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おまけ
番外編 可愛くある覚悟
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※ハル視点 ハルの昔のお話です。
物心つく前から俺は姉達のオモチャだった。六歳上の長女 始冬、三歳上の次女既秋、一歳上の三女 終夏、彼女達は俺で遊んだ。もう着なくなった自分の服を着せたり、髪型を変えたり──俺は着せ替え人形だった。
「もう夏だし、ハル髪切る? 思い切って坊主にしちゃおっか」
「え~!? やだ~!」
「美容院ごっこ出来ない~!」
「はげきら~い!」
「アンタ達には聞いてない! ハル、どうする?」
「まま~、えへへへ」
「はいはいママよ。あー、三歳児に聞くのが間違いね……まぁアンタ弄り回してる間はあの娘達大人しいから、坊主はやめとくか」
そんな調子で俺の髪が短くなることはなく、幼稚園児の頃からずっと長髪だった。母は小さい子に男も女もないだろうという考えで姉のお下がりを俺に着せていたから、俺を初見で男児だと見抜ける者なんて居なかった。
女の子の服を着て、女の子らしい髪型をして、女の子だと周りに勘違いされて、女の子に囲まれて育った俺が、世間一般的な男になれる訳がなかった。
「ハル~、アンタもメッシュ入れな~い?」
「姉ちゃんが白で私が黄色」
「私が青だから~、ハルは赤とかど~ぉ?」
「入れる~」
自分で選んだ服を買ってもらって、毎朝自分で服を選んで、自分で髪型を整えるようになった頃、俺は長髪のままスカートを履いていた。女装をしようだなんて考えてはいなかったし、自分は女だと思っていた訳でもない。俺は自分が男だと心底理解して納得して馴染んだまま、最も似合うと思った格好をしていただけだ。
「似合う似合う~」
「おそろメッシュ~」
「マジ四姉妹~」
「俺弟だってぇ~」
「似合うし可愛いんだけどさ~、学校大丈夫?」
「もう性別とか関係ないんだってイマドキ」
「始冬おばさ~ん」
「……? 別に大丈夫だけど」
「誰がおばさんだぶっ殺すぞ小娘!」
「ひゃあキレた!」
「や~ん怖ぁ~い!」
今思えば、一番上の姉が心配していたのは俺が男なのに女の格好をしていてクラスで浮いていないかだとか、虐められていないかだとか、そういうことだったのだろう。小学校の頃はそんなことはなかった、運が良かったのだろう、俺は女装に対しての世間の目を知らずに育った。
小学校を卒業し、中学校の説明会に行った。
「ここの制服可愛いよね~。このグレーベースのチェック柄のプリーツスカートがさぁ~、可愛いの! ねっねっお母さん、俺制服Bパターンがいい!」
男女ではなくABという表記でスカートとズボンが分かれていた、男女どちらの生徒もどちらを選んでもいいのだ。まぁ、制服のどちらを選んでもいいなんて建前を本気にしてスカートを選ぶような男、俺以外には居なかったのだが。
「スカートにするの?」
「うん!」
「……ズボンにしときなさい?」
「え~? なんで? 俺スカートのが似合うよ?」
「似合うとかじゃなくて、ハルは男の子でしょ?」
「どっち選んでもいいって書いてるじゃん。なら俺こっちがいい! スカートの方がヒラヒラして可愛いし~、このチェック柄もスカートの方が映えるんだよ~?」
「う~ん……今日決めなくてもいいみたいだから、もうしばらく考えてみよっか」
当時の俺は何故母がスカートという俺の選択に後ろ向きなのか、全く理解していなかった。しようともしていなかった。母のファッションセンスを疑っていた。
「ね~、姉ちゃん、俺スカートのが似合うよね~?」
「ハルは何でも似合うよ~」
「足綺麗なんだから出さなきゃ損損!」
「ホットパンツも良さげ~」
「……だよねっ!」
俺はスカートが履きたかった。女の子になりたいとか、女の子の格好をしたいとか、そういうのじゃない。ただただスカートが好きだった、似合うから。可愛い俺には可愛い格好が似合うから。姉達がそう俺に教えてくれたから。
「アンタらがハルに女装ばっかりさせるから制服までスカートにするとか言い出すんじゃない!」
「わ、私達のせいにしないでよ~!」
「ママだって私達のお下がり着せてたじゃん!」
「いいじゃん好きなの着せたげれば!」
「それで虐められたらどうするのよ!」
「そん時は殴り込んでやるから大丈夫だって!」
「そ~だそ~だ~。始冬ねぇの鉄拳最強~!」
「好きな格好して何が悪いのよ!」
「あぁっ、もう……! 好きなことだけしてられる訳ないじゃない、少しは周りに合わせて息を潜めることも覚えないと……アンタらもそうよ、ちょっと他より可愛いからって調子乗ってやりたい放題!」
「調子乗ってなんかないもん!」
「やりたい放題なんかしてないもん!」
「ちょっとじゃないもんだいぶ可愛いもん!」
学校説明会があった晩、そんな言い争いがリビングから聞こえてきた。俺は耳を塞いでベッドに潜って、翌日中学校に提出する用紙の制服を選ぶ欄のBの方に丸をつけた。
届いた制服は可愛くて、あの夜生まれた少しの葛藤や不安は吹き飛んだ。スカートを履いて門をくぐった入学式の日、期待と不安が胸の中で渦巻いていた。
「あの子めっちゃ可愛い……!」
「足細っ、片手で握れそー……」
「腰の位置が違ぇよ腰の位置が……!」
微かに聞こえてくる男子生徒の声が俺を浮かれさせた。当時の俺は男には全く興味がなかったけれど、可愛いと噂されればそりゃ嬉しいに決まっている。
クラスが決まって、自己紹介をして、男女共に可愛い可愛いと持て囃されて、俺は母の心配は杞憂に終わったなと安堵していた。
「よろしく~、ハルって呼んで~」
すぐに俺は女子と仲良くなった。最終的に俺が落ち着いたグループは、数日後に確定するスクールカースト最上位のグループだった。スクールカーストは顔と明るさが重要だから、俺が最上位なのは当然のことだった。
「霞染、ちょっと」
入学式の翌日の休み時間、担任の教師に呼び出された。
「は~い。何ですか~? せんせ~」
「お前、体育の時は……男子の方に入るのか? 女子の方か?」
「え? 内容違うんですか~?」
「毎回のことで言えばグラウンドの周回数とかが違うかな。内容の違いは……一番大きいので言えば、男子は柔道、女子はダンスがあるぞ」
「ダンスやりたいな~……」
「じゃあ女子の方だな。体育の先生には伝えておくよ」
「ありがと~ございま~す」
その時も俺は何も疑問には思わなかった。せいぜい何故俺だけ個別で聞かれたのだろうとか、一人一人呼び出して聞いているのだろうかとか、その程度だ。
「あ、着替えは……えーっと、どうしようかな」
「更衣室ないんですか~?」
「いや、あるけど……女子の方に入るのはやっぱりまずいだろ」
「……? そりゃそうじゃん、激ヤバじゃん。俺男なんだしさ~、男子更衣室ダメなの~?」
「え、逆に……男子更衣室でいいのか?」
「ダメな理由なくないですか~?」
「…………ダメ、だろ。お前がよくても……男子共が色々と大変だろ……ちょっと考えておく」
「……? は~い」
俺は中学校三年間、男女どちらの更衣室にも一度も入れてもらえなかった。多目的トイレで着替えさせられた。トイレも多目的トイレ以外の使用は禁止されていた。
「なんで俺だけ~……」
この扱いの理由をちゃんと理解するまでにはしばらくかかった。
俺が意識してそうしていた訳ではなかったけれど、中学校での俺はほぼ女子だった。姉達と接するのと同じように女子グループでお喋りを楽しみ、女子の体育に参加し、男子達とはほぼ関わらなかった。
楽しく過ごしていた。母の心配は杞憂だった。俺は俺の好きな格好で好きなように過ごしていた。女子との関わりが増える中、自然と彼女が出来たけれど、友達だった頃となんら変わらなくて、自然とその関係は消滅した。そんなことが何度かあった、中学生の恋愛なんてそんなもんだと思う。
「はぁ……このバッグ欲しいな~」
「可愛いよねーそれ」
「ね~。アンタ見る度バッグ違うけど~、なんでそんな色々買えんの~? 使ったらすぐ売る系~?」
「いいバイトあるの、知りたい?」
「知りたい知りたい」
中学校一年生の秋頃だったか、教室でファッション雑誌を見ながら喋っている最中、友人がとあるバイトのことを教えてくれた。中学生に出来るバイトなんてあるのかと半信半疑の俺を、彼女は説明するより体験した方が早いからとろくに説明しないまま、そのバイトへと連れて行った。
「やっほーおじさん、一昨日ぶり」
「あぁ、待ってたよ。その子は?」
「友達。一緒でもいい? この子の分は要らないから」
「いいよ、可愛い子は大歓迎だ」
