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分からないことだらけ (水月+リュウ・フタ)
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ミタマの占いの結果、リュウに後遺症が残ることはないと分かった。しかしまだズキズキと痛むらしいので、夕飯の準備の間彼はソファで休ませることにした。
「はい、ばんざーい」
「ん……おおきに。そこまで世話焼かんでもええで?」
制服を脱がせ、部屋着に着替えさせた。俺に世話をされるリュウは照れくさそうな表情で、言葉だけで遠慮しながら喜んでいる。
「ごめんな、リュウ」
「……なんで水月が謝んのん」
「フタさん彼氏に選んだのは俺だから」
「水月……そないな言い方したあかん、彼氏にしたん間違いやったて言うてるみたいやで」
「え……そう、か。選んだの俺だから、フタさんが何かやらかしたら俺にも責任あるんだって言いたかっただけなんだけど」
「もうちょい言葉考えぇ」
「あぁ、悪い……ありがとうなリュウ。お前は本当に優しいヤツだよ、あんなことされたのにフタさん気遣ってくれて……もうホント、天使。大好き」
着替えたばかりのリュウを、未だ汗臭い制服を着たままの俺が抱き締めた。
「……せやなぁ、しゅーやハルやったら、もう嫌いや言うてもうて、ことある事に悪口言うたりするんやろうなぁ」
「それが普通だよ。もうちょい被害者ムーブしていいんだぞ、リュウは」
「んー……あんまそないな気ぃ湧かへんねんなぁ。なんやろなぁ……これがしぐとかやったらなぁ、代わりにめっさ怒ったるんやけど……自分のこととなるとイマイチ心動かん言うか、そこまで興味出ん言うか」
「……? だからそれが優しいってことだよ」
「せやろか」
「そうそう」
「……許してる言うか、どうでもええって感じやねんなぁ。それ優しいんか?」
「…………うん、そうだよ。リュウは優しいいい子だ。じゃ、俺もそろそろ着替えてくる。ゆっくり休んでろよ、氷嚢ちゃんと当ててな」
「ん、おおきに水月ぃ」
頬を撫で、リュウに緩く手を振って脱衣所へ向かった。着替えながらリュウとの会話を反芻し、少し考え込む。
(リュウどのってたまになんか闇チラつかせてくるんですよな。闇って言うか、危うさ? コミュ強陽キャで懐っこくて、元気ハツラツなのになんか……不意に、死んじゃいそうな感じ)
痛みを快楽と感じて興奮するから、なんてそんな浅い理由じゃない。表層だけのMじゃない。
(私に心配かけられたストレスで複数人の不良に複数回リンチされるって、おかしいでそ。それホントにMで片付けていいの? 何なの? しばらく立てなくなるくらい強く壁に叩きつけられて、あっさり許して、その理由が「なんかどうでもいい」「そこまで興味出ない」って何それ?)
俺はまだ、リュウを理解し切れていない。いや、自分のことだって完璧には分からない人間が、違う個体のことを理解し切ろうだなんて不可能なのだろうけれども。
「それにしたって……」
リュウが興奮した時に時折漏らす、惨たらしく殺して食べて欲しいという願望は、俺がホラーゲームのクリーチャーだとかに抱く欲情とは違う。
(キャー丸呑みにしてーとか、苗床にしてーとか、わたくしのそういうのとは違いますよな。本当にそうなったらわたくし全力で抵抗しますし……痛いのとか死ぬのとか絶対嫌ですしおすし)
リュウは本気だ。本当に俺に解体されたがっている。愛情を持って身体を引き裂かれ、俺の腹に収まって、俺に終わらせて欲しいと思っている。
「…………」
そんな子、抱え切れるのか? 俺如きに?
