八代学園の変わり者たち

夏風邪

文字の大きさ
18 / 22
第一章

第18話 一方その頃

しおりを挟む


 * * *


「なんだったんだ……?」


 高笑いしながら前を行く二人とそれを追う三人の背中を見送った進藤しんどうは、ポツリとそう漏らした。
 女子生徒と曲がり角でぶつかってからその後ろ姿を見送るまでのほんの数十秒、結局は何も理解が追いつかないまま、気づけばすべて過ぎ去っていた。

「……え、マジでなに?」

「いやー、この学園に不良がいることは知ってたけど修羅場ってるところは初めて見たな。追いかけられてたほう、ありゃ不良じゃねえだろ」

 同じく一部始終を見ていた小柳こやなぎに進藤も頷く。
 髪と眼鏡であまり顔が見えなかった地味めな女と、芸能科でもなかなかお目にかかれない端正な男。並べば異色というか違和感のある二人は見るからに不良ではない。
 女のほうはなかなかに見た目と中身が乖離していたが。

「なんかヤバそうな雰囲気だったけど……マジで誰にも言わなくていいのか? 暴力沙汰とかになってたら危なくね?」

「それはまあ確かに……」

 危険な香りを放つ案件を目撃してしまい、どうしたものかと頭を悩ませる進藤と小柳だったが。

「別にいんじゃねぇの? 大事にはしたくないって言ってたんだし」

 五人が走り去っていった廊下の先を見ていた玲がそう言った。
 その視線もすぐに外れ、携帯を取り出してなにやら操作し始める。

 そんな何気ない仕草ひとつとってもなんと様になっていることか。
 同性でさえ思わず見惚れてしまうのだから、異性が彼にとことん夢中になるのも頷ける。

「だな。学校にはまだ教師も警備員も残ってることだし、騒ぎになりゃ駆けつけてくれんだろ」

「んー……まあ本人がいいって言ってたんだからいいか。早く綿やんのとこ行って俺たちも帰らねえとな。あの人音楽室にいんのかな」
 
 芸能科の生徒が絶大な信頼を寄せる音楽教師の姿を思い浮かべた進藤だったが、そういえば、とふと疑問が過ぎった。

(……あの子、仮にも国宝級イケメンって言われる現役モデルが二人・・もいたのにまったく興味を示さなかったような……。こいつらを前にしてあそこまでスルーする女の子とか初めて見たかも……)

 ちらりと彼らの顔を盗み見た進藤。やはり同性ながら見惚れてしまうなと、彼らの容姿の良さを再認識したのだった。



 トーク画面を閉じてスマホをしまった玲は、内心大きな溜め息を吐いていた。

(とりあえずこれでいいか。なにもしてくれるなって顔に書いてあったし……てかミヤのやつ、不良ども煽りまくってなにやってんの? 喧嘩できねぇくせに) 

 すれ違い様に送られた片割れの視線の意をやはり正確に受け取っていた玲。
 それでも万が一のためにと『なんかあったら連絡しろ』とメッセージだけは入れておいた。
 あとは自分でなんとかするだろうと放置し、隣へと視線をやった。

「なに、樫野かしの

「なにって?」

「さっきからずっと俺のこと見てんだろ」

「ああ、ごめん。無意識だった」

 そう言ってにこりと笑みを浮かべるのは、数多の女性を虜にする男。
 玲の友人兼仕事仲間である彼は聡い。そして心のうちの読めなさには定評がある。

(ミヤとの関係に勘づいたか? 別にそこまでして隠したいわけじゃねぇからいいんだけどな)

 玲も都も自分からは打ち明けないだけで、それぞれが双子の片割れだということを必死に隠しているわけではなかった。
 バレた時は校内でもそれなりに騒がれるだろうし、一般人である都の方が不利益は大きいかもしれないが、そうなればその時考えれいいというのが互いの一致した見解だった。

(一応状況だけミヤに伝えとけばいいだろ……あ、虎之助に缶詰買って帰るか)

 先のことよりも今は今晩の虎之助の食事だ。
 そろそろ虎之助のご飯がなくなると言っていた都の言葉を思い出し、帰りにホームセンターに寄ることにした。


 * * *

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢だったので、身の振り方を考えたい。

しぎ
恋愛
カーティア・メラーニはある日、自分が悪役令嬢であることに気づいた。 断罪イベントまではあと数ヶ月、ヒロインへのざまぁ返しを計画…せずに、カーティアは大好きな読書を楽しみながら、修道院のパンフレットを取り寄せるのだった。悪役令嬢としての日々をカーティアがのんびり過ごしていると、不仲だったはずの婚約者との距離がだんだんおかしくなってきて…。

