5 / 5
初めての授業《2》
しおりを挟む
五時間目は魔法知識学。キャウラ先生の担当だ。
チャイムが鳴ると、小さいシルエットが目に入った。そういえば、なぜこんなにキャウラ先生が小さいのかまだ知らない。
「起立。」
授業が始まる。先生がプリントを配り始めた。
「プリントをご覧ください。こちらは今年の授業スケジュールです。」
試験内容や提出物、成績の付け方まで書かれている。
「では、プリントをしまったら今日は早速皆さんに実験をしてもらいます。」
……あれ?さっきと同じ雰囲気を感じるんだけど、これは気のせいだよね……?
いや、気のせいではなかったようだ。キャウラ先生が重そうな大きめの籠を持ってきた。
「みなさんの魔法石の色はみなさん自身の色ですね。それは皆さん個人個人で魔石を扱ったからです。では、複数の人の魔力を魔石に打ち込むとどうなるのでしょう?今回はそれを調べます。」
この学校の教師はどれだけ実験が好きなのだろうか。
確かに実験は嫌いではないが、流石に二時間も続くと疲れる。
「ペアを作って下さい。」
私はまっすぐ、ヒスイのところに行った。
「こういう時に、友達がいてよかった。中学生の時、同じような場面でなかなかペアになれなかったから……」
周りを見たら大半の人がペアを組めていなかった。友達の重要さが感じられる出来事だ。
全員がペアを組めたのを先生が確認したら、また話し始めた。
「ペアのどちらかが魔石を、もう一人は実験器具を持って行って準備をして下さい。」
私は魔石を取りに行った。魔法を入れてしまわないようにトングで掴んで持っていく。
机の上にヒスイが準備してくれた実験用皿がある。その上にそっと魔石を置いた。
二人で魔法を打ち込んだらどうなるかはすごく気になるところだ。色が混ざってしまうのだろうか。あれ?もしそうだったら、補色の関係である私たちは結構すごいことになるんじゃない?
早速実験が始まった。
ヒスイが魔石に触れ、その後にすぐわたしも触れる。
魔石は白く光った。
しかし、それは失敗だったようだ。周りのグループの魔石は皆、漆黒だ。わたし達は先生に呼び止められる。
「何をしているのです?実験は必ず二人でやらなければ意味がないのですよ。」
先生が何を言っているのか理解できなかった。二人以上でやった訳ではないのに、どうしてそんな事を言うのだろうか。
「先生、わたし達は二人でやりましたよ。」
「何を言っているのですか。二人で魔法を打ち込んだら黒くなるはずですよ。」
「でも本当に二人だけでやりましたよ。」
「……魔石が余っているのでもう一度、私の前でやってみて下さい。」
もう一度、キャウラ先生の前で一通りの事をして見せた。やっぱり魔石は真っ白になって発光する。
キャウラ先生の顔が険しくなった。
その時、入学式の時に居た優しそうな先生が廊下を通り過ぎた。
「ミルウィゼア!魔女を召喚せよ!」
「は、はい!キャウラ先生!少々お待ちを!」
その先生は廊下を走って行った。
数分後、ウィソマエイ先生が入って来た。
ウィソマエイ先生に、キャウラ先生が一通りの事を説明する。
「確か、フレイさん……と言いましたね。さっきの授業でも色々とありましたので、流石に覚えていますよ。」
「さっきの授業、とは?」
ウィソマエイ先生がキャウラ先生に魔法化学の時の事を伝えた。
「ふむ。原因はヒスイさんではなくフレイさんにあるような気がして来ました。ウィソマエイ先生、こちらの魔石を持ち帰ってはどうでしょう?こういうものの研究はお好きですよね?」
「もちろんです。私が原因を突き止めて見せましょう。と言うことで、フレイさん。今日の放課後の件は取り消しで。研究を優先するので時間が無いのです。ああ、忙しい忙しい。」
そう言ってウィソマエイ先生が部屋を出て行った。
……生徒の実習の出来よりも研究を優先してしまうなんて。まぁ今回の研究はわたしが関わっているからしょうがないけれど。
