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お祭りの思い出達 (水月+荒凪・歌見)
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荒凪は濡れると人魚の姿に戻り、乾かすと人間に変身出来ること。荒凪の体液には肉体を溶かす作用があること。その他様々な注意事項を説明した。
「ふーん……生のもの食べさせるなとか、濡らすなとか、モグワイ思い出すなぁ」
「古いですな」
「俺は去年のクリスマスに見たばっかだぞ」
「まぁクリスマスになると放送したり配信したりはしますけど……」
「なんか幼いのは実年齢が見た目と違うからか?」
「人魚の姿だと割とスラスラ話しますぞ、人間の姿はまだ慣れてないみたいですな」
「いや、話し方とかじゃなくて言動が幼いだろあの子……手ぇ出すなよ?」
勘がいい。呪いの道具として荒凪が造られたのはごく最近だろうし、俺はもう手を出した。
「……おい? 出したのか?」
「………………ちょっとだけ」
「ちょっとだけもクソもないだろ! はぁーっ……たくお前…………もうノヴェムくんに会うなよ」
「心身共に子供のノヴェムくんに手ぇ出す訳ないでしょうが! 第一荒凪くんは年齢不明でそ、幼いってのは印象でしかありません! 身体は同い歳っぽいですし、そもそも人外ですぞ」
「……今後は俺がもう少し相手してやるから、これ以上手ぇ出すな」
「おっほぅ、どぅふふふ……ふへっ、ぐへへへへ」
「なんか言えよ」
まだまだ反論したいし、ちゃんと喜びを言葉で伝えたいとは思っている。パイセンがもっとわたくしに会いたいだけでわ~? なんて、からかったりもしてみたい。
「い、言います……言い、ぅへへへへへ」
「……何考えてニヤついてるのかちょっと想像つくのが嫌だ。見るな、胸とか」
嫌悪感を滲ませた目つきで俺を睨みながら上体を捻り、腕で胸を庇う。変質者を見かけた女性のような仕草だ、それを俺と出会わなければ自分の身体の魅力に気付くことがなかっただろう歌見がやっているというのが、イイ。
「くぅぅぅーっ……!」
「ビールのCMみたいな声出すな、なんなんだもう……俺もう帰るぞ、腹減ったし」
「食べて行かれませんのん?」
「連絡なしで来ても出すもんないだろ? 少しは親御さんの迷惑考えろよ、彼氏集めも程々にな」
歌見が床に置いた鞄を持ち上げたその時、プールへ繋がる扉が開いた。
「ななー」
ひょこ、と荒凪が顔を出す。まだ髪は濡れているが、しっかり足が生えている。置いてあった服を着ているが、髪を乾かしていないから肩の辺りがぐっしょり濡れている。
「みつき、言ってた。なかま、たまにあそびぃくる。なな、あそびきた?」
首を傾げる荒凪の耳はヒレ状のままだ。濡れた髪に触れている頬や首の一部には鱗が生えている。普段はちゃんと全身人間に化けているのに今日は中途半端なのは、歌見に早く会いたかったからだろうかなんて微笑ましい妄想をしてみる。
「いや、俺はちょっと様子を見に来ただけだよ」
「ちゅぴゃかぶや」
荒凪は部屋に飾ってあったお面を持った、俺が祭りの屋台で買ってやったチュパカブラの面だ。
「ん? あぁ、お面か。これ何だっけ」
「チュパカブラですよ」
「ちゅぴゃぱぷや」
歌見と祭りの思い出を話したいのかな。
「……チュパカブラ」
「ちゅぱぱぷりゃ」
「ふふっ」
俺にはあまり向けてくれない穏やかな笑顔だ。濡れているのも構わず荒凪の頭を撫でくり回し、歌見は幸せそうに頬を緩める。
「髪早く乾かさないと風邪引くぞ」
「僕達かぜしない」
「濡れたままだと身体が冷えるだろ? 冷えたら風邪を引きやすくなるんだ。水月、ドライヤーあっちだよな?」
「あ、はい」
「かぜしない」
「ドライヤー嫌いなのか? バカ言ってないでおいで。ほら手……うわ爪鋭っ! ちょ、ちょっと怖いな……気を付けろよ?」
「うん」
荒凪の手を引いて歌見はプールに戻って行った。なんだか取り残された気分だ、着いて行けばいいだろって? 誘われたいじゃないか、誘われていないのに行くのは図々しいじゃないか。
「…………」
数秒考えたが勇気が出ず、俺は歌見達を追いかけずに部屋に戻った。
「ただいまでそ~」
玄関に回って部屋に荷物を置き、料理中の母に帰宅を報告。
「おかえり水月、そろそろご飯出来るわよ。荒凪くんまだ来てないからちょっと様子見てきてくれる?」
「ほーい」
返事をしつつ横目でリビングの様子を見る。ソファに腰かけたアキとセイカがイチャついている。いや俺の思考が腐っているからとかじゃなくて、本当にイチャついてる。
(荒凪きゅんの様子見……学業とバイトをこなして暗くなってから帰ってきた息子ではなく、一日中家に居る方の息子とかに頼むべきでわ?)