制服のままカフェで中年男性とお茶をする、バイトの内容はたったそれだけだった。別に面白い話をする訳でもない、他愛のない世間話をしただけだったのに、友達は万札を何枚ももらっていた。
「…………なんで!?」
バイトが終わり、おじさんの姿が見えなくなってから俺はそう叫んだ。
「すごいっしょ」
「すごいすごい! なんで? なんで~? なんか種あんの?」
「ないの。あのくらいのおじさんは若い女の子とお茶したくて、お金いっぱい出してくれるの」
「……なんで?」
「キャバクラとかあるじゃん? アレよりは安上がりだし、アレより若い子と話せるからじゃない?」
「アレはやっぱり……なんか、話術とかあるんじゃないの?」
「だからプロよりは安め。一晩で何十万何百万って言うじゃん? でもほら、私らは一回数万円」
「ふーん……? 納得は出来ないけど理解は出来た! どうやったらこのバイト出来るの?」
「えっとね、SNSで、パパ活のハッシュタグがあって──」
俺はそうしてパパ活を知った。
新しくアカウントを作ってパパ活を始めた。男の場合はママ活をするといいと言うのも途中で知ったのでそちらにも手を出したが、女の子っぽい男の子と会いたいという女性は少ないようで、あまり振るわなかった。
「こんにちは~、はじめまして。カスミで~す」
当時の俺はバカだった、けれど本名そのままでパパ活をするほどバカではなかった。初春ではなく苗字の頭文字を取って、あたかも下の名前のように名乗っていた。
「いや~カスミちゃん可愛いねぇ、男子達がほっとかないんじゃない?」
「え~、そんなことないですよ。なんかむしろぉ、避けられてるって感じぃ」
「へぇー……? 可愛過ぎて気後れしてるのかなぁ」
カフェでそんな話をするだけで俺は中学生にとっての大金を手に入れた。美容院代も、服代も、アクセ代も、母にねだる必要はなくなった。
「人生楽勝~!」
時給何円なんてバイトの募集ポスターを見ると笑えた。話すだけで、それも褒められて、短時間で大金を稼げる。バカな中学生がハマらない訳がない。
「今日は隣に座ってもいいかな? お金多めに渡すから」
ある日、常連客にそんなことを言われた。
「隣? うん」
「あぁ……なんかいい匂いまでするねぇ、髪の毛サラサラ。この一筋だけ色変えてるの、えーと、なんて言うんだっけ」
髪に触られるのは不快だったけど、多めにお金をくれるのだからと我慢した。
「メッシュ?」
「そうそうメッシュ……オシャレだね。にしてもカスミちゃんは足細いなぁ」
「……っ!? ちょっ」
太腿に手を置かれ、不快感と恐怖と困惑で思考が止まった。
「おじさんはもう少しお肉ついてた方が好みかな」
「……も、もぉ~、あんまり触っちゃヤダ! えっち! 太ってる方が好みなら、このパフェ頼んでい~い?」
「しょうがないなぁ」
その日は髪と足に少し触られただけで終わったし、約束通りお金も多めにもらった。でも、今までのような「楽に稼いだ感」とでも言うべきなのか、爽快感のようなものはなかった。
「えー? ちょっと触らせただけでお金増えるんならいいじゃん」
パパ活を紹介してくれた友人に相談すると、そう言われた。
「そうかなぁ……? でも気持ち悪いしぃ」
「んー……ヤバいおっさんってたまに居るからね~。ヤバそうだったら切っちゃえば?」
「切る?」
「ブロックブロック。相手はこっちの本名も家も知らないんだからそうすりゃもう会うこともないって」
それもそうだ。
「一人二人切ったって大丈夫っしょ? モテモテみたいじゃん」
「まぁね~」
「……隣のクラスの子がアンタに客盗られたって言ってたよ」
「えっマジ? 嘘~……知らなかった、どの子? どのおじさん?」
「…………やめなよ~? 返すとか謝るとか考えんの。男に魅力で負けて、その上詫びられてって……むしろ、すっげぇムカつくし」
「……そ、そう? そうかなぁ……気を付けよ」
何人かのパパ活相手を切った。理由はみんなほとんど同じ。パパ活を何度か繰り返すと彼らは決まって身体に触れてくる、当時の俺にはその意味がよく分かっていなかった。
「明日は私ぃ、彼氏とデートだから」
「私も~。だからパパんとこ行けな~い」
両親はもう随分昔に離婚していたけれど、子供だけは定期的に父に会うと決まっていた。今月もその日が近付いてきたのだが、その前日に一番上と二番目の姉がデートを理由にドタキャンしてきた。
「えぇ~!? そんなぁ……ついねぇは?」
「ごめんねハルぅ、私映画予約しちゃってて……」
「デート?」
「一人でだけど……予約特典週変わりだから毎週行かなくちゃいけなくて……」
「もぉ~! このオタクぅ! 映画会社の金ヅルぅ! いいもん俺一人で行くもん! 美味しいもの食べて、服とかも買ってもらうんだから!」
三番目の姉は何度も観た映画をもう一度観るなんてふざけた理由。そんな訳で俺は一人で父に会うことになった。
「三人とも来ないのか……はは、まぁ……もうお父さん嫌いになる歳だもんなぁ」
「姉ちゃん達薄情だよね~。あ、ウニ頼んでいい~?」
「好きに食べなさい、四人分だと思っていっぱい下ろしてきたから」
「やったぁ!」
回転寿司で高いネタばかりをお腹がはち切れそうなくらいにいっぱい食べた。パンパンに張ったお腹を撫でながら、デートだの映画だのを理由に断った姉達をバカにしていた。
「お腹苦しい……ちょっと休んでから行こ~」
「あぁ、いくらでも待つよ。なぁハル、お姉ちゃん達の写真とかないか? 最近のあの子達の様子、全然知らないんだよ」
「四人で撮ったのあるよ~、加工入ってるけどぉ」
「どれどれ……へぇ、随分大人っぽくなったなぁ」
写真を見て目元を緩める父は嬉しそうな、寂しそうな表情に見えた。
「お母さんの様子はどうだ?」
「別にフツ~」
「そうか、昔から強い人だったからなぁ……お父さんいらないって感じで……まぁホントに要らなかったから捨てられたんだが、ははは…………はぁ」
「……お父さん再婚とかしないの~?」
「そんな気になれないよ……お母さん、いい相手いそうなのか?」
「いなさそう~」
安心したように深く息を吐く父を見て、未だに母に未練を持っているのだと察した。
「お父さんお母さん好きだよね~」
「まぁ、一度は結婚したくらいだしな」
「確かに顔はいいけどさ~、女の子的な可愛げはないって言うか~、中身おっさんって言うか~……コレ俺ら産んだから?」
「いや、昔から割とそういう感じ」
「へぇ~……? どこ好きだったの~? 顔?」
両親の馴れ初めなんて聞きたくない、という子供は多いだろう。でも俺は、同居時代をほとんど覚えていないくらい昔に離婚した彼らに、特に父に対し、あまり近さを覚えてはいなかったのもあってか、クラスメイト同士での恋バナを楽しむ感覚だった。
「顔、まぁ、顔好きだけど……うん、顔だな。強さも好きだったけど、それは、なんだろうな……付き合ったら、結婚したら、家族になったら、いつか弱いところを見せてくれるんじゃないかって、そういうの期待してたからかもしれない」
「……ん~?」
「ハルにはまだ分かんないか。誰にでも甘える人より、自分だけに甘えてくれるような人がいいんだ」
「あ~……?」
当時の俺にはよく分からなかった。でも、今の俺なら、いつも大勢の彼氏をときめかせ、楽しませている水月に甘えられる快感を知った俺になら、分かる。あの瞬間に覚える愛おしさと優越感はたまらない、父が味わいたがったのも納得出来る。でも父は相手が悪かった。
「四人も子供居たって全然頼ってきてくれない……弱みをみせたり甘えたりなんて、してくれなかったんだ」
母は本当に強い人だった。少なくとも、誰に対してもそう見せていた。姉も俺も誰も母の弱い姿は知らない、酒に酔った情けない姿は知っているけれど、酔っても嘆きを聞かせてきたりはしなかった。
「お父さん、要るのかなぁってなっちゃって……要らないからあっさり別れたのか、ハハ……」
相手が悪かったと言ったばかりだけれど、父は甘えられたいという願望を叶えられるタイプではそもそもなかったのかもしれない。自分より弱い人に甘える者は居ない、父はいつでも弱く見えた。助けてやりたいと思わせる何かがあった、息子である俺ですらそう思わさせられた。
「……なんかごめんね~? 聞いちゃって~」
「いやいやいいよ……だいぶ考え整理出来たし」
「お詫びに甘えてあげちゃ~う! ねっねっパパぁ、欲しい服あるんだ~」
父の対面に座っていた俺は席を立ち、父の腕に抱きついた。こんなこと今までしたことがなかったけれど、父の甘えられたい願望を叶えてやりたくなった俺には、ひっついておねだりするくらいしか思い付かなかったのだ。
「…………」
喜んでくれると心底信じて、父を見上げた。父は真っ黒な目で俺を見下ろしていて、表情は抜け落ちていた。
「……ありがとうな、ハル」
