冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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いっそ生きてるだけで褒めて欲しい (水月+カサネ・ハル・リュウ・シュカ・ネザメ・ミフユ)

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四時間の授業を全て上の空で過ごした。俺が考えても仕方ないことではあるが、物部への対処や記憶が戻った荒凪についてはもちろん、ネイはいつノヴェムの元に戻る気なのか、穂張三兄弟の仲を取り持つ方法は本当にないのか、バイトはいつ再開されるのかなどなど色々と考えることが多いのだ。

「たまには購買のご飯もいいよね~」

「購買のパンって高いんですよね……」

「そやろか、俺ん家の近所のパン屋よりはだいぶ安いで。美味いもん揃ってるし」

「私が比べてるのは半額シール貼られた食パンですよ。食事は味より値段あたりの量です」

購買でパンなどを買い、生徒会長室へ。

「鳴雷くんっ……!」

生徒会長室の前ではカサネが待っていた。私服のままの彼は俺を見つけると俺に走り寄り、抱きついてきた。

「先輩!? なんて積極的な……嬉しい!」

大喜びで抱き締め返すと腕の中でカサネがもぞりと動いた。首を上に向けたのだ、キスでもねだるつもりかと自惚れながら見下ろした俺は、彼の目に溜まった涙を見て驚いた。

「先輩!? どっ、どうしたんですか」

「会いたかった……」

「ぇ、お、俺も会いたかったです、けど……そんな、四時間くらいで、そこまでなんてぅへへへ」

「鳴雷くぅん……俺がんばったんだ、がんばったんだよぉ、甘やかせぇ……午前の授業全部出たんだぞ、えらいだろぉ……?」

「全部? へぇー、えらいですね」

「……へへ。やっぱ鳴雷くん最高」

「少っしも偉くなどない!」

バァンッ! と勢いよく生徒会長室の扉が開け放たれる。

「鳴雷一年生を一人で出迎えたいなどと殊勝なことを言うから私とネザメ様は中で待っていてやったのに、黙って聞いていれば何だ貴様は! そもそもアレは授業を受けたと言えるのか!? ミフユが何度姿勢を正せと言っても猫背をやめず、ダラダラゴロゴロと机に突っ伏して、挙句の果てに先生に当てられて「分かりませーん」などと申し訳なさの欠片もないヘラヘラとした態度……! 許せん!」

「ミ、ミフユさん……落ち着いてください。ほとんど保健室登校だったんですから、授業に出てただけえらいじゃないですか」

ミフユの怒声の途中で他の彼氏達はミフユの横を抜け、生徒会長室に入っていった。廊下に残されているのは俺とカサネだけだ。俺も腹が減ったし、話の続きは部屋でしようと提案したいところだがミフユの剣幕の前ではそれも叶わない。

「偉い!? 今日の繰言二年生で偉いと言うならば毎日真面目に授業を受けているミフユは一体どう形容されるんだろうな!」

「そりゃミフユさんはとってもえらいですよ、ネザメさんのお世話も学業も手を抜かずにやって……尊敬してます。すごいと思ってますよ」

「……そ、そうか。ミフユは当然のことをしているまでだ…………とっ、とにかく! 今日は繰言二年生にしてはマシだと言うだけだ、多少の労いはあってもいいが甘やかし過ぎないように! 以上!」

ミフユは顔を真っ赤にしてネザメの隣へと戻っていった。

「やるぅ鳴雷くん、あの堅物に……へへへ、すごいじゃん。ありがと。助かったべ」

「素直に気持ち伝えただけですよ。ほら、もう部屋入りましょう」

生徒会長室に入り、いつも俺が座っている席へ……? 机に何か置いてある。弁当箱だ。

「……あの、ミフユさん、これ」

「む?」

「俺の……ですか?」

「あぁ、何を不審がっている。いつも通りだろう」

確かにいつも通りだ。ミフユはいつも俺の弁当を作ってくれているし、この弁当箱は俺の誕生日にミフユがプレゼントしてくれた俺の名前が彫られた物だ。

「ゃ、今朝は忙しかったし作る時間なかったかなと思って……母さんずっとキッチン居て朝ご飯作ってくれてたし……だから購買でパン買ってきちゃったんですけど」

「貴様はともかくネザメ様に購買の物など食わせられん、自分は事前に貴様の母君に相談し夕飯のついでに弁当に使う食材も注文しておいてもらったのだ。ネザメ様のついでに作ったまで、購買のパンとやらの方がよければそちらを食べミフユの弁当は捨て置けばいい」

