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そよ風が吹き、木漏れ日がチカチカとアキを照らし出す。
「私の事なんてどうでもいいんでしょ!」
放課後、静まり返った校舎裏で声を荒らげる女子生徒を見てアキはふっと鼻で笑った。
「そうだな。まぁ、身体だけはマシだったけど」
カッとなった女子生徒は、気怠そうに答えるアキに思い切りビンタすると「死ね!クズ!」と言い残し去っていった。
「いってー…」
アキはうっすらと血が滲む口の端を確かめるように触り「はぁ」と溜め息を吐いた。
「はい!カットー!」
ディレクターの声が響き渡り、先ほどの静けさが嘘だったかのように現場がざわめく。
「春翔君、凄く良かったよ!叩かれた所は大丈夫かい?」
スタッフがテキパキとシーンを切り替えていく中、プロデューサーが満面の笑みで歩み寄ってくる。
「ありがとうございます。はい、血も出ていませんし大丈夫です」
さり気なく顎を持ち上げ、親指で唇をなぞるように傷を確認したプロデューサーは満足気に頷き
「確かに大丈夫そうだな。その調子で明日もよろしく頼むよ」
そう言うとニコリと笑い、偉そうな雰囲気を撒き散らしながら現場を去っていった。
あー!気持ちわりぃーー!!
タクシーで帰宅し、春は真っ先に先ほど触られた顔を浴室でゴシゴシと洗い流す。
ふと目の前の鏡に目を向けると、叩かれて血が滲んでいた口の端がアザのようにくすんだ色になっていた。
うわぁ…。
鏡に近づきアザを触っていると、トントンと浴室のドアをノックする音が聞こえ「春?帰ったの?」と妹の杏奈が話しかけてきた。
「あぁ、今帰ってきたばっか」
シャワーを止めるとそれを会話の合図とみなした杏奈が口を開く。
「あのエロだぬき、大丈夫だった?」
2人揃って散々な呼び方をしている先程のプロデューサーは世間で言う"大物プロデューサー"というやつだが、杏奈曰く、自分達を見る目付きが異様に気持ち悪いらしい。
「春も注意して」と言われたが、やはり女性でモデルでもある妹に比べ警戒心も薄いのか、男の自分は”注意”という意味がいまいちピンとこなかった。
まぁ、確かにさっきの触り方は気持ち悪かったけど…。
あの唇を撫でられた時のゾッとする感覚を思い出した春は、その嫌な記憶ごと洗い流すように再びシャワーを浴びた。
◇◇◇
「私の兄がどんどん気持ち悪くなってく…」
朝、洗面所で身支度をしていた春を見て、腕を組んだ杏奈が冷ややかな目線を向けてくる。
「うるさい!これはこれで毎朝大変なんだよ!」
モデルである事をオープンにしている妹とは違い、春は俳優である事を学校で一切明かしていない。
2人は小学生の頃、女優だった母親が事務所を立ち上げたのをきっかけにこの世界に足を踏み入れた。
春は本名の神崎 春を春翔に変え、1個下の杏奈はアンナとして華々しくデビューした。
春も中学まではオープンにしていたが、芸能人という理由でいじめに遭い、中学三年生の頃はほとんど学校に行っていない。
そんな事もあり高校は知り合いが誰もいない遠方の学校を選び、面倒な人間関係を避ける為にわざわざダサい格好で学校に通っている。
髪はボサボサにして~鼻の周りにそばかすを描いて…仕上げに分厚い眼鏡をかければ完成っと!
我ながら見事なモサ男ぶりに感心していると、玄関から「行くわよー!」と母の声が聞こえ、春はバタバタと支度を済ませたのだった。
「じゃあ今日は学校終わったら直接現場に向かってちょうだい。母さん、撮影終わる頃には行けると思うから」
「大丈夫、分かってるよ。じゃあ行ってきまーす」
「じゃあね、春」
最寄駅に到着し春がドアを閉めると、母の車は杏奈の高校に向かって走り出した。
車を見送った春は鞄の中からイヤホンを取り出すと、好きなメタルバンドの曲を選び、改札に吸い込まれていく人混みの中に入っていった。
◇◇◇
夜は撮影だから少しでも寝ておきたい。
教室に入り自分の席に着いた春は誰とも挨拶を交わす事なく、イヤホンを付けたまま眠りの姿勢に入る。
しかし
「かず!◯◯ってモデルとの撮影」「ねぇ~かずくん」「おーい!かずー!」
かず、かず、かず、かず…うるせぇ!
