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14.命の灯、芽吹く時
しおりを挟む戦後処理を終え、砦へと戻る道すがら。
シャルルは、ようやく訪れた平穏に、深く息をついていた。
「やっと……終わった……」
「これで、しばらくは静かになる。」
エルはいつものように凛としていたが、どこか顔色が優れないように見えた。
「エル、大丈夫か? 顔、ちょっと青いぞ。」
「……少し、疲れただけだ。」
そう言って微笑んだその瞬間――
「っ……!」
エルの身体が、ふらりと傾いた。
「エル!?」
シャルルが慌てて支えると、彼女の体は驚くほど熱く、そして重かった。
「エル!? しっかりしろ!」
「……ごめん……少し、休ませ……」
そのまま、エルはシャルルの腕の中で意識を失った。
数時間後。
砦の医務室。
シャルルは、ベッドに横たわるエルの傍らで、じっと彼女の手を握っていた。
そこへ、医師が静かにやってきた。
「シャルル様……ご安心ください。命に別状はありません。」
「よかった……!」
「ただし……お伝えしなければならないことがございます。」
「えっ?」
医師は、少しだけ微笑んだ。
「エル様は……ご懐妊されています。」
「………………え?」
「おそらく、もう二ヶ月ほどかと。
戦の疲労と、無理が重なったのでしょう。
しばらくは安静が必要です。」
シャルルは、言葉を失ったまま、エルの顔を見つめた。
(俺の……子……?)
そのとき、エルがゆっくりと目を開けた。
「……シャルル……」
「エル! 大丈夫か!? 苦しくないか!? 水いる!? 枕直す!? それとも俺がどく!?」
「うるさい……落ち着け……」
「だって! だって……!」
シャルルは、彼女の手をぎゅっと握った。
「……本当に、俺の……?」
シャルルの言葉に、エルの眉がピクリと動いた。
「……シャルル。」
「えっ、な、なに?」
「私は、浮気などせん!!!!」
バチンッ!
「ぎゃあ」
外では、春の風が砦を撫でていた。
戦の終わりとともに、新たな命が、静かに芽吹こうとしていた――。
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