すぐにいつもの困ったような笑顔に変わったから、当時の俺は気にしないことにした。怖かったから、見なかったフリをした。急に抱きついたから驚いたんだろうとか、そんなふうに納得しようとしていた。
「それじゃあそろそろデパートにでも行こうか」
「うん! 行こ行こ~! 姉ちゃん達へのお土産とか要らないから俺に全部使ってよ!」
今の俺には分かる、あの表情は欲情した時のものなのだと。本当に欲が刺激された時、眉尻を下げたり口角を上げたりなんてしないんだ。瞳孔が膨らんで目が真っ黒になって、表情を整える余裕を失くすんだ。
あの顔はとても怖い。気持ちが悪い。雄である以上俺も同じ顔をしたことがあるのかもしれない、自分では分からない、分からないのも怖い。分かることが少なくて、怖いことが多過ぎて、自分も男なのに男が怖い。
水月はよくあの顔になる、俺は彼の美しいヘーゼルの瞳が好きなのに、すぐ瞳孔が膨らんで目を黒くしてしまう。でも彼はそんな顔をしても俺を襲ったりしない、恋人なら多少強引に迫ることもあるはずなのに、彼はそれをしない。だから大好き。自分の欲望を耐えて俺の心を優先してくれるところが、大好き。きっとそれも紐解けば優越感。甘えられるのが好きなのと同じ、特別扱いされているんだと、自分は大切に扱われる存在なのだと思わせてくれるから、心地いいだけなんだ。
…………父は、俺をデパートに連れてきて、色んな物を買ってくれた。服もアクセも、俺が欲しいと言ったものはほとんど二つ返事で買ってくれた。
「これ超欲しかったんだ~! ありがとお父さん!」
「……あぁ。もうないか?」
「ん~……うん! ほんとにありがと~」
「…………もう一つ行かないか? お前に似合いそうな服があったんだ」
「え、なになに~?」
父が提案した店は俺が今まで回ってきた店よりワンランク上のブランドだった。少しの緊張と憧れの目で店内を見回しながら、真っ直ぐに進んでいく父を追った。
「これなんだが、どうだ? 着ないか?」
「え、可愛い~! 買ってくれるのっ?」
「あぁ、ぜひ着て見せて欲しい。買ってやるからこの場で着替えてくれ」
「え~、更衣室借りていいのかな~……? その辺の交渉はお父さんやってね、俺そういうの苦手~」
素朴ながら丁寧な縫製による上品さを漂わせるシルエットが俺を夢中にさせた。俺はすぐに父おすすめの白いワンピースに着替えて、父がくれたハイヒールの白い靴を履いた。
「着替え完了~、お父さんセンス最高!」
「…………」
「どーぉ、似合うっしょ~」
「………………コヨミ」
「お父さ~ん? どしたの?」
ボーッと俺を眺めている父の袖を引くと、彼はハッとして足早に店を去った。
「悪いな、あんまりお母さんに似てたから……」
「そなの?」
「あぁ、娘が三人居るのに一番似てるのがお前だなんて不思議な話だ」
「俺姉ちゃん達と結構似てると思うけどな~」
「……昔、そんな服を贈ったことがあってな」
「お母さんに? へぇ~……?」
この時、俺は「お父さんちょっとキモいな」と呑気に思っていた。口に出せば何か変わっていたかもしれない。
「そろそろ帰るか。結構な道のりだし、トイレ行っとくか?」
「うん」
「……あぁこら待て、そんな格好で男子トイレに入るな。みんなびっくりするぞ」
「え~、でも女子トイレとか犯罪じゃん」
「多目的使いなさい」
「先生みたいなこと言う~」
身体的理由がある訳でもないのに多目的トイレを使うのは少し気が引けた。けれど、誰も入っていないし、入ろうとする人も居ない。さっさと使ってさっさと出ようと考えて、俺は引き戸を開けた。
「……え? お父さん? なんで入ってきてっ、わっ!?」
トイレに入ってきた父は俺を軽く突き飛ばし、よろけた俺の背後に回って俺を抱き締めた。
「はぁっ、はぁ……コヨミ、コヨミっ……」
「お父さん! 離して! 痛いっ……ちょっ、どこ触って、なんなのマジで!」
「……っ、クソ、あちこち硬いな……顔が似てても男じゃ、あぁでも、あぁ……似てる、コヨミぃっ」
「ひっ……!?」
色んなところをまさぐられて、お尻に硬いものを擦り付けられて、俺はようやく父が俺にしようとしていることを察した。
「や、やだっ! 離して! 離せっ! 誰かぁっ!」
無我夢中で暴れて父の腕から逃れた。
「助けてっ、助けてぇ!」
布が一部裂け、肩紐がズリ落ちたワンピースを着た、乱れた髪の裸足の少女。多目的トイレからそんなものが飛び出してくれば、大抵の者は事態を察する。
父はすぐに客達に取り押さえられ、俺は誰かが被せてくれたジャケットに閉じこもって、その人達に少年だと悟られずに済んだ。
父は二度と元家族に会えなくなった。俺は父が買ってくれた服を全て捨てた。二番目の姉がもったいないと漏らして一番上の姉に脳天を拳で殴り抜かれていた。
「…………ぁ」
学校を数日休まされて、暇な時間を過ごしているとパパ活相手からメッセージが届いた。どうやら臨時収入があったらしく、近いうちにどうか……と。
「パパ……」
本当の父親は、息子にかつての妻の面影を見出して襲いかかる最低の変態だった。今までの優しかった父の全てが気持ち悪く思えて、俺はきっと父性に飢えていた。だから、登校するようになってすぐ放課後に約束を取り付けた。
「やぁカスミちゃん」
「こんにちは~……」
「元気ないね?」
「ちょっと怖い夢見ちゃって~」
この日会ったパパは、以前会った時と変わらない様子だった。パフェを奢ってもらって、他愛のない話をするうちに少しリラックスしてしまった。
「楽しかった~、じゃあまた……」
「待って待ってカスミちゃん」
「あっ、お手当て忘れてた。えへへ……今日はいくらくれるの?」
「……十万でどうかな?」
「じゅうま…………えっ!?」
「この後、もう少し付き合ってくれたらね」
「……二軒目? え~、ん~……でも俺七時までには帰んないと」
「十万いらないの?」
「欲しい! お母さんに電話するからちょっと待ってて」
母には友達と遊びに行くと伝えてある。少し遅れると連絡を入れて、俺は男に着いて行った。ちょっとしたバーにでも行くのだろうと思っていた、飲酒を勧められたらどう断ろうかなんて考えていた。
「…………え?」
「どうしたの? カスミちゃん」
「ゃ、あの……ここ、ラブホじゃん……流石に知ってる」
「……十万じゃ無理? いくらならいい?」
「い、いいって……何が?」
「いくら出せばヤらせてくらるの? もう結構貢いできたよね、まだ足りない?」
「は……? え…………えっ、と……俺、男……」
「知ってるよ、隠してたつもりだったの? 近くで良く見れば分かるよ。女の子みたいに可愛い男の子とか、ただ可愛い女の子よりレアだから少しくらいなら奮発してあげてもいいよ。えー……十二、いや、もういっちゃえ、十五万! どう?」
「…………っ、す、すみません帰ります!」
「あっ!? おい! 待て!」
夜でも明るい道を必死に走った。後ろから聞こえる男の罵倒の声には耳を塞いだ。
その日は夕飯も食べず部屋にこもった。父に襲われかけたこと、パパ活相手に言われた「女の子よりレアだから奮発する」という言葉、それらは俺に男から見ても性的魅力があることを示していた。
「…………っ、ぉえっ」
気持ち悪かった。男なのに男に性的な目で見られる違和感、嫌悪感、恐怖、その全てが俺の吐き気を煽った。翌日も食事が喉を通らず、また学校を休まされた。
次の日も休んで、その次の日、俺はジャージを着て登校した。スカートを履くのが怖くなっていた。それまではステータスのように感じていた男達の視線の数が、そのまま吐き気へと繋がった。
「おはよぉ~……」
教室に入ってすぐ、違和感を覚えた。妙に静かで、友達が返事をしてくれなかった。
「……?」
不思議に思いつつ席に着いてすぐにメッセージが送られてきた。俺は鞄を机に置いたままスマホを持ち、それを確認した。
『これアンタ?』
『画像が送信されました』
ラブホテルの前で中年男性と話す俺が写っていた。いつ撮られたのか、全く気が付かなかった。
『値段気に入らなくて揉めたんだって?』
『値段交渉は事前に済ませとけっつったじゃん』
『揉めるのはホテルん中ね』
『学校バレたらヤバいよー?』
『違う!』
『俺がしてるのはただのパパ活!』
『騙されたの!』
『ホテル行くなんて聞いてなくて』
『それで揉めたの!』
『は?』
『ウリなしであんな稼いでたの?』
『マジ?』
『なんで?』
『男のくせに』
『ウリなんてする訳ないじゃん!』
『話すだけでお金もらえるんだから』
『アンタがそう教えてくれたんだし』
『死ね』
突然の暴言の後、すぐにブロックされた。直接話しかけに行ったけれど、無視された。どうやら俺にパパ活を教えてくれた女友達は体を売っていたらしい、他クラスの女子も大抵は。それでいて彼女達の売り上げは俺よりも安いもので、俺は彼女達の反感を買った。
