冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

文字の大きさ
1,899 / 2,316

ひたすらに顔を (水月+ミタマ・サキヒコ・サン)

しおりを挟む
メッセージアプリを立ち上げてネイから送られてきた動画を確認してみる、薄暗い道を車が走っているだけの何の変哲もない監視カメラの映像のようだ、俺には何も分からない。この数分間の通話履歴……秘書と何を話したんだろう。

「着きました!」

車は寂れた駐車場に停まった。地面はアスファルトではなく砂利で、周辺には街灯も少ない。随分郊外に来たものだ。

「……あぁ」

車移動でまた調子を悪くしたらしい秘書がフラフラと車を降りていった。トランクに詰めた、襲撃犯にを振った襲撃犯の先輩とやらを尋問するのだ。俺もヤツに言いたいことがある、降りよう。

「前失礼します」

フタの前を通り、真ん中の席の不便さを感じながら外へ出た。

「みっちゃん、あまり過激なことは考えるでないぞ」

トランクを開けている運転手の元へ向かう俺の背後に、いつの間にかミタマが立っていた。

「……別に、考えてないよ」

「さっちゃんがみっちゃんが憎悪の色に染まっとると言っとる。あーちゃんにせっちゃんの親を呪わせた時と、同じ色じゃとな」

「…………」

「あの男にも報いを与えるつもりか? せっちゃんの親のように」

セイカの母親がどうなったか、俺は知らない。荒凪の呪いの結果を俺はまだ確認していない。にも、なんて言われても分からない。

「報いとは、何じゃろうな」

「知らないよそんなの……コンちゃんは何なの、人殺すこと平気で同意したどころか勧めたくせに、俺には聖人で居て欲しいわけ? 何でも赦して欲しいわけ?」

「……最終的にはみっちゃんの選択に任せるつもりじゃ。ワシの祝福を……神通力を、呪いに使わせようとも……ワシを何に堕とそうとも、みっちゃんが心の底から望んだ結果ならそれで良い。じゃが、ワシにはみっちゃんが陽のあたる場所から遠ざかってもなお幸せを感じられるタチだとはどうも思えんのじゃ。ワシの首を直してくれた優しいみっちゃんはきっと、怒りと憎しみのままに復讐を果たしても、虚しさしか感じんじゃろうとな。じゃから、ワシの忠告は今のみっちゃんには鬱陶しく感じるんじゃろう」

ミタマは分かっていない。俺はそんな綺麗な人間じゃない、俺は醜い悦びに身を浸したって笑える人間だ。

「歯引っこ抜くと何言ってるか分かんないしなぁ、爪やるか」

「ペンチないっすよ」

「葉巻カッターならあるよ~」

「……じゃあ端っこからちょっとずつ切ってくか」

ミタマの言葉が途切れ、俺が返事をしないでいると物騒な会話が聞こえてきた。

「…………みっちゃんは、あんなふうに生きていける人間じゃない。ワシはそう思っとる。信じとるよみっちゃん、ワシをこのままのワシで居させてくれると。じゃが、みっちゃんに堕とされるのなら……みっちゃんが望むのなら、ワシは邪悪な怪異と成り果てようと、みっちゃんに恨み言を吐いたりはせん。心の赴くままに生きる道を選んでおくれ」

俺はミタマに返事をしないまま、サンの隣に並んだ。葉巻カッターを握った右手にそっと手を添えた。

「この手は……水月! ふふ、なぁに水月」

「……こんなヤツの血肉がついたことのある刃で、サンが楽しむ葉巻切って欲しくない。こいつの成分がサンの肺に取り込まれちゃう気がする。そんなのやだ」

「水月ぃ……葉巻はそんな肺に入れて吸うようなものじゃないんだよ? 煙草じゃないんだからさ。でも、ふふ、可愛い。分かったよ。ボス、やっぱこれ貸さない」

「……すいません秘書さん、ちょっと俺に話させてくれませんか?」

秘書は「どうぞ」と興味なさげに男に手のひらを向けた。俺は運転手によってうつ伏せに押さえ付けられている男の前に屈んで、口を開いた。

「俺の家を襲ったヤツらが、あなたに仕事を紹介されたって言ったんです。青い髪の子供をさらう仕事をって……合ってますか?」

「…………知らない」

穂張事務所で尋問した二人と違って、大騒ぎで命乞いをしたりはしないようだ。これが格の違いってヤツか? 年季の違い?

