冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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霊視を始めよう (〃)

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社長が持つスマホから聞こえてきた声は、昨日初めて聞いた声……前社長だという男の声だ。

『死体からじゃ本拠地や物部の場所は霊視出来ねぇ、だが死体を加工した場を霊視すればどうにか物部に辿り着ける』

「そう……なんですか? その理論はちょっとよく分かりませんけど」

「職員室前の落とし物入れに入ってるシャーペンは誰の物か予想すらつかない、でも教室に落ちてる状態なら周りの席の生徒のかもとか予測立てられるだろ。場ってのはそういうものだよ」

「なるほど…………社長さん行ってた学校って職員室前に落とし物入れあったんですか?」

「…………ないの?」

「俺のとこにはないです」

「……そうなんだ」

ウサギマスクを被った彼の表情は分からないけれど、どこか寂しそうな声色だった。日本全国どこででも買えると思っていたお気に入りのお菓子が関西限定だと知った時のリュウの顔を思い出した。

『ただなぁ、物部って結構な技術力あるっぽいだろ? そんなもんがどうやって今まで潜んでたのかはかなり疑問なんだが……っと、それでよ、霊視を防ぐ結界の中に居たり、呪詛返しの類いの術を仕込んでる可能性もある……っつーか多分そうだ』

スイは荒凪を霊視し、罠にかかった。化けガラスのような木っ端怪異にはいちいちそんな仕掛けはしていないみたいだが、物部本人となれば荒凪に仕掛けられていたものよりずっと強力な罠が仕掛けられているはずだ。命に関わるようなものかもしれない。

「だ、大丈夫なんですかそれ……死んじゃったりしません?」

『お? 鳴雷ジュニアか。まぁその辺で雑に霊視したら死ぬかもな。俺ぁ今どこに居ると思う? 家だ。我が家は日本屈指の霊山に建ってる。その上、霊廟にお前ん家に張ってる結界の十倍の金がかかるスーパーな結界を張って、俺同様超強力な霊能力者の親父とジジイ立ち会いの元、霊視をする。丸裸だぜ物部天獄! 見てろクソッタレ! いや視るのは俺か!』

そこまでしないと死の危険があるのか……スイやミタマに頼まなくてよかった。

『え、何? 何怒ってんの? ジジイって言うな? ご、ごめん……寝てねぇからちょっとハイになってて口悪くなってるかも』

「寝てないんですか!? 結界とか立ち会いとか、そういうのには力入れてるのに自分のコンディションは整えてないんですか……」

『厳しいこと言うなよジュニア。この結界作んの時間かかるんだぜ? 四十分だぜ四十分』

昨晩我が家から去ってから、今この時まで寝ていない理由にするにはあまりにも短い時間だ。

「四十分かかるからご飯食べてたんだよ」

「え、さっき作ったの……?」

「霊視出来そうな場があるって知らされたの、さっきだからね」

ウサギマスクが秘書の方を向く。そうか、ネイが渡した情報の中に霊視が可能なものがあると分かったから、その準備を始めたのか。そもそも荒凪が攫われて物部への対処を急がなければならなくなったの自体、数時間前に分かった話だ。そりゃ結界の制作はさっきだよな。

「……じゃあやっぱり徹夜は結界関係ないじゃないですか」

『うん。ない。俺が昨日寝れなかったのはそこの絶倫のせいだ。朝、そいつが仕事の時間だってんで家出てって、ようやく寝れると思ったら俺のアラームも鳴りやがんの。仕事あったんだよ…………なぁジュニアよ、普通お仕置きセックスって明日が休みの日にヤらねぇ? ジュニアなんか彼氏いっぱい居るんだろ? 唯乃ちゃんから聞いてるぜ、やべぇって。どう思うよ』

「えぇ……うーん…………明日学校なのにヤり通しちゃったこと何度もある身なので偉そうなこと言えませんけど、まぁ……長くヤるなら明日の予定は確認してからの方がいいですよね」

