1 / 3
01.第2王子 辺境に向かう
しおりを挟む
玉座の間で第2王子は王より勅命を受けた。
「第2王子、シャルル・フォン・アランデールよ。辺境伯との婚姻を命ずる。」
王は一方的に要件を告げると、宰相に勅命書を預け、玉座の間から去っていった。
「こちらが、王よりの勅命書になります。」
宰相も忙しいのか、第2王子に勅命書を渡すと、すぐにその場を後にした。
シャルルは受け取った勅命書を手に部屋を出ると、後ろから従者である茶髪で小柄な男が声をかけた。
「シャルル様、大丈夫ですか?」
顔色の悪いシャルルを心配して、うろたえた表情を浮かべた従者が何度も声をかけるが、シャルルはその声を無視して、まっすぐ自分の部屋へと向かった。
「シャルル様、お待ちください!」
「少し考える時間をくれ、アル。」
「シャルル様……」
アルは悲痛な表情で、パタンと閉じられた扉を見つめたまま、扉の前で佇んでいた。
シャルルは先ほど渡された王からの勅命書を持ったままベッドに腰掛けると、書類をベッドの上に投げ、自分もごろりと横になる。
「まさか、辺境行きを命ぜられるとは思わなかった……」
シャルルは目をつぶったまま、ぼんやりと昨日までのことを思い浮かべた。
昨日はアルを連れて、オートで開催された公爵の舞踏会に出席していた。
舞踏会では数十人の女性に囲まれ、美味しいお酒を飲みながら会話を楽しみ、最後は誘われるままに話が合った女性と朝まで過ごした。
そんな、なんてことのない日々を過ごしていたはずが、今日突然呼び出され、いきなり勅命書を渡されたのだ。
自分が王妃の子ではなく側室の子で、権力がないのは分かっていたが、まさか辺境への婿入りを命じられるとは思わなかった。
さて、どうしたものか。
撤回しようにも、自分の母の実家は伯爵家で、何の力もない。
同年代で言えば、自分より王妃の子である第三王子の方が辺境伯と年齢が近いが、多分王妃が反対したのだろう。
いつまでもこんな自堕落な生活が続くとは思っていなかったが、まさか返答期限が一週間以内とは。
ぼんやりとそんなことを考えているうちに、窓の外はいつの間にか真っ暗になっていた。
ふと気がつくと、扉を叩く音がずっと続いていた。
「シャルル様、大丈夫ですか……?」
小さな声が、何度も自分に呼びかけていた。
どうやら、かなり心配をかけたようだ。
シャルルはベッドから起き上がると、「入ってもいいぞ」と声をかけた。
「シャルル様……」
小さな声でそう呼びかけてから、アルが扉を開けて入ってきた。
「アル、お前は聞いているのか? 俺のこと。」
「えっと……もう、けっこう噂になってます。」
先ほどもらった極秘の内容がすでに噂になっているということは、きっとコルフェの仕業だろう。
どうやっても逃げられない。
「シャルル様、僕も一緒に行きます。ですから、心配しないでください。」
「嬉しい話だが、辺境だぞ?」
「僕、独身ですし、もともと王都が好きなわけではありませんので、大丈夫です。」
頼りない従者の、ちょっと嬉しい言葉に、シャルルはベッドから起き上がると、先ほど渡された勅書をアルに渡した。
アルが広げた勅書の日付を見て、シャルルは二度、驚くことになった。
「み、み、み、三日じゃなくて……明後日ですか?」
「よっぽど追い出したいようだな。もっていくものも大してないし……ははは。」
シャルルは空笑いをすると、アルに「今日は休んで、明日には持っていくものを一緒に考えてくれ」と頼んだ。
「今日はもう遅い。準備は明日にしよう。」
シャルルはそれだけ言うと、アルを部屋から追い出した。
「第2王子、シャルル・フォン・アランデールよ。辺境伯との婚姻を命ずる。」
王は一方的に要件を告げると、宰相に勅命書を預け、玉座の間から去っていった。
「こちらが、王よりの勅命書になります。」
宰相も忙しいのか、第2王子に勅命書を渡すと、すぐにその場を後にした。
シャルルは受け取った勅命書を手に部屋を出ると、後ろから従者である茶髪で小柄な男が声をかけた。
「シャルル様、大丈夫ですか?」
顔色の悪いシャルルを心配して、うろたえた表情を浮かべた従者が何度も声をかけるが、シャルルはその声を無視して、まっすぐ自分の部屋へと向かった。
「シャルル様、お待ちください!」
「少し考える時間をくれ、アル。」
「シャルル様……」
アルは悲痛な表情で、パタンと閉じられた扉を見つめたまま、扉の前で佇んでいた。
シャルルは先ほど渡された王からの勅命書を持ったままベッドに腰掛けると、書類をベッドの上に投げ、自分もごろりと横になる。
「まさか、辺境行きを命ぜられるとは思わなかった……」
シャルルは目をつぶったまま、ぼんやりと昨日までのことを思い浮かべた。
昨日はアルを連れて、オートで開催された公爵の舞踏会に出席していた。
舞踏会では数十人の女性に囲まれ、美味しいお酒を飲みながら会話を楽しみ、最後は誘われるままに話が合った女性と朝まで過ごした。