「みつきぃ……」
「……? あ、フタさん。どうされました?」
着替えついでに顔を洗って、考え込むあまり顔を拭くのを忘れていた。慌ててタオルを手に取り、顎の下に当てながらフタに応対する。
「ん……あの、さ…………俺ぇ、ひどいことして……」
「…………」
「浮気、ダメなことだと思っててさ、でもサンちゃんがダメじゃないって……だからダメじゃないことなのに、俺ひどいことして」
ダメなことをしたヤツには酷いことをしてもいい、という考え方なのか? ヒトの影響だな。いや、ボスか?
「さっき、サンちゃんにじっくり聞いてぇ……みつき、いっぱい彼氏居て、それ普通だって……色々忘れる前は、俺もそれ普通だと思ってたって。みんなと仲良くしてたって……俺、なんで忘れるんだろ。これめっちゃ嫌……りゅーくん、仲良かった? 仲良く、戻れないかな」
「……リュウは許してくれてますし、きっと仲良くなれますよ」
彼は恨みを抱くほど他人への興味が持続しないみたいだから、きっと大丈夫。フタが全て忘れてしまうように、リュウも全てなかったことのように振る舞ってくれる。
「そぉ……? もっかい話してみたい。怖がんないかな」
「大丈夫ですよ。不安なら……コンちゃん一緒に行ってあげて。コンちゃんならフタさん止められますから、リュウも安心です」
「……ありがと。コンちゃん? っての? もふもふしてて可愛い。行こ~」
フタと俺には見えないミタマを見送り、首を捻る。
「なんか……今日、記憶力良くない?」
フタはもっと会話が難しくなかったか? 会話のラリーが数回続くことさえすごいことじゃなかったか? 数分前の出来事についてここまで深く語れるなんて、一体どうしたんだ。
「……数ヶ月、ゃ、弟分さん達のことも忘れてたから数年かな……数年分吹っ飛んで容量空いたとかかな」
物部の一件で記憶を多めに失った影響だろうか? いやどういう原理だ、フタの記憶容量って常にギリギリだったのか? そんなバカな。人間の頭はそんな電子機器みたいなシステムじゃない。
「なんなんだろ……」
ここで悩んでも答えは出ない。今はリュウの体調とフタの精神を気遣い、サンの夕飯の支度を手伝うべきだ。
「はい、ばんざーい」
「ん……おおきに。そこまで世話焼かんでもええで?」
制服を脱がせ、部屋着に着替えさせた。俺に世話をされるリュウは照れくさそうな表情で、言葉だけで遠慮しながら喜んでいる。
「ごめんな、リュウ」
「……なんで水月が謝んのん」
「フタさん彼氏に選んだのは俺だから」
「水月……そないな言い方したあかん、彼氏にしたん間違いやったて言うてるみたいやで」
「え……そう、か。選んだの俺だから、フタさんが何かやらかしたら俺にも責任あるんだって言いたかっただけなんだけど」
「もうちょい言葉考えぇ」
「あぁ、悪い……ありがとうなリュウ。お前は本当に優しいヤツだよ、あんなことされたのにフタさん気遣ってくれて……もうホント、天使。大好き」
着替えたばかりのリュウを、未だ汗臭い制服を着たままの俺が抱き締めた。
「……せやなぁ、しゅーやハルやったら、もう嫌いや言うてもうて、ことある事に悪口言うたりするんやろうなぁ」
「それが普通だよ。もうちょい被害者ムーブしていいんだぞ、リュウは」
「んー……あんまそないな気ぃ湧かへんねんなぁ。なんやろなぁ……これがしぐとかやったらなぁ、代わりにめっさ怒ったるんやけど……自分のこととなるとイマイチ心動かん言うか、そこまで興味出ん言うか」
「……? だからそれが優しいってことだよ」
「せやろか」
「そうそう」
「……許してる言うか、どうでもええって感じやねんなぁ。それ優しいんか?」
「…………うん、そうだよ。リュウは優しいいい子だ。じゃ、俺もそろそろ着替えてくる。ゆっくり休んでろよ、氷嚢ちゃんと当ててな」
「ん、おおきに水月ぃ」
頬を撫で、リュウに緩く手を振って脱衣所へ向かった。着替えながらリュウとの会話を反芻し、少し考え込む。
(リュウどのってたまになんか闇チラつかせてくるんですよな。闇って言うか、危うさ? コミュ強陽キャで懐っこくて、元気ハツラツなのになんか……不意に、死んじゃいそうな感じ)
痛みを快楽と感じて興奮するから、なんてそんな浅い理由じゃない。表層だけのMじゃない。
(私に心配かけられたストレスで複数人の不良に複数回リンチされるって、おかしいでそ。それホントにMで片付けていいの? 何なの? しばらく立てなくなるくらい強く壁に叩きつけられて、あっさり許して、その理由が「なんかどうでもいい」「そこまで興味出ない」って何それ?)
