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約束の時間までまだ30分もある…。
友達との待ち合わせが初めての春は少し緊張しているのか、ショーウィンドウに映る自分の姿を何度も確認していた。
サングラス、レンズ薄めだけどキャップを深く被れば大丈夫か。
ライブの格好で悩んでいた春だが、思い返してみれば普段の買い物でも変装しているので、大きめのTシャツにタイトなパンツ、そしてサングラスにキャップという、いつも通りのスタイルにした。
普段の買い物と違う点と言えば、鼻の周りにそばかすを描いているくらいだろう。
和哉が到着するまでの時間、アダムの曲を聞いて待とうと考えた春がイヤホンを取り出したその時
「きゃー!」「本物!?」「かっこいいー!」
なんだ…?
徐々に近付いてくる歓声に春は目を凝らす。
うわ…マジかよ…。
嫌でも目に入るイケメンが、人混みをかき分けてやって来る姿を見て春は愕然とした。
「ごめん、お待たせ」
「いや、待ってないけど…。っていうか、それより変装くらいしてこいよ和哉…」
雑誌や学校で見せるそのままの姿でやって来た和哉の周りには、すでに大勢の人混みができている。
「ごめん油断してた…。とりあえずどっか入ろっか」
苦笑いを浮かべる和哉が移動しようとした時「あの」と横から女性2人組に声をかけられた。
「今からご飯ですか?良かったら私達とご一緒しません?お友達も一緒に」
「えっ!俺も!?」
傍観しようと思っていた矢先、話しかけられてしまい思わずリアクションをとってしまった春を見て女の子達がクスクスと笑いだす。
「めちゃくちゃ良いリアクション!っていうか肌とか凄い綺麗ですね」
覗き込まれるように見られた春が焦り「うわっ!見んなって!」と顔を隠すと、面白くなってきたのか女の子は「やだー!可愛いー!」と更に近くに寄った。
その瞬間
「おい、やめろよ」
和哉の突き刺すような声色に春や女の子達はビクッと動きを止める。
「俺の友達に迷惑かけないでね」
ニコリと笑っているが、明らかに敵意剥き出しの圧力に「ご、ごめんなさい」と女の子達は咄嗟に謝った。
「じゃあ春行こっか」
「お、おう」
春の腕を引き寄せ、ツカツカと歩き出す和哉に引っ張られるように春も歩き出した。
「お前、ファンにあんな態度とって大丈夫なの?」
「たぶん大丈夫」
「たぶんって…」
流石に今のままだとマズいと考えた和哉は、春を見習ってキャップを買おうと適当なショップに入った。
「でもいつもの和哉らしくなかったな。まぁ俺は気にしないけど」
「俺も、いつもなら適当にあしらってるんだけど…」
キャップを選んでいた和哉の手が止まる。
「あいつら、お前が嫌がってるのにしつこいし。しかも…ベタベタ近寄りだすし…」
「へっ?」
最後の方は小声になっていたが、思いもよらない理由に春は間抜けな声を出してしまった。
「もしかして、俺の為に怒ってくれたの?」
春が確認すると和哉はバッと顔を逸らし「そういう訳じゃないけど」とボソボソ呟いている。
うわーうわー!