「いやいやいや食べますよ! 昨日もミフユさんのお弁当食べられなくて残念で……まさか今日食べられるなんて思ってなかったから、倍嬉しいです! いただきます」

弁当箱の蓋を開けるとミフユの表情が少し柔らかくなった。淡々と「ネザメ様のついで~」だの「捨て置けば~」なんて言っていたけれど、俺に食べさせたいと思ってくれていたのだ。旨味を感じる前から、手を合わせているうちから頬が緩む。

「水月、そのパン……食べませんよね?」

「……やるよ」

「っしゃ! ありがとうございます」

じっと口を挟むタイミングを見計らっていたらしいシュカに三元豚のサンドイッチを投げ渡してやった。

「四時頃キッチンの方から物音聞こえてて~、水月ママかな~って思ってたんですけど~、あれフユさんだったんですね~」

「四時……うむ、自分だな。貴様らは昨晩睡眠を取っていないのだったか? はぁ、嘆かわしい……成長期に十分な睡眠を取らないという愚行は生涯に関わるのだぞ」

「俺もう十分育ってますし~、一日くらい大丈夫ですって~」

「四時起きなんてして十分な睡眠取ってないからチビなんですか?」

「無礼にも程があるぞ鳥待副会長! だっ、誰が、チビ……! 貴様ぁ!」

「落ち着いてミフユ。君のコンパクトな体躯は君の魅力だよ、愛おしくてたまらない。鳥待くん、ミフユは小柄ゆえに出来ないことも多くそれを不甲斐なく思っている健気な子なんだ、あまりからかわないでやっておくれ」

ミフユはネザメの隣で顔を真っ赤にしている。照れが理由ではないだろう。

「はーい…………私なら、ああやって優しくフォローされた方がいたたまれませんけどね」

「紅葉はんそういうとこありはるよなぁ」

「そこ! ヒソヒソと何を話している! またミフユの悪口か!?」

「被害妄想ですよ」

「堪忍してや年積はん、何も言うてまへんて」

怒っているミフユも、意地の悪い顔をしたシュカもリュウも俺にとっては可愛らしい。ほっこりしながら眺めていると、つんつんと左肩をつつかれた。

「ん……? 先輩?」

振り向くとスマホを見せられた。画面にはレイが映っている。

『せんぱーい』

ビデオ通話のようだ。こちらに手を振っている。

「レイ、どうしたんだ?」

『カサネくんフランクちゃんのこと随分気にしてたっすから、ペットカメラ代わりしてあげようって思ったんす』

「へぇ、優しいな。よかったですね先輩」

「うん……ありがとうレイちゃん」

『へへへ……フランクちゃん、ほらほらご主人様っすよ。ワンの一つでも言ってあげるっす』

画面いっぱいにパグ犬の顔が映る。その飛び出しそうな大きな瞳を開き、ふんっとため息のような仕草をし、そっぽを向いた。

『……塩っすねぇ、フランクちゃん』

「画面越しでよく分かってないのかもしれませんし……気を落とさないでくださいね、先輩」

「落としてねぇよ別に」

ビデオ通話がかかってきたと俺に知らせた時の明るい表情が少し曇っているのを俺は見逃していない。

『飼い主にまで塩な犬ってちょっと珍し……ん? 何の音っすかね』

ガシャーンッ! と大きな音が鳴ったのは俺にも分かった。何かが割れたような音だ、義母が食器棚に突っ込んでガラス戸を割ったりしたのだろうか。

『アキくんが何かやらかしたんすかね、ここは頼りになるところを見せつけるっすよ。じゃ、せんぱい。また後で。お帰りをお待ちしてるっすよ~』

手を振り返すうちに通話は切れた。カサネは名残惜しそうな表情のままカメラロールを開き、今までに撮ったのだろう愛犬の写真を見返し始めた。こんな短時間でペットロスになるとは……いや、ホームシックと言うべきか? どっちも不適当か。
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