眠りの妨害をしてくる集団…モデル、長谷川 和哉とその仲間たち(春 命名)をギロリと睨みつけるものの、この分厚い眼鏡のせいで春の殺気は1mmたりとも伝わっていない。
「そういえば、この前のドラマで春翔がさ」
げっ…。
仲間たちの一人が春翔の事を話しはじめ、さっさとどこかへ行けば良かったと後悔した春だったが
「あーストップ。俺、春翔のファンだから批判っぽいの出来れば聞きたくないんだよね~」
ボスである和哉が気まずそうに言い出したお陰で、仲間たちは「あ、そうなんだ!?」とすぐさまその話題から離れた。
「でも、かずが春翔のファンって意外だね?ああいうキラキラ系?正統派王子様っぽいの好きな感じしないけど」
あ、ディスってないからね。と付け加えた女子を見て、春は「おい」と心の中でつっこんだ。
「ん~なんていうか、小さい頃から見てていつまでもブレない感じが凄いっていうか…尊敬に近いのかもしれない」
……は?
思いがけない和哉の熱い想いに少し顔を赤らめた春は、再び机に顔を突っ伏した。
ブレてないって…何だそれ!?そういうキャラが一番面倒くさくなくて作りやすいんだっての!
先程の会話を反復させ、一人で何度もつっこみを入れていた春は、結局眠らずに授業に突入する羽目になった。
「会いたかったよ間宮~!」
昼休み、数学準備室のドアを開けた春は、部屋に入って早々ペットボトルでコツンと頭を叩かれる。
「会いたかったのは俺じゃなくてエアコンだろ?あと、ちゃんとノックくらいしろ」
長身で白衣を着こなし、教師らしくない茶髪と整った顔立ちの数学教師…間宮先生は小さい頃から春と付き合いのある、いわゆる幼馴染というやつだ。
「この学校の中でここだけが俺の楽園なの知ってるだろ?」
ソファーに座った春は自分の部屋のようにくつろぎはじめる。
「俺は良いけど、誰かに見られたらどうすんだ…って弁当それだけか?」
朝コンビニで買った昼食、サラダと吸うタイプのゼリーを見た間宮は顔をしかめた。
「しょうがないだろ~。今の役、女で生きてますって感じのガリガリの男子高校生なんだもん」
ちゅーとゼリーを吸いはじめた春は
「大体、高校生のクセに何だよ女って!飯を食え飯を!」
と不満を爆発させた。
その様子を見てニヤリと笑った間宮は「どれ」と手を伸ばし、制服の上から春の肋骨をツーっと触る。
「うわっ!何するんだよ!!」
「いや、どれくらいガリガリになったのかと思って」
咄嗟に両腕で身体をガードした春を見て間宮は笑うと、顔を赤くした春は「服の上から分かるわけないだろ!」と間宮に蹴りを入れようとする。
「ごめん、ごめん!悪かったって」
降参するように両手を上げつつも、笑いが止まらない間宮を見て春は
「教師のクセに子供みたいな真似するなよな」
と口を尖らせる。
「そう言うお前は、こんなにお喋りなのに教室だと石像みたいになってるもんな」
再び間宮にからかわれた春は「もう黙れ!」と声を荒らげたのであった。
ん?なんだ…?
昼食後、いつも以上にざわつくクラスに気付いた春は、席順が描かれた黒板と教卓に置かれたくじ引きを見て顔を引きつらせた。
「全員揃った?じゃあ席替えはじめるぞ~」
委員長の指揮の元、席替えがはじまりクラスのあちこちから「よっしゃー!」「うわ最悪」といった声が上がる。
一番前だが窓際で今の席が気に入っていた春はショックを受けたが
しょうがない…!とりあえず教卓の前か、あのうるさい連中の近くの席以外ならどこでもいい!