今日の最後の授業、実践魔法学。
先生は、アンディルウム先生だ。六年生の担任らしい。
「皆のもの、よろしく頼む。実践魔法学を担当する、アンディルウムだ。」
何だか面白い口調。
「私はこの学校で一代目魔女と呼ばれている。何故だか分かるか?」
何故だろう。「魔女」とは魔法士を表す昔の表現だったはずだ。
確か、魔法を使える人間が少数派だった時代に魔法を使えない人間が魔法を使える人間を差別して付けた言葉だった気がする。
しかもアンディルウム先生は「一代目」なのだ。二代目以降もいるのだろうか。
「そういえば四時間目は魔法薬学だったんだな。ウィソマエイのあだ名は『二代目魔女』だ。ウィソマエイが実験好きなのはすぐ分かったろう?」
そういえば、キャウラ先生はさっき、「魔女を召喚せよ!」と言っていた。
「『魔女』は昔の言葉でもあるが、現在も使われるあだ名でもある。このあだ名は、部屋に籠って物騒な実験や研究をしている者の代名詞として使われるのだ。以前は魔女といえば私だった。だがウィソマエイがこの学校に就任してからは、私よりも物騒な実験をするあいつが魔女と呼ばれるようになったのだよ。」
なるほど。ところで物騒な実験とはどんな実験だろうか。関わりたくはないが、少し気になる。
「実践魔法は魔法の応用のようなものだ。如何にして普段魔法を使うか、その思考の柔軟性が問われる。」
例としてアンディルウム先生は彼女が飼っているウサギのケージを召喚した。
「ウサギの世話には手間がかかる。餌も、育てる環境もだ。こういった作業を実践魔法で済ませると、とても効率が良い。」
アンディルウム先生はそう言ってケージを消し、ウサギを教卓の上に置いた。先生が魔法をかけ始める。
ケージがどんどん出来上がっていく。きちんと一本一本の針金が重なっていく。最後には水や餌も入った。
「今年の実習で君たちには身だしなみの整え方を教える。試験も定期的にあるから、各々で努力するように。」
アンディルウム先生から実践魔法についてのいろいろな話を聞いているうちに、今日の授業が終わった。
チャイムが鳴ると、小さいシルエットが目に入った。そういえば、なぜこんなにキャウラ先生が小さいのかまだ知らない。
「起立。」
授業が始まる。先生がプリントを配り始めた。
「プリントをご覧ください。こちらは今年の授業スケジュールです。」
試験内容や提出物、成績の付け方まで書かれている。
「では、プリントをしまったら今日は早速皆さんに実験をしてもらいます。」
……あれ?さっきと同じ雰囲気を感じるんだけど、これは気のせいだよね……?
いや、気のせいではなかったようだ。キャウラ先生が重そうな大きめの籠を持ってきた。
「みなさんの魔法石の色はみなさん自身の色ですね。それは皆さん個人個人で魔石を扱ったからです。では、複数の人の魔力を魔石に打ち込むとどうなるのでしょう?今回はそれを調べます。」
この学校の教師はどれだけ実験が好きなのだろうか。
確かに実験は嫌いではないが、流石に二時間も続くと疲れる。
「ペアを作って下さい。」
私はまっすぐ、ヒスイのところに行った。
「こういう時に、友達がいてよかった。中学生の時、同じような場面でなかなかペアになれなかったから……」
周りを見たら大半の人がペアを組めていなかった。友達の重要さが感じられる出来事だ。
全員がペアを組めたのを先生が確認したら、また話し始めた。
「ペアのどちらかが魔石を、もう一人は実験器具を持って行って準備をして下さい。」
私は魔石を取りに行った。魔法を入れてしまわないようにトングで掴んで持っていく。
机の上にヒスイが準備してくれた実験用皿がある。その上にそっと魔石を置いた。
二人で魔法を打ち込んだらどうなるかはすごく気になるところだ。色が混ざってしまうのだろうか。あれ?もしそうだったら、補色の関係である私たちは結構すごいことになるんじゃない?
