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16.雪山で遭難!
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「はぁー寒い。ああやだ魔法を使えないってだけで信じられない。さっぶーい。」
「仕方ないわよ。ここは霊峰なんだから。」
「なんで霊峰だと魔法を使えないんだ?」
「使えないっていうか魔法の消費量が馬鹿みたいに必要になるのよ。例えば火を灯すだけでも下手をすると魔力欠乏で倒れるくらい。」
「倒れるとどうなるんだぁ?」
なんでもない顔で克也は雪道をギュッギュッと踏みしめながら歩いて行く。
なんだか全く疲れた様子がない彼に苛立った美野里は少し大きな声でそうなったときの状態を話し出した。
「もれなくショウがシエルを抱きかかえて・・・ムグッ。」
美野里の口を大慌てで克也は抑えると彼女の耳元で囁いた。
「おい、そんなことだけは間違ってもいうなよ。誰かがその気になって本気で実行したらどうする気だ。」
美野里は真っ青な顔で違う意味で震える 克也を見れて少し溜飲が下がった。
今までシェルと美野里の二人だけが霊峰の雪に触れているだけで魔力量がかなり奪われ死にそうになっているのに反して、魔術師でないせいか彼は一向に何かを感じた様子もなく平気な顔で雪道をザクザク歩いていたからだ。
でもなんで彼だけ疲れないんだろうか。
まだ見習い兵士とは言え今まで運動部で動いていたせいなのかしら。
それが剣士の素質なんだろうか。
美野里がふと意識をそっちに向けた隙に何かが彼らの前に現れた。
それら真っ白な影がいきなり美野里目がけて突っ込んで来たようだ。
なんでようだかというと彼女にはその気配が全く分からなかったからだ。
しかし彼女に襲いかかろうとしていたそれに気がついた克也は彼女を突き飛ばして自分がその物体の前に出ると襲って来たそれをすぐに斬り伏せた。
敵は獲物を仕留め損ねて今度は脅威である克也に殺到した。
克也は聖剣でなんとか襲ってくるものを斬るが如何せん数が多すぎて対応が追い付かない。
そのうちシェルが克也が斬り殺した物を見て悲鳴をあげた。
「いやぁー。こんな所で白狼と遭遇とかありえないわ。」
「なんだか分からんが囲まれてるぞ。」
「もうやだぁー。寒いうえ白狼と死闘とかありえない。」
「だがこの数じゃ逃げることも出来なさそうだ。」
「囲まれてる?」
シェルは何かを考えながらもどうしようか迷っているようだ。
「ああ、聖剣を持ってるせいかイヤーな気配が俺達を綺麗に囲んでる。」
克也が考え込んでいるシェルに追い討ちをかけた。
「もうしょうがない。これはやるしかない。」
シェルは右手に杖を出すと何かを唱え始めた。
「おい、何する気だ?」
「死にたくないから魔法を使う。大丈夫こいつら全員倒すから。」
「おい、ちょっと待て。それって・・・。」
克也が止めるより早く膨大な魔力を使って普通よりちょっと強力な電撃魔法を白狼に放つとシェルはその場に頽れた。
ドサッ!