「…………」
前から薄らとその気配はあったけれど、俺が売春はしていないことが確定するとそれは表面化した。俺と休み時間に話してくれる子は居なくなった。
「霞染、おっさんとヤってるってマジ?」
「マジマジ、写真回ってきたもん」
「やべー、いくら女っぽくてもさぁ……」
「男とよくヤれるよな、どっちもさ」
拡散された写真を元に、男子達の間では『男のくせに男相手に売春をしている金の亡者のド変態』として噂が広まった。何度も違うと反論したけれど、無駄だった。真実なんてどうでもいいんだ、彼らは面白がりたいだけだから。
「おいこっち見てるぞ、狙われてんじゃね?」
「えマジ、キッモ。おい男とか無理だからな俺!」
「お前昔可愛いとか言ってたじゃん」
「いやビジュの話な。ガチは無理だわ」
ほどなくして俺は学校に通わなくなった。売春疑惑のある生徒の、それも男か女かもよく分からないデリケートそうな生徒のそんな問題には学校側も関わりたくなかったのか、不登校に何も言ってこなかったし、停学にも退学にもされなかった。ただ、放置された。
「…………」
自分でズタズタに切り裂いた制服のスカートをゴミ箱に詰めて、スキニーデニムを履いて鏡の前に立った。
「……男? 女? 女……かな、まだ…………やだな」
クローゼットをひっくり返しても男物の服は出てこなかった。学校指定のジャージくらいだったけれど、学校のものには袖を通したくなくて、姉を訪ねた。
「男物の服は流石にないかな……ごめんね」
「ん~……ないかな。寝間着着とけば?」
「コスプレでよければ一応あるけど……」
まともな男物の服はないみたいだった。母に頼んで、男物のシャツとデニムを買ってきてもらった。丈の違いやポケットが飾りでないことを初めて知った。
「髪が……ダメなのかな」
男物の服を着ても俺は女の子に見えた。長い髪がいけないのだと、ハサミを手に洗面所に立った。
「…………」
髪に刃を当てて、数分動かなかった。手に力が入らなかった、切りたくなかった、可愛くて綺麗な自慢の長髪を捨てたくなかった。
「朝風呂朝風呂~……ハル? アンタ何してっ、ちょ、え……お母さん!? お母さーん!? 来て!」
ハサミを握り締めて泣いていたら、自殺を考えていると勘違いした家族に大騒ぎされた。
引きこもって数ヶ月、母が外出に誘ってくるようになった。
「お母さんと買い物行こ? 何でも好きなもの買ってあげちゃう! どう?」
「……何も、いらない」
「そう…………お、お母さん久しぶりに初春とお買い物行きたいな~?」
「俺は、やだ」
「……そう」
最初のうちは優しく誘ってくれていたから断り続けていたけれど、そのうち激しく強引になっていって、俺はとうとう外へ連れ出された。そこで出会った、現人神に。
「すみませ~ん、テレビの取材なんですけど、今お時間いいですか? 仲良し親子にインタビューって企画でぇ」
「構わないけど……」
「よかったぁ!」
母の後ろをトボトボ着いて歩いていたら、母がテレビの取材を受けた。美人だから、まぁそういうこともよくある。俺は俯いて時間が過ぎるのを待っていた。
「こんにちは!」
なのに、そのインタビュアーは俺にも話しかけてきた。親子にインタビューなんだから当然だ、けれど当時の俺はとても驚いた。
「あ……こ、こんにちは」
「マジ神アイドルカミアで~す、知ってくれてます?」
「神とか自分で言うのね……」
「え、あっ、名前くらいは」
「ありがと☆ 綺麗な髪ですねー、俺天パだからストレートにちょっと憧れあるんですー……こんなに長いのに枝毛とか全然なさそうだし真っ黒だし、やっぱり手入れには力入れてたりします?」
「あ、うん……結構」
「やっぱり~! ヘアアレンジとかはしないんですかぁ?」
「……前は、してたけど」
インタビュアーのアイドルはキラキラしていて、可愛くて、今の俺には直視出来なかった。俺はまた俯いてしまった。
「男のくせに、そんなことしてるの……変かなって」
「え~? そんなことないですよぉ」
「……そういう理解者ポーズいらないから」
「ポーズ……? 僕今別にポーズキメてない……よく分からないけど、僕はあなたがとっても可愛いから、それでいいなぁって思います!」
「…………可愛い?」
「うん! すっごく可愛い! シンプルローポニも似合うけど、緩めのハーフアップとかもっと可愛いと思うし、服もそんなシンプルカッコイイのじゃなくてもっときゅるんってしたのでも可愛いし……あーでもクール系とかもいいかも! 背高いし足長いから~……んー、迷う! コーデ企画に変更したい!」
「前は、もっと……スカートとか履いてて」
「そうなの? えー見たかったぁ! そんなの絶対可愛いじゃん」
アンタみたいな可愛い子に言われても……と少し腐りつつも、俺はカメラロールに残る女装時代の俺を彼に見せた。
「超可愛い! 想像以上! すごーい……あ、まさかもう事務所入ってたりします?」
「しないけど……ねぇ、俺男なんだけど。こんな女装とか気持ち悪くない? 男のくせにこんなの……」
「どうして? 可愛いからいいよ、可愛いは正義! それに、女装って男の子にしか出来ないんだから、一番男らしい趣味だよ!」
「……ふっ、ふふ……何それ、屁理屈じゃん」
「あー笑顔可愛い~! クール系似合うとか思ってたけど笑顔そんなふうならやっぱりヒラヒラきゅるきゅる系もいいとか思っちゃう!」
「ぁ……そういう服も、着たことあって」
「え、写真あるの? 見せて見せて!」
「これ……」
「可愛い! すっごく可愛い!」
「…………あのー、カミアさん。企画忘れないで」
「あっ……ごめんなさい」
はしゃいでいたアイドルは少ししゅんとして、咳払いをして、また眩しい笑顔でマイクを握り直した。全ての仕草と表情が可愛くて、何だか羨ましくなった。
「今日はどこにお出かけで──」
「息子が引きこもっちゃって、リハビリになればと──」
インタビューを受ける母の隣で自分の服装を見下ろして、なんだか恥ずかしくなった。飾り気のない男物の白シャツなんて、全然可愛くない。このデニムもダメだ、俺のせっかくの美脚のシルエットを何一つ出せていない。
「今はインドア派なんですねー?」
「あっ……うん。ちょっと、やなこと続いて」
突然マイクがこちらに向いた。
「そっかぁ。無理しないでゆっくり休んでね、今はネットさえあればどこでも何でも出来るし、自分のペースでやってけばいいよ!」
「…………」
「こんなに可愛いんだから自信持ってね。絶賛売り出し中現役中学生アイドルのお墨付き! だよ。えへへ……」
「……うん。俺また……可愛い格好してみたくなった。ありがとう」
「えー! よかったぁ! あ、可愛いを発信してみたくなったら是非僕と同じ事務所に……」
「カミアさん、スカウトしないでください」
「だってぇ……事務所同年代の子居なくて寂しい……」
結局インタビューは放送されなかった。けれど、そんなことどうだっていい。憧れと目標の的が出来た、男の子だって可愛くていいんだって分かった。俺にはカミアの可愛さは目指せない、けど俺には俺の可愛さがある。
「やっぱ全捨てもったいなかったかな~……物に罪はなかったしぃ……制服も、はぁ……その時のテンションで行動すんのやめな~俺ぇ~」
事務所に行ったり、何かのオーディションを受けたり、そんなことはしなかった。可愛い服を着て外を歩いていると時々スカウトを受けたけれど、全て断った。欲情した目で見られるのも、非難の声を浴びせられるのも、まだ怖い。俺の可愛さはそんな人達のためにあるんじゃない、俺のためにあるんだ。
「そしてカミアのためにも……!」
あのアイドルのファンは薄汚いブスばっかり、なんてことになったらカミアのイメージダウンに繋がる。ライブに行くため、カミアのためにも、可愛くなるんだ。
「将来のお嫁さんのために……とかも、あー違う違う今のナシ!」
母みたいに芯があって強くて、俺くらい可愛くてメイクや服の話で盛り上がれる、最高に可愛い彼女がいつかきっと見つかる。その時のためにも可愛さを磨くんだ。
「──と、思ってたのにな~……」
「何だよ急にため息ついて」
「……みっつんメイク興味ないよね」
「あぁ」
「服は?」
「……マネキン買いかな。コーデ考えたりとか面倒臭いし」
「はぁ~……恋人とオシャレ談義すんの夢だったのになぁ~」
「な、なんかごめんな? 他、えー、ネザメさんとかミフユさんとか美容には一家言ありそうじゃないか?」
「しかもめっちゃ堂々と浮気してるし……」
「それはマジでごめん!」
昔の俺が見たら、なんで男と、それもよりによってなんでこんなヤツと、って喚くだろうな。
「……でも、大好き」
「え、急にデレるじゃん……もう、可愛いなぁ。俺も大好きだよ、ハル」
