくわ」
「ありがとうございます!」
脈アリ、だよな? ハーレム主という頭のおかしな存在だろうと、歳下だろうと、初めて現れた素の自分の見た目を好みと語る超絶美形を逃すのは悪手だと考えるだろう? 考えてくれ。
「……なんか変な雰囲気になっちゃったけど、霊視とかもう出来ないし今日のところは解散でいい?」
「あ、はい。ごめんなさい長居しちゃって」
「霊力回復したら知らせるから、また霊視して欲しくなったら言ってね。バイバーイ」
「はい。失礼します」
追い出された感じだな、と如月探偵事務所の看板を見つめながら思う。
「はぁあぁ~、どうしよぉ~!」
扉が薄いのか声が大きいのか、スイの声が聞こえてくる。扉に耳を当ててみたがその後は静かだった、せいぜい時々「ぅうぅ……」と悶えるような声が聞こえてくるばかりだ。もう独り言は期待出来ないだろう。
「……帰ろっか」
「うむ」
「もう夕飯の時間は過ぎている。早く帰らなければな」
「…………みつき」
きゅ、と裾を引っ張られる。こちらを見つめる荒凪の表情は変わらないし、目は見開かれていて感情が伝わってこない。
「ん?」
でも、声がいつもより小さい。裾を掴んでから話し始めるまでが長かった。
「……荒凪くんが気にすることじゃないんだよ」
スイを吹っ飛ばした、ミタマ曰く『罠』を気にしているのだろう。そう考えた俺は荒凪を慰めるため頭を撫でようとした、すると荒凪が慣れない足で慌てて後ずさろうとし、尻もちをついた。
「荒凪くん! 大丈夫?」
立ち上がらせるため手を伸ばす。荒凪はその手を取らず、自身の手を背後に回した。
「さわら、ないで」
変わらないトーンでの拒絶の言葉に、無意識に口からヒュッと音が漏れた。
「あぶない」
「……荒凪くん。大丈夫だよ、今まで手繋いで歩いてたろ?」
「あぶない」
「大丈夫、ほら手出して」
「わな、すー、ちがう……しぬ、みたま言った」
スイでなければ即死級の罠だったというミタマの話、それを荒凪は気にしているようだ。もしまた罠が発動したら、その対象が俺だったら──そう考えているのだろう、俺を傷付けたくないと思ってくれている。
「……僕達、あぶない。みつきあぶない」
「俺霊視とか出来ないから大丈夫だよ」
荒凪はぎこちない動きで首を横に振った。霊視以外にも罠の発動条件はあるかもしれない、今まで大丈夫だったからと言って今後も大丈夫とは限らない、そう考えているのだろう、俺もそう考えている。恐怖だってある、でもそれ以上に荒凪を独りにしたくない思いが強い。
「みつき、僕達、みつきすき」
「……! ありがとう。俺も荒凪くんのこと大好きだよ」
「みつき、やさし、あたかい、すき。だから、みつきあぶない、いや」
俺に危険が及ぶことはないと証明することも説得することも出来ない。だって、多分、荒凪の傍に居るのは本当に危ない。現にアキが倒れた。
「みつき……」
荒凪は一人で立ち上がった。シャツを持ち上げて現れた三本目四本目の腕を使って。
「…………だいすき」
口角を手で無理矢理持ち上げて、不格好な笑顔を作った。
「ばいばい」
四本の腕と二本の足で強引に柵を乗り越え、ビルから飛び降りた。
「お、俺じゃダメって……何言ってんの、口説いてるみたいなこと言ってぇ」
「口説いてるんですよ」
「そんなぁ…………えへ」
いい反応だ、イケる! 口説き落とせるぞ! 愛に飢えているタイプの男子は反応が良くて可愛いからな、一人手に入れると癖になる。
(荒れた生活を送ってきたシュカたま、虐待同然の訓練を強要されたアキきゅん、愛されず傷付けられ続けたセイカ様……理不尽な大人達に顔も名前も奪われたカンナたん、家を飛び出しようやく見つけた恋人に粗雑に扱われたレイどの、彼らのは愛は特に深く強く重いのでそ。わたくしを離したくないという思いが痛いほど伝わってきて気持ちいいのでそ~)
半生を思うと心が痛むが、俺がこれから幸せにしてやるのだとやる気と責任が湧く。スイもその一人にしてやる、俺にベタ惚れし依存し幸せになるがいい!
