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俺、浮気される
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ごめん、と数秒前まで彼氏だった男に言われた。男の左腕には、女がしがみついている。数秒前まで俺の彼氏なのに、数秒前から女がいる現実で浮気されていたんだと知った。
というか、俺が浮気相手だったみたいだ。
行きつけのゲイバーで知り合ってなんだかんだ体の関係が良くて、成り行きで一緒に居ることが多くなって、いつかは同棲したいね~なんて話していたり。でも、付き合おうとかそういった話はしてなかったな。
齢28歳、付き合うとか好きだとか愛しているだとか、もう恥ずかしくなってきて大人だから分かるよね?の暗黙のルールでなんとな~く彼氏だと思ってきたけど、思い返してみて、うん。セフレだなこれは。
そうと分かれば、潔く身を引くのが大人だ。大人だから分かるよな。俺。
スマートに、笑顔で、努めて平常心を保ちながら言い放つ。
「女とはアナルセックスするんじゃねえぞ。じゃあな」
齢28歳、俺は全然大人じゃなかったみたいだ。
++++
「ほ~~~んとアンタ見る目ないわね」
「テメー、酒やってんだから大人しく慰めろよ!取り上げるぞ!」
「イヤ~~~グラス舐めてやるぅベロベロベロベロ」
ベロベロとグラスの淵を舐める妖怪を横目に酒をあおる。
ここは件の元カレと会ったゲイバー「五丁目のママ」目の前でベロベロしている妖怪、長サオ魔羅美ママ(通称:長美ママ)筆頭になかなか面白い店子が多い。
長美ママはベロベロしていると妖怪だが、普通にしていれば顔が整っている。そして筋肉があって“そういう筋の人にモテ”要素が十二分にある。従ってモテる。
顔を上げると、長美ママが捨てられた子犬のような前で俺を見つめて
「…ベロベロしてたら、お酒無くなっちゃったワ」
きゅるんとした目で見つめてくる。こうやれば客はすぐに酒を頼むということを熟知している。
「シャンパンおろすわ」
「山田ちゃんからシャンパンいただきましたぁー――!!!!」
しゅぽんとシャンパンが抜けた
「山田ちゃんお酒弱いのに大丈夫なの?」
「今日はこの近くにホテル取ったからつぶれても大丈夫」
とにかく飲みたいんだと呟くと、承知しましたと長美ママが指パッチンをすると、店子が勢ぞろいして俺を囲み、シャンパンコールでどんちゃん騒ぎ。周りの客にもふるまって、みんなでワイワイ話す。
「この子ね~今日失恋しちゃったのよねぇ」
長美ママが隣の客に話してる
「え~俺なら幸せにするのになぁ」
「みんなそう言って、女作っちゃうのよ。もーそういう星周りなのかしらね。こんーんなにいい子なのに」
それはシャンパン入れているからだろと言いたいが、どんどん注がれるジャンパンを飲んでしゃべるのが忙しい。
「長美ママ俺と彼取り持ってよ~。結構タイプ」
「うーん、まだ早いわねぇ」
こう見えて、一途で純粋なのよ。とママが呟く。
違う、俺は一途なんかじゃない。あんな男どうだったよかった。好きだなんて口にしたこともなかった。いくらでもいるし、星の数ほど男はいる。だから大丈夫。
飲んで、飲んで、飲んで、喉を通るシャンパンの炭酸みたいに気持ちも全てはじけちゃえばいいのに。そう思いながら、意識が薄れていった。
俺、山田は生まれてから男が好きだった。だけど、名前に恥じぬ平凡さで特に彼氏ができることなく成人を迎え、社会人になりこういうバーがあると知り足を踏み入れてやっと交流が持てた。
長美ママみたいなタイプが持てる界隈で、俺のような平凡でそこらへんに捨てて居るような男は声もかからない。友達にするのにはちょうどいいようで、彼氏ができない代わりに色んな人の恋事情を聞いていた。
めくるめく恋の話、バーの中で起きる人間模様の、蚊帳の外で話を聞くだけの人。バーの中では俺はクールで口の悪い平凡扱いで、そんな俺の本質が分かっていたのは長美ママだけ。
本当はずっとうらやましくて、悪態付きながらどうして自分はそうなれないんだろうと自己嫌悪。いつか、いつかは…と夢見てた矢先にできた彼氏だったから、死ぬほど嬉しかった。
年齢もそんな若くないし、このままゆっくり付き合っていって、法整備が整ったら結婚…と思っていたのに、女だ。
女はずるい。結婚ができて、妊娠もできて、相手の欲しいものを全部与えられる。
俺ができることなんて、女と比べられてしまったら質で勝負するしかない。でも、それさえも負けてしまった。
齢28歳、撃たれ弱く、立ち直りずらい。もう新しい恋に行く元気もない。
どうしてこの世は不条理なのだろうか。
「…男も妊娠できる世界線に行きたい」
そんなの私たちだって行きたいワヨー!とキンキン声が耳に刺さる。
俺はとっとくに潰れてカウンターに突っ伏している。
「絶対一緒になれるっていう確信が持てて、愛されてみたい」
愛されてみたい、と口に出すと涙が出て止まらなくなった。
愛されたい、ずっと叫んでいた。でも言えなくて、元カレにさえ言ったことがなかった。
「どこが違う世界に行きたい」
そうしたら素直になれるのかな?愛してもらえるかな?