たった今出てきたばかりのアキの部屋に戻る。当然荒凪の準備はまだ終わっていない。
「水月、どこ行ってたんだ?」
「へっ?」
「ボーッとしてないで早く手伝え。ドライヤーとタオルどっちやる?」
歌見は俺が着いてくるものと思っていたらしい。おいでとも来いとも言われず、誘われなかったんだと少し拗ねていたのがバカみたいだ。
「あ……じゃあ、タオルで」
タオル側の方が手が熱くて大変そうだろうから、そちらを選んだ。
「先輩近いですよ、荒凪くんの髪傷んじゃう」
「あぁ、悪い」
「自分のおぐしにもその対応を? ただでさえ傷みやすい染め方してるんですから」
「木芽ほどじゃない」
歌見の髪はアッシュグレー、レイの髪はピンク。レイの方が髪が明るく見える、脱色度合いで言えばレイの方が上なのだろう。
「髪細いしアイツのがヤバいだろ」
「現在進行形で傷み度ヤバいのは先輩ですよ、先輩手入れが雑なので」
「……水月はちゃんと手入れしてるのか?」
「ドライヤーの扱いは正直自信ありませんが、結構いいもの買い与えてもらってますしとぅるんとぅるんの髪ですよ。ま、元がいいってのもありますが」
「ムカつくなお前」
「言い出しておいてなんですが、こういうのはハルに聞いた方がいいですよ。教えるの好きみたいですし、聞けば結構世話焼いてくれると思いますけど」
歌見はドライヤー片手に自分の髪に触れている。
「…………サラサラの方が好きか?」
「歌見先輩は今のツンツンした髪が一番似合ってると思いますけど……好き嫌いじゃなく傷んでるのは心配です」
「そういう意味じゃっ……あぁ、まぁ、うん……気にしてみる。貧乏大学生だからあんまり期待するなよ」
そんな話をしながら荒凪の髪を乾かしていった。
「ふーん……生のもの食べさせるなとか、濡らすなとか、モグワイ思い出すなぁ」
「古いですな」
「俺は去年のクリスマスに見たばっかだぞ」
「まぁクリスマスになると放送したり配信したりはしますけど……」
「なんか幼いのは実年齢が見た目と違うからか?」
「人魚の姿だと割とスラスラ話しますぞ、人間の姿はまだ慣れてないみたいですな」
「いや、話し方とかじゃなくて言動が幼いだろあの子……手ぇ出すなよ?」
勘がいい。呪いの道具として荒凪が造られたのはごく最近だろうし、俺はもう手を出した。
「……おい? 出したのか?」
「………………ちょっとだけ」
「ちょっとだけもクソもないだろ! はぁーっ……たくお前…………もうノヴェムくんに会うなよ」
「心身共に子供のノヴェムくんに手ぇ出す訳ないでしょうが! 第一荒凪くんは年齢不明でそ、幼いってのは印象でしかありません! 身体は同い歳っぽいですし、そもそも人外ですぞ」
「……今後は俺がもう少し相手してやるから、これ以上手ぇ出すな」
「おっほぅ、どぅふふふ……ふへっ、ぐへへへへ」
「なんか言えよ」
まだまだ反論したいし、ちゃんと喜びを言葉で伝えたいとは思っている。パイセンがもっとわたくしに会いたいだけでわ~? なんて、からかったりもしてみたい。
「い、言います……言い、ぅへへへへへ」
「……何考えてニヤついてるのかちょっと想像つくのが嫌だ。見るな、胸とか」
嫌悪感を滲ませた目つきで俺を睨みながら上体を捻り、腕で胸を庇う。変質者を見かけた女性のような仕草だ、それを俺と出会わなければ自分の身体の魅力に気付くことがなかっただろう歌見がやっているというのが、イイ。
「くぅぅぅーっ……!」
「ビールのCMみたいな声出すな、なんなんだもう……俺もう帰るぞ、腹減ったし」
「食べて行かれませんのん?」
「連絡なしで来ても出すもんないだろ? 少しは親御さんの迷惑考えろよ、彼氏集めも程々にな」
歌見が床に置いた鞄を持ち上げたその時、プールへ繋がる扉が開いた。
「ななー」
ひょこ、と荒凪が顔を出す。まだ髪は濡れているが、しっかり足が生えている。置いてあった服を着ているが、髪を乾かしていないから肩の辺りがぐっしょり濡れている。
