冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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アイドルとパレード (〃)

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フリーフォールにバイキング、フタと遊園地に行った時には気分が悪くなってしまったアトラクションも、今なら平気だ。

「ぅう……」

「だ、大丈夫? みぃくん……さっきはもう絶叫系慣れたって言ってたじゃあんっ、まだダメじゃん……」

「へ、平気……大丈夫」

そう、平気だ。吐きそうになったあの時に比べれば、少しの立ちくらみで済んだ今回は全くの無傷と言っても過言ではない。

「パレード始まるまでまだ結構あるから、ちょっと休んでから見に行こっか」

「悪いな……一番広い通りだっけ? いい場所取れるかな」

プレミアムパスを見せれば順番抜かしが可能なアトラクションとは違い、パレードは道を練り歩くものをただ眺めるだけだ。眺める位置にパスの値段は関係ない。

「まだちょっと早めだからみんな並んでないはず……あれ、割と居るね。でもいい場所はまだ空いてるよっ☆ こっちこっち!」

この遊園地に詳しいカミアのおかげで最前列で見られそうだ。

「わ~……キラキラ……」

色とりどりの電飾で飾り付けられた車、それに乗る着ぐるみ、周囲で車に着いていきながらダンスを披露する特殊な衣装の人間達。ま、よくある遊園地のパレードだ。

「すごい……いつもとちがう……」

放水が行われている訳でもないから何が夏季限定なのか分からないが、カミアは恒常のパレードとの違いが分かっているようだ。

(……まぁ、綺麗ですけど)

正直俺には良さが分からない。光ってる、凝ってる、綺麗、そういう感想は抱けるけれどカミアのように夢中になって眺めるほどの興味や感動はない。

「あっハロウサ! みぃくんハロウサっ、基本のハロウサだよ!」

これまでも何体もウサギの着ぐるみが通ったが、包帯を巻いていたり縫い目があったり腐ったような色をしていたり、どれもお化けの仮装をしたウサギだった。だが今目の前を通っていくのはシンプルなウサギ、素のハロウィンウサギのようだ。

「わぁ~……!」

色んなコスプレ衣装を見ると一周回って素の姿がよくなる。その気持ちは分かる気がする。

(分かりますぞ。わたくしのアニメ界の最推しもチャイナ服や魔女っ子コス、人魚などなど様々なフィギュアが発売されておりわたくしもそれをかき集めて参りましたが……結局、あの真っ赤なプラスーが一番! まぁ制服も好きですがやっぱプラスー!)

カミアはアイドルだから色んな衣装を着ているだろうけど、代表的な衣装などはあるのだろうか? デビューシングルの衣装? 一番ヒットした曲の衣装? これはカミアよりもハルに聞いた方がそれらしい答えが返ってきそうだな。

「可愛い~! ハロウサ様~!」

ぶんぶんと手を振るカミアの様子は、カミアのライブで見たハルの姿とよく似ている。推しも誰かを推している、という訳か……

「終わりか?」

電飾まみれの車と着ぐるみの列の最後を見送り、カミアに尋ねる。

「うんっ、すっごくよかったぁ~」

「見れてよかったな、仕事潰れたの喜んでいいのかよく分かんないけどさ」

「うん……この時間だともう乗れるアトラクションほとんどないし、最後に観覧車乗って帰ろっ。観覧車は閉園までずーっと乗れるんだよ☆」

「へぇ、今度は夜景が楽しめるのか」

「昼乗った時、みぃくん外見てたっけ?」

カミアのことばかり見ていたし、考えていた。そういえば観覧車からの景色のことをあまり覚えていない、夜景と見比べるというのもオツなものだろうに。

「僕もあんまり見てなかったかも……へへ」

「流石に夜景は見ようか」

「そうだね」

「俺の顔もそろそろ見飽きただろ?」

「全然! 美人は三日で飽きるなんて嘘だよね」

「ただの美人なら飽きるんじゃないか? 俺は三日じゃ見慣れるのも難しいほどの超絶美形だからな」

「あははっ、冗談になってないよ~。ほんとに見慣れないもん、みぃくん……いつ見ても何回見ても何時間見ててもドキドキする」

「え……そ、そうか」

冗談のつもりで言ったことだから、頬を赤らめて真面目な態度で返されると戸惑ってしまうし、こちらも照れてしまう。

「……行こうか」

甘酸っぱく気まずい雰囲気の中、今度は俺が手を引いて観覧車へ向かった。当然プレミアムパスは最後まで有効で、早めにゴンドラに乗り込むことが出来た。

「…………ねぇみぃくん、隣座っていい?」

「俺はいいけど……お前はいいのか? 昼は前後から見えるかもって言ってただろ」

「うん……でも、暗いからよく見えないかもしれないし」

「結構見えるぞ」

窓に顔を押し付けてみると、隣のゴンドラの中が少し見えた。大学生くらいの男女カップルだろうか。

「…………キスとか見られたら別だけどさ、隣に座ってたとか、ちょっと手繋いで歩いたとか、そんなことじゃスキャンダルになったりしないんだよ。女の子じゃ、ないから」

俺の隣に腰を下ろしたカミアはまた外を見ていない、俯いている。

「複数人の飲み会帰りでも端っこ歩いてたら隣の女の子と二人きりみたいに切り抜かれて報道されちゃう人も居るけど、男相手なら結構大丈夫なんだよ。ネットとかじゃちょっと話題になるかもだけど、話題にしてる人達も本気じゃないし、しっかりしたスキャンダルにはならないよ」

「……そうか」

「うん」

「ならよかった。ちょっとイチャつくくらいなら外でやってても大丈夫なんだな」

「……うん。みぃくん、嬉しい?」

「あぁ、まぁ、そりゃ俺のせいでカミアの仕事減っちゃう可能性下がったんだし……大丈夫そうならもっと早く言ってくれよ、そしたら今日もっと堂々とイチャつけたのに」

「だって……やだったんだもん。恋人らしいことしてても恋人同士にあんまり見えないって。そりゃメリットもあるけど、でも……」

「カミア……」

「…………ごめんねっ、面倒臭いこと言って。最後の観覧車なんだし楽しまなきゃね」

窓の外を見始めたカミアの太腿にそっと手を置く。するとカミアは俺の顔も手も見ないまま組んでいた手をほどき、俺の手に手を重ねた。

「……みぃくん外見てる? すごく綺麗だよ」

「あぁ、見てるよ」

俺も今度こそカミア越しにではあるが窓の外を眺めている。もう動いてはいないようだが、光までは消えていない様々なアトラクションが夜の闇を照らしている。見下ろしているだけで今日の思い出が蘇る、素晴らしい景色だ。

「……楽しかったな、今日」

「うん……最初からもう一回やり直したいくらい」

「何か未練あるのか?」

「ううん、楽しかったからもう一回やりたいだけ」

「……そっか。うん、確かに……もう一回。また今度来ようって話したけど、その時はその時で、今日とは違うもんな」

それが思い出というものだ。過ぎ去ったからこそ美しい……なんてカッコつけるつもりはない、楽しかった経験は何度でも味わいたい。思い返すという意味ではなく、体験したいという意味で。

「もうすぐ頂上だね。今度は素直に景色楽しもっか」

「俺はキスしたいなぁ」

「夜の観覧車でってのはさっきよりロマンチックだけどねー……てっぺんからの夜景も見たいから、また後で、本当に二人きりになった後でねっ☆」

そう言うとカミアは立ち上がり、窓に張り付いた。無邪気な子供のように夜景を楽しむ彼の隣に立ち、ゴンドラが頂点に到達したその時、カミアの頬に唇をそっと触れさせた。
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