眼中になかった同期とセフレになってみたら沼すぎて、初恋。

ぴょす

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これってデートだよね?

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司に

次の休み、どっか行こう

と言われてしまった。とうとう言われてしまった。どっか行くってそれはもうデートじゃ…?

そんな自惚れのせいでそれからの数日は妙に会社で目を合わせづらくなった。顔を見れば思い出すあの夜の空気。だからか、今まで以上に会話は必要最低限。書類を渡す手も、わざと触れないように避け合う。

そんな数日を過ごして、あっという間に約束の日が来た。

どんな服を着るか。たったそれだけのことも決まらず、悩みに悩んだ末、結局「普通」に落ち着いた私服。白Tに黒のワイドパンツ。何が正解なのか分からないまま、俺は30分前の待ち合わせ場所に着いたのだけど……

……そこには既に、司が立っていた。

心臓が、いきなり喉の奥まで跳ね上がる。
淡い色のシャツに、ラフだけど妙に形のいいパンツ。スーツ姿のときとはまるで違う柔らかさがあって、スタイルの良さが際立っている。確かにそこにいるのは司……なのだけど、前髪を少しだけ軽く流しているせいか、光の加減で影が動くたび、見慣れたはずの顔が知らない誰かみたいに見えた。

そうして、司が俺に気付く。

「うわっ、早くね?」

「お前もだろ……」

「俺は暇だったから早く来ただけだし、」

「……俺も暇だったから、どっかで時間潰そうかな…って、」

二言三言交わしただけなのに、胸の奥はまだドクドクとうるさい。なのに司は、どこか余裕そうだ。だって笑ってるし。歩き出す方向をさりげなく示したり、人混みで俺を庇うし。

……そもそも、なんでセフレなのにこんなこと…

そんなふうに思った矢先、司の距離がまた近くなる。

「前に“和食のが好き”って言ってたよな?良さげな店、見つけといた。さっき覗いたらすぐ入れそうだったしそこでいい?」

息が詰まる。何気ない一言だったはずの事、覚えててくれたんだ。しかもここに来る前に下見して来てくれたって、そんな事した事もされた事もなくて、動揺してしまう。感情がジェットコースターみたいに上下する。それなのにまた。

また近くなる。

司がふいに手を伸ばしてきた。俺の髪を耳に掛けるように触れ、横から視線を落としながら言う。

「……慎ってピアスするんだ?」

低くて、少し笑みを含んだ声。耳の横をゆっくり撫で、指先が輪郭をなぞるようにほんの一瞬だけ留まる。その仕草が、優しさなのか、わざと鼓動を煽る意地悪なのか……

「なんかエロいね」

「っは!?」

嘘だよって何事もなかったように笑いながら前を向く司。置き去りにされたみたいに、触れられた耳だけが熱を持って、息を吸うたびにドキドキが増していく。

……やばい、この先、心臓がもたないかもしれない。

悶々としたまま司の隣を歩いて、言われるがまま進んで、気付けば、目の前には丁寧に作られたおしゃれな料理が並んでいた。

彩りも香りも、空腹の胃袋を刺激しまくる。

……もう難しいこと考えるのやめよ。美味い飯食って、それで解散。それでいい。

割り切ったつもりだった。箸を伸ばし、出汁のきいた味に思わず小さく唸る。その瞬間だった。

「これ食ったらさ……花火、見にいかない?」

「……は?」

耳がおかしくなったかと思った。
だって、今さら気づく。周りの席や外の通りには、ちらほらと浴衣姿の男女。今日が花火大会だってこと。

いやいやいやいや……花火見るって、それもう恋人同士のイベントじゃん……?

え、何?今日俺を誘った理由って、それ?まさかそれ?
うわ、やめろ心臓バクバクすんな……いや無理だろこれ

頭の中で警報が鳴りまくる。箸を持つ手が止まってしまった俺を、司が少しだけ笑いながら見ていた。

「……そんな顔すんなよ。変なこと考えてんだろ。」

言い当てられて、余計に動揺する。司は箸を置き、グラスを傾けながら、何気ない口調で続けた。

「まぁ……俺がどういう気持ちで誘ってるかくらい、そろそろ気付けよ。」

一拍置いて、目だけを真っ直ぐに向けてくる。

「ヤりたいだけでお前とこうして飯食ったり、花火行ったり……するわけないだろ。」

はっきり「付き合おう」と言われたくらいの衝撃。その低い声に含まれた温度は、それ以上に分かりやすくて。誤魔化すほうが不自然なくらいで。意味の分からない顔なんてできなかった。

……やばい、これ以上聞いたら、もう割り切るなんてできなくなる。

素直な感情?
そんなん嬉しいに決まってる。

でも……俺なんて、結局身体だけでいいはずなのに。
なんで、こんなに甘やかしてくるんだろう。
こんな完璧な司が俺で良いわけない。

そのぐちゃぐちゃが口まで上がってきて、つい可愛くない言葉に変わった。

「……花火なんて…見るなら、俺じゃなくても良かっただろ」

言った瞬間、あー……やらかした、と自覚する。
司は少しだけ目を細めて、肩で笑った。

「……お前、俺の話、聞いてた?」

半笑いでそう返されて、心臓の熱が一気に顔まで上がる。視線を逸らしたくなるのに、なぜか逸らせない。可愛げないって、突き放されても仕方ない態度なのに、司はそうしないでいてくれた。

「……っ」

気づけば、両手で口元を覆っていた。頬が熱い。上目遣いで見上げた司の輪郭が、妙にくっきりして見える。

「……こんなこと、初めてで……されたことないから……なんか、変な気持ちになる……」

って、俺何言ってんだ。嬉しいの一言すら言えないくせに。

でも司はその様子に、ほんの一瞬だけ驚いた顔をして、すぐに、柔らかく口角を上げる。

「……やば。その顔、可愛すぎ」

低く笑う声が、耳の奥まで響いた。
その瞬間、自分が今までで一番、司に近い場所にいることを嫌でも思い知らされる。

司の事なんて、ベットの中の姿しか知りたくなかったのに。

もう本当……どうしよう…
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