「シェル!」
美野里は倒れたシェルに駆け寄ると回復魔法を使おうとしてそれを克也に止められた。
「今ここでそれを使うとシータも気絶しないか?」
「そうだった。」
克也は何かを諦めた気になりながらシェルは背負うと歩き出した。
「とにかく先を急ごう。この雪山を抜ければ魔法は普通に使えるんだろ。」
頷く美野里を見てから克也は諦め顔で地面に伸びているシェルを背負い歩き出した。
美野里も黙って歩き出した彼の後に続いた。
ザクザクザク
ギュッギュッギュッ
ザクザクザク
ギュッギュッギュッ
ザクザクザク
白い雪の中を転々と穴を開けながら二人は黙って山の頂上を超え、今度は滑らない様に山を下り始めた。
山を下るにつれて、少しずつだが雪の深さが変わって行った。
しかし目の前は見渡す限り白銀の世界だった。
もう一歩も進めないと前を進む克也に美野里が声を掛けようと顔をあげると運が開けてきたのか二人の前にやっと雪がない地面が見えてきた。
二人の歩みが早くなる。
それでもそこから三十分以上雪道が続いた。
三十分後に二人はドロドロになりながらも雪がない泥道に出た。
よし。
ここなら魔法を使える。
美野里は克也にシェルを降ろすように言うと彼は喜んでドロドロにぬかるんでいる道にシェルをドサリと投げ落とした。
何気に酷い扱いだ。
だがそれよりも雪がないということは魔獣が出てくる可能性がある。
急いでシェルを回復させないと彼を庇いながら戦うことになる。
美野里は右手に魔法書を出すとシェルに回復魔法を掛けた。
すぐに意識を取り戻したシェルはその途端喚きだした。
「なんでぇー。信じられない。意識を失うくらい死ぬ気で魔法使ったのに覚えてるのがぬかるんだ泥道とかありえない。なんで私はもっと早く意識を取り戻さなかったの。そうしていたらショウの背中を彼の筋肉を堪能できたはずなのに・・・オウマイ・・・ゴッ。」
克也は拳をプルプルさせながらもシェルの魔法で助かったので我慢していた堪忍袋が今のセリフで切れた。
彼は本気でシェルの頭を殴って泥道に叩き付けた。
「ちょっ・・・何するのよ!」
「それは俺のセリフだ。ここまで死ぬ気で担いできたのになんだあのセリフは。もう一度殴って・・・。」
克也の言葉を今度は美野里が手を挙げて止めた。
「二人とも黙って。何か聞こえない。」
美野里の指摘に二人は耳を澄ませた。
すると何かの唸り声と悲鳴が風に乗って聞こえて来た。
「あっちだ。」
克也は悲鳴が聞こえた方角を示した。
ゴツゴツした岩が続く開けた所で何かが動いていた。
「どうする?」
「見捨てたいけど助けるしかないわね。」
目を細めて克也が指さした方向を見ていたシェルが即答した。
「えっ、シェルにしては珍しい選択ね。」
「だってあの魔獣に襲われてるの自国の兵士みたいだもの。」
シェルの爆弾発言に二人は目を剥いた。
「「自国の兵士。」」
「助けなきゃ。」
美野里は魔法書を出しながら駆け出した。
「俺も行く。」
克也も聖剣を出すと美野里の後を追った。
二人から遅れて立ち上がったシェルはやれやれと言いながらのんびりした足取りで立ち上がると彼も同じように襲われている兵士の方に向かった。
「仕方ないわよ。ここは霊峰なんだから。」
「なんで霊峰だと魔法を使えないんだ?」
「使えないっていうか魔法の消費量が馬鹿みたいに必要になるのよ。例えば火を灯すだけでも下手をすると魔力欠乏で倒れるくらい。」
「倒れるとどうなるんだぁ?」
なんでもない顔で克也は雪道をギュッギュッと踏みしめながら歩いて行く。
なんだか全く疲れた様子がない彼に苛立った美野里は少し大きな声でそうなったときの状態を話し出した。
「もれなくショウがシエルを抱きかかえて・・・ムグッ。」
美野里の口を大慌てで克也は抑えると彼女の耳元で囁いた。
「おい、そんなことだけは間違ってもいうなよ。誰かがその気になって本気で実行したらどうする気だ。」
美野里は真っ青な顔で違う意味で震える 克也を見れて少し溜飲が下がった。
今までシェルと美野里の二人だけが霊峰の雪に触れているだけで魔力量がかなり奪われ死にそうになっているのに反して、魔術師でないせいか彼は一向に何かを感じた様子もなく平気な顔で雪道をザクザク歩いていたからだ。
でもなんで彼だけ疲れないんだろうか。
まだ見習い兵士とは言え今まで運動部で動いていたせいなのかしら。
それが剣士の素質なんだろうか。
美野里がふと意識をそっちに向けた隙に何かが彼らの前に現れた。
それら真っ白な影がいきなり美野里目がけて突っ込んで来たようだ。
なんでようだかというと彼女にはその気配が全く分からなかったからだ。
しかし彼女に襲いかかろうとしていたそれに気がついた克也は彼女を突き飛ばして自分がその物体の前に出ると襲って来たそれをすぐに斬り伏せた。
敵は獲物を仕留め損ねて今度は脅威である克也に殺到した。
克也は聖剣でなんとか襲ってくるものを斬るが如何せん数が多すぎて対応が追い付かない。
そのうちシェルが克也が斬り殺した物を見て悲鳴をあげた。
「いやぁー。こんな所で白狼と遭遇とかありえないわ。」
「なんだか分からんが囲まれてるぞ。」
「もうやだぁー。寒いうえ白狼と死闘とかありえない。」
「だがこの数じゃ逃げることも出来なさそうだ。」
「囲まれてる?」
シェルは何かを考えながらもどうしようか迷っているようだ。
「ああ、聖剣を持ってるせいかイヤーな気配が俺達を綺麗に囲んでる。」
克也が考え込んでいるシェルに追い討ちをかけた。
「もうしょうがない。これはやるしかない。」
シェルは右手に杖を出すと何かを唱え始めた。
「おい、何する気だ?」
「死にたくないから魔法を使う。大丈夫こいつら全員倒すから。」
「おい、ちょっと待て。それって・・・。」
克也が止めるより早く膨大な魔力を使って普通よりちょっと強力な電撃魔法を白狼に放つとシェルはその場に頽れた。
ドサッ!
