神殿ぶっ壊したら、前世ごと忘れました

しゃもん

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第一章:交差する剣とまなざし

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 砦の朝は早い。  
 冷たい風が石壁をなで、訓練場には剣戟の音が響いていた。

「次、交代だ。間合いを詰めすぎるな。剣先を意識しろ」

 低く通る声に、訓練兵たちが一斉に動きを止める。  
 その中心に立つのは、黒髪の少女――**グレンツゲ・レイ・黒子**。  
 だが、彼女の名を知る者は砦にはいない。皆、彼女を「隊長」と呼ぶ。

 その日、訓練場の端に、見慣れぬ3人の姿があった。

「……あれが、辺境の剣に選ばれたっていう子か。」  
 銀髪の青年が、冷たい目でレイを見つめる。  
 **アレクシス・フォン・ヴァルトライン**。王都の公爵家の次男。  
 その隣で、栗色の髪の青年がにやりと笑った。

「へぇ、噂よりずっと綺麗じゃん。しかも、あの動き…ただ者じゃないね。」  
 **ユリウス・エルンスト・グラーフ**。伯爵家の次男で、アレクの幼馴染。  
 そして、最後に小柄な青年が片手をひらひらと振った。

「おーい、隊長さん! 俺たち、今日からお世話になりまーす♪」  
 **ミヒャエル・クロイツ**。子爵家の三男にして、アレクの護衛役。  
 軽口を叩きながらも、その目はレイの動きを真剣に見ていた。

 レイは彼らを一瞥し、静かに言った。

「王都組か。…訓練に参加するなら、準備を。見学だけなら、邪魔にならない場所で」

 その言葉に、ユリウスが口笛を吹く。

「おっと、冷たいなあ。まあ、いいや。アレク、どうする?」

「参加する。辺境の実戦を学びに来たのだからな。」

「じゃあ俺も。ミヒャエルは?」

「もちろん。隊長の剣、間近で見てみたいしね。」

 そのとき、訓練場の隅で、治癒班の少女が転んだ兵士に駆け寄っていた。  
 金髪の少女――**ティナ**。  
 彼女の治癒魔法が淡く光り、兵士の傷がみるみる癒えていく。

「…あの子、治癒魔法の才能あるな。
 それにしても、あの顔…どこかでみたような…」  
 ミヒャエルがティナを見つめた瞬間、胸の奥がざわめいた。

  運命の出会いがここにあり、小さな歯車が静かに音を立てて回り始めた。
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