耳まで赤くなった和哉を見て、自分まで恥ずかしくなってきた春が「ありがとう」と照れながら言うと
「うん」
短い返事だけ返ってきたが、和哉が春の方を向く事はしばらくなかった。
「春、本当にこれでいいの?」
「もちろん!最高!」
「飯どこがいい?」と和哉に聞かれ、春が真っ先にリクエストしたのが安いファーストフードのハンバーガーショップだった。
「あ!ってか本当に奢ってもらっちゃっていいの?」
「いいよ、迷惑かけたし。むしろ俺としてはもっと高いの奢るつもりだったんだけど」
リクエストがまさかのハンバーガーで拍子抜けしたのか、和哉は渋々ポテトを口に運んでいる。
「だってさー、ずっと食べたかったんだけど俺の家、昔から食事とか厳しいから食べられなかったんだよね。一人で店に入る勇気も無かったし。だから今めちゃくちゃ嬉しい」
嬉しそうにハンバーガーの包装を開く春を見て「まじで?」と和哉は呟くと
「じゃあさ!初めて一緒にハンバーガー食べた人は俺ってこと?間宮先生でもなく!?」
と身を乗り出してきた。
「何でそこで間宮が出てくるんだよ…。そうだよ、和哉が初めてだよ」
そう答えた春は一口ハンバーガーをかじると「うわ…うまっ」と感動の声をもらした。
「そっか、俺が初めてか」
和哉は満足気に呟くと機嫌を良くしたのか
「確かに初めてだけあって食べ方も下手だな」
そう言って手を伸ばし、春の口に付いていたケチャップを指でぬぐった。
「しょ、しょうがないだろ!思ったより食べにくいし」
こぼれそうになるのを一生懸命抑えながら食べている春を見て、可愛いなと思った和哉は「そういえば」と話を続けた。
「春ってさ、いつも学校の昼ご飯どこで食べてんの?」
「あぁ、間宮の準備室。あそこソファーとかエアコンあるし」
それを聞いた瞬間、数秒前とは打って変わって和哉は肩を落とす。
「あのさ、エアコンには勝てないけど、良かったら今度から屋上で一緒に食べない?人少なくて結構穴場だから」
「それはいいけど…でも嫌だぜ、お前の取り巻きと一緒に食べるのは」
春が咀嚼しながら答えると和哉は「大丈夫」と親指を立てた。
「あいつらは適当に撒いてくるから」
「お前なぁ…」
とても友達に対する発言とは思えない台詞に春は呆れつつも笑うと、つられるように和哉も頬を緩めた。
チケット完売というだけあってライブ会場は人で溢れかえっていたが、初めての生演奏に春は大興奮していた。
「俺、もうちょっと前で見てくる」
「気を付けろよ。俺後ろで見てるから」
和哉が声をかけると後ろを振り返った春は小さく手を振り、人混みの中に飛び込んでいった。
和哉は春を見失わないように会場の後方、少し高めになっている場所に移動する。
いたいた。
楽しそうにステージを見上げている春は、人混みの中にいても和哉の目を惹きつける。
昼間待ち合わせをした時も、学校と雰囲気の違う春に遠くからしばらく見惚れてしまい、その結果ファンに囲まれる羽目になってしまった。
あーーくっそー…。可愛い。
本人は隠したがっているが鼻や唇、顎のラインだけ見ても恐らく春が整っている顔立ちである事が予想できる。
それに春の横顔や後ろ姿が春翔と重なる瞬間もあり、最近は春が近くに来る度、和哉はドキドキしていた。
「はぁー…」
自分でも経験した事が無いレベルのこじらせぶりに和哉は溜め息を吐くと、会場の出入口の方へと姿を消した。
「いや~!最高だった~!」
ライブを終え、そろそろ最寄り駅に到着する頃になっても春のテンションは一向に収まる気配がない。
「でも限定CDが売り切れになってたのは想定外だった…。先に買っておけばよかったな~」
ガクリと肩を落とし項垂れる春を見て和哉はクスッと笑うと「じゃーん」と言って鞄からCDを取り出した。
「えっ…えっ!?いつ買ったの!?」
「お前がステージに夢中になってる時に。はいこれ。ハンバーガーだけじゃ割に合わなかったし、プレゼント」
そいう言って和哉に手渡されたCDを、春はまじまじと見つめ「うわー!大好きだ和哉!」と思い切り抱きついた。
「うわっ!おい!」
突然胸に飛び込んできた春に慌てる和哉だが、テンションが上がりきった春にその声は届かない。
仕方なくされるがままになった和哉は春の頭をポンポンと叩き「また一緒に行こうな」と言うと春は顔を上げ「うん。楽しみだ」と笑った。
「………」
反応が無い和哉に春は「和哉?」と声をかけると、頭に置かれていた手は滑るように春の顎をとらえ、そのままちゅっと唇に軽いキスを落とされた。
呆然とする春に和哉はふっと微笑むと「じゃあ、おやすみ」と言って一人駅の方に歩いて行ってしまった。
その後ろ姿をしばらく呆然と眺めていた春は、しばらくすると顔を真っ赤に変え「何なんだよ…」と呟き、そっと手で唇に触れた。
友達との待ち合わせが初めての春は少し緊張しているのか、ショーウィンドウに映る自分の姿を何度も確認していた。
サングラス、レンズ薄めだけどキャップを深く被れば大丈夫か。
ライブの格好で悩んでいた春だが、思い返してみれば普段の買い物でも変装しているので、大きめのTシャツにタイトなパンツ、そしてサングラスにキャップという、いつも通りのスタイルにした。
普段の買い物と違う点と言えば、鼻の周りにそばかすを描いているくらいだろう。
和哉が到着するまでの時間、アダムの曲を聞いて待とうと考えた春がイヤホンを取り出したその時
「きゃー!」「本物!?」「かっこいいー!」
なんだ…?