喚く昔の俺に言ってやりたい。水月は最高だって、人生で一番幸せだって、家族よりカミアより自分より、何よりも大好きなんだって。
物心つく前から俺は姉達のオモチャだった。六歳上の長女 始冬、三歳上の次女既秋、一歳上の三女 終夏、彼女達は俺で遊んだ。もう着なくなった自分の服を着せたり、髪型を変えたり──俺は着せ替え人形だった。
「もう夏だし、ハル髪切る? 思い切って坊主にしちゃおっか」
「え~!? やだ~!」
「美容院ごっこ出来ない~!」
「はげきら~い!」
「アンタ達には聞いてない! ハル、どうする?」
「まま~、えへへへ」
「はいはいママよ。あー、三歳児に聞くのが間違いね……まぁアンタ弄り回してる間はあの娘達大人しいから、坊主はやめとくか」
そんな調子で俺の髪が短くなることはなく、幼稚園児の頃からずっと長髪だった。母は小さい子に男も女もないだろうという考えで姉のお下がりを俺に着せていたから、俺を初見で男児だと見抜ける者なんて居なかった。
女の子の服を着て、女の子らしい髪型をして、女の子だと周りに勘違いされて、女の子に囲まれて育った俺が、世間一般的な男になれる訳がなかった。
「ハル~、アンタもメッシュ入れな~い?」
「姉ちゃんが白で私が黄色」
「私が青だから~、ハルは赤とかど~ぉ?」
「入れる~」
自分で選んだ服を買ってもらって、毎朝自分で服を選んで、自分で髪型を整えるようになった頃、俺は長髪のままスカートを履いていた。女装をしようだなんて考えてはいなかったし、自分は女だと思っていた訳でもない。俺は自分が男だと心底理解して納得して馴染んだまま、最も似合うと思った格好をしていただけだ。
「似合う似合う~」
「おそろメッシュ~」
「マジ四姉妹~」
「俺弟だってぇ~」
「似合うし可愛いんだけどさ~、学校大丈夫?」
「もう性別とか関係ないんだってイマドキ」
「始冬おばさ~ん」
「……? 別に大丈夫だけど」
「誰がおばさんだぶっ殺すぞ小娘!」
「ひゃあキレた!」
「や~ん怖ぁ~い!」
今思えば、一番上の姉が心配していたのは俺が男なのに女の格好をしていてクラスで浮いていないかだとか、虐められていないかだとか、そういうことだったのだろう。小学校の頃はそんなことはなかった、運が良かったのだろう、俺は女装に対しての世間の目を知らずに育った。
小学校を卒業し、中学校の説明会に行った。
「ここの制服可愛いよね~。このグレーベースのチェック柄のプリーツスカートがさぁ~、可愛いの! ねっねっお母さん、俺制服Bパターンがいい!」
男女ではなくABという表記でスカートとズボンが分かれていた、男女どちらの生徒もどちらを選んでもいいのだ。まぁ、制服のどちらを選んでもいいなんて建前を本気にしてスカートを選ぶような男、俺以外には居なかったのだが。
「スカートにするの?」
「うん!」
「……ズボンにしときなさい?」
「え~? なんで? 俺スカートのが似合うよ?」
「似合うとかじゃなくて、ハルは男の子でしょ?」
「どっち選んでもいいって書いてるじゃん。なら俺こっちがいい! スカートの方がヒラヒラして可愛いし~、このチェック柄もスカートの方が映えるんだよ~?」
「う~ん……今日決めなくてもいいみたいだから、もうしばらく考えてみよっか」
当時の俺は何故母がスカートという俺の選択に後ろ向きなのか、全く理解していなかった。しようともしていなかった。母のファッションセンスを疑っていた。
「ね~、姉ちゃん、俺スカートのが似合うよね~?」
「ハルは何でも似合うよ~」
「足綺麗なんだから出さなきゃ損損!」
「ホットパンツも良さげ~」
「……だよねっ!」
俺はスカートが履きたかった。女の子になりたいとか、女の子の格好をしたいとか、そういうのじゃない。ただただスカートが好きだった、似合うから。可愛い俺には可愛い格好が似合うから。姉達がそう俺に教えてくれたから。
「アンタらがハルに女装ばっかりさせるから制服までスカートにするとか言い出すんじゃない!」
「わ、私達のせいにしないでよ~!」
「ママだって私達のお下がり着せてたじゃん!」
「いいじゃん好きなの着せたげれば!」
「それで虐められたらどうするのよ!」
「そん時は殴り込んでやるから大丈夫だって!」
「そ~だそ~だ~。始冬ねぇの鉄拳最強~!」
「好きな格好して何が悪いのよ!」
「あぁっ、もう……! 好きなことだけしてられる訳ないじゃない、少しは周りに合わせて息を潜めることも覚えないと……アンタらもそうよ、ちょっと他より可愛いからって調子乗ってやりたい放題!」
「調子乗ってなんかないもん!」
「やりたい放題なんかしてないもん!」
「ちょっとじゃないもんだいぶ可愛いもん!」
学校説明会があった晩、そんな言い争いがリビングから聞こえてきた。俺は耳を塞いでベッドに潜って、翌日中学校に提出する用紙の制服を選ぶ欄のBの方に丸をつけた。
届いた制服は可愛くて、あの夜生まれた少しの葛藤や不安は吹き飛んだ。スカートを履いて門をくぐった入学式の日、期待と不安が胸の中で渦巻いていた。
「あの子めっちゃ可愛い……!」
「足細っ、片手で握れそー……」
「腰の位置が違ぇよ腰の位置が……!」
微かに聞こえてくる男子生徒の声が俺を浮かれさせた。当時の俺は男には全く興味がなかったけれど、可愛いと噂されればそりゃ嬉しいに決まっている。
クラスが決まって、自己紹介をして、男女共に可愛い可愛いと持て囃されて、俺は母の心配は杞憂に終わったなと安堵していた。
「よろしく~、ハルって呼んで~」
すぐに俺は女子と仲良くなった。最終的に俺が落ち着いたグループは、数日後に確定するスクールカースト最上位のグループだった。スクールカーストは顔と明るさが重要だから、俺が最上位なのは当然のことだった。
「霞染、ちょっと」
入学式の翌日の休み時間、担任の教師に呼び出された。
「は~い。何ですか~? せんせ~」
「お前、体育の時は……男子の方に入るのか? 女子の方か?」
「え? 内容違うんですか~?」
「毎回のことで言えばグラウンドの周回数とかが違うかな。内容の違いは……一番大きいので言えば、男子は柔道、女子はダンスがあるぞ」
「ダンスやりたいな~……」
「じゃあ女子の方だな。体育の先生には伝えておくよ」
「ありがと~ございま~す」
その時も俺は何も疑問には思わなかった。せいぜい何故俺だけ個別で聞かれたのだろうとか、一人一人呼び出して聞いているのだろうかとか、その程度だ。
「あ、着替えは……えーっと、どうしようかな」
「更衣室ないんですか~?」
「いや、あるけど……女子の方に入るのはやっぱりまずいだろ」
「……? そりゃそうじゃん、激ヤバじゃん。俺男なんだしさ~、男子更衣室ダメなの~?」
「え、逆に……男子更衣室でいいのか?」
「ダメな理由なくないですか~?」
「…………ダメ、だろ。お前がよくても……男子共が色々と大変だろ……ちょっと考えておく」
「……? は~い」
俺は中学校三年間、男女どちらの更衣室にも一度も入れてもらえなかった。多目的トイレで着替えさせられた。トイレも多目的トイレ以外の使用は禁止されていた。
「なんで俺だけ~……」
この扱いの理由をちゃんと理解するまでにはしばらくかかった。
俺が意識してそうしていた訳ではなかったけれど、中学校での俺はほぼ女子だった。姉達と接するのと同じように女子グループでお喋りを楽しみ、女子の体育に参加し、男子達とはほぼ関わらなかった。
楽しく過ごしていた。母の心配は杞憂だった。俺は俺の好きな格好で好きなように過ごしていた。女子との関わりが増える中、自然と彼女が出来たけれど、友達だった頃となんら変わらなくて、自然とその関係は消滅した。そんなことが何度かあった、中学生の恋愛なんてそんなもんだと思う。
「はぁ……このバッグ欲しいな~」
「可愛いよねーそれ」
「ね~。アンタ見る度バッグ違うけど~、なんでそんな色々買えんの~? 使ったらすぐ売る系~?」
「いいバイトあるの、知りたい?」
「知りたい知りたい」
中学校一年生の秋頃だったか、教室でファッション雑誌を見ながら喋っている最中、友人がとあるバイトのことを教えてくれた。中学生に出来るバイトなんてあるのかと半信半疑の俺を、彼女は説明するより体験した方が早いからとろくに説明しないまま、そのバイトへと連れて行った。
「やっほーおじさん、一昨日ぶり」
「あぁ、待ってたよ。その子は?」
「友達。一緒でもいい? この子の分は要らないから」
「いいよ、可愛い子は大歓迎だ」
制服のままカフェで中年男性とお茶をする、バイトの内容はたったそれだけだった。別に面白い話をする訳でもない、他愛のない世間話をしただけだったのに、友達は万札を何枚ももらっていた。
「…………なんで!?」
