冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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サラリと方便を (水月+リュウ・レイ・セイカ)

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面会時間ギリギリまでアキと楽しく過ごした。目に涙を滲ませてアキにしがみつくセイカを引き剥がし、拗ねる彼を無理矢理車椅子に乗せ、エレベーターへ。

「お、ヒトさんから返信来た。え……? へー、今サンさん家居るんだってさ」

「えー、そうなんすか。今日は賑やかっすねぇ」

「リュウ、ちょっと寄ってけよ」

「もう夕方やねんけど……今から寄ってったらどんだけはよ話終わらせても外真っ暗なんで」

「……もう一泊するか?」

「連絡しとっても連泊は怒られんのに無断連泊とか一ヶ月は外出禁止や!」

「連絡しろよ。今電話かけろ今」

リュウは嫌々と言った具合でスマホを取り出し、自宅に電話をかけ始めた。リュウの家族が電話に出るよりも俺達が病院から出る方が早く、家族の返事を待たずしてサンの家に向かうことになった。

「あ、もしもしおかん? 俺俺、センやよ」

リュウの家は代々名前に竜の文字を入れる慣わしがあるらしく、家族内での呼び名は名前から竜を取ったものになっていると以前聞いた。俺達はリュウと呼び、家族はセンと呼ぶのだ。

(……わたくしもセンって呼んだ方がいいんでしょうか)

外と中で呼び名が違っては混乱するのではないだろうか。考え込むうちに俺はじっとリュウを見つめてしまっていた。

「え、今? えと……水月と一緒やよ。水月、えーと、ほら、夏休み実家泊まったやん。あん時に来た……そうそう、イケメン。いっちゃんイケメン。そうそう黒髪の……デカぁてムキムキで」

「……リュウ、ちょっと電話代われ」

「え、なんで?」

「いいから」

いいアイディアが浮かんだ俺はリュウから強引にスマホを受け取り、声色を大人ウケするものに整えた。

「お電話代わりました、鳴雷水月です。お世話になっております」

「ぉわ……学校からの電話出る時のおかんみたいや」

「余所行きボイスも素敵っす」

彼氏達の視線や会話を聞いていては集中が切れる。俺は適当に街頭や看板を眺めて意識を散らし、礼儀正しく挨拶をした。流石十二薔薇生、彼になら息子を任せられる、そう思われなければならない。

「実は、先日私の家に強盗が入りまして……ええ、犯人はもう……はい、はい…………ええ、家が非常に散らかってしまいまして、学校でその愚痴を漏らしたところ竜潜さんが片付けを手伝ってくださると……はい」

「……水月が嘘ついとる」

「しーっ、言っちゃダメっすよリュウせんぱい」

「ええ、昨日から手伝いに来てくださって、遅くなってしまったのでお引き留めして……すみません、まさか親御さんに外泊の連絡をしていなかったとは……確認不足でした、いえ、すみません……」

「あっそこは庇ってくれへんねや」

「本日も是非にと手伝いに来てくださって、本当にお優しい……いえいえそんな、はい……今日ももう日暮れですし、夜道は危険ですから泊まるようにと……外泊の許可をいただけますか? いえ、はい……はい、ありがとうございますお義母さま。はい、お礼はまた後日改めて……はい、はい……代わります。リュウ、代われ」

「へーい…………もしもしおかん? う、うん……せやねん、片付け……ぉん、すまん、言い忘れとって…………そういう訳やからもう一晩泊まるわ。ええやんな? うん、分かっとるよ。おおきに。ほな…………水月すごいなぁ! 連泊許可出たで!」

「お前のお義母さまはへりくだった他人のおねだりは断れないタイプと見た」

レイとリュウに素晴らしい観察眼だと持て囃され、気持ちよくなっているとセイカの冷めた視線に気が付いた。

「な、なんだよセイカ……今回はファインプレーだろ俺」

「……嘘つくの上手いの、なんか…………俺も、なんか騙されたことあったんじゃないかって、思えて」

「ないよないない俺セイカに嘘ついたことない!」

「嘘ついたことはあるだろ。バイトだから見舞い来れないとか言ってデート行ってたことあったじゃん」

「……あっ」

「あれ結構やだった……正直に言ってもらえない自分が、信用されてない自分が……嫌だった」

「ご、ごめんなっ?」

「……ごめん昔のこと蒸し返して」

「まぁせーかの気持ちも分かんで。水月、俺らには嘘つかんといてな? 心配かけへんようにとか、そんなん思わんでええからな?」

「うん……嘘って言われるとちょっとアレだけど、怪我とか俺も結構隠しがちだしな……気を付けるよ」

リュウの保護者の説得も終えたし、早くサンの家へ向かおう。

「今日のご飯何かな。レイ、聞いてるか?」

「ハンバーグっす! 俺仕込みのお手伝いしたんすよ」

「へぇ……楽しみだな。っと、リュウ泊めるって言ってないよな。スーパー寄って何か買ってった方がいいか?」

「サンちゃんにちょっと聞いてみるっす」

また電話待ちか。

「もしもし~、俺っす、レイっす。朗報っすよサンちゃん、リュウせんぱいが今日も泊まりたいらしいっす! それで、ご飯なんすけど……」

電話はまだ終わっていないけれど、スーパーに進路を変更した。俺のその判断は正解で、サンは俺達に買い出しを頼んだ。

「ハンバーグまだ焼いてないんで、サイズをちょっと小さくしてリュウせんぱいの分を捻出するみたいっす。その分おかずを増やすので、それを買って来いって……特に指定はないっす、好きなおかず増やしていいんすよ、何がいいっすかね」

「迷うな、どうしようか……ハンバーグの補填だし肉系かな?」

「調理簡単なのがいいと思うっす」

「なんや出来合い買ってくか?」

「それでもいいけど……惣菜なら何があるか見てからじゃないと決めらんないな」

そんな話をしながらスーパーへ向かっていると家族になったような感じがした。口には出さず、一人幸せを噛み締めていた。
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