徐々に近付いてくる歓声に春は目を凝らす。
うわ…マジかよ…。
嫌でも目に入るイケメンが、人混みをかき分けてやって来る姿を見て春は愕然とした。
「ごめん、お待たせ」
「いや、待ってないけど…。っていうか、それより変装くらいしてこいよ和哉…」
雑誌や学校で見せるそのままの姿でやって来た和哉の周りには、すでに大勢の人混みができている。
「ごめん油断してた…。とりあえずどっか入ろっか」
苦笑いを浮かべる和哉が移動しようとした時「あの」と横から女性2人組に声をかけられた。
「今からご飯ですか?良かったら私達とご一緒しません?お友達も一緒に」
「えっ!俺も!?」
傍観しようと思っていた矢先、話しかけられてしまい思わずリアクションをとってしまった春を見て女の子達がクスクスと笑いだす。
「めちゃくちゃ良いリアクション!っていうか肌とか凄い綺麗ですね」
覗き込まれるように見られた春が焦り「うわっ!見んなって!」と顔を隠すと、面白くなってきたのか女の子は「やだー!可愛いー!」と更に近くに寄った。
その瞬間
「おい、やめろよ」
和哉の突き刺すような声色に春や女の子達はビクッと動きを止める。
「俺の友達に迷惑かけないでね」
ニコリと笑っているが、明らかに敵意剥き出しの圧力に「ご、ごめんなさい」と女の子達は咄嗟に謝った。
「じゃあ春行こっか」
「お、おう」
春の腕を引き寄せ、ツカツカと歩き出す和哉に引っ張られるように春も歩き出した。
「お前、ファンにあんな態度とって大丈夫なの?」
「たぶん大丈夫」
「たぶんって…」
流石に今のままだとマズいと考えた和哉は、春を見習ってキャップを買おうと適当なショップに入った。
「でもいつもの和哉らしくなかったな。まぁ俺は気にしないけど」
「俺も、いつもなら適当にあしらってるんだけど…」
キャップを選んでいた和哉の手が止まる。
「あいつら、お前が嫌がってるのにしつこいし。しかも…ベタベタ近寄りだすし…」
「へっ?」
最後の方は小声になっていたが、思いもよらない理由に春は間抜けな声を出してしまった。
「もしかして、俺の為に怒ってくれたの?」
春が確認すると和哉はバッと顔を逸らし「そういう訳じゃないけど」とボソボソ呟いている。
うわーうわー!