「じゃあ行こうか」
突っ伏している顔を上げると、笑顔の長美ママ。
どこに行くの?と口を開くと、ぐるりと世界が反転する。
「山田ちゃんが素直に愛される世界にいってらっしゃーい」
ぐるん、ぐるんと世界が回る。長美ママも、バーの中のどんちゃん騒ぎも全て歪む。
ぐるぐるして気持ち悪くて、目を瞑って耐えていたらいつの間にか眠っていた。
目を覚ますと、知らないバーのカウンターで寝ていた。
「おはようお姫様。気分はどう?」
顔を上げると、ママが立っていた。
「長美…ママ?」
「それはさっきの世界のアタシ。この世界では玉美。長サオ玉美よん」
「はぁ」
「ようこそ、オメガバースの世界へ」
おめがばーず?と呟くとyesと指をパチンとする
「男でも妊娠できる世界。それがオメガバース。ね、山田くんが幸せになれる世界でしょ?」
齢28歳、山田。俺はオメガバースの世界に来てしまったみたいだ。
というか、俺が浮気相手だったみたいだ。
行きつけのゲイバーで知り合ってなんだかんだ体の関係が良くて、成り行きで一緒に居ることが多くなって、いつかは同棲したいね~なんて話していたり。でも、付き合おうとかそういった話はしてなかったな。
齢28歳、付き合うとか好きだとか愛しているだとか、もう恥ずかしくなってきて大人だから分かるよね?の暗黙のルールでなんとな~く彼氏だと思ってきたけど、思い返してみて、うん。セフレだなこれは。
そうと分かれば、潔く身を引くのが大人だ。大人だから分かるよな。俺。
スマートに、笑顔で、努めて平常心を保ちながら言い放つ。
「女とはアナルセックスするんじゃねえぞ。じゃあな」
齢28歳、俺は全然大人じゃなかったみたいだ。
++++
「ほ~~~んとアンタ見る目ないわね」
「テメー、酒やってんだから大人しく慰めろよ!取り上げるぞ!」
「イヤ~~~グラス舐めてやるぅベロベロベロベロ」
ベロベロとグラスの淵を舐める妖怪を横目に酒をあおる。
ここは件の元カレと会ったゲイバー「五丁目のママ」目の前でベロベロしている妖怪、長サオ魔羅美ママ(通称:長美ママ)筆頭になかなか面白い店子が多い。
長美ママはベロベロしていると妖怪だが、普通にしていれば顔が整っている。そして筋肉があって“そういう筋の人にモテ”要素が十二分にある。従ってモテる。
顔を上げると、長美ママが捨てられた子犬のような前で俺を見つめて
「…ベロベロしてたら、お酒無くなっちゃったワ」
きゅるんとした目で見つめてくる。こうやれば客はすぐに酒を頼むということを熟知している。
「シャンパンおろすわ」
「山田ちゃんからシャンパンいただきましたぁー――!!!!」
しゅぽんとシャンパンが抜けた
「山田ちゃんお酒弱いのに大丈夫なの?」
「今日はこの近くにホテル取ったからつぶれても大丈夫」
とにかく飲みたいんだと呟くと、承知しましたと長美ママが指パッチンをすると、店子が勢ぞろいして俺を囲み、シャンパンコールでどんちゃん騒ぎ。周りの客にもふるまって、みんなでワイワイ話す。
「この子ね~今日失恋しちゃったのよねぇ」
長美ママが隣の客に話してる
「え~俺なら幸せにするのになぁ」
「みんなそう言って、女作っちゃうのよ。もーそういう星周りなのかしらね。こんーんなにいい子なのに」
それはシャンパン入れているからだろと言いたいが、どんどん注がれるジャンパンを飲んでしゃべるのが忙しい。