そんな、なんてことのない日々を過ごしていたはずが、今日突然呼び出され、いきなり勅命書を渡されたのだ。
自分が王妃の子ではなく側室の子で、権力がないのは分かっていたが、まさか辺境への婿入りを命じられるとは思わなかった。
さて、どうしたものか。
撤回しようにも、自分の母の実家は伯爵家で、何の力もない。
同年代で言えば、自分より王妃の子である第三王子の方が辺境伯と年齢が近いが、多分王妃が反対したのだろう。
いつまでもこんな自堕落な生活が続くとは思っていなかったが、まさか返答期限が一週間以内とは。
ぼんやりとそんなことを考えているうちに、窓の外はいつの間にか真っ暗になっていた。
ふと気がつくと、扉を叩く音がずっと続いていた。
「シャルル様、大丈夫ですか……?」
小さな声が、何度も自分に呼びかけていた。
どうやら、かなり心配をかけたようだ。
シャルルはベッドから起き上がると、「入ってもいいぞ」と声をかけた。
「シャルル様……」
小さな声でそう呼びかけてから、アルが扉を開けて入ってきた。
「アル、お前は聞いているのか? 俺のこと。」
「えっと……もう、けっこう噂になってます。」
先ほどもらった極秘の内容がすでに噂になっているということは、きっとコルフェの仕業だろう。
どうやっても逃げられない。
「シャルル様、僕も一緒に行きます。ですから、心配しないでください。」
「嬉しい話だが、辺境だぞ?」
「僕、独身ですし、もともと王都が好きなわけではありませんので、大丈夫です。」
頼りない従者の、ちょっと嬉しい言葉に、シャルルはベッドから起き上がると、先ほど渡された勅書をアルに渡した。
アルが広げた勅書の日付を見て、シャルルは二度、驚くことになった。
「み、み、み、三日じゃなくて……明後日ですか?」
「よっぽど追い出したいようだな。もっていくものも大してないし……ははは。」
シャルルは空笑いをすると、アルに「今日は休んで、明日には持っていくものを一緒に考えてくれ」と頼んだ。
「今日はもう遅い。準備は明日にしよう。」
シャルルはそれだけ言うと、アルを部屋から追い出した。
10
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢の涙
拓海のり
恋愛
公爵令嬢グレイスは婚約者である王太子エドマンドに卒業パーティで婚約破棄される。王子の側には、癒しの魔法を使え聖女ではないかと噂される子爵家に引き取られたメアリ―がいた。13000字の短編です。他サイトにも投稿します。
悪意には悪意で
12時のトキノカネ
恋愛
私の不幸はあの女の所為?今まで穏やかだった日常。それを壊す自称ヒロイン女。そしてそのいかれた女に悪役令嬢に指定されたミリ。ありがちな悪役令嬢ものです。
私を悪意を持って貶めようとするならば、私もあなたに同じ悪意を向けましょう。
ぶち切れ気味の公爵令嬢の一幕です。
【完結】愛されないと知った時、私は
yanako
恋愛
私は聞いてしまった。
彼の本心を。
私は小さな、けれど豊かな領地を持つ、男爵家の娘。
父が私の結婚相手を見つけてきた。
隣の領地の次男の彼。
幼馴染というほど親しくは無いけれど、素敵な人だと思っていた。
そう、思っていたのだ。
お姫様は死に、魔女様は目覚めた
悠十
恋愛
とある大国に、小さいけれど豊かな国の姫君が側妃として嫁いだ。
しかし、離宮に案内されるも、離宮には侍女も衛兵も居ない。ベルを鳴らしても、人を呼んでも誰も来ず、姫君は長旅の疲れから眠り込んでしまう。
そして、深夜、姫君は目覚め、体の不調を感じた。そのまま気を失い、三度目覚め、三度気を失い、そして……
「あ、あれ? えっ、なんで私、前の体に戻ってるわけ?」
姫君だった少女は、前世の魔女の体に魂が戻ってきていた。
「えっ、まさか、あのまま死んだ⁉」
魔女は慌てて遠見の水晶を覗き込む。自分の――姫君の体は、嫁いだ大国はいったいどうなっているのか知るために……
殿下!婚姻を無かった事にして下さい
ねむ太朗
恋愛
ミレリアが第一王子クロヴィスと結婚をして半年が経った。
最後に会ったのは二月前。今だに白い結婚のまま。
とうとうミレリアは婚姻の無効が成立するように奮闘することにした。
しかし、婚姻の無効が成立してから真実が明らかになり、ミレリアは後悔するのだった。
【短編】男爵令嬢のマネをして「で〜んかっ♡」と侯爵令嬢が婚約者の王子に呼びかけた結果
あまぞらりゅう
恋愛
「で〜んかっ♡」
シャルロッテ侯爵令嬢は婚約者であるエドゥアルト王子をローゼ男爵令嬢に奪われてしまった。
下位貴族に無様に敗北した惨めな彼女が起死回生を賭けて起こした行動は……?
★他サイト様にも投稿しています!
★2022.8.9小説家になろう様にて日間総合1位を頂きました! ありがとうございます!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる