冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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大きな手のひらの中 (水月+クンネ・ミタマ・荒凪・サキヒコ)

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クンネにそっと手を差し伸べると彼は素直に俺の手によじ登った。優しく包み込んで持ち上げて、頬を寄せてみる。

《ミツキ? 何だ、服見たいのか? わ、な、なんだ? 近い……近いって》

頬をぺちぺちと叩かれた。嫌だったのかな。顔を少し離して見つめてみると、クンネは俺の手のひらの上に寝転がり、俺の指を抱き締めた。

《……なぁ、俺達を助けるって決めたのミツキなんだよな? ありがとな、ミツキ。何回も言ってるけどさ》

甘えてくれている気がする。こんなにもサイズ差のある生き物の手のひらの中に居るなんて、俺がクンネの立場なら怯えきって震えてしまっているだろう。彼は俺に心を許しているんだ。可愛い。

(そういえばクンネたんの怪我って、フタさんの猫ちゃんに噛まれたヤツですよな。確かお腹……妹さんとやり合った時には怪我してませんでしたよな。お腹だけでしょうか、カラスと戦ってくれた時はどうでしたっけ)

親指でそっとクンネの腹に触れる。彼は躊躇うことなく身体を伸ばし、俺の指を受け入れた。

《やべぇわデカいヤツの手の中って……握られたら終わりなのになんでこんな落ち着くんだろ》

裸だった間に見ておけばよかった。傷を負っているところを服越しに傷の具合が分かるほど触っていい訳がない。ただ優しく撫で、指を離した。

《なぁ、ミツキの弟ってどんなヤツなんだ?》

「みっちゃん白ばぁじょんっちゅう感じの子じゃ、顔はよぉ似とる。性格はちょっと違うのぅ、みっちゃんはビビりじゃがあっちゃんは怖いもんなしじゃ。じゃが、二人とも優しくて男好きの色情狂じゃぞ」

「なっ、何の話じでっ……の!?」

衝撃的な言葉に思わず声を上げた。筆談なんてしている心の余裕はない。

「くーちゃんがあっちゃんのことを知りたいっちゅうたから教えたったんじゃが……」

「言葉は選んでよ! 訂正じでっ、男好きの色情狂っでどご!」

「分かった分かった。ほんの冗談じゃ、そう怒るな。喉を痛めとるんじゃろ、大声を出すでない」

会ったばかりのクンネに対しては冗談にならない。しつこいかと躊躇いつつも、本気の抗議なんだぞと改めて示すとミタマはぺしょっと狐耳を垂らした。

「ちゃんと訂正するからそない怒らんでくれ…………のぅ、みっちゃんは、好いた男が他の者を口説くのを翻訳せぃと言われたら、完璧にこなせるか? ワシは無理じゃった。つい、邪魔してしもうた。すまんのぅ……」

「コンちゃん……! そんなっ、俺の方ごぞごめん。コンちゃんの気持ぢ考えないで。いいんだ、俺が悪いんだよ、ぞんな顔、しないで……ごめんね。クンネには自分で、げほっ、頑張っで、気持ぢ伝えるよ、君に頼り過ぎだりしないよう気を付ける。だがらお願い、ゆるじっ、けほっ、けほ……はぁ、許じで、ぐれないかな」

「筆談しなさいよ」

狐耳を垂らしたミタマの頭は撫でやすい。ゆっくりと力を強めにして撫でながら、許しを乞うてみた。

「……くふふっ、みっちゃんちょろちょろなのじゃ~。ちょーっと涙をチラつかせただけで折れよって。情けないのぉ~」

「えっ」

「なでなでで嫉妬が吹っ飛んだわ。真面目に翻訳を請け負うと約束しよう。じゃが、みっちゃんも自分の言ったことは守るんじゃぞ。必須ではない褒め言葉や口説き文句にワシを使うな! みっちゃんのワシへの気持ちは別に薄れてはおらんと分かってはおる、おるが、どうしても腹が立つ」

「……うん。ごめんね」

チョロいだの涙をチラつかせただけでだのと言うから、嘘泣きだったのかと勘繰ってしまった。だが、ミタマは単に機嫌を治して俺をからかっただけだ。ミタマが語った言葉に嘘偽りはないし、狐耳を垂らして落ち込んでいたのも演技ではない。

「すまんのくーちゃん、男好きの色情狂というのは嘘じゃ。ちょっとした冗談、本気にするでないぞ」

《変な嘘つくなよ、びっくりしただろ》

訂正しろと要求した俺が認めるのも妙な話だが、俺が男好きの色情狂なのは事実だ。だがアキは男好きじゃない、兄である俺のことが好きなだけだ。

『クンネ、なんでアキのこと聞いてきたの?』

「知らん。今聞く」

俺の手の中でくつろいでいるクンネに向かってミタマが俺のメモを読み上げる。

《今腹触られて思い出したんだ、弟が腹刺されたってミツキが言ってたこと。妹を助けてくれた恩人の弟、どんなヤツか気になるだろ。俺はもうほとんど治ったようなもんだけど、ミツキの弟の腹の傷は大丈夫なのか?》

「だ、そうじゃ」

じっとミタマを見つめ返すと、彼は分かった分かったと面倒臭そうに言い、翻訳を始めた。

『ありがとうクンネ。一応、命に別状はないらしいんだけど、でも酷い怪我だから……心配かな』

《じゃあこんなところで俺に構ってる場合じゃないんじゃねぇの? 早く弟のとこ行ってやらないと》

『入院中なんだ。家に帰っても会えないんだよ』

ミタマは俺のメモを読み上げた後、すぐにはクンネの返事を俺に伝えなかった。何やら二人で二三話した後、眉間に皺を寄せた顔を俺に見せた。

「みっちゃん、入院のにゅあんすが上手く伝わらん」

そうか、小人……怪異には病院なんてないのか。なんと伝えれば分かってくれるのだろう。

「みつき、おとーと、あき?」
「俺達、アキ好き。水月大好き」

「ミツキの弟はアキカゼで合っているぞ。こらこら、人をそう無遠慮に抱き上げるものじゃない。ミツキは甘いから許しているだけで、他の者にやれば怒らせたり怯えさせたりしてしまうかもしれないのだぞ」

「きゅ、大丈夫。僕達みつきだけ」
「抱っこしたくなるの、水月だけ」

「……そうか。では、せめて驚かせないよう一声かけてから抱き上げるんだ。ミツキが驚いた顔をしているのに気付いていない訳でもあるまい。驚くのは身体に悪いのだぞ」

呆れ顔のサキヒコの説教を話半分に聞いていた荒凪は、俺の身体に悪いと聞いた途端真剣な顔になってサキヒコを見つめた。愛されている実感があって、なんだかこそばゆい。
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