腹を括り、潔くくじを引いた結果…
や…やった~!窓際一番後ろの席ゲットー!!
ニヤついてしまう顔をバレないように伏せ、上機嫌で席を移動した春は、席替え終了と共に一気にテンションを急降下させた。
…なんで?
最高の席、そして最高の景色…なのに目の前には最悪の男(和哉)が座っている!
何でこうなるかなぁ~…。
人気モデルと言うだけあって、ハーフのような綺麗な顔立ちと明るい髪色、そしてスラっとしたスタイルの男性が目の前にいたら、普通の生徒なら大喜びするだろう。
しかし春にしてみれば、眠りの妨害をする最大の原因が目の前に座っている、としか思えない。
しかも無駄にデカくて黒板見えにくいし!
和哉が183cmなのに対し、春は170cmと少し小柄なのもあって余計にイラッとする。
「はーい、じゃあ最初にこの前やった小テスト返していくぞー」
後ろから和哉を睨み、悪あがきをしていた春は諦めるように黒板が見えやすい位置へ席を少し移動させた。
やってしまった…。
返された小テストの点数を見て春は愕然とする。
34点…。もういいや…。寝よ。
母さんに間違いなく怒られると分かった春は、諦めるように机に突っ伏した。
少し開けた窓から心地の良い風を感じ、今まさに眠りにつこうとしたその時
「おーい」
現実に引き戻され睨むように前を見ると、プリントを持った和哉が振り向いて春を呼んでいた。
あ、プリント。
「ごめん」と謝りつつ春が手を伸ばしてプリントを受け取ると「34点…」という呟きが耳に入ってきた。
「ガリ勉そうに見える奴がみんな頭良いってわけじゃないんだな…」
……。
「んなワケねぇだろ」
「…えっ?」
「………あっ」
思わず普段のテンションで突っ込みを入れてしまった春は石のように固まり、脳内も真っ白になっていた。
和哉も予想外の返事に唖然としていたが、ククッと笑いを堪えるようにお腹を抑え「それが素?」と聞いてきた。
もうダメだと観念した春は溜め息を吐くと
「一人でいたいから他の奴に言うなよ」
と釘を刺し、前を向けというようにシッシッと和哉を手で追い払ったのであった。
「私の事なんてどうでもいいんでしょ!」
放課後、静まり返った校舎裏で声を荒らげる女子生徒を見てアキはふっと鼻で笑った。
「そうだな。まぁ、身体だけはマシだったけど」
カッとなった女子生徒は、気怠そうに答えるアキに思い切りビンタすると「死ね!クズ!」と言い残し去っていった。
「いってー…」
アキはうっすらと血が滲む口の端を確かめるように触り「はぁ」と溜め息を吐いた。
「はい!カットー!」
ディレクターの声が響き渡り、先ほどの静けさが嘘だったかのように現場がざわめく。
「春翔君、凄く良かったよ!叩かれた所は大丈夫かい?」
スタッフがテキパキとシーンを切り替えていく中、プロデューサーが満面の笑みで歩み寄ってくる。
「ありがとうございます。はい、血も出ていませんし大丈夫です」
さり気なく顎を持ち上げ、親指で唇をなぞるように傷を確認したプロデューサーは満足気に頷き
「確かに大丈夫そうだな。その調子で明日もよろしく頼むよ」
そう言うとニコリと笑い、偉そうな雰囲気を撒き散らしながら現場を去っていった。
あー!気持ちわりぃーー!!
