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入学式前
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人々が「色」の魔法を使う世界。
ここは、色魔法士を養成する学校だ。
わたし、フレイは今日からここの一年生。全寮制の女子校だから、今日から寮生活でもある。
友達、いっぱい出来るかなぁ。
元々友達は多いほうだが、やはり新しい場所だと少し緊張する。
この学校の外観はすごい。だだっ広い庭に一面のタイル敷きの玄関。校舎の周りは堅い塀に囲まれている。さらに塀の周りには溝が掘られており、水が流れている。川のような溝には丸太の橋が渡されていて、まるで城のようだ。
塀に空けられた校舎への入り口も、驚くほど大きい。大型トラックを三台くらい積めそうだ。
学校の建物のずっと向こうに大きな二つの寮が見える。一つが全体的に青っぽく、もう一つがピンクっぽい。
ふと近くに目を向けると、他の学生も見える。入学した時に魔石のネックレスが貰えるらしい。皆違う色の魔石がはめられている。広い庭や玄関にはネックレスを付けている二年生以上もまだ貰っていない一年生もみんな歩いている。
すぐ隣に、ネックレスを付けていない一年生らしき人が見えた。眼鏡を掛けていて、低い位置でツインテールをしている少女だ。
その子は庭の花にとても見入っていたのだが、そのせいでわたしにぶつかってしまった。
「きゃっ!ご、ごめんなさいっ!」
「大丈夫だよ。それにしても、ここの庭ってすっごく綺麗だよね。」
「そうですね。私、生き物や植物の絵を描くのが好きなんです。いつか、ここの学校の庭をスケッチしてみたいなって思ってるんです。」
「いいね。わたし、その絵見てみたいな。」
その子はカバンからスケッチブックを出し、わたしに見せてくれた。
「これは私が家で飼っている犬です。」
毛の一本一本がよく描写されていて、まるで生きているような細かさだ。
「すごいなぁ。わたし、絵を描くのはそんなに得意じゃないからさ……。きっと君は友達がいっぱいできるだろうね。」
「実は……私、他の人に話しかけるのが苦手で。友達ができるか心配なんです。」
「そうなんだ。でも、わたし達はもう友達だね。」
その子は少し嬉しそうに笑った。
「はい。……同じクラスだったらいいですね。」
一年生の教室は二階だ。
ちなみに一階は、体育館や談話室などの部屋がある。
映画館も一階にある。授業でビデオを見る時に使うらしい。早く行ってみたい。
廊下に掲示してある紙を見て、クラスを確認する。
わたしは一組だった。
一組の教室に向かうと、目の前に見覚えのある後ろ姿があった。
……さっきの人だ。
「ねぇねぇ!もしかして、一組?」
「わっ……!あなたも一組だったんですね!」
そうだ。さっき、名前を聞いていなかった。
「ねぇ、君は何て名前なの?」
「私はヒスイです。改めて、よろしくお願いします。」
「わたしはフレイ。呼び捨てで呼んでもいい?」
「……はい。では私も呼び捨てで呼んでもいいですか?」
「もちろんだよ!」
初日の朝にもう友達ができた。
わたしは、ヒスイと一緒に教室に入った。
わたしとヒスイは出席番号が近いので、席も結構近かった。
席で静かに待っていると、教室にスーツ姿の小柄な少女が入ってきた。
彼女は教台に登った。彼女の背が低くてさっきはよく見えなかったが、猫耳らしきものが付いている。
「皆さん。おはようございます。私はこのクラスの担任のキャウラです。専門は魔法知識学です。」
この人、担任の先生だったんだ!
