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第二章:衝突
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訓練が終わり、夕暮れの空が砦の石壁を赤く染めていた。
剣を拭う音、鎧を脱ぐ音、そして疲れた笑い声が訓練場に広がる。
その中で、王都組の3人は水場の近くで汗を拭っていた。
「ふぅ~、辺境の訓練って、なかなかハードだねぇ。」
ユリウスが首筋を拭いながら、軽く笑う。
「お前が手を抜いてるだけだ。」
アレクが冷たく返すと、ミヒャエルが肩をすくめた。
「まあまあ、王都の貴族が泥だらけで転がってるの、なかなか見られない光景だったし?」
そのとき、背後から声が飛んだ。
「へぇ、王都の坊ちゃんたちも汗かくんだな。」
3人が振り向くと、そこには数人の訓練生たちが立っていた。
先頭にいたのは、がっしりとした体格の青年。
砦の訓練生の中でも古参で、スタンピードで家族を失った孤児の一人――**ガルド**。
「お前ら、何しに来た? 実戦も知らねぇくせに、偉そうに剣振ってんじゃねぇよ。」
その言葉に、空気がぴりつく。
後ろの訓練生たちも、どこか苛立ちを隠せない様子だった。
「…ふむ。歓迎の言葉としては、少々粗野だな。」
アレクが一歩前に出る。
その目は冷たく、だが一切の動揺を見せない。
「実戦を知らぬ者が、剣を学びに来るのは当然だ。
だが、実戦を知る者が礼を失えば、それはただの無知だ。」
「なんだと…!」
ガルドが一歩踏み出そうとしたその瞬間、ミヒャエルがすっと間に入った。
「まあまあ、落ち着こうぜ。俺たち、敵じゃない。
それに――」
彼はにっこり笑って、ガルドの肩をぽんと叩いた。
「“実戦”ってのは、剣を振るだけじゃないんだぜ?
仲間を守るのも、空気を読むのも、ぜーんぶ戦場の技術だろ?」
ガルドは一瞬、言葉に詰まった。
その隙に、ユリウスが軽く手を挙げる。
「ま、俺たちもまだまだ修行中ってことで。これからよろしく頼むよ、先輩方?」
沈黙のあと、ガルドは鼻を鳴らして背を向けた。
「…せいぜい足引っ張んなよ、王都組。」
その背中を見送りながら、ミヒャエルがぽつりと呟いた。
「ふぅん、悪い奴じゃなさそうだけど…こりゃ、しばらくは肩身が狭いなぁ。」
「当然だ。ここは“辺境”だ。」
アレクの言葉に、レイの声が重なる。
「…でも、実力を見せれば、彼らは認める。ここでは、言葉より剣が信頼を作るからな。」
レイはそれだけ言うと彼らを残して食堂に向かった。
その言葉に、3人は全員で顔を見合わせた後、去っていくレイの背中を見つめていたアレクがぽつりと呟いた。
「かなり好みのタイプだ。」
「「えっ!」」
二人はアレクの爆弾発言にもっていたタオルを取り落とした。
剣を拭う音、鎧を脱ぐ音、そして疲れた笑い声が訓練場に広がる。
その中で、王都組の3人は水場の近くで汗を拭っていた。
「ふぅ~、辺境の訓練って、なかなかハードだねぇ。」
ユリウスが首筋を拭いながら、軽く笑う。
「お前が手を抜いてるだけだ。」
アレクが冷たく返すと、ミヒャエルが肩をすくめた。
「まあまあ、王都の貴族が泥だらけで転がってるの、なかなか見られない光景だったし?」
そのとき、背後から声が飛んだ。
「へぇ、王都の坊ちゃんたちも汗かくんだな。」
3人が振り向くと、そこには数人の訓練生たちが立っていた。
先頭にいたのは、がっしりとした体格の青年。
砦の訓練生の中でも古参で、スタンピードで家族を失った孤児の一人――**ガルド**。
「お前ら、何しに来た? 実戦も知らねぇくせに、偉そうに剣振ってんじゃねぇよ。」
その言葉に、空気がぴりつく。
後ろの訓練生たちも、どこか苛立ちを隠せない様子だった。
「…ふむ。歓迎の言葉としては、少々粗野だな。」
アレクが一歩前に出る。
その目は冷たく、だが一切の動揺を見せない。
「実戦を知らぬ者が、剣を学びに来るのは当然だ。
だが、実戦を知る者が礼を失えば、それはただの無知だ。」
「なんだと…!」
ガルドが一歩踏み出そうとしたその瞬間、ミヒャエルがすっと間に入った。
「まあまあ、落ち着こうぜ。俺たち、敵じゃない。
それに――」
彼はにっこり笑って、ガルドの肩をぽんと叩いた。
「“実戦”ってのは、剣を振るだけじゃないんだぜ?
仲間を守るのも、空気を読むのも、ぜーんぶ戦場の技術だろ?」
ガルドは一瞬、言葉に詰まった。
その隙に、ユリウスが軽く手を挙げる。
「ま、俺たちもまだまだ修行中ってことで。これからよろしく頼むよ、先輩方?」
沈黙のあと、ガルドは鼻を鳴らして背を向けた。
「…せいぜい足引っ張んなよ、王都組。」
その背中を見送りながら、ミヒャエルがぽつりと呟いた。
「ふぅん、悪い奴じゃなさそうだけど…こりゃ、しばらくは肩身が狭いなぁ。」
「当然だ。ここは“辺境”だ。」
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「…でも、実力を見せれば、彼らは認める。ここでは、言葉より剣が信頼を作るからな。」
レイはそれだけ言うと彼らを残して食堂に向かった。
その言葉に、3人は全員で顔を見合わせた後、去っていくレイの背中を見つめていたアレクがぽつりと呟いた。
「かなり好みのタイプだ。」
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二人はアレクの爆弾発言にもっていたタオルを取り落とした。
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