「出会ったばかりでこんなことを言うと、真剣な気持ちなのかと疑ってしまうかもしれませんが……俺は本気であなたに惚れました。交際を申し込みます、スイさん。返事は今すぐである必要はありません、ホントは早く欲しいけど……頑張ってスイさんの気持ちが固まるの待ちます!」
「えっ、えぇ~? ホントにぃ? 本気でぇ? ナルちゃんみたいな人の理を外れたレベルのイケメンがぁ、アタシなんか…………ぁ?」
赤らんだ頬に手を添え、身体をくねらせて嬉しそうにしていたスイの表情がスッと冷たくなり、雄々しい手がソファの上にぽとりと落ちた。
「…………アンタ、フタちゃんの彼氏じゃなかった? えっどういうこと」
「あ、それは」
「あっ! そういえばフタちゃんもデカくて顔が怖い……なるほどそういうのがタイプってことね。気持ちは本当にすごく嬉しいんだけど浮気はダメよ? もっと早く出会いたかったなぁ」
優しいな。もっと怒るべきところじゃないのか?
「残念がるのはまだ早いぞぃすーちゃん、みっちゃんは恋人が十七人居る! はぁれむというヤツじゃ。不貞行為ではない、誰とも揉めん、安心して十八人目になるがよい」
「は?」
「ちょっ、コンちゃん!」
「なんじゃ、はよ言うとかんとまずいじゃろ」
「人に言われるのもダメなんだよこういうのは! 俺から話すべきなの! 今言おうと思ってたのに……!」
「……遅いんが悪い」
ぷい、と顔を背けられた。拗ねやがったな。
「す、すいません。今コンちゃんが言った通りなんです……俺、彼氏いっぱい居ます。あっ、もちろん一人一人に説明して、納得してもらった上での交際なので……ぇと、だからいいって訳じゃないとは思うんですけど、俺もみんなもそれがすごく楽しくて幸せで……すいません何言ったらいいか分かんなくて、ダラダラ喋っちゃって。スイさんに一目惚れしちゃったのは本当なのでっ、付き合えたらすごく大事にしますし楽しませてみせます! 考えてみてくれると嬉しいです」
「…………考えとくわ」
「ありがとうございます!」
脈アリ、だよな? ハーレム主という頭のおかしな存在だろうと、歳下だろうと、初めて現れた素の自分の見た目を好みと語る超絶美形を逃すのは悪手だと考えるだろう? 考えてくれ。
「……なんか変な雰囲気になっちゃったけど、霊視とかもう出来ないし今日のところは解散でいい?」
「あ、はい。ごめんなさい長居しちゃって」
「霊力回復したら知らせるから、また霊視して欲しくなったら言ってね。バイバーイ」
「はい。失礼します」
追い出された感じだな、と如月探偵事務所の看板を見つめながら思う。
「はぁあぁ~、どうしよぉ~!」
扉が薄いのか声が大きいのか、スイの声が聞こえてくる。扉に耳を当ててみたがその後は静かだった、せいぜい時々「ぅうぅ……」と悶えるような声が聞こえてくるばかりだ。もう独り言は期待出来ないだろう。
「……帰ろっか」
「うむ」
「もう夕飯の時間は過ぎている。早く帰らなければな」
「…………みつき」
きゅ、と裾を引っ張られる。こちらを見つめる荒凪の表情は変わらないし、目は見開かれていて感情が伝わってこない。
「ん?」
でも、声がいつもより小さい。裾を掴んでから話し始めるまでが長かった。
「……荒凪くんが気にすることじゃないんだよ」
スイを吹っ飛ばした、ミタマ曰く『罠』を気にしているのだろう。そう考えた俺は荒凪を慰めるため頭を撫でようとした、すると荒凪が慣れない足で慌てて後ずさろうとし、尻もちをついた。
「荒凪くん! 大丈夫?」
立ち上がらせるため手を伸ばす。荒凪はその手を取らず、自身の手を背後に回した。
「さわら、ないで」
変わらないトーンでの拒絶の言葉に、無意識に口からヒュッと音が漏れた。
「あぶない」
「……荒凪くん。大丈夫だよ、今まで手繋いで歩いてたろ?」
「あぶない」
「大丈夫、ほら手出して」
「わな、すー、ちがう……しぬ、みたま言った」
スイでなければ即死級の罠だったというミタマの話、それを荒凪は気にしているようだ。もしまた罠が発動したら、その対象が俺だったら──そう考えているのだろう、俺を傷付けたくないと思ってくれている。
「……僕達、あぶない。みつきあぶない」
「俺霊視とか出来ないから大丈夫だよ」
荒凪はぎこちない動きで首を横に振った。霊視以外にも罠の発動条件はあるかもしれない、今まで大丈夫だったからと言って今後も大丈夫とは限らない、そう考えているのだろう、俺もそう考えている。恐怖だってある、でもそれ以上に荒凪を独りにしたくない思いが強い。
「みつき、僕達、みつきすき」
「……! ありがとう。俺も荒凪くんのこと大好きだよ」
「みつき、やさし、あたかい、すき。だから、みつきあぶない、いや」
俺に危険が及ぶことはないと証明することも説得することも出来ない。だって、多分、荒凪の傍に居るのは本当に危ない。現にアキが倒れた。
「みつき……」
荒凪は一人で立ち上がった。シャツを持ち上げて現れた三本目四本目の腕を使って。
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