「なんで、さらわせたんですか?」

「…………分からない」

「鳴雷さん、そういうの俺達がさっき聞いたんですよ。あなたがそこの狐にありがたいお説教されてる時に。だから聞き出すためにどう痛めつけようかって話してた訳で」

「さらわれた子は大切な子なんです。教えてください、早く取り返さないとどんな目に遭うか……お願いします。教えてください。あなたにだって大切な人の一人や二人居るでしょう、荒凪くんが心配な俺の気持ち分かってくれますよね?」

「……だから、分からないんだ」

「…………あなたが命令した連中、俺の弟刺したんですよ」

「それは……知らない、言ってない。タタキ……ぁー、強盗の仕事は何件か振ったけど、誘拐とか刺したりとかは」

「そんな仕事あってたまるか!」

感情のままに立ち上がり、男の頭を蹴った。

「わ、何の音?」

「初手サッカーボールキックとはなかなか」

「アキがっ! 俺の弟がっ! 血まみれで! 倒れてたんだよ! 可愛いレイもっ、殴られて! 家ぐちゃぐちゃで! 荒凪くん居なくて! っざけんな! ふざけんなっ……少しでも悪いと思うんなら、荒凪くんの居場所吐けよ……!」

駄々を捏ねる子供のように足を振った。嫌な感触が何度も爪先にあった。

「知ら……ない」

顔が半分水に浸かっているような、鼻が詰まったような、聞き取りにくい言葉だった。

「…………あっ、そう……そうか、そっかぁ……そうかぁ…………じゃあ特別に! アキとおんなじになりゃ許してやるよ! シバさんどいてそいつの腹出させて!」

ポケットに入れていた巾着袋からナイフを引っ張り出し、握り締める。

「ミツキ! それは繰言の大切な物だ、そんな目的に使ってはいけない。それだけはダメだ」

「そうじゃみっちゃん、せめて違う刃物を使え! いや出来ればそんな真似自体して欲しくはないんじゃが! じゃが! せめて……!」

「聞き取りにくくなるから鼻とか歯とか折るのはやめてくださいよ。おーい、質問変えますよ。神秘の会は知ってますか?」

「…………」

「聞いてます?」

「ん……? おい離れろっ! 離れるんじゃ! おかしいっ、急激に霊力が高まっとる!」

秘書が飛び退くと男を押さえ付けていた運転手も跳んで逃げた。サンはいつの間にやらミタマの背後に隠れている。

「ひっどいことするな……鼻折れてるじゃん、話しにく……」

「…………ま、まさか、物部……か?」

「お、正解。すごいね」

点いたままの車のライトが立ち上がった男を──物部を照らす。その顔は血で真っ赤に染まっているのに満面の笑顔を貼り付けていて、酷く気味が悪かった。
しおりを挟む
感想 535

あなたにおすすめの小説

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした

天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです! 元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。 持ち主は、顔面国宝の一年生。 なんで俺の写真? なんでロック画? 問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。 頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ! ☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。

穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜

春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、 癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!? トラブルを避ける為、夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)。 彼は見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい穏健派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!? 
他にも幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良だけど面倒見のいい悪友ワーウルフ(同級生)まで……なぜか異種族イケメンたちが次々と接近してきて―― 運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない! 恋愛感情もまだわからない! 
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。 個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!? 
甘くて可笑しい、そして時々執着も見え隠れする 愛され体質な主人公の青春ファンタジー学園BLラブコメディ! 毎日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新) 基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!

俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード

中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。 目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。 しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。 転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。 だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。 そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。 弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。 そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。 颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。 「お前といると、楽だ」 次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。 「お前、俺から逃げるな」 颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。 転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。 これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。 続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』 かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、 転生した高校時代を経て、無事に大学生になった―― 恋人である藤崎颯斗と共に。 だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。 「付き合ってるけど、誰にも言っていない」 その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。 モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、 そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。 甘えたくても甘えられない―― そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。 過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。 今度こそ、言葉にする。 「好きだよ」って、ちゃんと。

全寮制男子校でモテモテ。親衛隊がいる俺の話

みき
BL
全寮制男子校でモテモテな男の子の話。 BL 総受け 高校生 親衛隊 王道 学園 ヤンデレ 溺愛 完全自己満小説です。 数年前に書いた作品で、めちゃくちゃ中途半端なところ(第4話)で終わります。実験的公開作品

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

二本の男根は一つの淫具の中で休み無く絶頂を強いられる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

処理中です...