バイトが終わり、おじさんの姿が見えなくなってから俺はそう叫んだ。
「すごいっしょ」
「すごいすごい! なんで? なんで~? なんか種あんの?」
「ないの。あのくらいのおじさんは若い女の子とお茶したくて、お金いっぱい出してくれるの」
「……なんで?」
「キャバクラとかあるじゃん? アレよりは安上がりだし、アレより若い子と話せるからじゃない?」
「アレはやっぱり……なんか、話術とかあるんじゃないの?」
「だからプロよりは安め。一晩で何十万何百万って言うじゃん? でもほら、私らは一回数万円」
「ふーん……? 納得は出来ないけど理解は出来た! どうやったらこのバイト出来るの?」
「えっとね、SNSで、パパ活のハッシュタグがあって──」
俺はそうしてパパ活を知った。
新しくアカウントを作ってパパ活を始めた。男の場合はママ活をするといいと言うのも途中で知ったのでそちらにも手を出したが、女の子っぽい男の子と会いたいという女性は少ないようで、あまり振るわなかった。
「こんにちは~、はじめまして。カスミで~す」
当時の俺はバカだった、けれど本名そのままでパパ活をするほどバカではなかった。初春ではなく苗字の頭文字を取って、あたかも下の名前のように名乗っていた。
「いや~カスミちゃん可愛いねぇ、男子達がほっとかないんじゃない?」
「え~、そんなことないですよ。なんかむしろぉ、避けられてるって感じぃ」
「へぇー……? 可愛過ぎて気後れしてるのかなぁ」
カフェでそんな話をするだけで俺は中学生にとっての大金を手に入れた。美容院代も、服代も、アクセ代も、母にねだる必要はなくなった。
「人生楽勝~!」
時給何円なんてバイトの募集ポスターを見ると笑えた。話すだけで、それも褒められて、短時間で大金を稼げる。バカな中学生がハマらない訳がない。
「今日は隣に座ってもいいかな? お金多めに渡すから」
ある日、常連客にそんなことを言われた。
「隣? うん」
「あぁ……なんかいい匂いまでするねぇ、髪の毛サラサラ。この一筋だけ色変えてるの、えーと、なんて言うんだっけ」
髪に触られるのは不快だったけど、多めにお金をくれるのだからと我慢した。
「メッシュ?」
「そうそうメッシュ……オシャレだね。にしてもカスミちゃんは足細いなぁ」
「……っ!? ちょっ」
太腿に手を置かれ、不快感と恐怖と困惑で思考が止まった。
「おじさんはもう少しお肉ついてた方が好みかな」
「……も、もぉ~、あんまり触っちゃヤダ! えっち! 太ってる方が好みなら、このパフェ頼んでい~い?」
「しょうがないなぁ」
その日は髪と足に少し触られただけで終わったし、約束通りお金も多めにもらった。でも、今までのような「楽に稼いだ感」とでも言うべきなのか、爽快感のようなものはなかった。
「えー? ちょっと触らせただけでお金増えるんならいいじゃん」
パパ活を紹介してくれた友人に相談すると、そう言われた。
「そうかなぁ……? でも気持ち悪いしぃ」
「んー……ヤバいおっさんってたまに居るからね~。ヤバそうだったら切っちゃえば?」
「切る?」
「ブロックブロック。相手はこっちの本名も家も知らないんだからそうすりゃもう会うこともないって」
それもそうだ。
「一人二人切ったって大丈夫っしょ? モテモテみたいじゃん」
「まぁね~」
「……隣のクラスの子がアンタに客盗られたって言ってたよ」
「えっマジ? 嘘~……知らなかった、どの子? どのおじさん?」
「…………やめなよ~? 返すとか謝るとか考えんの。男に魅力で負けて、その上詫びられてって……むしろ、すっげぇムカつくし」
「……そ、そう? そうかなぁ……気を付けよ」
何人かのパパ活相手を切った。理由はみんなほとんど同じ。パパ活を何度か繰り返すと彼らは決まって身体に触れてくる、当時の俺にはその意味がよく分かっていなかった。
「明日は私ぃ、彼氏とデートだから」
「私も~。だからパパんとこ行けな~い」
両親はもう随分昔に離婚していたけれど、子供だけは定期的に父に会うと決まっていた。今月もその日が近付いてきたのだが、その前日に一番上と二番目の姉がデートを理由にドタキャンしてきた。
「えぇ~!? そんなぁ……ついねぇは?」
「ごめんねハルぅ、私映画予約しちゃってて……」
「デート?」
「一人でだけど……予約特典週変わりだから毎週行かなくちゃいけなくて……」
「もぉ~! このオタクぅ! 映画会社の金ヅルぅ! いいもん俺一人で行くもん! 美味しいもの食べて、服とかも買ってもらうんだから!」
三番目の姉は何度も観た映画をもう一度観るなんてふざけた理由。そんな訳で俺は一人で父に会うことになった。
「三人とも来ないのか……はは、まぁ……もうお父さん嫌いになる歳だもんなぁ」
「姉ちゃん達薄情だよね~。あ、ウニ頼んでいい~?」
「好きに食べなさい、四人分だと思っていっぱい下ろしてきたから」
「やったぁ!」
回転寿司で高いネタばかりをお腹がはち切れそうなくらいにいっぱい食べた。パンパンに張ったお腹を撫でながら、デートだの映画だのを理由に断った姉達をバカにしていた。
「お腹苦しい……ちょっと休んでから行こ~」
「あぁ、いくらでも待つよ。なぁハル、お姉ちゃん達の写真とかないか? 最近のあの子達の様子、全然知らないんだよ」
「四人で撮ったのあるよ~、加工入ってるけどぉ」
「どれどれ……へぇ、随分大人っぽくなったなぁ」
写真を見て目元を緩める父は嬉しそうな、寂しそうな表情に見えた。
「お母さんの様子はどうだ?」
「別にフツ~」
「そうか、昔から強い人だったからなぁ……お父さんいらないって感じで……まぁホントに要らなかったから捨てられたんだが、ははは…………はぁ」
「……お父さん再婚とかしないの~?」
「そんな気になれないよ……お母さん、いい相手いそうなのか?」
「いなさそう~」
安心したように深く息を吐く父を見て、未だに母に未練を持っているのだと察した。
「お父さんお母さん好きだよね~」
「まぁ、一度は結婚したくらいだしな」
「確かに顔はいいけどさ~、女の子的な可愛げはないって言うか~、中身おっさんって言うか~……コレ俺ら産んだから?」
「いや、昔から割とそういう感じ」
「へぇ~……? どこ好きだったの~? 顔?」
両親の馴れ初めなんて聞きたくない、という子供は多いだろう。でも俺は、同居時代をほとんど覚えていないくらい昔に離婚した彼らに、特に父に対し、あまり近さを覚えてはいなかったのもあってか、クラスメイト同士での恋バナを楽しむ感覚だった。
「顔、まぁ、顔好きだけど……うん、顔だな。強さも好きだったけど、それは、なんだろうな……付き合ったら、結婚したら、家族になったら、いつか弱いところを見せてくれるんじゃないかって、そういうの期待してたからかもしれない」
「……ん~?」
「ハルにはまだ分かんないか。誰にでも甘える人より、自分だけに甘えてくれるような人がいいんだ」
「あ~……?」
当時の俺にはよく分からなかった。でも、今の俺なら、いつも大勢の彼氏をときめかせ、楽しませている水月に甘えられる快感を知った俺になら、分かる。あの瞬間に覚える愛おしさと優越感はたまらない、父が味わいたがったのも納得出来る。でも父は相手が悪かった。
「四人も子供居たって全然頼ってきてくれない……弱みをみせたり甘えたりなんて、してくれなかったんだ」
母は本当に強い人だった。少なくとも、誰に対してもそう見せていた。姉も俺も誰も母の弱い姿は知らない、酒に酔った情けない姿は知っているけれど、酔っても嘆きを聞かせてきたりはしなかった。
「お父さん、要るのかなぁってなっちゃって……要らないからあっさり別れたのか、ハハ……」
相手が悪かったと言ったばかりだけれど、父は甘えられたいという願望を叶えられるタイプではそもそもなかったのかもしれない。自分より弱い人に甘える者は居ない、父はいつでも弱く見えた。助けてやりたいと思わせる何かがあった、息子である俺ですらそう思わさせられた。
「……なんかごめんね~? 聞いちゃって~」
「いやいやいいよ……だいぶ考え整理出来たし」
「お詫びに甘えてあげちゃ~う! ねっねっパパぁ、欲しい服あるんだ~」
父の対面に座っていた俺は席を立ち、父の腕に抱きついた。こんなこと今までしたことがなかったけれど、父の甘えられたい願望を叶えてやりたくなった俺には、ひっついておねだりするくらいしか思い付かなかったのだ。
「…………」
喜んでくれると心底信じて、父を見上げた。父は真っ黒な目で俺を見下ろしていて、表情は抜け落ちていた。
「……ありがとうな、ハル」
すぐにいつもの困ったような笑顔に変わったから、当時の俺は気にしないことにした。怖かったから、見なかったフリをした。急に抱きついたから驚いたんだろうとか、そんなふうに納得しようとしていた。
