冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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悔しくてたまらない (水月+サン・ミタマ・サキヒコ・荒凪)

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お泊まりの許可を出してくれた彼氏の家の前で車が泊まる。

『ありがとうございました』

「いえ、それでは」

メモ帳に礼を書き、見せながら頭を下げる。走り去る車を見送り、周囲を見回す。

「どうしたみっちゃん、さっさと入れてもらわんとあられもない姿を赤の他人に見られてしまうぞ」

『今俺しか人間居ないんだなって、ちょっとね』

ミタマは付喪神、サキヒコは幽霊、荒凪は人魚、クンネ達は小人……嗚呼日常よ、今何処に。

「は~い」

一人染み入る俺を放ってサキヒコがインターホンを押し、家主が現れた。引きずるほどの長髪に二メートルに届かんとする長身、こちらを見ているのに焦点の合わない白い瞳。

(支部でたまに見る八尺様男体化……)

筋肉質な腕がするりと伸びて、ふらふら漂い、俺の肩に触れる。

「ん? 何これ」

長髪長身の美青年、サンの爪がコツコツとコルセットを引っ掻く。邪魔者を見るような表情だ。

「こるせっと、というものじゃ。みっちゃん、首の骨にヒビが入っとるらしい」

「喉を痛めたらしく、声を出せない。筆談するしかないのだが……」

「筆談かぁ。よし、点字キット貸したげるね」

「何じゃそれ」

「知らない? 点字打つ用の板と針だよ。点字知らなくても打てるはず~……百聞は一見にしかず、後で見せてあげるよ。とりあえず入って」

俺の顔を触りながらそう言ったサンは、踵を返して玄関扉を開けた。

「まぁボク一見も出来ないから、百聞で我慢するしかないんだけどね。水月は見えるから見せたげないと」

「サン殿は一見ではなく一触ですね」

「いっしょく? あぁ、触る? ふふ、そうかも~」

俺達をリビングに通したサンは、ほどなくしてパステルカラーの板を持ってきた。俺が持っていたメモ帳の紙を一枚ちぎり、その板に挟ませると、付属の針……細い棒を俺に握らせた。

「適当に何か打ってみて、読んであげるから」

よく見ると板には五十音と数字が書かれており、その隣には丸い穴がいくつも空いている。なるほど、この穴に棒を押し込めば板に挟まれた紙が凹み、裏側に凸が……点字が作られていくのか。

(小学校の時に盲人理解の授業か何かで触った気がしますな、これ。あんまりよく覚えてませんが)

点字とは点の配置で文字を表すもの。だがそれを普段使いしない者が覚えるのは難しい上に、紙に規則正しく立体を作っていくのは困難。サンが点字キットと呼んだこれは、それを解決する素晴らしい物品だ。

(紙にぷつぷつ点を打ってく感覚、なんか楽しいでそ)

文章を作り終え、紙をサンに渡す。サンは指の腹で俺が打った点字を撫で、くすくすと笑った。

「ふふ、水月ったら」

「みっちゃんなんて書いたんじゃ?」

「急に泊まりたいなんて言ってごめんね、受け入れてくれてありがとう。サンは怪我してないんだよね、無事でよかった。ところでその服よく似合ってる、サンの可愛さとセクシーさが際立ってるよ。最高。だってさ」

「喉が潰れても口説き文句は言わな気が済まんようじゃの」

呆れ顔のミタマに肘で小突かれた。

「この服かなり適当なんだけど、水月的にはそんなにイイの?」

確かにサンは、今着ているようなぴったりとした薄手のタートルネックシャツをよく着ている。多分刺青隠しだ。下はシルエットを隠すようなダボッとしたスラックス、多分部屋着。統一感のない、適当さをこれ以上なく感じるコーデだ。だが、それがイイ。部屋着の適当さが、隙のある雰囲気が、心を許されている感じがして萌えるのだ。

『エプロン最高!』

何よりは、その上に着けられたエプロンだ。年季の入ったそれの色褪せ具合と、飛び散った絵の具のカラフルな汚れは画家らしさを感じさせる。しかもだ、肩と胸筋がしっかり鍛えられているサンがエプロンを着ると腹の辺りに隙間が出来るのだ。