見た目が小さくて可愛かったから、少し失礼だが小学生っぽい。
だが担任ということは、見た目が小さい子でも中身は大人なのだろう。
「早速ですが皆さんにこちらを配ります。これは、入学祝いのネックレスです。私から一人ずつ手渡しますので、手に取ったらこの箱を開けて本体の王冠のような部分に魔力をこめてください。」
先生から受け取ると、わたしも皆と同じように王冠部分に触れた。
中央にはめられた魔石の色がどんどん変化していく。最初は透明だった魔石が炎のような赤に染まっていった。
もう魔力が入らなくなった時、周りを見渡してみると多くの人が魔力を入れ終わっていた。数人がまだ魔力をこめている。
やはり個人個人で色は違うようだ。ちなみにヒスイは彼女の名前通り、見事な翡翠色に染まっていた。
「その魔石の色はあなたの魔力の色です。魔力の色は皆さん一人一人違っています。皆さんと同じ魔石の色をもつ人は誰一人として居ないのです。」
ネックレスを貰ったことで、制服の装備がやっと揃った。なんだか一人前の高校生になれた気がして、嬉しくなった。
次は寮の説明だ。わたしは校舎に入る前に見た景色を思い出した。確か、寮は二つあったはずだ。高校入試の合格通知に寮分けが書いていなかったということは、今日中に寮が発表されるのだろうか。
そんな事を考えていると、先生が寮分けについて話し出した。
「寮は魔力の色で分けます。今から寒色グループと暖色グループに分かれてもらいます。」
わたし達は寒色と暖色で分かれて教室の後ろに並んだ。
どうやら、このクラスは寒色が多いようだ。ヒスイは寒色なので、寮が別々になってしまった。
「ほう、寒色が多いのですか。私は暖色の魔力なので、学校の時間以外は普段、暖色寮に居ます」
そんな話は置いておき、とキャウラ先生は話し続けた。
「皆さんの荷物が物置に運ばれているはずです。これから各々の荷物をそれぞれの寮の談話室へ運びます。ではその列のままついてきてください。」
階段を降り、長い長い廊下を歩いた。一体どれだけの校舎があるのだろう。外観からは大きいことが分かっていたが、ここまで広いとは思わなかた。廊下を歩いているだけで疲れた。だいぶ歩いたら、やっと物置塔に着いた。物置塔では、親から物や手紙等が送られてきた時に受け取る場所らしい。
しかし、さっき先生は荷物を寮に運び込むと言っていた。どうやって運ぶのだろうか。確か寮は校舎からかなり離れた場所にあったはずだ。
「では、自分の出席番号の札がついた棚のところまで行って、荷物を取ってください。取り終わったら、荷物を持ってここへ集合してください。」
棚は想像してたより遥かに大きかった。しかし、運び込まれたものはそんなに無かった。そして、棚の上には小さな郵便受けのような物が付いている。郵便受けの中には両親からの手紙が入っていた。
手紙には、テストで赤点を取らないようにという内容が書かれていた。
荷物を受け取って先生のところに集まる。
全員が集まったら、もう一度寒色と暖色に分かれて並んだ。
部屋の奥に進むと、大型のエレベーターが二つあった。
寒色と暖色に分かれて乗った。
どうやら地下に行くようだ。
エレベーターを出ると、もう寒色の人たちは居なかった。
その代わり、周りには他クラスの暖色の人が居た。わたし達のクラスは一番遅かったようだ。わたし達が着いたら、前に一人の先生が出てきて話し始めた。
「これから皆さんはこちらに乗って暖色寮へ荷物を運んでもらいます。」
ベルトコンベアのような、エスカレーターのようなものに乗り込んだ。
わたしの前にはポニーテールの女の子が居る。
よし、友達作りには挨拶は必須。声をかけてみよう。これから寮で過ごす仲間だし、友達になった方がきっと良い。
