目覚めたら若返った天才魔法師は愛弟子と魔王に求愛される

野良

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6 光魔法の精霊師

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書類を書く手を止めたレオは、気付けばボーッと考え込んでしまう頭を横に振った。

突然現れた精霊師フィー。

確かに顔立ちは似ているかもしれないが、憧れを通り越して自分の事を女神だと錯覚する奴は多い。

それでも、あいつを見ていると自分の心が一番温かかったあの頃を思い出してしまう。

「もう期待しないと決めたくせに」

自傷気味に呟いたレオは溜め息を吐くと、気分を入れ替えようと部屋の外へと出て行った。



廊下を歩いていたレオは、遠目に何かを抱えながら歩くセドリックの姿を見つけた。

『一体何をしているんだ?』

レオが足を早めセドリックに近づくと、パッとこちらを振り返ったセドリックと抱えているもの…ぐったりとしているセラフィーの姿が目に入った。

「おい、そいつに何があった」

「実技の授業で無理をしたようで、今から医務室にお連れするところです」

睨むような眼差しのレオに臆する事なく、セドリックは落ち着いた様子で答えた。

「今日は保健医が不在で医務室は開いていない。俺の方で対処しよう」

レオがセラフィーを受け取ろうと手を伸ばしたが、セドリックは逆に手を強め

「レオナルド様のお仕事の邪魔をしてしまっては私がガンダス様に怒られてしまいます。ここは私の方で何とかしますので、レオナルド様はお仕事にお戻りになってください」

と体良くあしらうかのようにニコリと笑った。

その表情を見て苛立ちを覚えたレオは

「これも俺の仕事だ。お前はさっさとガンダスの仕事に戻れ」

そう強く言い放つと、セドリックの手からセラフィーを半ば強引に受け取った。

「お父上の事をまたその様にお呼びになって…。かしこまりました。それではフィーさんの事、よろしくお願いいたします」

一瞬強い視線を向けたセドリックだったが、すぐいつも通りの笑みを浮かべると一礼し、スタスタと元来た道を戻っていった。

『今まで俺に意見などした事が無かったが…明らかに先ほどの様子はいつもと違う』

セドリックの後ろ姿を見て、考え込んでいたレオは視線をセラフィーに戻すと、学園の仕事部屋ではなく魔法研究棟にセラフィーを運んだのであった。



◇◇◇



研究棟の寝室…昔セラフィーが使っていたベッドに彼女を寝かせたレオは、セラフィーの額に手をあて熱を測ると、続けて魔法回路の様子を確認する。

「なんだこの魔法回路は」

レオの魔力量をもってしても、全てを把握しきれないセラフィーの魔法回路にレオは唖然としたが、より意識を集中すると一部の回路が欠損けっそんしている事が分かった。

「俺の魔力量じゃ治す事まではできないか」

額の汗を拭い席を立ったレオは、セラフィーにポーションを飲ませ、生命力を上げる魔法《ヒール》をかける。

セラフィーに反して生命力が高かったレオは昔、聖女に《ヒール》を教わっていたのが功を奏したのであった。

《ヒール》とポーションのおかげで、落ち着きを取り戻したセラフィーを見たレオは安堵の表情を浮かべる。

「しばらく様子を見るか」

キッチンへ向かおうとレオが後ろを向いた瞬間

「…レオ…ただいま……」

セラフィーの小さい声が聞こえ、レオは咄嗟とっさに振り返る。

恐る恐るベッドに歩み寄ったレオは

「……フィー?」

と絞り出すような声で問いかけたが、返ってきたのは眠りについたセラフィーの吐息だけだった。
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