「シェル!」
美野里は倒れたシェルに駆け寄ると回復魔法を使おうとしてそれを克也に止められた。
「今ここでそれを使うとシータも気絶しないか?」
「そうだった。」
克也は何かを諦めた気になりながらシェルは背負うと歩き出した。
「とにかく先を急ごう。この雪山を抜ければ魔法は普通に使えるんだろ。」
頷く美野里を見てから克也は諦め顔で地面に伸びているシェルを背負い歩き出した。
美野里も黙って歩き出した彼の後に続いた。
ザクザクザク
ギュッギュッギュッ
ザクザクザク
ギュッギュッギュッ
ザクザクザク
白い雪の中を転々と穴を開けながら二人は黙って山の頂上を超え、今度は滑らない様に山を下り始めた。
山を下るにつれて、少しずつだが雪の深さが変わって行った。
しかし目の前は見渡す限り白銀の世界だった。
もう一歩も進めないと前を進む克也に美野里が声を掛けようと顔をあげると運が開けてきたのか二人の前にやっと雪がない地面が見えてきた。
二人の歩みが早くなる。
それでもそこから三十分以上雪道が続いた。
三十分後に二人はドロドロになりながらも雪がない泥道に出た。
よし。
ここなら魔法を使える。
美野里は克也にシェルを降ろすように言うと彼は喜んでドロドロにぬかるんでいる道にシェルをドサリと投げ落とした。
何気に酷い扱いだ。
だがそれよりも雪がないということは魔獣が出てくる可能性がある。
急いでシェルを回復させないと彼を庇いながら戦うことになる。
美野里は右手に魔法書を出すとシェルに回復魔法を掛けた。
すぐに意識を取り戻したシェルはその途端喚きだした。
「なんでぇー。信じられない。意識を失うくらい死ぬ気で魔法使ったのに覚えてるのがぬかるんだ泥道とかありえない。なんで私はもっと早く意識を取り戻さなかったの。そうしていたらショウの背中を彼の筋肉を堪能できたはずなのに・・・オウマイ・・・ゴッ。」
克也は拳をプルプルさせながらもシェルの魔法で助かったので我慢していた堪忍袋が今のセリフで切れた。
彼は本気でシェルの頭を殴って泥道に叩き付けた。
「ちょっ・・・何するのよ!」
「それは俺のセリフだ。ここまで死ぬ気で担いできたのになんだあのセリフは。もう一度殴って・・・。」
克也の言葉を今度は美野里が手を挙げて止めた。
「二人とも黙って。何か聞こえない。」
美野里の指摘に二人は耳を澄ませた。
すると何かの唸り声と悲鳴が風に乗って聞こえて来た。
「あっちだ。」
克也は悲鳴が聞こえた方角を示した。
ゴツゴツした岩が続く開けた所で何かが動いていた。
「どうする?」
「見捨てたいけど助けるしかないわね。」
目を細めて克也が指さした方向を見ていたシェルが即答した。
「えっ、シェルにしては珍しい選択ね。」
「だってあの魔獣に襲われてるの自国の兵士みたいだもの。」
シェルの爆弾発言に二人は目を剥いた。
「「自国の兵士。」」
「助けなきゃ。」
美野里は魔法書を出しながら駆け出した。
「俺も行く。」
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