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遠慮は無視して (水月+カサネ・サン・レイ・荒凪・サキヒコ・ミタマ)
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ケーキを食べた後は歯磨きをして就寝だ。カサネは今から風呂に入ると言ってたな、是非覗きたいところだがセイカが抱きついていて覗きに行けそうにない。
「カサネ先輩はまたソファで寝るらしいから、レイはまたベッド入れてもらいな」
「嫌っす! せんぱいばっかり床で寝させらんないっすよ」
「そうだねぇ、ボクも水月と寝たいし」
「ありがとう。けど三人しか寝れないんだろ? 俺がその枠取っちゃうのはダメだよ」
優しい彼氏達を持って俺は幸せだ。その気持ちだけで十分お釣りが来る、今ならたとえ何も敷かず直に床に寝たって幸せを感じられるだろう。
「ボク、水月、セイカくんでいいよね?」
「そうっすね。荒凪く~ん、俺と一緒に寝るっす! コンちゃんも一緒にどうっすか? 人外サンドっす」
「ワシふーちゃんと寝る」
「おーい、俺を無視するな~?」
ベッドで寝ろという気遣いと優しさは向けてくれるのに、俺を無視して部屋割りならぬ寝床割りを決めていくのはどういう了見だ?
「だって水月遠慮しかしないんだもん」
長く逞しい腕が絡みつく。俺を軽々と持ち上げたサンはそのままベッドに寝転がり、俺ごとタオルケットを被った。
「ちょっ……」
「ボクと寝るの嫌?」
「まさか……」
ならいいじゃん、と聞こえていないはずの声が聞こえた気がした。力強く抱き寄せられて、諦めてサンに身を任せた。
「荒凪、鳴雷の隣に上げてくれ」
「きゅ」
義足を外したセイカを荒凪は丁寧に四本の腕で抱き上げ、ベッドに下ろした。
「荒凪くん、一緒に寝るっすよ」
「寝るっす」
レイの口調を真似ながら、レイが整えた寝床に荒凪が身を横たえる。
「灯りを消すぞ」
「言えば消えるけど……ありがと~」
サキヒコがドア横のスイッチを押すと暗闇が訪れる。俺はサンに抱き締められながらセイカを抱き寄せ、腕枕をしてやった。昨日と同じ体勢だ、歌見がサンに代わっただけ。
(だけ、と言っても結構寝心地は違いますが)
頭を乗せている二の腕の厚みだとか、後頭部に触れる胸筋の硬さだとか、違うところは多々ある。
「鳴雷……」
「ん?」
「……もっと、強く」
「強く……? こう?」
抱き締める腕の力を強めるとセイカは満足そうに小さな声で「うん」と呟いた。可愛い……自然と更に腕に込める力が強くなる。
「んっ……もういいってば、苦しい」
「あ、ごめん……」
程よい力加減を心がけてセイカを抱き締めながら眠った。
朝食を食べて、後片付けをして、荒凪の文字の勉強の様子を見る。
「まだひらがなを教えている最中だが、私が教える以前から自分の名前の漢字は分かっているようだったぞ」
「そうなんだ……ぁ、そういえば自分の名前の漢字は自分で言えたんだって秘書さんに聞いたような……聞かなかったような」
「みつき、どう書く?」
「俺の名前は簡単だよ、両方一年生で習うからね」
「書いて、みつき」
「はいはい。ペン貸して」
名前を書いてペンを返すと、荒凪はそれまでやっていたひらがなの練習を中断して俺の名前を書き始めた。
「あ……まぁいいか。荒凪、ここは突き出さないんだ」
