冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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ショートケーキか苺大福か (水月+アキ・セイカ・クンネ・カンナ)

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キッシュを貪る苦学生達から離れ、腹の空き具合と相談しつつケーキを物色していると、腕にアキが抱きついた。

「アキ! どうした? みんなと話してなくていいのか? お兄ちゃんとイチャつくのは帰ったら嫌でもやらされるぞ」

真っ直ぐに俺を見上げる赤い瞳。その神秘的な輝きと俺の指に優しく絡む白い髪から連想し、ミフユの手作りケーキを思い出す。

「えっと……あった、これ。ミフユさんが作ったんだってさ、もう食べたか?」

イチゴたっぷりのショートケーキを一切れ取ってやると、アキは笑顔で礼を言ってくれた。セイカいわくアキは母親に仕込まれた愛想笑いをよくするそうだが、この笑顔はそうではない……と思う。

(お兄ちゃんに愛想笑いなんかしませんよな?)

少し膨れて揺れている頬をつつく。俺を見つめ続ける赤く丸い瞳からアキの感情は読み取れない。鬱陶しがられてはいないと思う。

《見ろよ、ミツキ弟の顔もつついてる》

《食べている最中の頬に触れるのが好きなのですね……えいっ》

《んっ? やめろよ、なんだよお前まで》

《ごめんなさいおにいさま、楽しいのか気になって……》

《楽しかったか?》

《はい、想像以上に面白かったです》

《……ハマるなよ》

柔らかくすべすべとした、白く丸く膨れたアキの頬は、まるで大福。全体の白とワンポイントの赤色からショートケーキを連想した次は、イチゴ大福か? だがアキの顔には黒い部位がない、肝心の餡がないのだ、白餡ということにしようか。

「…………はむ」

「んゃ……にーにぃ、ぼくケーキ違うです」

「いやほっぺたが大福っぽくて……あっ」

アキが車椅子の隣へ戻ってしまった。せっかく甘えてきてくれていたのに、俺はなんてことを……

《早かったな。もういいのか?》

《帰ったら嫌でもヤってもらうし、今日はもっとレアなヤツに絡もうかと思い直してな。顔食われたし》

《俺最初に言ったじゃん、鳴雷とはどうせ帰ったらいくらでも話せるんだからって……顔食われたとか建前で、ちょっと甘えて冷静になったら恥ずかしくなったとか、そんなとこだろ?》

《ハズレだスェカーチカ、充電が23%くらいまで回復しただけだぜ。ギリ家まで保つ。恥ずかしいとか意味分かんねぇ、なんで俺が恥ずかしがらなきゃならねぇんだ?》

《……人前で兄貴に甘えるのは、恥ずかしいだろ。恋人として見ても結構恥ずかしいぞ》

《よく分かんねぇな。あぁアレか、人目が気になるっつー日本人の国民病ってヤツか? 俺が兄貴に人前で甘えるのはもはや慈善事業だっての、こんな美形兄弟がベタベタしてりゃ眺めるだけで寿命伸びるぜ》

車椅子の隣に並べられた椅子に座り、ケーキを食べながらセイカと何やら話している。俺の愚痴だろうか、ケーキと人間の区別がつかないゾンビ野郎だとか、そんな悪口を長々と話しているのだろうか。

《お前は顔がいいのと他人とあんまり関わってこなかったから、羞恥心がねぇだけだろ。勝手に国民性にするな》

《いやロシアは常に吹雪いてて周り見えねぇし、長時間外に居たら凍死するから人前でイチャつくとかねぇのよ》

《お前が語るロシアいっつも雪降ってんな! お前どこに住んでたんだよ! あそこ確か大陸性気候で割と四季とかあるだろ。っていうかなんで屋外に絞ったんだよ、店とかでイチャつくカップルは恥ずかしいだろ?》

《店か、あんま外出の経験ねぇんだよな俺。あ、でも親父に連れられた酒場じゃ隅の席でヤってるヤツ居たぞ》

《やっぱデータの偏りが著しいよこの引きこもり……それはそういうバーだろ、二度と国民性語るなよこの引きこもりが》

《ひでぇな、太陽と月と雪さえ眩しくなけりゃ引きこもってねぇよ》

何を話しているのか分からないのだから、じっと観察していても仕方がない。けれど分からないからこそ気になる、詳細が聞こえない程度の話し声が一番気になるアレと同じ現象だ。

「ん……? どうしたカンナ」

きゅっ、と腕に抱きつかれる感触。今度は先程のような力強さがない。けれど意志の強さは感じる、仕草は控えめだが俺を離さない、渡したくないという独占欲のようなものが腕に伝わってくる。

「みぃくん、ぁい……た」

抱きつかれる感覚で、振り向くよりも先に誰なのか分かってしまう。まぁ、彼氏としては当然のことだが。

「俺空いたって、ふふ、待ってたのか? ごめんな寂しくさせて」

「んーん……きょ、の……しゅ、やく、あきく……だか、ら」

「そうだな、みんなでアキ構ってやってくれて嬉しいよ。カンナもアキと話せたか?」

「た、いん……めで、と……は、せー、くん……に、言って……もら、たよ」

「そうか。きっとアキ喜んでるよ」

そういえばアキとカンナの絡みには覚えがない。二人きりにしてやったらどんな話をするのだろう。

「…………音楽?」

「……?」

「あぁいや、独り言。カンナとアキって雑談するとしたら何話すのかなって、共通の趣味とかあったかなーって……アキ結構音楽にこだわりあった気がするし、筋トレ中とかよく聞いてるから……カンナはほら、自分で作るくらい──」

「言わなっ、で……!」

「え、声大きかったかな、誰にも聞こえてないと思うんだけど」

「ゃ、だ……言われ、のも……はずか、し……」

「俺が言うのもやだ? そっか、ごめんな。でも前に送ってくれたヤツ、俺すごく好きだよ。毎日聞いてる」

「……!? ゃ、めて……!」

「そんなこと言われてもアレ中毒性すごいんだよ、陳腐だけど神だね神」

「…………」

俯いて黙り込んでしまった。顔を覗き込んで見れば、人の肌はここまで赤くなるものなのかと驚くほどに赤面していた。

「ご、ごめん……もう言わないよ」

これ以上言及するのはやめておいてやろう。カンナの音楽の才能は本物だと思う、ド素人の俺が何を言うって感じだろうけど。ぜひ活かして欲しい、もっと曲を作って欲しい。

(いっぱい作っていっぱい売って、そのお金でガチの映像作家さんとか雇って……あの神曲に似合ったMVを!)

CGを使って幻想的な雰囲気を、いや、アニメーターを雇って絵で行くか? 文字だけで作るってのもハイセンスかも、いやボカロっぽ過ぎるか。あぁ悩む、もう一度あの曲を聴きながら考えようかな。

「ぁき、くん……ね、ダンス上手いって、せーくん……が、前、言っ…………だ、から……の、話……も、してみ……たい……」

「……ぁあ、そうだな、リズム感あるかどうかはよく分かんないけど、重力を感じさせない動きはするぞ」

おっと、本人が話題に出されるのも嫌がっていることについて妄想を拡げて考え込むのはよくない。ちゃんと今のカンナの話を聞いてやらなければ。
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