耳まで赤くなった和哉を見て、自分まで恥ずかしくなってきた春が「ありがとう」と照れながら言うと
「うん」
短い返事だけ返ってきたが、和哉が春の方を向く事はしばらくなかった。
「春、本当にこれでいいの?」
「もちろん!最高!」
「飯どこがいい?」と和哉に聞かれ、春が真っ先にリクエストしたのが安いファーストフードのハンバーガーショップだった。
「あ!ってか本当に奢ってもらっちゃっていいの?」
「いいよ、迷惑かけたし。むしろ俺としてはもっと高いの奢るつもりだったんだけど」
リクエストがまさかのハンバーガーで拍子抜けしたのか、和哉は渋々ポテトを口に運んでいる。
「だってさー、ずっと食べたかったんだけど俺の家、昔から食事とか厳しいから食べられなかったんだよね。一人で店に入る勇気も無かったし。だから今めちゃくちゃ嬉しい」
嬉しそうにハンバーガーの包装を開く春を見て「まじで?」と和哉は呟くと
「じゃあさ!初めて一緒にハンバーガー食べた人は俺ってこと?間宮先生でもなく!?」
と身を乗り出してきた。
「何でそこで間宮が出てくるんだよ…。そうだよ、和哉が初めてだよ」
そう答えた春は一口ハンバーガーをかじると「うわ…うまっ」と感動の声をもらした。
「そっか、俺が初めてか」
和哉は満足気に呟くと機嫌を良くしたのか
「確かに初めてだけあって食べ方も下手だな」
そう言って手を伸ばし、春の口に付いていたケチャップを指でぬぐった。
「しょ、しょうがないだろ!思ったより食べにくいし」
こぼれそうになるのを一生懸命抑えながら食べている春を見て、可愛いなと思った和哉は「そういえば」と話を続けた。
「春ってさ、いつも学校の昼ご飯どこで食べてんの?」
「あぁ、間宮の準備室。あそこソファーとかエアコンあるし」
それを聞いた瞬間、数秒前とは打って変わって和哉は肩を落とす。
「あのさ、エアコンには勝てないけど、良かったら今度から屋上で一緒に食べない?人少なくて結構穴場だから」
「それはいいけど…でも嫌だぜ、お前の取り巻きと一緒に食べるのは」
春が咀嚼しながら答えると和哉は「大丈夫」と親指を立てた。
「あいつらは適当に撒いてくるから」
「お前なぁ…」
とても友達に対する発言とは思えない台詞に春は呆れつつも笑うと、つられるように和哉も頬を緩めた。
チケット完売というだけあってライブ会場は人で溢れかえっていたが、初めての生演奏に春は大興奮していた。
「俺、もうちょっと前で見てくる」
「気を付けろよ。俺後ろで見てるから」
和哉が声をかけると後ろを振り返った春は小さく手を振り、人混みの中に飛び込んでいった。
和哉は春を見失わないように会場の後方、少し高めになっている場所に移動する。
いたいた。
楽しそうにステージを見上げている春は、人混みの中にいても和哉の目を惹きつける。
昼間待ち合わせをした時も、学校と雰囲気の違う春に遠くからしばらく見惚れてしまい、その結果ファンに囲まれる羽目になってしまった。
あーーくっそー…。可愛い。
本人は隠したがっているが鼻や唇、顎のラインだけ見ても恐らく春が整っている顔立ちである事が予想できる。
それに春の横顔や後ろ姿が春翔と重なる瞬間もあり、最近は春が近くに来る度、和哉はドキドキしていた。
「はぁー…」
自分でも経験した事が無いレベルのこじらせぶりに和哉は溜め息を吐くと、会場の出入口の方へと姿を消した。
「いや~!最高だった~!」
ライブを終え、そろそろ最寄り駅に到着する頃になっても春のテンションは一向に収まる気配がない。
「でも限定CDが売り切れになってたのは想定外だった…。先に買っておけばよかったな~」
ガクリと肩を落とし項垂れる春を見て和哉はクスッと笑うと「じゃーん」と言って鞄からCDを取り出した。
「えっ…えっ!?いつ買ったの!?」
「お前がステージに夢中になってる時に。はいこれ。ハンバーガーだけじゃ割に合わなかったし、プレゼント」
そいう言って和哉に手渡されたCDを、春はまじまじと見つめ「うわー!大好きだ和哉!」と思い切り抱きついた。
「うわっ!おい!」
突然胸に飛び込んできた春に慌てる和哉だが、テンションが上がりきった春にその声は届かない。
仕方なくされるがままになった和哉は春の頭をポンポンと叩き「また一緒に行こうな」と言うと春は顔を上げ「うん。楽しみだ」と笑った。
「………」
反応が無い和哉に春は「和哉?」と声をかけると、頭に置かれていた手は滑るように春の顎をとらえ、そのままちゅっと唇に軽いキスを落とされた。
呆然とする春に和哉はふっと微笑むと「じゃあ、おやすみ」と言って一人駅の方に歩いて行ってしまった。
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