「それじゃあそろそろデパートにでも行こうか」
「うん! 行こ行こ~! 姉ちゃん達へのお土産とか要らないから俺に全部使ってよ!」
今の俺には分かる、あの表情は欲情した時のものなのだと。本当に欲が刺激された時、眉尻を下げたり口角を上げたりなんてしないんだ。瞳孔が膨らんで目が真っ黒になって、表情を整える余裕を失くすんだ。
あの顔はとても怖い。気持ちが悪い。雄である以上俺も同じ顔をしたことがあるのかもしれない、自分では分からない、分からないのも怖い。分かることが少なくて、怖いことが多過ぎて、自分も男なのに男が怖い。
水月はよくあの顔になる、俺は彼の美しいヘーゼルの瞳が好きなのに、すぐ瞳孔が膨らんで目を黒くしてしまう。でも彼はそんな顔をしても俺を襲ったりしない、恋人なら多少強引に迫ることもあるはずなのに、彼はそれをしない。だから大好き。自分の欲望を耐えて俺の心を優先してくれるところが、大好き。きっとそれも紐解けば優越感。甘えられるのが好きなのと同じ、特別扱いされているんだと、自分は大切に扱われる存在なのだと思わせてくれるから、心地いいだけなんだ。
…………父は、俺をデパートに連れてきて、色んな物を買ってくれた。服もアクセも、俺が欲しいと言ったものはほとんど二つ返事で買ってくれた。
「これ超欲しかったんだ~! ありがとお父さん!」
「……あぁ。もうないか?」
「ん~……うん! ほんとにありがと~」
「…………もう一つ行かないか? お前に似合いそうな服があったんだ」
「え、なになに~?」
父が提案した店は俺が今まで回ってきた店よりワンランク上のブランドだった。少しの緊張と憧れの目で店内を見回しながら、真っ直ぐに進んでいく父を追った。
「これなんだが、どうだ? 着ないか?」
「え、可愛い~! 買ってくれるのっ?」
「あぁ、ぜひ着て見せて欲しい。買ってやるからこの場で着替えてくれ」
「え~、更衣室借りていいのかな~……? その辺の交渉はお父さんやってね、俺そういうの苦手~」
素朴ながら丁寧な縫製による上品さを漂わせるシルエットが俺を夢中にさせた。俺はすぐに父おすすめの白いワンピースに着替えて、父がくれたハイヒールの白い靴を履いた。
「着替え完了~、お父さんセンス最高!」
「…………」
「どーぉ、似合うっしょ~」
「………………コヨミ」
「お父さ~ん? どしたの?」
ボーッと俺を眺めている父の袖を引くと、彼はハッとして足早に店を去った。
「悪いな、あんまりお母さんに似てたから……」
「そなの?」
「あぁ、娘が三人居るのに一番似てるのがお前だなんて不思議な話だ」
「俺姉ちゃん達と結構似てると思うけどな~」
「……昔、そんな服を贈ったことがあってな」
「お母さんに? へぇ~……?」
この時、俺は「お父さんちょっとキモいな」と呑気に思っていた。口に出せば何か変わっていたかもしれない。
「そろそろ帰るか。結構な道のりだし、トイレ行っとくか?」
「うん」
「……あぁこら待て、そんな格好で男子トイレに入るな。みんなびっくりするぞ」
「え~、でも女子トイレとか犯罪じゃん」
「多目的使いなさい」
「先生みたいなこと言う~」
身体的理由がある訳でもないのに多目的トイレを使うのは少し気が引けた。けれど、誰も入っていないし、入ろうとする人も居ない。さっさと使ってさっさと出ようと考えて、俺は引き戸を開けた。
「……え? お父さん? なんで入ってきてっ、わっ!?」
トイレに入ってきた父は俺を軽く突き飛ばし、よろけた俺の背後に回って俺を抱き締めた。
「はぁっ、はぁ……コヨミ、コヨミっ……」
「お父さん! 離して! 痛いっ……ちょっ、どこ触って、なんなのマジで!」
「……っ、クソ、あちこち硬いな……顔が似てても男じゃ、あぁでも、あぁ……似てる、コヨミぃっ」
「ひっ……!?」
色んなところをまさぐられて、お尻に硬いものを擦り付けられて、俺はようやく父が俺にしようとしていることを察した。
「や、やだっ! 離して! 離せっ! 誰かぁっ!」
無我夢中で暴れて父の腕から逃れた。
「助けてっ、助けてぇ!」
布が一部裂け、肩紐がズリ落ちたワンピースを着た、乱れた髪の裸足の少女。多目的トイレからそんなものが飛び出してくれば、大抵の者は事態を察する。
父はすぐに客達に取り押さえられ、俺は誰かが被せてくれたジャケットに閉じこもって、その人達に少年だと悟られずに済んだ。
父は二度と元家族に会えなくなった。俺は父が買ってくれた服を全て捨てた。二番目の姉がもったいないと漏らして一番上の姉に脳天を拳で殴り抜かれていた。
「…………ぁ」
学校を数日休まされて、暇な時間を過ごしているとパパ活相手からメッセージが届いた。どうやら臨時収入があったらしく、近いうちにどうか……と。
「パパ……」
本当の父親は、息子にかつての妻の面影を見出して襲いかかる最低の変態だった。今までの優しかった父の全てが気持ち悪く思えて、俺はきっと父性に飢えていた。だから、登校するようになってすぐ放課後に約束を取り付けた。
「やぁカスミちゃん」
「こんにちは~……」
「元気ないね?」
「ちょっと怖い夢見ちゃって~」
この日会ったパパは、以前会った時と変わらない様子だった。パフェを奢ってもらって、他愛のない話をするうちに少しリラックスしてしまった。
「楽しかった~、じゃあまた……」
「待って待ってカスミちゃん」
「あっ、お手当て忘れてた。えへへ……今日はいくらくれるの?」
「……十万でどうかな?」
「じゅうま…………えっ!?」
「この後、もう少し付き合ってくれたらね」
「……二軒目? え~、ん~……でも俺七時までには帰んないと」
「十万いらないの?」
「欲しい! お母さんに電話するからちょっと待ってて」
母には友達と遊びに行くと伝えてある。少し遅れると連絡を入れて、俺は男に着いて行った。ちょっとしたバーにでも行くのだろうと思っていた、飲酒を勧められたらどう断ろうかなんて考えていた。
「…………え?」
「どうしたの? カスミちゃん」
「ゃ、あの……ここ、ラブホじゃん……流石に知ってる」
「……十万じゃ無理? いくらならいい?」
「い、いいって……何が?」
「いくら出せばヤらせてくらるの? もう結構貢いできたよね、まだ足りない?」
「は……? え…………えっ、と……俺、男……」
「知ってるよ、隠してたつもりだったの? 近くで良く見れば分かるよ。女の子みたいに可愛い男の子とか、ただ可愛い女の子よりレアだから少しくらいなら奮発してあげてもいいよ。えー……十二、いや、もういっちゃえ、十五万! どう?」
「…………っ、す、すみません帰ります!」
「あっ!? おい! 待て!」
夜でも明るい道を必死に走った。後ろから聞こえる男の罵倒の声には耳を塞いだ。
その日は夕飯も食べず部屋にこもった。父に襲われかけたこと、パパ活相手に言われた「女の子よりレアだから奮発する」という言葉、それらは俺に男から見ても性的魅力があることを示していた。
「…………っ、ぉえっ」
気持ち悪かった。男なのに男に性的な目で見られる違和感、嫌悪感、恐怖、その全てが俺の吐き気を煽った。翌日も食事が喉を通らず、また学校を休まされた。
次の日も休んで、その次の日、俺はジャージを着て登校した。スカートを履くのが怖くなっていた。それまではステータスのように感じていた男達の視線の数が、そのまま吐き気へと繋がった。
「おはよぉ~……」
教室に入ってすぐ、違和感を覚えた。妙に静かで、友達が返事をしてくれなかった。
「……?」
不思議に思いつつ席に着いてすぐにメッセージが送られてきた。俺は鞄を机に置いたままスマホを持ち、それを確認した。
『これアンタ?』
『画像が送信されました』
ラブホテルの前で中年男性と話す俺が写っていた。いつ撮られたのか、全く気が付かなかった。
『値段気に入らなくて揉めたんだって?』
『値段交渉は事前に済ませとけっつったじゃん』
『揉めるのはホテルん中ね』
『学校バレたらヤバいよー?』
『違う!』
『俺がしてるのはただのパパ活!』
『騙されたの!』
『ホテル行くなんて聞いてなくて』
『それで揉めたの!』
『は?』
『ウリなしであんな稼いでたの?』
『マジ?』
『なんで?』
『男のくせに』
『ウリなんてする訳ないじゃん!』
『話すだけでお金もらえるんだから』
『アンタがそう教えてくれたんだし』
『死ね』
突然の暴言の後、すぐにブロックされた。直接話しかけに行ったけれど、無視された。どうやら俺にパパ活を教えてくれた女友達は体を売っていたらしい、他クラスの女子も大抵は。それでいて彼女達の売り上げは俺よりも安いもので、俺は彼女達の反感を買った。
「…………」
前から薄らとその気配はあったけれど、俺が売春はしていないことが確定するとそれは表面化した。俺と休み時間に話してくれる子は居なくなった。