「きゅるるる……」
紙の上に増えていく、下手くそな俺の名前。なんだかむず痒い。
「せんぱい、病院っていつ頃行くんすか?」
「ん、あぁ……午前中ならいつでもって。昼飯遅れないように早めに行こうかな、そろそろ行ってくるよ」
「ボクん家帰ってくるよね?」
「ぅ、うん……一応。じゃあ、荒凪くんお願い」
「私は水月の傍から離れられない。レイどの、荒凪の師の任を頼んでも構わないか?」
「いいっすよ。俺の学習させ速度をとくとご覧あれっす!」
レイはドンッと自分の胸を叩いた。
「荒凪くん行かなくていいのか? なんか、オカルト系の病院なんだろ?」
「荒凪くん怪我治ってますし……変な研究とかに付き合わされたら嫌だし。俺のコルセット外しとクンネと妹の抜糸だけ頼んできます」
「ペケレな。ぁ、そうだお前エペラ返せよ」
「……えっと」
「え、何、まさか壊した?」
「い、いえ! ただちょっと、血が……でも洗ったんで! よく洗ったので! ちょっと来てください!」
カサネと共に寝室へ行き、ベッド脇の棚に入れておいた巾着を取り出す。
「んなとこ入れてたのか」
「……あのー、俺、その、荒凪くん取り返すのに血が必要で……俺がそれで手ぇ切ったんで、ちょっと血で汚れて……洗いましたし見た感じ汚れてはないんですけど、ブラックライトとかは当てないでくださいねっ?」
「んな中古フィギュアみてぇな注意喚起すんなよ」
「後、俺が自傷したってのは絶対誰にも言わないでください! オネシャス!」
「……まぁ、いいけど」
「ありがとうございます! 流石話の分かるお方!」
カサネはため息をつきながら巾着からナイフを取り出し、変わった紋様の描かれた鞘を外し、黒曜石の刀身を電灯に翳した。
「……欠けも汚れもねぇな。上出来」
「ありがとうございますッ!」
「…………なぁ、鳴雷くん。無事に返すって約束守ってくれたんだ、俺も秘密にするって約束は守っけどよぉ……鳴雷くんが、痛い思いすんの……俺も嫌だからな。他の子達ほど鳴雷くんに思い入れはねぇよ? 多分、まだ、ねぇけど…………恋人って自覚はある、怪我はしないで欲しい。要するに……ぁー、ゃ、なんて言えばいいのか分かんねぇけど……その」
「……はい」
「とりあえず、改めて、おかえりなさい……無理、すんなよ。これからは……」
「はい!」
「ん……よし、話、終わり! さっさと病院行ってこい! したっけ~」
巾着の中に戻したナイフをポケットに突っ込み、俺に手を振りながらカサネは部屋を出ていった。彼からの想いが着実に強くなってきているのを感じる、この調子だ。
「カサネ先輩はまたソファで寝るらしいから、レイはまたベッド入れてもらいな」
「嫌っす! せんぱいばっかり床で寝させらんないっすよ」
「そうだねぇ、ボクも水月と寝たいし」
「ありがとう。けど三人しか寝れないんだろ? 俺がその枠取っちゃうのはダメだよ」
優しい彼氏達を持って俺は幸せだ。その気持ちだけで十分お釣りが来る、今ならたとえ何も敷かず直に床に寝たって幸せを感じられるだろう。
「ボク、水月、セイカくんでいいよね?」
「そうっすね。荒凪く~ん、俺と一緒に寝るっす! コンちゃんも一緒にどうっすか? 人外サンドっす」
「ワシふーちゃんと寝る」
「おーい、俺を無視するな~?」
ベッドで寝ろという気遣いと優しさは向けてくれるのに、俺を無視して部屋割りならぬ寝床割りを決めていくのはどういう了見だ?