タクシーで帰宅し、春は真っ先に先ほど触られた顔を浴室でゴシゴシと洗い流す。
ふと目の前の鏡に目を向けると、叩かれて血が滲んでいた口の端がアザのようにくすんだ色になっていた。
うわぁ…。
鏡に近づきアザを触っていると、トントンと浴室のドアをノックする音が聞こえ「春?帰ったの?」と妹の杏奈が話しかけてきた。
「あぁ、今帰ってきたばっか」
シャワーを止めるとそれを会話の合図とみなした杏奈が口を開く。
「あのエロだぬき、大丈夫だった?」
2人揃って散々な呼び方をしている先程のプロデューサーは世間で言う"大物プロデューサー"というやつだが、杏奈曰く、自分達を見る目付きが異様に気持ち悪いらしい。
「春も注意して」と言われたが、やはり女性でモデルでもある妹に比べ警戒心も薄いのか、男の自分は”注意”という意味がいまいちピンとこなかった。
まぁ、確かにさっきの触り方は気持ち悪かったけど…。
あの唇を撫でられた時のゾッとする感覚を思い出した春は、その嫌な記憶ごと洗い流すように再びシャワーを浴びた。
◇◇◇
「私の兄がどんどん気持ち悪くなってく…」
朝、洗面所で身支度をしていた春を見て、腕を組んだ杏奈が冷ややかな目線を向けてくる。
「うるさい!これはこれで毎朝大変なんだよ!」
モデルである事をオープンにしている妹とは違い、春は俳優である事を学校で一切明かしていない。
2人は小学生の頃、女優だった母親が事務所を立ち上げたのをきっかけにこの世界に足を踏み入れた。
春は本名の神崎 春を春翔に変え、1個下の杏奈はアンナとして華々しくデビューした。
春も中学まではオープンにしていたが、芸能人という理由でいじめに遭い、中学三年生の頃はほとんど学校に行っていない。
そんな事もあり高校は知り合いが誰もいない遠方の学校を選び、面倒な人間関係を避ける為にわざわざダサい格好で学校に通っている。
髪はボサボサにして~鼻の周りにそばかすを描いて…仕上げに分厚い眼鏡をかければ完成っと!
我ながら見事なモサ男ぶりに感心していると、玄関から「行くわよー!」と母の声が聞こえ、春はバタバタと支度を済ませたのだった。
「じゃあ今日は学校終わったら直接現場に向かってちょうだい。母さん、撮影終わる頃には行けると思うから」
「大丈夫、分かってるよ。じゃあ行ってきまーす」
「じゃあね、春」
最寄駅に到着し春がドアを閉めると、母の車は杏奈の高校に向かって走り出した。
車を見送った春は鞄の中からイヤホンを取り出すと、好きなメタルバンドの曲を選び、改札に吸い込まれていく人混みの中に入っていった。
◇◇◇
夜は撮影だから少しでも寝ておきたい。
教室に入り自分の席に着いた春は誰とも挨拶を交わす事なく、イヤホンを付けたまま眠りの姿勢に入る。
しかし
「かず!◯◯ってモデルとの撮影」「ねぇ~かずくん」「おーい!かずー!」
かず、かず、かず、かず…うるせぇ!
眠りの妨害をしてくる集団…モデル、長谷川 和哉とその仲間たち(春 命名)をギロリと睨みつけるものの、この分厚い眼鏡のせいで春の殺気は1mmたりとも伝わっていない。
「そういえば、この前のドラマで春翔がさ」
げっ…。
仲間たちの一人が春翔の事を話しはじめ、さっさとどこかへ行けば良かったと後悔した春だったが
「あーストップ。俺、春翔のファンだから批判っぽいの出来れば聞きたくないんだよね~」
ボスである和哉が気まずそうに言い出したお陰で、仲間たちは「あ、そうなんだ!?」とすぐさまその話題から離れた。
「でも、かずが春翔のファンって意外だね?ああいうキラキラ系?正統派王子様っぽいの好きな感じしないけど」
あ、ディスってないからね。と付け加えた女子を見て、春は「おい」と心の中でつっこんだ。
「ん~なんていうか、小さい頃から見てていつまでもブレない感じが凄いっていうか…尊敬に近いのかもしれない」
……は?
思いがけない和哉の熱い想いに少し顔を赤らめた春は、再び机に顔を突っ伏した。
ブレてないって…何だそれ!?そういうキャラが一番面倒くさくなくて作りやすいんだっての!