「霞染、おっさんとヤってるってマジ?」
「マジマジ、写真回ってきたもん」
「やべー、いくら女っぽくてもさぁ……」
「男とよくヤれるよな、どっちもさ」
拡散された写真を元に、男子達の間では『男のくせに男相手に売春をしている金の亡者のド変態』として噂が広まった。何度も違うと反論したけれど、無駄だった。真実なんてどうでもいいんだ、彼らは面白がりたいだけだから。
「おいこっち見てるぞ、狙われてんじゃね?」
「えマジ、キッモ。おい男とか無理だからな俺!」
「お前昔可愛いとか言ってたじゃん」
「いやビジュの話な。ガチは無理だわ」
ほどなくして俺は学校に通わなくなった。売春疑惑のある生徒の、それも男か女かもよく分からないデリケートそうな生徒のそんな問題には学校側も関わりたくなかったのか、不登校に何も言ってこなかったし、停学にも退学にもされなかった。ただ、放置された。
「…………」
自分でズタズタに切り裂いた制服のスカートをゴミ箱に詰めて、スキニーデニムを履いて鏡の前に立った。
「……男? 女? 女……かな、まだ…………やだな」
クローゼットをひっくり返しても男物の服は出てこなかった。学校指定のジャージくらいだったけれど、学校のものには袖を通したくなくて、姉を訪ねた。
「男物の服は流石にないかな……ごめんね」
「ん~……ないかな。寝間着着とけば?」
「コスプレでよければ一応あるけど……」
まともな男物の服はないみたいだった。母に頼んで、男物のシャツとデニムを買ってきてもらった。丈の違いやポケットが飾りでないことを初めて知った。
「髪が……ダメなのかな」
男物の服を着ても俺は女の子に見えた。長い髪がいけないのだと、ハサミを手に洗面所に立った。
「…………」
髪に刃を当てて、数分動かなかった。手に力が入らなかった、切りたくなかった、可愛くて綺麗な自慢の長髪を捨てたくなかった。
「朝風呂朝風呂~……ハル? アンタ何してっ、ちょ、え……お母さん!? お母さーん!? 来て!」
ハサミを握り締めて泣いていたら、自殺を考えていると勘違いした家族に大騒ぎされた。
引きこもって数ヶ月、母が外出に誘ってくるようになった。
「お母さんと買い物行こ? 何でも好きなもの買ってあげちゃう! どう?」
「……何も、いらない」
「そう…………お、お母さん久しぶりに初春とお買い物行きたいな~?」
「俺は、やだ」
「……そう」
最初のうちは優しく誘ってくれていたから断り続けていたけれど、そのうち激しく強引になっていって、俺はとうとう外へ連れ出された。そこで出会った、現人神に。
「すみませ~ん、テレビの取材なんですけど、今お時間いいですか? 仲良し親子にインタビューって企画でぇ」
「構わないけど……」
「よかったぁ!」
母の後ろをトボトボ着いて歩いていたら、母がテレビの取材を受けた。美人だから、まぁそういうこともよくある。俺は俯いて時間が過ぎるのを待っていた。
「こんにちは!」
なのに、そのインタビュアーは俺にも話しかけてきた。親子にインタビューなんだから当然だ、けれど当時の俺はとても驚いた。
「あ……こ、こんにちは」
「マジ神アイドルカミアで~す、知ってくれてます?」
「神とか自分で言うのね……」
「え、あっ、名前くらいは」
「ありがと☆ 綺麗な髪ですねー、俺天パだからストレートにちょっと憧れあるんですー……こんなに長いのに枝毛とか全然なさそうだし真っ黒だし、やっぱり手入れには力入れてたりします?」
「あ、うん……結構」
「やっぱり~! ヘアアレンジとかはしないんですかぁ?」
「……前は、してたけど」
インタビュアーのアイドルはキラキラしていて、可愛くて、今の俺には直視出来なかった。俺はまた俯いてしまった。
「男のくせに、そんなことしてるの……変かなって」
「え~? そんなことないですよぉ」
「……そういう理解者ポーズいらないから」
「ポーズ……? 僕今別にポーズキメてない……よく分からないけど、僕はあなたがとっても可愛いから、それでいいなぁって思います!」
「…………可愛い?」
「うん! すっごく可愛い! シンプルローポニも似合うけど、緩めのハーフアップとかもっと可愛いと思うし、服もそんなシンプルカッコイイのじゃなくてもっときゅるんってしたのでも可愛いし……あーでもクール系とかもいいかも! 背高いし足長いから~……んー、迷う! コーデ企画に変更したい!」
「前は、もっと……スカートとか履いてて」
「そうなの? えー見たかったぁ! そんなの絶対可愛いじゃん」
アンタみたいな可愛い子に言われても……と少し腐りつつも、俺はカメラロールに残る女装時代の俺を彼に見せた。
「超可愛い! 想像以上! すごーい……あ、まさかもう事務所入ってたりします?」
「しないけど……ねぇ、俺男なんだけど。こんな女装とか気持ち悪くない? 男のくせにこんなの……」
「どうして? 可愛いからいいよ、可愛いは正義! それに、女装って男の子にしか出来ないんだから、一番男らしい趣味だよ!」
「……ふっ、ふふ……何それ、屁理屈じゃん」
「あー笑顔可愛い~! クール系似合うとか思ってたけど笑顔そんなふうならやっぱりヒラヒラきゅるきゅる系もいいとか思っちゃう!」
「ぁ……そういう服も、着たことあって」
「え、写真あるの? 見せて見せて!」
「これ……」
「可愛い! すっごく可愛い!」
「…………あのー、カミアさん。企画忘れないで」
「あっ……ごめんなさい」
はしゃいでいたアイドルは少ししゅんとして、咳払いをして、また眩しい笑顔でマイクを握り直した。全ての仕草と表情が可愛くて、何だか羨ましくなった。
「今日はどこにお出かけで──」
「息子が引きこもっちゃって、リハビリになればと──」
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「あっ……うん。ちょっと、やなこと続いて」
突然マイクがこちらに向いた。
「そっかぁ。無理しないでゆっくり休んでね、今はネットさえあればどこでも何でも出来るし、自分のペースでやってけばいいよ!」
「…………」
「こんなに可愛いんだから自信持ってね。絶賛売り出し中現役中学生アイドルのお墨付き! だよ。えへへ……」
「……うん。俺また……可愛い格好してみたくなった。ありがとう」
「えー! よかったぁ! あ、可愛いを発信してみたくなったら是非僕と同じ事務所に……」
「カミアさん、スカウトしないでください」
「だってぇ……事務所同年代の子居なくて寂しい……」
結局インタビューは放送されなかった。けれど、そんなことどうだっていい。憧れと目標の的が出来た、男の子だって可愛くていいんだって分かった。俺にはカミアの可愛さは目指せない、けど俺には俺の可愛さがある。
「やっぱ全捨てもったいなかったかな~……物に罪はなかったしぃ……制服も、はぁ……その時のテンションで行動すんのやめな~俺ぇ~」
事務所に行ったり、何かのオーディションを受けたり、そんなことはしなかった。可愛い服を着て外を歩いていると時々スカウトを受けたけれど、全て断った。欲情した目で見られるのも、非難の声を浴びせられるのも、まだ怖い。俺の可愛さはそんな人達のためにあるんじゃない、俺のためにあるんだ。
「そしてカミアのためにも……!」
あのアイドルのファンは薄汚いブスばっかり、なんてことになったらカミアのイメージダウンに繋がる。ライブに行くため、カミアのためにも、可愛くなるんだ。
「将来のお嫁さんのために……とかも、あー違う違う今のナシ!」
母みたいに芯があって強くて、俺くらい可愛くてメイクや服の話で盛り上がれる、最高に可愛い彼女がいつかきっと見つかる。その時のためにも可愛さを磨くんだ。
「──と、思ってたのにな~……」
「何だよ急にため息ついて」
「……みっつんメイク興味ないよね」
「あぁ」
「服は?」
「……マネキン買いかな。コーデ考えたりとか面倒臭いし」
「はぁ~……恋人とオシャレ談義すんの夢だったのになぁ~」
「な、なんかごめんな? 他、えー、ネザメさんとかミフユさんとか美容には一家言ありそうじゃないか?」
「しかもめっちゃ堂々と浮気してるし……」
「それはマジでごめん!」
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「……でも、大好き」
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喚く昔の俺に言ってやりたい。水月は最高だって、人生で一番幸せだって、家族よりカミアより自分より、何よりも大好きなんだって。
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