冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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アイドルの爪事情 (〃)

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ボートのアトラクションは想像以上に楽しかった。ホラーハウスの時と同様、ホラーの定石を外さない。単純に驚かせ続けるだけでは意味がない、空白の時間があってこそホラーは成り立つ。微かな物音や小物の動きで責めてきたのもよかった、緊張が持続した。そして程よいところでやってくる脅かし……! ホラーとして優秀だった。

「楽しかったな!」

「まだ心臓バクバクしてるよ~……何回か乗ってるけど慣れないなぁ。みぃくんこういうののが好きなんだ? イキイキしてるね」

「そうか? 落ち着いて見れたし、見れたもんが上質だったからな」

「ふーん……? 落ち着いたのがいいのかぁ。ジェットコースター全部乗ったら、みぃくん好きそうなヤツ回ろうねっ☆」

「あぁ、あと二個だっけ?」

これから行くのはVRを使った室内ジェットコースター。遊園地のテーマからして映像はどうせホラーなのだろう、期待は出来る。

「そうそう、ハロウサランドで二番目に怖いとされてる……僕的には二番目に面白い、ジェットコースター!」

「カミアがジェットコースター好きとはなぁ……カンナも好きなのかな?」

「分かんない、ヅラぶっ飛ぶから今は嫌いだと思う」

「そ、そうか……」

カンナはカツラをちゃんと固定していると思うけれど、帽子やマスクすら外させられるくらいだから不安はある。頭を撫でられることすら嫌がるんだ、ジェットコースターなんて乗りたがらないだろう。

「元々は……僕達、ずっと忙しくて、遊園地に遊びに行く暇なんかなかったんだぁ。子役とかならロケで来れたかもだけど、僕達ジュニアアイドルっていう結構コアな感じだから」

「確かにテレビで子供のアイドルは見たことないなぁ」

「でしょ」

「俺も子供の頃来た覚えはないな」

「もしかして僕と来たの初めてっ?」

俺は何も悪くないはずなのに、嬉しそうな顔で聞いてくるカミアに罪悪感を覚えた。

「いや……デートでは前にフタさんと来たんだ」

「そっかぁ。フタさん……あのでっかいぴょこぴょこした人だよね?」

ぴょこぴょこ? くせっ毛のことか?

「高校生の誰かかと思ってたけど、あの人かぁ。あの人、遊園地とか好きなの?」

「あぁ、知り合いにチケットもらったとかで」

「ふーん……そっかぁ、僕と来たのが初めてじゃないんだ」

「残念そうな顔するなよ……その前にも一人で何回か行ってるし」

「ソロ遊園地? みぃくん勇気あるね~。ジェットコースター苦手なのに遊園地好きなの?」

「あー……ほら、グッズ目当てに……」

「なるほど! ふふっ、みぃくんグッズとか集めちゃうタイプなんだ」

遊園地とコラボしたアニメなどの現地限定グッズを目当てにしていたなど、あまり言いたくない。オタクであることを知られたくないんだ、俺は。

「僕のグッズは集めてくれないの?」

「ぬいぐるみは飾ってるよ」

「僕があげたヤツじゃん! あ、でも飾ってくれてるのは嬉しい……どこに飾ってるの?」

「机だよ」

スマホを取り出し、机を映した写真を見せる。机の上には公式のカミアぬいぐるみ、それをカミアが改造して作ったカンナぬいぐるみ、レイにもらったクマのぬいぐるみが並んでいる。

「わ、ほんとだ! やっぱりお兄ちゃんいい出来だよねっ、超可愛い! 僕天才☆」

「カミアの家にもあるのか? カンナぬい」

「ないよ。お母さんに見つかったら面倒臭いもん」

「そうか……」
 
「このクマさん何?」

今気付いた、クマを指したカミアの爪にマニキュアが塗られていることに。しまった、こういうものはすぐに褒めなければならないのに……このままスルーするよりは今更でも言った方がいいだろう。カミアとのデートは貴重なのに失態だな。

「レイにもらったヤツだよ」

「へー、あの子かぁ。あ、なんでぬいぐるみ撮ってあるの?」

「カミアのぬいぐるみが届いた日に撮って、カンナに見せようと思ってたけど忘れてたヤツ」

「あははっ、お兄ちゃんにも見せてあげてよ~」

「明後日あたり見せてみるよ」

「どんな反応するかなぁ……ふふっ、ぁ、着いたね。並ぼっ」

カミアに手を引かれて屋内へ。長蛇の列を横目に気まずさを感じながら数分待ちの列に並んだ。

「……なぁ、カミア。ついさっき気付いたんだけどさ、今日マニキュア塗ってるんだな。可愛いよ、また明るいところでじっくり見せてくれるか?」

遊園地の屋内施設というのはどこも薄暗い。微かな光も反射するカミアのキラキラ輝く瞳ならまだしも、爪は流石によく見えない。

「え? 塗ってないけど……」

「……えっ? でもさっき確かに、なんか爪とほぼ同じ色の……見たんだけど」

「ベースコートなら塗ってもらったけど、それかなぁ?」

「…………マニキュアとは、違うの?」

「マニキュアの下地として塗るヤツ……だったかな? 滑らかさの演出と、爪の保湿? のためにベースだけ塗ってるんだ。多分」

「多分って、自分の爪だろ?」

「僕が選んだり塗ったりした訳じゃないもん」

今朝カミアに会った時に見かけた、カミアをちょいちょいと弄り回していた数人の女のどれかが塗ったのかな。

「服もメイクも全部おまかせ。お母さ……マネージャーが口出すことはあるみたいだけど、よく知らない。色々考えてみたいとは思ってるんだけど、僕の意見なんていらないって感じだし。僕が言った時は却下されたのに、別の人が言ったら通ったなんてことザラでさ……あ、ごめんね、愚痴っぽくなっちゃったや」

「いいよ、愚痴でも何でもカミアが話してくれるなら何でも聞きたい。知らない世界の話だから単純に好奇心もあるしな」

「……そ? ありがと……でも、言わないように気を付けるよ。僕がやだもん、みぃくんに愚痴聞かせるの。もっと楽しい話とか、みぃくんの好きなことの話したいな。みぃくんマニキュア塗ってる子好き? 今度塗ろうかな……何色が好きとかある?」

「特別マニキュアフェチとかじゃないけど、俺のためにオシャレしてくれたのは何でも嬉しいよ。色なぁ……色か、似合うかとか、服に合うかどうかが重要じゃないか?」

「結局答えてない凡庸な回答~……」

「本音なんだけどな……そうだな、カミアなら目に合わせて宇宙塗りとかしてみてもいいんじゃないか?」

「自分で出来ないヤツ出してくるじゃん。ネイルアートの域だよそういうのは」

そうなのか……俺が宇宙をイメージした色の重ね方を試したのはレジンでストラップを作っている時だったからな、あまり難しさは感じなかったけれど爪となると難易度が変わってくるのかもしれない。

「逆にさ、みぃくんは爪塗ったりしないの?」

「……ハンドクリームくらいかな」

「それ塗ってるんじゃなくて手と一緒に塗れてるだけじゃん……でもみぃくん爪綺麗だし、効果出てるのかもね」

「まぁ、爪の手入れは欠かしてないぞ。色んな柔肌に触れる手だからな」

「…………もぉ! みぃくんのえっち!」

一拍置いて俺の言葉の意味に気付いたカミアは顔を真っ赤にして照れ、怒った。気付くまでの間も、顔色の変わり具合も、言葉選びも、何もかもが可愛くて虐めたくなる。
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