辺境の女領主、王家から婿をもらう

しゃもん

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01.第2王子 辺境に向かう

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 玉座の間で第2王子は王より勅命を受けた。

「第2王子、シャルル・フォン・アランデールよ。辺境伯との婚姻を命ずる。」

 王は一方的に要件を告げると、宰相に勅命書を預け、玉座の間から去っていった。

「こちらが、王よりの勅命書になります。」

 宰相も忙しいのか、第2王子に勅命書を渡すと、すぐにその場を後にした。

 シャルルは受け取った勅命書を手に部屋を出ると、後ろから従者である茶髪で小柄な男が声をかけた。

「シャルル様、大丈夫ですか?」

 顔色の悪いシャルルを心配して、うろたえた表情を浮かべた従者が何度も声をかけるが、シャルルはその声を無視して、まっすぐ自分の部屋へと向かった。

「シャルル様、お待ちください!」

「少し考える時間をくれ、アル。」

「シャルル様……」

 アルは悲痛な表情で、パタンと閉じられた扉を見つめたまま、扉の前で佇んでいた。

 シャルルは先ほど渡された王からの勅命書を持ったままベッドに腰掛けると、書類をベッドの上に投げ、自分もごろりと横になる。

「まさか、辺境行きを命ぜられるとは思わなかった……」

 シャルルは目をつぶったまま、ぼんやりと昨日までのことを思い浮かべた。

 昨日はアルを連れて、オートで開催された公爵の舞踏会に出席していた。  
 舞踏会では数十人の女性に囲まれ、美味しいお酒を飲みながら会話を楽しみ、最後は誘われるままに話が合った女性と朝まで過ごした。

 そんな、なんてことのない日々を過ごしていたはずが、今日突然呼び出され、いきなり勅命書を渡されたのだ。

 自分が王妃の子ではなく側室の子で、権力がないのは分かっていたが、まさか辺境への婿入りを命じられるとは思わなかった。

 さて、どうしたものか。

 撤回しようにも、自分の母の実家は伯爵家で、何の力もない。  
 同年代で言えば、自分より王妃の子である第三王子の方が辺境伯と年齢が近いが、多分王妃が反対したのだろう。

 いつまでもこんな自堕落な生活が続くとは思っていなかったが、まさか返答期限が一週間以内とは。

 ぼんやりとそんなことを考えているうちに、窓の外はいつの間にか真っ暗になっていた。

 ふと気がつくと、扉を叩く音がずっと続いていた。

「シャルル様、大丈夫ですか……?」

 小さな声が、何度も自分に呼びかけていた。  
 どうやら、かなり心配をかけたようだ。

 シャルルはベッドから起き上がると、「入ってもいいぞ」と声をかけた。

「シャルル様……」

 小さな声でそう呼びかけてから、アルが扉を開けて入ってきた。

「アル、お前は聞いているのか? 俺のこと。」

「えっと……もう、けっこう噂になってます。」

 先ほどもらった極秘の内容がすでに噂になっているということは、きっとコルフェの仕業だろう。  
 どうやっても逃げられない。

「シャルル様、僕も一緒に行きます。ですから、心配しないでください。」

「嬉しい話だが、辺境だぞ?」

「僕、独身ですし、もともと王都が好きなわけではありませんので、大丈夫です。」

 頼りない従者の、ちょっと嬉しい言葉に、シャルルはベッドから起き上がると、先ほど渡された勅書をアルに渡した。

 アルが広げた勅書の日付を見て、シャルルは二度、驚くことになった。

「み、み、み、三日じゃなくて……明後日ですか?」

「よっぽど追い出したいようだな。もっていくものも大してないし……ははは。」

 シャルルは空笑いをすると、アルに「今日は休んで、明日には持っていくものを一緒に考えてくれ」と頼んだ。

「今日はもう遅い。準備は明日にしよう。」

 シャルルはそれだけ言うと、アルを部屋から追い出した。

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