冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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大切だから心配で (水月+リュウ・シュカ・カンナ・レイ・セイカ)

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放課後、校門を出たところで紫のパーカーに身を包んだ美少年に抱きつかれた。

「お疲れ様っすせんぱい!」

「っと、レイ。おまたせ、暑いだろうにいつから待ってたんだ?」

「二十分くらい前からっすね」

「熱中症にならないか心配だよ。迎えに来なくていい……ってのはレイは嫌なんだよな、来たいんだもんなぁ?」

「はいっす、せんぱいと一分一秒でも長く一緒に居たいんす!」

「そこのコンビニとか、駅とかじゃダメか? あぁほら後ろ髪汗でベトベトじゃないか……水持ってないのか? 俺のあげるから水分補給しとけ」

「汗!? は、恥ずかしいっす……あっ、水筒……せんぱいと間接キス……ふへへ」

直接キスは何度したっけ? よくもまぁ今更間接キス程度で喜べるものだ。いつまで経っても純情なのは可愛らしいし、羨ましくもあるな。

「ぷはっ……ごちそうさまっした!」

「おぅ…………レイが飲んだ後の水筒か。興奮してきたな」

飲み口だけでも真空パックにでも入れて保存しておこうかな。飲み口だけって売ってたっけ?

「せんぱい、今日はアキくんのお見舞い行くんすか?」

「あぁ、一応……っとそうだ、リュウ、お前も着いてこいよ」

「え。連日無断外泊は流石に怒られるじゃ済まんのやけど」

「病院に付き合えってだけだ、その後は帰ってもいいし……ってか連絡はしとけよ」

「どうして天正さんを連れて行きたいんです? 秋風さんが会いたがってる訳ないですよね」

「なんやねん訳ないて、会いたがってくれとるかもしれんやろが」

「私の方が好かれてます」

そう言いながらシュカは手のひらを上に向け、中指と薬指をクイクイと揺らした。下品だな。

「はぁ~!? 自分みたいな仏頂面より気さくな俺の方が好かれとるに決まっとるやろ!」

「気さくな人って気さくな自覚あるもんなんだ」

「言葉がほとんど通じないんですから重要なのはテクですよテク」

「シュカ、往来でそのド下品ジェスチャーやめて」

「俺ぁセイカが来る前から日本語教えたったりしとってん!」

「秋風さんは私の手マンが大のお気に入りなんです!」

「大声で手マン言うなぁ!」

「せんぱいのが大声っすよやめてください!」

「俺歩いて帰る……」

「あぁほらせんぱい達が大声で猥談するからせーかくん他人のフリしたさが限界突破っすよ!」

立ち上がろうとするセイカの肩を押さえつけて謝り、リュウとシュカに軽く注意した。大人しくなった彼らにリュウを病院に連れて行きたい理由をちゃんと説明した。

「リュウ、近所の不良に喧嘩売って返り討ちリンチされたんだよ」

「ちょっ……水月ぃ」

シャツのボタンを外し、肌着を少し下げて鎖骨の下辺りに出来た赤紫っぽいアザを彼氏達に見せる。リュウは照れたような態度で嫌がっているが、俺の手を剥がそうとする力は非常に弱い。このまま全てを晒されたいのだろう、どうしようもないMめ。

「あなたバカなんですか?」

「全身アザだらけなんだよコイツ」

「喧嘩弱いくせに何してるんですか」

既に知っているレイは苦い顔をするに留まり、シュカは眉を顰めて辛辣な態度を取った。カンナは──

「わ、な、なに? どないしたんしぐ」

「…………てん、くん……」

「ん? うん、天くんやで。なんやの」

「……ぐすっ」

──泣き出してしまった。リュウに抱きつき、ぐすぐすと鼻を鳴らし、泣いている。

「え……」

カンナが泣いていることに気付いたリュウは硬直し、俺もそうなった。どうすればいいのかすぐには分からなかったのだ。レイは動けていたが、それは弱々しくカンナの背を撫でるというもので、言葉は出てこないようだった。

「しぐ…………痛っ!?」

三人の意識がカンナに向く中、シュカは何故かリュウの頭を思い切り殴った。多分平手だったが、それでもかなりの威力でいい音が鳴った。

「いったいなぁ何すんねん!」

「こっちの台詞ですよ! 愚かにも勝てない喧嘩に挑むばかりか時雨さんを泣かせるなんて! 一体何を考えているんですか!」

「それは……アホなことしたとは思とるよ、水月も怒らせてもうたし……せやけど自分に殴られる筋合いはないわぃ! しぐも! 泣かんでもええやろそんな……!」

「だ、て……だって、てんくん……てんくん、が」

「時雨さんに当たらないでください!」

鼻をすすりながら話そうとしたカンナの肩に腕を回し、自分に抱きつかせるようにしてシュカが強引にリュウからカンナを引き剥がした。

「あ、当たってへんわ! 何言うとんねん!」

「怒鳴ったじゃないですか!」

「怒鳴ってへん!」

「ちょ、ちょっと落ち着け! カンナこっちおいで」

「ごめ、なさ……泣いちゃ、て……ごめん、なさい……」

「大丈夫大丈夫! 怪我してるのびっくりして、心配になっちゃったんだよな! カンナの気持ちはちゃんと分かってる、リュウにも伝わってるよ。だよなリュウ」

「お、おぉ……そない泣くほどかとは思たけど、そんだけ、その……俺大事に思われてたんやな、て……ちょっとなんか嬉しゅうなったわ」

「……泣かせておいて酷い人ですね」

「自分はなんやねんな!」

「シュカはカンナが泣いちゃったから怒ってるんだよな! いやぁ本当にカンナ可愛がってるんだなぁ、優しいとこ見れたよ」

また喧嘩になりそうだったので、大声を上げながら間に割り込むことでどうにか防いだ。落ち込んでいるカンナを宥めながら、俺は話を続けた。

「えっとな、リュウがボコボコにされてさ……それで、生意気なくせに喧嘩弱いヤツって目つけられたかもしれないだろ? カツアゲとかサンドバッグ化とか色々あるかも。だから先手打って、リュウにはちゃんとすごいバックがついてるんだぞって示しておきたい訳よ」

「はぁ……それが病院に天正さんを連れて行くことと何の関係があるんです? 脳に注射でも打ってもらってバカを治そうってんですか?

「そんな注射ないよ……フタさんに頼もうと思ってな。あの人刺青すごいし、リュウがフタさんと知り合いって分かればもう手出されないだろ」

「……天下の十二薔薇生が反社と繋がりあるって見せびらかすのはどうなんですかね」

「穂張興業は反社じゃないから大丈夫。刺青への偏見とか何とかで言い返せるよ」

「屁理屈な気がしますが……」

「証拠がなければ屁理屈が通るのが現行法だよ」

「実生活で大切なのは法律よりも世間体や暗黙の了解ですよ。私が出て学生同士の喧嘩で収めた方がいいのでは?」

「十二薔薇生と反社の繋がり~とか言うてネットに流したりどっかに売ったりするような知能なさそうやったから大丈夫やと思うで」

実際に会ったリュウがそう言うなら安心だ。呆れ顔のシュカの心配を他所に、俺とリュウは呑気に笑っていた。
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