「長美ママ俺と彼取り持ってよ~。結構タイプ」
「うーん、まだ早いわねぇ」
こう見えて、一途で純粋なのよ。とママが呟く。
違う、俺は一途なんかじゃない。あんな男どうだったよかった。好きだなんて口にしたこともなかった。いくらでもいるし、星の数ほど男はいる。だから大丈夫。
飲んで、飲んで、飲んで、喉を通るシャンパンの炭酸みたいに気持ちも全てはじけちゃえばいいのに。そう思いながら、意識が薄れていった。
俺、山田は生まれてから男が好きだった。だけど、名前に恥じぬ平凡さで特に彼氏ができることなく成人を迎え、社会人になりこういうバーがあると知り足を踏み入れてやっと交流が持てた。
長美ママみたいなタイプが持てる界隈で、俺のような平凡でそこらへんに捨てて居るような男は声もかからない。友達にするのにはちょうどいいようで、彼氏ができない代わりに色んな人の恋事情を聞いていた。
めくるめく恋の話、バーの中で起きる人間模様の、蚊帳の外で話を聞くだけの人。バーの中では俺はクールで口の悪い平凡扱いで、そんな俺の本質が分かっていたのは長美ママだけ。
本当はずっとうらやましくて、悪態付きながらどうして自分はそうなれないんだろうと自己嫌悪。いつか、いつかは…と夢見てた矢先にできた彼氏だったから、死ぬほど嬉しかった。
年齢もそんな若くないし、このままゆっくり付き合っていって、法整備が整ったら結婚…と思っていたのに、女だ。
女はずるい。結婚ができて、妊娠もできて、相手の欲しいものを全部与えられる。
俺ができることなんて、女と比べられてしまったら質で勝負するしかない。でも、それさえも負けてしまった。
齢28歳、撃たれ弱く、立ち直りずらい。もう新しい恋に行く元気もない。
どうしてこの世は不条理なのだろうか。
「…男も妊娠できる世界線に行きたい」
そんなの私たちだって行きたいワヨー!とキンキン声が耳に刺さる。
俺はとっとくに潰れてカウンターに突っ伏している。
「絶対一緒になれるっていう確信が持てて、愛されてみたい」
愛されてみたい、と口に出すと涙が出て止まらなくなった。
愛されたい、ずっと叫んでいた。でも言えなくて、元カレにさえ言ったことがなかった。
「どこが違う世界に行きたい」
そうしたら素直になれるのかな?愛してもらえるかな?
「じゃあ行こうか」
突っ伏している顔を上げると、笑顔の長美ママ。
どこに行くの?と口を開くと、ぐるりと世界が反転する。
「山田ちゃんが素直に愛される世界にいってらっしゃーい」
ぐるん、ぐるんと世界が回る。長美ママも、バーの中のどんちゃん騒ぎも全て歪む。
ぐるぐるして気持ち悪くて、目を瞑って耐えていたらいつの間にか眠っていた。
目を覚ますと、知らないバーのカウンターで寝ていた。
「おはようお姫様。気分はどう?」
顔を上げると、ママが立っていた。
「長美…ママ?」
「それはさっきの世界のアタシ。この世界では玉美。長サオ玉美よん」
「はぁ」
「ようこそ、オメガバースの世界へ」
おめがばーず?と呟くとyesと指をパチンとする
「男でも妊娠できる世界。それがオメガバース。ね、山田くんが幸せになれる世界でしょ?」
齢28歳、山田。俺はオメガバースの世界に来てしまったみたいだ。
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