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11.決別の刃
しおりを挟む戦場の中心。
剣戟の音が止み、辺境の風が、二人の間を吹き抜ける。
「……やはり、お前は強くなったな。」
グランツ公――かつての辺境伯、そしてエルの父は、血の滲む肩を押さえながら、なおも立っていた。
「あなたが教えてくれたことだ。
誰も信じるな。力がなければ、守れないとな。」
「……そうだ。だからこそ、私は選んだ。
王都に媚びるより、力ある者の側につく道を。」
「そのために、母を捨てたのか?」
「……あの女は、弱かった。」
その言葉に、エルの瞳が静かに揺れた。
「……そうか。なら、あなたはもう、私の父ではない。」
エルは剣を構え直す。
その刃先は、迷いなく父の心臓を指していた。
「エル……お前は、私の誇りだ。」
「遅い。」
次の瞬間、エルの剣が閃いた。
鋭く、正確に、深く――
その刃は、父の胸を貫いた。
「……っ!」
グランツ公の目が見開かれ、口元がわずかに笑った。
「やはり……お前は……私の娘だ……」
そのまま、彼はゆっくりと膝をつき、
そして、地に崩れ落ちた。
静寂。
戦場の喧騒が、遠くに霞んでいく。
エルは剣を引き抜き、血の滴る刃を見つめた。
「……これで、終わった。」
彼女の声は、かすかに震えていた。
だが、涙は流さなかった。
その背後に、シャルルとアルが駆け寄ってくる。
「エル……!」
「大丈夫。」
エルは振り返り、いつものように凛とした笑みを浮かべた。
「私は、もう過去に縛られない。
これからは、私の意志で、この地を守る。」
シャルルは、そっと彼女の手を握った。
「……一緒に、守ろう。俺も、隣にいる。」
「ああ。頼りにしている、夫殿。」
風が吹いた。
戦の終わりを告げるように、空が晴れ、雲の切れ間から光が差し込んだ。
そして、エルの物語は、新たな章へと進み始めた――。
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