「だって水月遠慮しかしないんだもん」
長く逞しい腕が絡みつく。俺を軽々と持ち上げたサンはそのままベッドに寝転がり、俺ごとタオルケットを被った。
「ちょっ……」
「ボクと寝るの嫌?」
「まさか……」
ならいいじゃん、と聞こえていないはずの声が聞こえた気がした。力強く抱き寄せられて、諦めてサンに身を任せた。
「荒凪、鳴雷の隣に上げてくれ」
「きゅ」
義足を外したセイカを荒凪は丁寧に四本の腕で抱き上げ、ベッドに下ろした。
「荒凪くん、一緒に寝るっすよ」
「寝るっす」
レイの口調を真似ながら、レイが整えた寝床に荒凪が身を横たえる。
「灯りを消すぞ」
「言えば消えるけど……ありがと~」
サキヒコがドア横のスイッチを押すと暗闇が訪れる。俺はサンに抱き締められながらセイカを抱き寄せ、腕枕をしてやった。昨日と同じ体勢だ、歌見がサンに代わっただけ。
(だけ、と言っても結構寝心地は違いますが)
頭を乗せている二の腕の厚みだとか、後頭部に触れる胸筋の硬さだとか、違うところは多々ある。
「鳴雷……」
「ん?」
「……もっと、強く」
「強く……? こう?」
抱き締める腕の力を強めるとセイカは満足そうに小さな声で「うん」と呟いた。可愛い……自然と更に腕に込める力が強くなる。
「んっ……もういいってば、苦しい」
「あ、ごめん……」
程よい力加減を心がけてセイカを抱き締めながら眠った。
朝食を食べて、後片付けをして、荒凪の文字の勉強の様子を見る。
「まだひらがなを教えている最中だが、私が教える以前から自分の名前の漢字は分かっているようだったぞ」
「そうなんだ……ぁ、そういえば自分の名前の漢字は自分で言えたんだって秘書さんに聞いたような……聞かなかったような」
「みつき、どう書く?」
「俺の名前は簡単だよ、両方一年生で習うからね」
「書いて、みつき」
「はいはい。ペン貸して」
名前を書いてペンを返すと、荒凪はそれまでやっていたひらがなの練習を中断して俺の名前を書き始めた。
「あ……まぁいいか。荒凪、ここは突き出さないんだ」
「きゅるるる……」
紙の上に増えていく、下手くそな俺の名前。なんだかむず痒い。
「せんぱい、病院っていつ頃行くんすか?」
「ん、あぁ……午前中ならいつでもって。昼飯遅れないように早めに行こうかな、そろそろ行ってくるよ」
「ボクん家帰ってくるよね?」
「ぅ、うん……一応。じゃあ、荒凪くんお願い」
「私は水月の傍から離れられない。レイどの、荒凪の師の任を頼んでも構わないか?」
「いいっすよ。俺の学習させ速度をとくとご覧あれっす!」
レイはドンッと自分の胸を叩いた。
「荒凪くん行かなくていいのか? なんか、オカルト系の病院なんだろ?」
「荒凪くん怪我治ってますし……変な研究とかに付き合わされたら嫌だし。俺のコルセット外しとクンネと妹の抜糸だけ頼んできます」
「ペケレな。ぁ、そうだお前エペラ返せよ」
「……えっと」
「え、何、まさか壊した?」
「い、いえ! ただちょっと、血が……でも洗ったんで! よく洗ったので! ちょっと来てください!」
カサネと共に寝室へ行き、ベッド脇の棚に入れておいた巾着を取り出す。
「んなとこ入れてたのか」
「……あのー、俺、その、荒凪くん取り返すのに血が必要で……俺がそれで手ぇ切ったんで、ちょっと血で汚れて……洗いましたし見た感じ汚れてはないんですけど、ブラックライトとかは当てないでくださいねっ?」
「んな中古フィギュアみてぇな注意喚起すんなよ」
「後、俺が自傷したってのは絶対誰にも言わないでください! オネシャス!」
「……まぁ、いいけど」
「ありがとうございます! 流石話の分かるお方!」
カサネはため息をつきながら巾着からナイフを取り出し、変わった紋様の描かれた鞘を外し、黒曜石の刀身を電灯に翳した。
「……欠けも汚れもねぇな。上出来」
「ありがとうございますッ!」
「…………なぁ、鳴雷くん。無事に返すって約束守ってくれたんだ、俺も秘密にするって約束は守っけどよぉ……鳴雷くんが、痛い思いすんの……俺も嫌だからな。他の子達ほど鳴雷くんに思い入れはねぇよ? 多分、まだ、ねぇけど…………恋人って自覚はある、怪我はしないで欲しい。要するに……ぁー、ゃ、なんて言えばいいのか分かんねぇけど……その」
「……はい」
「とりあえず、改めて、おかえりなさい……無理、すんなよ。これからは……」
「はい!」
「ん……よし、話、終わり! さっさと病院行ってこい! したっけ~」
巾着の中に戻したナイフをポケットに突っ込み、俺に手を振りながらカサネは部屋を出ていった。彼からの想いが着実に強くなってきているのを感じる、この調子だ。
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