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私は──を願いかけたのに (〃)
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不公平だと喚く俺達を鬱陶しがりながら、シュカは俺達にも一切れずつ分けてくれた。なんだかんだ優しいのだ。
「くれるんやったら初めっからくれたええのに」
「リュウ、しー……そういうとこが可愛いんだよシュカは。んー、うま。ありがとうなシュカ」
「いえ……ありがとうございます、分野さん」
「こちらこそ、詫びをさせてくれてありがとうなのじゃ」
ピザを持ったまま電車に乗る訳にはいかない。俺達は駅前の広場のベンチに座った。まぁ、シュカは一切れずつしか分け与えてくれなかったから、彼以外はただ待っているだけの時間だったけれど。
「……なぁ、シュカ」
「はい?」
「ちょっとスマホ見てくれ」
シュカは怪訝な顔をしながらも自分のスマホを持った。ロック解除をするまでもなく彼は俺が送ったメッセージを見た。
『お母さんのことお願いしなくていいのか?』
ピザを咥えたままシュカは深いため息をつく。ジロ、と俺を睨みながら指紋認証を済ませると返信を始めた。送られるのを待つまでもなくシュカの画面で文を読む。
『そんなこと頼めるわけないでしょ』
「……なんで?」
「はぁ……メッセならメッセ、話すなら話す、どっちかにしたらいかがです」
『お母さん治してって頼むかと思った』
通知音を鳴らしたスマホを鬱陶しそうに睨むと、その直後シュカは目を丸くした。
「…………っ、ふふっ」
「シュカ……?」
「……あなたはつくづく善良ですね」
「え……? いや……そうでもないと思うけど」
「……………………嫌になる」
小さく呟くとシュカは立ち上がり、ピザの空き箱を潰した。
「えっ、お、おいシュカ?」
「食べ終わったん? 行こか。しぐ、行くで」
リュウは頷くカンナに手を差し伸べる。
「ん? なんや、とりりん。待たせといてえらい先々行くやん。ほんま自己中やわぁ」
「シュカ! 待てよ!」
「ぁ…………みぃくん……」
「あー、もう追っかけなしゃあない。行くでしぐ」
空き箱をゴミ箱に叩き込み、シュカは一人改札を抜ける。
「待てって……シュカ!」
人混みをかき分け、ホームで立ち止まったシュカの腕を掴む。彼はなんてことないような顔で振り返り、俺を見つめた。
「シュカ……俺…………俺、不快にさせた……よな。ごめん」
「……不快?」
「よく知らないのにお母さんのこと頼めばとか、軽々しく言って……それで、俺達置いてったんだと思ったんだけど…………違ったのか?」
「私が……いえ、何でもありません。すいません、子供っぽい真似をして」
「……シュカ、何か言いたいことあるなら言ってくれ。そんな苦しそうな……泣きそうな顔、してて欲しくないよ」
「そんな顔してません、あなたもメガネかけますか?」
「…………シュカ」
「……泣きそうなのはあなたの方ですね。そんな顔しないでくださいよ、あなたが傷付くことなんて何もない」
「嫌になるって……シュカ、俺のこと……嫌いに」
「なってませんよ、そういう意味じゃない。分かりませんかね、綺麗なものや可愛いものを見ていると……嫌になる」
「……? 嫌になったんだろ? 俺のこと」
「違う……違うんですよ、そういう話じゃなくて……私…………はぁ……ごめんなさい、何も上手く話せません。話したくない……ごめんなさい、少し一人にしてください」
「…………一緒に帰らないのか? ほんの一駅も……嫌?」
「……そうですね。一緒には帰りましょうか。一人で考えるのはその後にします」
「話せそうになったら話してくれよ? メッセでも電話でもいいから」
パタパタと足音が近寄ってくる。
「居ったぁ! もぉ~……何でそんな端寄っとるん、見つけんの難儀したわ」
「ぁ、リュウ……悪い、話してたから端寄らなきゃと思って」
「……みーくん」
ぎゅ、とカンナが俺の腕に抱きつく。これまでカンナに抱きつかれていたリュウは腕をぶるぶると振り、眉尻を下げて笑った。
「……電車来ましたよ」
そんな俺達を横目で睨み、シュカは止まったばかりの電車へと向かう。
「…………えらいヘソ曲げとるな」
「倒れ……の、恥ず……し、のか……な?」
「いや、うーん……まぁ、あんまり触らないでやってくれ。俺がどうにかするよ」
「おー、よろしゅう頼むわ」
普段ならシュカをからかい、煽り、おちょくり倒しているだろうリュウが大人しくしている。それどころか俺があまり構えていないカンナに構ってやってくれている。
(ほんと空気読める子ですな、これぞ真のコミュ強。しごでき)
内心リュウを褒めたたえつつ、シュカの腰を抱く。シュカは疎ましそうに俺を見たが、俺の服の裾をきゅっと掴んだ。
(シュカたまがツン強めのツンデレなのは分かっていますが、これは一体……?)