「ねぇねぇ!わたし、フレイ。よろしくね!」
「ウチはクラウ。四組だよ。」
彼女はクールな笑みを浮かべた。彼女のネックレスは黄色、いや、キラキラのゴールドだ。なんか格好良い。
かなりゆっくり進んでいたようだ。十五分くらい乗っていた気がする。
やっとゴールにたどり着いた。
わたし達は誰も居ない談話室まで上がって行き、荷物を置いてそれから学校の校舎に戻って行った。
ここは、色魔法士を養成する学校だ。
わたし、フレイは今日からここの一年生。全寮制の女子校だから、今日から寮生活でもある。
友達、いっぱい出来るかなぁ。
元々友達は多いほうだが、やはり新しい場所だと少し緊張する。
この学校の外観はすごい。だだっ広い庭に一面のタイル敷きの玄関。校舎の周りは堅い塀に囲まれている。さらに塀の周りには溝が掘られており、水が流れている。川のような溝には丸太の橋が渡されていて、まるで城のようだ。
塀に空けられた校舎への入り口も、驚くほど大きい。大型トラックを三台くらい積めそうだ。
学校の建物のずっと向こうに大きな二つの寮が見える。一つが全体的に青っぽく、もう一つがピンクっぽい。
ふと近くに目を向けると、他の学生も見える。入学した時に魔石のネックレスが貰えるらしい。皆違う色の魔石がはめられている。広い庭や玄関にはネックレスを付けている二年生以上もまだ貰っていない一年生もみんな歩いている。
すぐ隣に、ネックレスを付けていない一年生らしき人が見えた。眼鏡を掛けていて、低い位置でツインテールをしている少女だ。
その子は庭の花にとても見入っていたのだが、そのせいでわたしにぶつかってしまった。
「きゃっ!ご、ごめんなさいっ!」
「大丈夫だよ。それにしても、ここの庭ってすっごく綺麗だよね。」
「そうですね。私、生き物や植物の絵を描くのが好きなんです。いつか、ここの学校の庭をスケッチしてみたいなって思ってるんです。」
「いいね。わたし、その絵見てみたいな。」
その子はカバンからスケッチブックを出し、わたしに見せてくれた。
「これは私が家で飼っている犬です。」
毛の一本一本がよく描写されていて、まるで生きているような細かさだ。
「すごいなぁ。わたし、絵を描くのはそんなに得意じゃないからさ……。きっと君は友達がいっぱいできるだろうね。」
「実は……私、他の人に話しかけるのが苦手で。友達ができるか心配なんです。」
「そうなんだ。でも、わたし達はもう友達だね。」
その子は少し嬉しそうに笑った。
「はい。……同じクラスだったらいいですね。」
一年生の教室は二階だ。
ちなみに一階は、体育館や談話室などの部屋がある。
映画館も一階にある。授業でビデオを見る時に使うらしい。早く行ってみたい。
廊下に掲示してある紙を見て、クラスを確認する。
わたしは一組だった。
一組の教室に向かうと、目の前に見覚えのある後ろ姿があった。
……さっきの人だ。
「ねぇねぇ!もしかして、一組?」
「わっ……!あなたも一組だったんですね!」
そうだ。さっき、名前を聞いていなかった。
「ねぇ、君は何て名前なの?」
「私はヒスイです。改めて、よろしくお願いします。」
「わたしはフレイ。呼び捨てで呼んでもいい?」
「……はい。では私も呼び捨てで呼んでもいいですか?」
「もちろんだよ!」
初日の朝にもう友達ができた。
わたしは、ヒスイと一緒に教室に入った。
わたしとヒスイは出席番号が近いので、席も結構近かった。
席で静かに待っていると、教室にスーツ姿の小柄な少女が入ってきた。
彼女は教台に登った。彼女の背が低くてさっきはよく見えなかったが、猫耳らしきものが付いている。
「皆さん。おはようございます。私はこのクラスの担任のキャウラです。専門は魔法知識学です。」
この人、担任の先生だったんだ!