俺が宝くじで10億円当選してから、幼馴染の様子がおかしい

沢尻夏芽
恋愛
 自他共に認める陰キャ・真城健康(まき・けんこう)は、高校入学前に宝くじで10億円を当てた。  それを知る、陽キャ幼馴染の白駒綾菜(しらこま・あやな)はどうも最近……。 『様子がおかしい』 ※誤字脱字、設定上のミス等があれば、ぜひ教えてください。  現時点で1話に繋がる話は全て書き切っています。  他サイトでも掲載中。

幼馴染の許嫁

山見月あいまゆ
恋愛
私にとって世界一かっこいい男の子は、同い年で幼馴染の高校1年、朝霧 連(あさぎり れん)だ。 彼は、私の許嫁だ。 ___あの日までは その日、私は連に私の手作りのお弁当を届けに行く時だった 連を見つけたとき、連は私が知らない女の子と一緒だった 連はモテるからいつも、周りに女の子がいるのは慣れいてたがもやもやした気持ちになった 女の子は、薄い緑色の髪、ピンク色の瞳、ピンクのフリルのついたワンピース 誰が見ても、愛らしいと思う子だった。 それに比べて、自分は濃い藍色の髪に、水色の瞳、目には大きな黒色の眼鏡 どうみても、女の子よりも女子力が低そうな黄土色の入ったお洋服 どちらが可愛いかなんて100人中100人が女の子のほうが、かわいいというだろう 「こっちを見ている人がいるよ、知り合い?」 可愛い声で連に私のことを聞いているのが聞こえる 「ああ、あれが例の許嫁、氷瀬 美鈴(こおりせ みすず)だ。」 例のってことは、前から私のことを話していたのか。 それだけでも、ショックだった。 その時、連はよしっと覚悟を決めた顔をした 「美鈴、許嫁をやめてくれないか。」 頭を殴られた感覚だった。 いや、それ以上だったかもしれない。 「結婚や恋愛は、好きな子としたいんだ。」 受け入れたくない。 けど、これが連の本心なんだ。 受け入れるしかない 一つだけ、わかったことがある 私は、連に 「許嫁、やめますっ」 選ばれなかったんだ… 八つ当たりの感覚で連に向かって、そして女の子に向かって言った。

俺をフッた幼馴染が、トップアイドルになって「もう一度やり直したい」と言ってきた

夏見ナイ
恋愛
平凡な大学生・藤堂蓮には忘れられない過去がある。高校時代、告白した幼馴染の星宮瑠奈に「アイドルになるから」とこっ酷くフラれたことだ。 数年後、瑠奈は国民的アイドル『LUNA』として輝いていた。遠い世界の住人になった彼女との再会なんて、あるはずもなかった――そう、変装した彼女が俺の前に現れ、「もう一度やり直したい」と泣きつくまでは。 トップアイドルの立場を使い強引に迫る元幼馴染と、過去の傷。揺れ動く俺の日常を照らしてくれたのは、俺の才能を信じてくれる後輩・朝霧陽葵の存在だった。 俺をフッた幼馴染か、俺を支える後輩か。過去の清算と未来の選択を描く、ほろ苦くも甘い、逆転ラブコメディ、開幕。

家から出ない女優の幼馴染を連れ出したら、いつの間にか伝説になっていた件。

Memu(メム)
恋愛
学校に行かない引きこもりの国民的女優――水宮小鞠。 女の子に間違われる地味男子――白雲凪。 俺に与えられた役目はひとつ。 彼女を、学校へ連れて行くこと。 騒動になれば退学。 体育祭までに通わせられなくても退学。 成功率ほぼゼロの無理ゲーだ。 距離は近い。 でも、心は遠い。 甘えてくるくせに、本音は隠す幼馴染。 それでも―― 俺は彼女の手を引く。 退学リミット付き登校ミッションから始まる、 国民的スター幼馴染とのドタバタ青春ラブコメ、ここに開幕。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

拝啓~私に婚約破棄を宣告した公爵様へ~

岡暁舟
恋愛
公爵様に宣言された婚約破棄……。あなたは正気ですか?そうですか。ならば、私も全力で行きましょう。全力で!!!

ため息ひとつ――王宮に散る花びらのように

柴田はつみ
恋愛
「離縁を、お願いしたいのです」 笑顔で、震えずに、エレナはそう言った。 夫は言葉を失った。泣いてくれれば、怒ってくれれば、まだ受け止め方があった。しかしあの静けさは、エレナがもう十分に泣き終わった後の顔だと、ヴィクトルにはわかった。 幼なじみと結ばれた三年間。すれ違いは静かに始まり、深紅のドレスの令嬢によって加速した。ため息を飲み込み、完璧な微笑みを保ち続けた公爵夫人が、最後に選んだのは――。 王宮に散る花びらのような、夫婦の崩壊と再生の物語。

処理中です...