先程の会話を反復させ、一人で何度もつっこみを入れていた春は、結局眠らずに授業に突入する羽目になった。
「会いたかったよ間宮~!」
昼休み、数学準備室のドアを開けた春は、部屋に入って早々ペットボトルでコツンと頭を叩かれる。
「会いたかったのは俺じゃなくてエアコンだろ?あと、ちゃんとノックくらいしろ」
長身で白衣を着こなし、教師らしくない茶髪と整った顔立ちの数学教師…間宮先生は小さい頃から春と付き合いのある、いわゆる幼馴染というやつだ。
「この学校の中でここだけが俺の楽園なの知ってるだろ?」
ソファーに座った春は自分の部屋のようにくつろぎはじめる。
「俺は良いけど、誰かに見られたらどうすんだ…って弁当それだけか?」
朝コンビニで買った昼食、サラダと吸うタイプのゼリーを見た間宮は顔をしかめた。
「しょうがないだろ~。今の役、女で生きてますって感じのガリガリの男子高校生なんだもん」
ちゅーとゼリーを吸いはじめた春は
「大体、高校生のクセに何だよ女って!飯を食え飯を!」
と不満を爆発させた。
その様子を見てニヤリと笑った間宮は「どれ」と手を伸ばし、制服の上から春の肋骨をツーっと触る。
「うわっ!何するんだよ!!」
「いや、どれくらいガリガリになったのかと思って」
咄嗟に両腕で身体をガードした春を見て間宮は笑うと、顔を赤くした春は「服の上から分かるわけないだろ!」と間宮に蹴りを入れようとする。
「ごめん、ごめん!悪かったって」
降参するように両手を上げつつも、笑いが止まらない間宮を見て春は
「教師のクセに子供みたいな真似するなよな」
と口を尖らせる。
「そう言うお前は、こんなにお喋りなのに教室だと石像みたいになってるもんな」
再び間宮にからかわれた春は「もう黙れ!」と声を荒らげたのであった。
ん?なんだ…?
昼食後、いつも以上にざわつくクラスに気付いた春は、席順が描かれた黒板と教卓に置かれたくじ引きを見て顔を引きつらせた。
「全員揃った?じゃあ席替えはじめるぞ~」
委員長の指揮の元、席替えがはじまりクラスのあちこちから「よっしゃー!」「うわ最悪」といった声が上がる。
一番前だが窓際で今の席が気に入っていた春はショックを受けたが
しょうがない…!とりあえず教卓の前か、あのうるさい連中の近くの席以外ならどこでもいい!
腹を括り、潔くくじを引いた結果…
や…やった~!窓際一番後ろの席ゲットー!!
ニヤついてしまう顔をバレないように伏せ、上機嫌で席を移動した春は、席替え終了と共に一気にテンションを急降下させた。
…なんで?
最高の席、そして最高の景色…なのに目の前には最悪の男(和哉)が座っている!
何でこうなるかなぁ~…。
人気モデルと言うだけあって、ハーフのような綺麗な顔立ちと明るい髪色、そしてスラっとしたスタイルの男性が目の前にいたら、普通の生徒なら大喜びするだろう。
しかし春にしてみれば、眠りの妨害をする最大の原因が目の前に座っている、としか思えない。
しかも無駄にデカくて黒板見えにくいし!
和哉が183cmなのに対し、春は170cmと少し小柄なのもあって余計にイラッとする。
「はーい、じゃあ最初にこの前やった小テスト返していくぞー」
後ろから和哉を睨み、悪あがきをしていた春は諦めるように黒板が見えやすい位置へ席を少し移動させた。
やってしまった…。
返された小テストの点数を見て春は愕然とする。
34点…。もういいや…。寝よ。
母さんに間違いなく怒られると分かった春は、諦めるように机に突っ伏した。
少し開けた窓から心地の良い風を感じ、今まさに眠りにつこうとしたその時
「おーい」
現実に引き戻され睨むように前を見ると、プリントを持った和哉が振り向いて春を呼んでいた。
あ、プリント。
「ごめん」と謝りつつ春が手を伸ばしてプリントを受け取ると「34点…」という呟きが耳に入ってきた。
「ガリ勉そうに見える奴がみんな頭良いってわけじゃないんだな…」
……。
「んなワケねぇだろ」
「…えっ?」
「………あっ」
思わず普段のテンションで突っ込みを入れてしまった春は石のように固まり、脳内も真っ白になっていた。
和哉も予想外の返事に唖然としていたが、ククッと笑いを堪えるようにお腹を抑え「それが素?」と聞いてきた。
もうダメだと観念した春は溜め息を吐くと
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