見た目が小さくて可愛かったから、少し失礼だが小学生っぽい。
だが担任ということは、見た目が小さい子でも中身は大人なのだろう。
「早速ですが皆さんにこちらを配ります。これは、入学祝いのネックレスです。私から一人ずつ手渡しますので、手に取ったらこの箱を開けて本体の王冠のような部分に魔力をこめてください。」
先生から受け取ると、わたしも皆と同じように王冠部分に触れた。
中央にはめられた魔石の色がどんどん変化していく。最初は透明だった魔石が炎のような赤に染まっていった。
もう魔力が入らなくなった時、周りを見渡してみると多くの人が魔力を入れ終わっていた。数人がまだ魔力をこめている。
やはり個人個人で色は違うようだ。ちなみにヒスイは彼女の名前通り、見事な翡翠色に染まっていた。
「その魔石の色はあなたの魔力の色です。魔力の色は皆さん一人一人違っています。皆さんと同じ魔石の色をもつ人は誰一人として居ないのです。」
ネックレスを貰ったことで、制服の装備がやっと揃った。なんだか一人前の高校生になれた気がして、嬉しくなった。
次は寮の説明だ。わたしは校舎に入る前に見た景色を思い出した。確か、寮は二つあったはずだ。高校入試の合格通知に寮分けが書いていなかったということは、今日中に寮が発表されるのだろうか。
そんな事を考えていると、先生が寮分けについて話し出した。
「寮は魔力の色で分けます。今から寒色グループと暖色グループに分かれてもらいます。」
わたし達は寒色と暖色で分かれて教室の後ろに並んだ。
どうやら、このクラスは寒色が多いようだ。ヒスイは寒色なので、寮が別々になってしまった。
「ほう、寒色が多いのですか。私は暖色の魔力なので、学校の時間以外は普段、暖色寮に居ます」
そんな話は置いておき、とキャウラ先生は話し続けた。
「皆さんの荷物が物置に運ばれているはずです。これから各々の荷物をそれぞれの寮の談話室へ運びます。ではその列のままついてきてください。」
階段を降り、長い長い廊下を歩いた。一体どれだけの校舎があるのだろう。外観からは大きいことが分かっていたが、ここまで広いとは思わなかた。廊下を歩いているだけで疲れた。だいぶ歩いたら、やっと物置塔に着いた。物置塔では、親から物や手紙等が送られてきた時に受け取る場所らしい。
しかし、さっき先生は荷物を寮に運び込むと言っていた。どうやって運ぶのだろうか。確か寮は校舎からかなり離れた場所にあったはずだ。
「では、自分の出席番号の札がついた棚のところまで行って、荷物を取ってください。取り終わったら、荷物を持ってここへ集合してください。」
棚は想像してたより遥かに大きかった。しかし、運び込まれたものはそんなに無かった。そして、棚の上には小さな郵便受けのような物が付いている。郵便受けの中には両親からの手紙が入っていた。
手紙には、テストで赤点を取らないようにという内容が書かれていた。
荷物を受け取って先生のところに集まる。
全員が集まったら、もう一度寒色と暖色に分かれて並んだ。
部屋の奥に進むと、大型のエレベーターが二つあった。
寒色と暖色に分かれて乗った。
どうやら地下に行くようだ。
エレベーターを出ると、もう寒色の人たちは居なかった。
その代わり、周りには他クラスの暖色の人が居た。わたし達のクラスは一番遅かったようだ。わたし達が着いたら、前に一人の先生が出てきて話し始めた。
「これから皆さんはこちらに乗って暖色寮へ荷物を運んでもらいます。」
ベルトコンベアのような、エスカレーターのようなものに乗り込んだ。
わたしの前にはポニーテールの女の子が居る。
よし、友達作りには挨拶は必須。声をかけてみよう。これから寮で過ごす仲間だし、友達になった方がきっと良い。
「ねぇねぇ!わたし、フレイ。よろしくね!」
「ウチはクラウ。四組だよ。」
彼女はクールな笑みを浮かべた。彼女のネックレスは黄色、いや、キラキラのゴールドだ。なんか格好良い。
かなりゆっくり進んでいたようだ。十五分くらい乗っていた気がする。
やっとゴールにたどり着いた。
わたし達は誰も居ない談話室まで上がって行き、荷物を置いてそれから学校の校舎に戻って行った。
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