「みつき、言ってた。なかま、たまにあそびぃくる。なな、あそびきた?」
首を傾げる荒凪の耳はヒレ状のままだ。濡れた髪に触れている頬や首の一部には鱗が生えている。普段はちゃんと全身人間に化けているのに今日は中途半端なのは、歌見に早く会いたかったからだろうかなんて微笑ましい妄想をしてみる。
「いや、俺はちょっと様子を見に来ただけだよ」
「ちゅぴゃかぶや」
荒凪は部屋に飾ってあったお面を持った、俺が祭りの屋台で買ってやったチュパカブラの面だ。
「ん? あぁ、お面か。これ何だっけ」
「チュパカブラですよ」
「ちゅぴゃぱぷや」
歌見と祭りの思い出を話したいのかな。
「……チュパカブラ」
「ちゅぱぱぷりゃ」
「ふふっ」
俺にはあまり向けてくれない穏やかな笑顔だ。濡れているのも構わず荒凪の頭を撫でくり回し、歌見は幸せそうに頬を緩める。
「髪早く乾かさないと風邪引くぞ」
「僕達かぜしない」
「濡れたままだと身体が冷えるだろ? 冷えたら風邪を引きやすくなるんだ。水月、ドライヤーあっちだよな?」
「あ、はい」
「かぜしない」
「ドライヤー嫌いなのか? バカ言ってないでおいで。ほら手……うわ爪鋭っ! ちょ、ちょっと怖いな……気を付けろよ?」
「うん」
荒凪の手を引いて歌見はプールに戻って行った。なんだか取り残された気分だ、着いて行けばいいだろって? 誘われたいじゃないか、誘われていないのに行くのは図々しいじゃないか。
「…………」
数秒考えたが勇気が出ず、俺は歌見達を追いかけずに部屋に戻った。
「ただいまでそ~」
玄関に回って部屋に荷物を置き、料理中の母に帰宅を報告。
「おかえり水月、そろそろご飯出来るわよ。荒凪くんまだ来てないからちょっと様子見てきてくれる?」
「ほーい」
返事をしつつ横目でリビングの様子を見る。ソファに腰かけたアキとセイカがイチャついている。いや俺の思考が腐っているからとかじゃなくて、本当にイチャついてる。
(荒凪きゅんの様子見……学業とバイトをこなして暗くなってから帰ってきた息子ではなく、一日中家に居る方の息子とかに頼むべきでわ?)
たった今出てきたばかりのアキの部屋に戻る。当然荒凪の準備はまだ終わっていない。
「水月、どこ行ってたんだ?」
「へっ?」
「ボーッとしてないで早く手伝え。ドライヤーとタオルどっちやる?」
歌見は俺が着いてくるものと思っていたらしい。おいでとも来いとも言われず、誘われなかったんだと少し拗ねていたのがバカみたいだ。
「あ……じゃあ、タオルで」
タオル側の方が手が熱くて大変そうだろうから、そちらを選んだ。
「先輩近いですよ、荒凪くんの髪傷んじゃう」
「あぁ、悪い」
「自分のおぐしにもその対応を? ただでさえ傷みやすい染め方してるんですから」
「木芽ほどじゃない」
歌見の髪はアッシュグレー、レイの髪はピンク。レイの方が髪が明るく見える、脱色度合いで言えばレイの方が上なのだろう。
「髪細いしアイツのがヤバいだろ」
「現在進行形で傷み度ヤバいのは先輩ですよ、先輩手入れが雑なので」
「……水月はちゃんと手入れしてるのか?」
「ドライヤーの扱いは正直自信ありませんが、結構いいもの買い与えてもらってますしとぅるんとぅるんの髪ですよ。ま、元がいいってのもありますが」
「ムカつくなお前」
「言い出しておいてなんですが、こういうのはハルに聞いた方がいいですよ。教えるの好きみたいですし、聞けば結構世話焼いてくれると思いますけど」
歌見はドライヤー片手に自分の髪に触れている。
「…………サラサラの方が好きか?」
「歌見先輩は今のツンツンした髪が一番似合ってると思いますけど……好き嫌いじゃなく傷んでるのは心配です」
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