冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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大切な傷跡 (スイ・サキヒコ・リュウ・カサネ・ミフユ・ミタマ)

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ノヴェムにはまだイジメに対抗するだけの力がないからと説明し、アキには何とか納得してもらった。ノヴェムは今、アキの膝の上でトーストを齧っている。俺は立ち食い。というかほぼ全員立ち食い。だって席ないもん。

「……ねぇ唯乃、ノヴェムくん昨日泊まったの?」

「ええ」

「…………ネイは何してんの?」

「さぁ、知らないわ」

「はぁ……私アイツ嫌い」

「ノヴェムくんは何も悪くないし放っとけないでしょ」

「そうだけどぉ……」

座って食べているのは母と義母、ノヴェムを膝に乗せたアキと、他の者より立っているのが苦手なセイカ、そしてミフユに甘やかされ慣れたネザメだ。要するに、普段の俺の席をネザメに譲った形だな。

(椅子もう何脚かは用意出来なくはないんですが、朝の忙しい時にパッと食える朝飯のためにそれするってのも、ちょっと)

爪楊枝が刺さった、レタスとハムを丸めたものを一つ食べる。マヨネーズが欲しいところだ。

「ね、ナルちゃん。その子の親って……ネイさんなのよね?」

「はい、見ての通り」

「見ての通りって言われても、髪色くらいしか共通点見つけれてないけど……あの人、どうしたの?」

「昨日、じゃないや。一昨日襲ってきた死体について調べてくれてるはずですけど……連絡は、ないですね」

「…………無事?」

「……さ、流石に警察には手ぇ出さないでしょ。警察って身内殺し出た時のやる気、普段の数百倍なんですから。警察殺し黙殺させられるような組織、リアリティないですよ」

ネイの身の危険は案じていなかった。大人だし、警察だし、死体についての捜査となれば大人数が集まるだろうし。

「だってアイツ、死体動かせるじゃない……一昨日襲ってきた時だって殺す気満々だったし。職場行って適当に情報消した後、詳しく検死する必要もない分っかりやすい事故死か自殺で死体片付ければ完璧じゃない?」

「………………そん、な、いや……そんな。サ、サキヒコくんっ」

「私に聞かれても困る」

「コンちゃんは……」

「動けるまで回復したようだが、水月の出発寸前まで像の中で休むと言っていたぞ」

ネイの安否はミタマに占ってもらおう。メッセージを送ったところで、スイの最悪の想像通りネイが動く死体に変えられていたら返信があったかどうかでは安否確認にならない。

「水月、どないしたん? 顔色悪いで」

「……ちょっと喉つまってたんだ。もう大丈夫だよ」

「ちゃんと噛みやぁ」

朝食を食べ終えて、着替えなどの支度を済ませ、出発直前になるまでの時間を酷く長く感じた。普段なら忙しさのあまり三十分が五分程度にしか感じないのに。

「ぅうぅ…………こんな朝早くから学校行くなんてぇ……」

「それが当然だ繰言二年生! 体調不良でもないのに欠席などミフユは許さん!」

「お腹痛くなってきた……」

「嘘をつけ! 第一、鳴雷一年生の家にしばらく泊まることになると分かっていたにも関わらず制服を持ってこないなんてどういうつもりだ! 私服登校は本来なら許されることではないのだぞ!」

ミフユの怒声を聞き流し、庭に出て狐の像を軽く叩く。コンコン、と硬い音がした。

「コンちゃん、コンちゃん、具合どう?」

像が石から生身の狐へと変わる──いや違う、透ける狐が狐の像に被さっているのだ。輝く金毛の狐が台座から飛び降りても、像はそこにある。

「ばっちぐー! じゃ。コンちゃん完治~! いぇい!」

美しい狐はテンション高めの和装美少年へと姿を変えた。にっこりと笑い、両手でピースサインを作ってみせたミタマに緊張の糸がたわまされる。

「ふふ……よかった元気そうで」

「今までになく調子がいいぞぃ。じゃが、ちょっと気に入らん点もあってじゃな……」

「何?」

ミタマはバツが悪そうな顔で首に巻いた赤いマフラーを引っ張り、白い首を晒した。綺麗な首だ、傷もシミも何一つない。

「ん……? あれ、コンちゃんって確か首……」

「ヒビ入っとった。この分霊の本体を、京都の像からこの庭の像に移したからじゃろうな……この像は新品、傷一つない。じゃからワシには傷一つない」

「へー、よかったじゃん」

「ようないわい! みっちゃんが直してくれた跡じゃから、気に入っとったんじゃ! みっちゃんちょっとこの像の首もぎ取って繋ぎ直してくれんか」

「なんでだよ! 嫌だよ!」

たとえ本人? がしろと言ったことだろうと、罰当たりな行為は出来ればしたくない。

「いいじゃん、俺は確かに修理手伝ったけど壊したのは知らないバカなんだから……そんな傷跡、ない方がいいよ」

「じゃが……みっちゃんと出会えた証じゃし……みっちゃん、たまに指でなぞってくれて、あれ……気に入っとったんに」

「首撫でるくらいいつでもしてあげるから、そんなに落ち込まないで」

「くぅん……」

落ち込んだ犬のような鳴き声だ。三角の狐耳もぺたんと垂れている。そんなにあの傷跡が気に入っていたのか、傷を開かされてピンチに陥ったりもしたのに。

「……それよりさ、コンちゃん、頼みがあるんだ」

「それよりとはなんじゃそれよりとは……まぁよい、話せ」

「ネイさんの安否を確認して欲しい。彼氏揃って安心してうっかりしてた、あの人も物部に狙われかねない人だったんだよ」

「ふむ……ねいか。暫し待て」

狐耳をピンと立て、四本の尾を揺らし、ミタマは静かに目を閉じる──いやまぁ糸目だからその辺の仕草は正確にはよく分かんないんだけど。

「…………視えた。忙しそうじゃったぞ、監視かめら? えぬしすてむ? がどうとか」

「無事なんだね!? よかったぁ……はぁ、やっぱりただ仕事中……って言うか、あの死体の動き遡って色々と追跡とかしてるのかな……」

「知らん。ワシにはよぅ分からん、電気じゃのねっとじゃのが出来てから人間の動きは慌ただし過ぎるんじゃ」

人外の意見というか、老いた感想だなぁ。

「水月ぃ、そろそろ出ぇへんか?」

「あ、待ってくれ。その前にちょっと荒凪くん見てくる」

「おー……ほな玄関で待っとるわ」

今朝はまだ荒凪に会っていない、挨拶もなしに学校へ行っては彼が拗ねてしまう。俺は誰も居ないアキの部屋を抜けてプールへ急いだ。
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