冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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意外な相性の良さ (水月+ヒト・荒凪)

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狭いバスタブの中、長い魚の尾の下半身を折り曲げて、それでも入らない先端の方ははみ出させて、荒凪は窮屈そうに過ごしていた。

「荒凪くん!」

「水月……水月っ、起きた!」

「起きたよ、具合はどう?」

「……? 僕達? 僕達平気。危ないの水月」

「俺は大したことないよ、君が助けてくれたからね。荒凪くん、外這いずり回ってたろ? お腹とかボロボロになってないか心配だったんだ」

「大丈夫。水月、ごめんなさい。水月あんなに僕達要る知らなかった、僕達危ないけど、僕達居ない方が水月ダメって分かった」

「……ありがとう、俺の気持ち分かってくれて」

「僕達離れない、水月守る、絶対守る」

「ふふっ……俺が守ってあげたかったんだけどなぁ。荒凪くんの方が強いもんね。でもその姿色んな人に見られちゃうのはダメだから、そういう方面では俺に守らせてね」

「うん」

「……荒凪くん、雨降った後人魚に戻ったろ? あの後誰かに見られなかった?」

「変身解けた後、隠れた。多分大丈夫」

そういえば俺とミタマが見つけるまで裏路地に座り込んでいたな。荒凪が見つかったらまず悲鳴が上がるだろうし、こっそり写真を撮ったヤツが居たとしても作り物と扱われて大して話題にならないと思う。大丈夫、かな?

「……よかった。えらいね荒凪くん」

頭を撫でようとして、包帯まみれの自分の手を見て、やめた。

「コンちゃんとサキヒコくんはどこに居ます?」

「あの狐の方ですね。彼には私の部屋に入って欲しくないので一階で待機していただいています。油揚げが食べたいとうるさかったので寿司の出前を頼みましたよ」

「すいません……」

荒凪はいいのにミタマはダメなのか。人間の姿に化けていようと毛むくじゃらの獣は嫌いなんだな。

「いえ、いいんですよ。鳴雷さんは何食べます? ああ、荒凪さんの分は今買いに行かせてますからね」

「ありがとう。ヒトー」

「どういたしまして。ふふ……素直で可愛いですねぇ。鱗もイイ……鳴雷さん、化物を飼うならこういう子ばかりにしてください、狐とかじゃなく」

「化物とか飼うとか言わないでください、言葉選んでくださいよ……」

ヒトは爬虫類や両生類を飼育するほど好んでいる。なるほど荒凪を気に入る訳だ。荒凪の長く丸みのある下半身は平たい魚より蛇に似ているからな。ま、鱗の付き方や立派なヒレで蛇ではないことは一目瞭然だが。

「ヒトさん蛇とかだけじゃなくて魚の鱗も好きなんですね」

「好きです。あの美しい鱗、半透明のヒレ、ギョロっとした目玉……素晴らしい造形ですよ。荒凪さんも美しいヒレをお持ちですね、折り畳みが出来るとは狭いバスタブにはありがたい限りです。それに、ふふ、目つきもどこか魚らしくて……」

「で! す! よ! ね! 荒凪くんの目めっちゃ魚っぽくて可愛いですよね! 人間に変身しても目つきはこんな感じなんですよ、最高でしょ!」

「ええ。それにこの鱗が生えていないところの肌、どうせなら細かい鱗でも生えていた方がいいと思っていたんですが……触れてみると濡れたナスみたいな手触りでなかなか悪くない」

ヒトに頬を撫でられると、荒凪は口元を緩めてその手にすり寄った。

「俺はイルカみたいだと思ってたんですけど」

「私イルカ触ったことないので」

「今度水族館デートします?」

「いいですね。触れ合いコーナーが充実しているところがいいです」

俺はアニメかゲームとコラボしている水族館に行きたいな。水兵服を着たキャラグッズが出てたりして最高なんだ。まぁヒトと一緒だとあまりオタクっぽい言動は出来ないけれども。

「ヒトさーん! ヒトさーん? 人魚の餌買ってきましたー!」

ドンドンドン、と扉を叩く音。ヒトの部下の一人が荒凪の食事を買ってきてくれたようだ。俺も腹が減った、母が作ってくれているはずだから早く帰らないとな。

「今行きます! 少し失礼します、鳴雷さん荒凪さん」

ヒトが風呂場を去った。荒凪は機嫌良さげに「ごはん」と呟いている。お腹が空いていたのかな、可哀想に、俺は本当に情けない男だな。

「ただいま戻りました」

「……あ、おかえりなさいヒトさん」

帰ってきたヒトは小さめのクーラーボックスを持っていた。嫌な予感がする。

「…………あの、それなんですか?」

「荒凪さんのお食事です」

ヒトはクーラーボックスを床に置き、開く。中には氷と魚が大量に入っていた。

「何がお好みか分かりませんから、イルカやペンギンの餌の定番、アジを多めに……サバやイワシ、サンマも一応」

「おさかな?」

「はい、お魚です。新鮮ですよ、頭からですかね?」

「ダ、ダメですダメです!」

「えっ……でも尻尾からは喉に突っかかると聞いたことが」

「ペンギンに餌やるんじゃないんですよ!? 荒凪くんはナマモノ食べません!」

荒凪に生の物を食べさせると最終的に人間を食いかねないと秘書に脅されている。生野菜にすら気を付けているんだ、生魚なんて絶対にダメだ。

「え!? な、生魚丸々一匹しか口をつけないものと……数キロ食べるかと……」

「荒凪くん上半身は人間でしょう? だから普通に人間のご飯でいいんです」

「へぇー…………あの狐のせいですよ。あの狐、油揚げしか食べないから……つい、荒凪さんもイメージ通りの食事かと」

ヒトはすぐ他人に責任転嫁するなぁ。

「別に責めてませんよ、勘違いも仕方ありませんし」

「おさかな……」

「ん、荒凪くんダメだよ。これ生だから」

「焼きます? キッチン貸しますよ」

「ありがとうございます! 荒凪くん、お魚のお料理作ってくるからその間に身体乾かして変身しておいてくれる?」

「うん」

「ヒトさん、すいませんけどバスタオルとドライヤー荒凪くんに貸してあげてください。乾けば人に変身出来るので」

「乾けば? そうだったんですか……あの狐が教えておいてくれたら早く乾かしたのに。お風呂、水張り損ですよ」

「ごめんなさい」

「あなたはいいんですよ荒凪くん。好物でも聞けばよかったですね」

ヒトは荒凪の頭を撫でている、手が濡れることも構わずに。ヒトは本当に荒凪を気に入ったんだな……お互いにいい友人になってくれるといいな。
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