『すごくえっち!』

俗に言う乳カーテン。前からではよく分からないが、横や背後から見るそれは格別だった。エプロンの腰紐を強く結んでは乳カーテンは絞られてしまうが、今サンは紐を緩く結んでいる。乳カーテンが完璧に出来上がる上に、腰の細さがすぐには分からない。意図なく秘匿された腰の細さが垣間見える瞬間、不意に訪れるその瞬間が、愛おしい。

「相変わらず水月のツボはよく分かんないけど……えっち、したい?」

「……!? じだいっ! げほっ、けほっ」

「あぁミツキ! 声を出すなと言っているだろう!」

「酷い声だったね~、ボクが締めた時より酷い声。嫉妬しちゃうなぁ」

サンは咳き込む俺のコルセットを掴む。

「ボクね、水月の首好きなんだ。細くて、頼りなくて、簡単に折れそうですごく可愛いからさ」

俺の首はそこそこ鍛えた身体に見合った逞しさだと思うのだが。

「いつかボクが手折ってあげたかったのに、ボクの知らないうちにボクの知らないヤツにこんなことされちゃってさぁ~……腹立つなぁ」

「ごめ、ね……ザン……」

「喋るなと言っているだろうミツキ! サン殿も、訳の分からないことを言わないでください……ミツキの首を折っていい訳がない。なんなんだあなた方兄弟は、どうしてミツキを殺したがる」

「……あなた方兄弟? 何、兄貴もそんなこと言ってたの?」

「フタの方だけじゃがの、彼奴はよくみっちゃんを殺そうとしよる」

「ヒト兄貴はしないんだ、まぁしないよね、アイツ度胸ないもん」

鼻で笑いながらサンは俺のコルセットを両手で掴む。まるで俺の首を絞めるように。

「ん~……まぁ、壊せそうかな」

「それはミツキの首を保護するための物だ! 今すぐ手を離──」

サキヒコが言い終わるが早いか、俺の肩越しに伸びた手がサンの手首を掴んだ。獣が喉を鳴らしているような、不気味な音が後頭部に密着した喉から響いてくる。

「ギュルルルル……」

「……荒凪くんかな?」

「水月、傷付ける、許さない」

「傷付けないよ、やだなぁ……水月に怪我させたヤツに苛立ってるだけじゃん。そう言ってたんだけど、伝わらなかったかな?」

そうだったのか!? 獲物を横取りされた恨みを話していたようにしか聞こえなかったが。

「離してくれる? 嫌? そう……ボクと力比べする?」

「……! ダメ! ザンっ、手折れぢゃゔっ……あら、な、くん、離じで……ごめん、ね。ありがと……サン、手、大事に……じで、ね?」

二人の手が下りる。ほっと安堵の息を吐く。

「…………ごめんね水月。喉、大丈夫? 喋らせちゃって、ごめん……本当に、腹立っててさ……水月が怪我したこと。着いてったのに、ボクが何にも出来なかったこと……ごめんね八つ当たりして」

「サ、ン……」

サキヒコの大きなため息が聞こえた。多分、俺がいくら言っても声を出すのをやめないからだ。

「守りたかったのに、ボクが守ってあげたかったのに、喧嘩結構自信あるんだよボク、本当にさ……ボクら兄弟三人揃ってれば大丈夫って、水月守れるって、そう思ってたのに水月怪我して、兄貴達も大怪我しててさ……水月、水月…………水月、ボク弱かったんだね、ボクが水月を守るのって結構難しいみたい、でも水月に怪我して欲しくないし水月を守るのはボクでありたい。だからね水月」

ゆっくりと俺を抱き締める腕を押さえようとは荒凪もしない。気付いていないのだ、大蛇が獲物を絞め殺すような強さで俺が抱き締められていることに。俺の呼吸が浅くなっていることに。

「…………ずっとここに居て」

縋るように囁いたサンは俺を締め上げていた腕から力を抜き、俺が新鮮な空気を取り込むのに夢中になった一瞬の隙をついて俺を抱き上げると、寝室へ駆け込んだ。
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