俺はまだ、リュウを理解し切れていない。いや、自分のことだって完璧には分からない人間が、違う個体のことを理解し切ろうだなんて不可能なのだろうけれども。
「それにしたって……」
リュウが興奮した時に時折漏らす、惨たらしく殺して食べて欲しいという願望は、俺がホラーゲームのクリーチャーだとかに抱く欲情とは違う。
(キャー丸呑みにしてーとか、苗床にしてーとか、わたくしのそういうのとは違いますよな。本当にそうなったらわたくし全力で抵抗しますし……痛いのとか死ぬのとか絶対嫌ですしおすし)
リュウは本気だ。本当に俺に解体されたがっている。愛情を持って身体を引き裂かれ、俺の腹に収まって、俺に終わらせて欲しいと思っている。
「…………」
そんな子、抱え切れるのか? 俺如きに?
「みつきぃ……」
「……? あ、フタさん。どうされました?」
着替えついでに顔を洗って、考え込むあまり顔を拭くのを忘れていた。慌ててタオルを手に取り、顎の下に当てながらフタに応対する。
「ん……あの、さ…………俺ぇ、ひどいことして……」
「…………」
「浮気、ダメなことだと思っててさ、でもサンちゃんがダメじゃないって……だからダメじゃないことなのに、俺ひどいことして」
ダメなことをしたヤツには酷いことをしてもいい、という考え方なのか? ヒトの影響だな。いや、ボスか?
「さっき、サンちゃんにじっくり聞いてぇ……みつき、いっぱい彼氏居て、それ普通だって……色々忘れる前は、俺もそれ普通だと思ってたって。みんなと仲良くしてたって……俺、なんで忘れるんだろ。これめっちゃ嫌……りゅーくん、仲良かった? 仲良く、戻れないかな」
「……リュウは許してくれてますし、きっと仲良くなれますよ」
彼は恨みを抱くほど他人への興味が持続しないみたいだから、きっと大丈夫。フタが全て忘れてしまうように、リュウも全てなかったことのように振る舞ってくれる。
「そぉ……? もっかい話してみたい。怖がんないかな」
「大丈夫ですよ。不安なら……コンちゃん一緒に行ってあげて。コンちゃんならフタさん止められますから、リュウも安心です」
「……ありがと。コンちゃん? っての? もふもふしてて可愛い。行こ~」
フタと俺には見えないミタマを見送り、首を捻る。
「なんか……今日、記憶力良くない?」
フタはもっと会話が難しくなかったか? 会話のラリーが数回続くことさえすごいことじゃなかったか? 数分前の出来事についてここまで深く語れるなんて、一体どうしたんだ。
「……数ヶ月、ゃ、弟分さん達のことも忘れてたから数年かな……数年分吹っ飛んで容量空いたとかかな」
物部の一件で記憶を多めに失った影響だろうか? いやどういう原理だ、フタの記憶容量って常にギリギリだったのか? そんなバカな。人間の頭はそんな電子機器みたいなシステムじゃない。
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