さっきからシュカのことがよく分からない。いや、それも当然か、上手く話せないだとか話したくないだとか一人にしろだとか、明らかにシュカにも自分の感情がよく分かっていない。本人が言語化出来ずにいることを他人が汲み取るなんて無理だ、少なくとも俺には。
「…………愛してるよ、シュカ」
気持ちが少しでも和らげばと祈って、本心からの言葉を囁く。俺の服を強く握り締めて俯いた仕草が何を表しているのか、予想すら付かなかった。
「くれるんやったら初めっからくれたええのに」
「リュウ、しー……そういうとこが可愛いんだよシュカは。んー、うま。ありがとうなシュカ」
「いえ……ありがとうございます、分野さん」
「こちらこそ、詫びをさせてくれてありがとうなのじゃ」
ピザを持ったまま電車に乗る訳にはいかない。俺達は駅前の広場のベンチに座った。まぁ、シュカは一切れずつしか分け与えてくれなかったから、彼以外はただ待っているだけの時間だったけれど。
「……なぁ、シュカ」
「はい?」
「ちょっとスマホ見てくれ」
シュカは怪訝な顔をしながらも自分のスマホを持った。ロック解除をするまでもなく彼は俺が送ったメッセージを見た。
『お母さんのことお願いしなくていいのか?』
ピザを咥えたままシュカは深いため息をつく。ジロ、と俺を睨みながら指紋認証を済ませると返信を始めた。送られるのを待つまでもなくシュカの画面で文を読む。
『そんなこと頼めるわけないでしょ』
「……なんで?」
「はぁ……メッセならメッセ、話すなら話す、どっちかにしたらいかがです」
『お母さん治してって頼むかと思った』
通知音を鳴らしたスマホを鬱陶しそうに睨むと、その直後シュカは目を丸くした。
「…………っ、ふふっ」
「シュカ……?」
「……あなたはつくづく善良ですね」
「え……? いや……そうでもないと思うけど」
「……………………嫌になる」
小さく呟くとシュカは立ち上がり、ピザの空き箱を潰した。
「えっ、お、おいシュカ?」
「食べ終わったん? 行こか。しぐ、行くで」
リュウは頷くカンナに手を差し伸べる。
「ん? なんや、とりりん。待たせといてえらい先々行くやん。ほんま自己中やわぁ」
「シュカ! 待てよ!」
「ぁ…………みぃくん……」
「あー、もう追っかけなしゃあない。行くでしぐ」
空き箱をゴミ箱に叩き込み、シュカは一人改札を抜ける。
「待てって……シュカ!」
人混みをかき分け、ホームで立ち止まったシュカの腕を掴む。彼はなんてことないような顔で振り返り、俺を見つめた。
「シュカ……俺…………俺、不快にさせた……よな。ごめん」
「……不快?」
「よく知らないのにお母さんのこと頼めばとか、軽々しく言って……それで、俺達置いてったんだと思ったんだけど…………違ったのか?」
「私が……いえ、何でもありません。すいません、子供っぽい真似をして」
「……シュカ、何か言いたいことあるなら言ってくれ。そんな苦しそうな……泣きそうな顔、してて欲しくないよ」
「そんな顔してません、あなたもメガネかけますか?」
「…………シュカ」
「……泣きそうなのはあなたの方ですね。そんな顔しないでくださいよ、あなたが傷付くことなんて何もない」
「嫌になるって……シュカ、俺のこと……嫌いに」
「なってませんよ、そういう意味じゃない。分かりませんかね、綺麗なものや可愛いものを見ていると……嫌になる」
「……? 嫌になったんだろ? 俺のこと」
「違う……違うんですよ、そういう話じゃなくて……私…………はぁ……ごめんなさい、何も上手く話せません。話したくない……ごめんなさい、少し一人にしてください」
「…………一緒に帰らないのか? ほんの一駅も……嫌?」
「……そうですね。一緒には帰りましょうか。一人で考えるのはその後にします」
「話せそうになったら話してくれよ? メッセでも電話でもいいから」
パタパタと足音が近寄ってくる。
「居ったぁ! もぉ~……何でそんな端寄っとるん、見つけんの難儀したわ」
「ぁ、リュウ……悪い、話してたから端寄らなきゃと思って」
「……みーくん」
ぎゅ、とカンナが俺の腕に抱きつく。これまでカンナに抱きつかれていたリュウは腕をぶるぶると振り、眉尻を下げて笑った。
「……電車来ましたよ」
そんな俺達を横目で睨み、シュカは止まったばかりの電車へと向かう。
「…………えらいヘソ曲げとるな」
「倒れ……の、恥ず……し、のか……な?」
「いや、うーん……まぁ、あんまり触らないでやってくれ。俺がどうにかするよ」
「おー、よろしゅう頼むわ」
普段ならシュカをからかい、煽り、おちょくり倒しているだろうリュウが大人しくしている。それどころか俺があまり構えていないカンナに構ってやってくれている。
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内心リュウを褒めたたえつつ、シュカの腰を抱く。シュカは疎ましそうに俺を見たが、俺の服の裾をきゅっと掴んだ。
(シュカたまがツン強めのツンデレなのは分かっていますが、これは一体……?)
さっきからシュカのことがよく分からない。いや、それも当然か、上手く話せないだとか話したくないだとか一人にしろだとか、明らかにシュカにも自分の感情がよく分かっていない。本人が言語化出来ずにいることを他人が汲み取るなんて無理だ、少なくとも俺には。
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