冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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理解を阻む光景 (〃)

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ノヴェムと話すためだと息巻いて英語の授業をいつもより張り切って受けてはみたものの、これまで大して真面目にやってこなかったせいでやる気だけが空回りしていた気がする。

「はぁ……」

「基本中の基本、S・V・O・C・Mは理解してるのか?」

自分の実力のなさに落ち込んでいた俺が目に余ったのか、セイカが教科書片手に声をかけてくれた。この哀れな長所顔だけ野郎に勉強を教える気になってくれたのだろうか。

「そもそも英単語が読めないし意味分かんないから文法とかのレベルに居ないのよ俺……」

「それは知らねぇよ覚えろよ」

「……暗記苦手なんだよな。暗記以外の方法ないか?」

「ないな」

「どうやって異言語を覚えるなんてイカレた真似を英露でやってのけてるんですかセイカたま。何か特別な暗記術が……!?」

「辞書何冊か読めば日常会話で使う分には問題ないだろ。スラングとかは別だけど……試験でスラングなんか出ない、よな? 霞染」

「多分~……?」

辞書は俺にとって引くものであって読むものじゃないし、読んだだけで覚えられるはずもない。

「次現国やで」

「現国は割と得意……」

馴染み深い日本語は俺の自信を少しだけ取り戻させてくれた。

「はぁ、やーっと終わった。帰ろ帰ろ」

「今日はみっつんと一緒に帰れる~。えへへ、新鮮~」

ホームルームが終わり、彼氏達と談笑しながら下駄箱へ。靴を履き替えたら外へ出て、二年生達を待つ。

「お泊まりは連続でやったアカンておかんに言われとんねんなぁ、どないしよ」

「長期休暇でもないのに連泊は、ちょっと言い訳ムズいよねぇ~。しゅーとしぐはどうしてる?」

「……特に何も。あなた方の親御さんほど過保護じゃありませんし」

「みーくん、ち、とま、る……て、だけ、めっせ……じ、送……て、あとは……むし」

「おぉぅ……しぐ、やるぅ」

「……親父さんと連絡先交換してなくてよかったと今心底思ったよ。絶対俺に鬼電してくるじゃん」

カンナの父親はカンナをちゃんと愛している。俺とカンナの関係を認め、俺を信用してくれている……これ、俺から一本電話入れた方がよくないか? この先のことを考えると。

「…………カ、カンナ、俺親父さんと話したいな。電話かけてもらえるか?」

「おと、さん……今、しごとちゅ……と、おも……よ?」

「あー……そうか、じゃあ夜? 夕方には終わるかな、とにかく早めがいい」

「しごと、ちゅ……でも、ぼくの……でんわ、には……出て……れる、けど……」

愛息子からの緊急の用事かと思って出てみれば、愛息子の心を奪った憎き男が話しかけてくる……キレるな、うん。

「いや仕事が終わってからにしよう。メッセ送っておいてくれ、俺が挨拶したがってるから仕事終わったら教えてとか何とかそんな感じのこと」

「ぅん」

カンナがスマホを操作するのを背後から覗き見ると、彼は俺が言ったことをほぼそのまま打って送った。

「水月くん、お待たせ」

「あっ、ネザメさん」

カンナの肩越しにカンナのスマホを覗いていた俺の肩をぽんと叩き、ネザメはいつも通りの穏やかな笑みを浮かべた。

「鳴雷ぐん……」

「カサネ先輩? どうしたんですシワチュウみたいな顔して」

「……甘やかして」

「えっ? えっと、授業頑張って疲れちゃったんですかね。そんなになるまで頑張って先輩はえらいです! 帰ったら甘いもの……ぁ、先輩食べ物興味ないんでしたっけ、じゃあ、んー…………お、俺の膝の上でゲーム、とか」

「する……」

ご褒美になるんだ、俺の膝。

「ゲームをする前にちゃんと課題を終わらせるんだぞ」

「水月くん、僕と一緒の車に乗ってくれるね?」

「……え、車?」

「九人居るから五人と四人に分かれて……だから、僕とミフユ、そして水月くん。後一人は……誰がいい?」

カンナが俺の腕をぎゅっと抱き締める。ハルもそれにならって俺の腕に抱きつく。

「決まったみたいだね。じゃあ行こうか」

「……まさか車を二台用意してくださってるとは」

「昨日もそうだったんだよ~? ね、しぐぅ。楽しちゃった」

ネザメ、電車乗るの禁止されてるのかな。


 
ネザメとカンナに挟まれて座り、幸せな時間を過ごした。ふかふかの椅子に快適な空調……暑苦しい電車で通学している毎日がバカみたいだ。

「着いたね。さぁさ、早く降りよう。ここは車を停めるところではないからね」

「すいませんね、家の近くに駐車場とかなくて」

自宅の前に停まった車から降り、運転手に頭を下げる。五人全員が降りると車は走り去り、すぐ後ろを走っていた二台目の車が同じ位置に停まった。

「……あれ?」

鍵を開けるだけ開けてネザメ達に先に家に入ってもらい、俺はセイカの降車を手伝おう。そう思っていた。

「開いてる……」

鍵がかかっていなかった。今日一番最後に家を出たのは歌見か俺の母のはず、歌見だとすると彼は我が家の鍵を持っていないので留守番のアキかレイが鍵をかけるべきだが、忘れたのか?

「鳴雷、何突っ立ってんだよ」

「早く入ろ~?」

セイカはスムーズに降車出来たようだ。結局一番に玄関に入ると、靴が散らばっていた。俺や母の靴、レイの靴、アキの靴……いつもはちゃんと並んでいたはずだ、誰が散らかしたんだ?


違和感を覚えながら廊下を歩いていく。ダイニングに入り、異様な光景を目にした。めちゃくちゃだ、椅子が倒れているし窓は割れている。壊れた机の上には見知らぬ男が伸びている。

「え……? ちょっ、ネザメさん下がっててください」

男の顔をしっかり確認しようと歩を進めると、リビングとダイニングのちょうど中間あたりに倒れていた彼の姿が目に入った。

「………………は?」

フローリングに広がる赤い液体。腹を押さえて身を丸め、横たわっている愛する弟。その二つが上手くリンクしない。

「え、うわ窓割れとるやん」

「つーか誰これ……何があったの」

「おっ、おい! レイちゃん縛られてんだけど! 頭から血ぃ出てるしっ……救急車!」

彼氏達がにわかに騒ぎ始める。だが、その声もどこか遠い。俺の頭は状況を理解したが、心が追い付かない、呼吸と鼓動ばかりが早まる。吐き気を煽る血の匂いが肺に溜まっていく。

「ア、キ……?」

アキが腹を刺されて倒れている。そう頭と心両方で理解した途端、血の気が引いて立ちくらみを起こし、その場に膝から崩れ落ちた。
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