『だよなぁ!』

「鳴雷さん。予定を確認した上でのセックスは確かに、予定の確認から既に前戯が始まっているようなものでとてもエロいと思いますが……喧嘩から始まる勢い任せのセックスも、超エロいでしょう」

「イエス激エロ!」

『おいジュニア! どっちの味方だ!』

「どっちの味方もしなくていいよ、変態共は放っておいて……さっさと霊視の場に行こう」

呆れた様子で社長が立ち上がる。俺達は彼に続いて店を出た。支払いをした様子がなかったが、事前に済ませてあったのだろうか、それともツケ? 高級店の支払い事情はよく分からない。

『おいユキ! お前さっき変態とか言ってくれたけどよぉ、一番性癖やべぇのお前だからな!?』

「うるさい。黙って霊視だけして」

『聞けよジュニア! コイツお前より若い頃に首輪つけて庭を全裸散──』

スピーカー機能をオフにしたようだ。社長のスマホから音は漏れているが、何を言っているのか分からない。

「蛇ノ目。案内しろ」

「……本名呼ばないでください」

スマホからの騒がしい声が聞こえなくなると、店の個室に入った当初に感じた圧迫感が戻ってきた。社長が不機嫌になって霊力を漏らしているということだろうか、それとも慣れてきて調子に乗った発言を繰り返した俺に圧をかけるためあえて放っているのだろうか。

「……車で移動しますよね? あなたの車について行けばいいんですか? どの車です?」

「いえ、移動はしません」

ヒトの質問に答えつつネイが俺達を案内したのは、駐車場の隅。駐車場らしく薄暗いけれど、何の変哲もない場所だ。

「ここです」

「……こ、ここ?」

「ここから少し行ったところに飲み屋街があるのですが、そのうちの一つの店から泥酔客が一人連れ出されました。癖の悪い酔っ払いの世話を焼く友人……の、ように振る舞っていただけの他人だと私は見ています。その泥酔客が、私達を襲った死体です」

行きずりの人間を殺して身体を使っていた、ということなのか?

「泥酔客を乗せた車はこの店のこの場所に停まりました。一、二時間程度経ち、泥酔客は車から降りて別の車へと乗りました。その二台目の車は、私達が死体に遭遇した店の裏手に停まって死体だけを下ろして去りました。去った先は近くの民家でした、その後は自家用車として家主の仕事場と家とスーパーを行き来するばかりでした」

「……普通の人が死体運びしてるって、怖いですね」

「刑事によれば神秘の会の熱心な信者で、先輩の信者に頼まれ男性を送迎したとだけ……おそらく死体ということも知らないのでしょう」

単に知人の頼みを聞いただけ、か。

「この場所を霊視すれば物部の居場所が分かるんですね?」

『──を彫る時に霊力を使うはずだ。彫った物を破壊して霊視不能にしても、空間に残留した霊力まで回収したり何だりで霊視を誤魔化すヤツぁ居ねぇ。こんな微かな霊力を起点に霊視するような霊能力者、俺の他には居ねぇからな。こっから霊視されるなんて考えもしてねぇだろうぜ』

「もし想定してたら手がかりなしだね」

『あのなぁユキ! これを想定するっつーのはな、校則にジェットパック通学禁止って書くようなもんなんだよ! んなこと出来るヤツ居ねぇの! 俺以外にはな』

前社長のドヤ顔が頭に浮かぶ。アイマスク姿でしか想像出来ないけれど。

『っし始めるぜ。こっちの準備は万端だ。ユキ、ビデオ通話にして全部映る位置にスマホ構えな』

「分かってる」

「……俺達下がってた方がいいですかね」

『ぁ? あぁ、いや、昨日と違って俺がその場に居ねぇからそっちに俺の霊力由来の影響は起こらねぇはずだ。スマホの画角に居たら邪魔だからその程度の「どき」は必要だけどよ』

「あっ、そうなんですか。すいませんわざわざ……始めてください」

駐車場の隅の一角に社長がスマホを向ける。俺達は自然と無口になり、成り行きを見守った。
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