早速実験が始まった。
ヒスイが魔石に触れ、その後にすぐわたしも触れる。
魔石は白く光った。
しかし、それは失敗だったようだ。周りのグループの魔石は皆、漆黒だ。わたし達は先生に呼び止められる。
「何をしているのです?実験は必ず二人でやらなければ意味がないのですよ。」
先生が何を言っているのか理解できなかった。二人以上でやった訳ではないのに、どうしてそんな事を言うのだろうか。
「先生、わたし達は二人でやりましたよ。」
「何を言っているのですか。二人で魔法を打ち込んだら黒くなるはずですよ。」
「でも本当に二人だけでやりましたよ。」
「……魔石が余っているのでもう一度、私の前でやってみて下さい。」
もう一度、キャウラ先生の前で一通りの事をして見せた。やっぱり魔石は真っ白になって発光する。
キャウラ先生の顔が険しくなった。
その時、入学式の時に居た優しそうな先生が廊下を通り過ぎた。
「ミルウィゼア!魔女を召喚せよ!」
「は、はい!キャウラ先生!少々お待ちを!」
その先生は廊下を走って行った。
数分後、ウィソマエイ先生が入って来た。
ウィソマエイ先生に、キャウラ先生が一通りの事を説明する。
「確か、フレイさん……と言いましたね。さっきの授業でも色々とありましたので、流石に覚えていますよ。」
「さっきの授業、とは?」
ウィソマエイ先生がキャウラ先生に魔法化学の時の事を伝えた。
「ふむ。原因はヒスイさんではなくフレイさんにあるような気がして来ました。ウィソマエイ先生、こちらの魔石を持ち帰ってはどうでしょう?こういうものの研究はお好きですよね?」
「もちろんです。私が原因を突き止めて見せましょう。と言うことで、フレイさん。今日の放課後の件は取り消しで。研究を優先するので時間が無いのです。ああ、忙しい忙しい。」
そう言ってウィソマエイ先生が部屋を出て行った。
……生徒の実習の出来よりも研究を優先してしまうなんて。まぁ今回の研究はわたしが関わっているからしょうがないけれど。
今日の最後の授業、実践魔法学。
先生は、アンディルウム先生だ。六年生の担任らしい。
「皆のもの、よろしく頼む。実践魔法学を担当する、アンディルウムだ。」
何だか面白い口調。
「私はこの学校で一代目魔女と呼ばれている。何故だか分かるか?」
何故だろう。「魔女」とは魔法士を表す昔の表現だったはずだ。
確か、魔法を使える人間が少数派だった時代に魔法を使えない人間が魔法を使える人間を差別して付けた言葉だった気がする。
しかもアンディルウム先生は「一代目」なのだ。二代目以降もいるのだろうか。
「そういえば四時間目は魔法薬学だったんだな。ウィソマエイのあだ名は『二代目魔女』だ。ウィソマエイが実験好きなのはすぐ分かったろう?」
そういえば、キャウラ先生はさっき、「魔女を召喚せよ!」と言っていた。
「『魔女』は昔の言葉でもあるが、現在も使われるあだ名でもある。このあだ名は、部屋に籠って物騒な実験や研究をしている者の代名詞として使われるのだ。以前は魔女といえば私だった。だがウィソマエイがこの学校に就任してからは、私よりも物騒な実験をするあいつが魔女と呼ばれるようになったのだよ。」
なるほど。ところで物騒な実験とはどんな実験だろうか。関わりたくはないが、少し気になる。
「実践魔法は魔法の応用のようなものだ。如何にして普段魔法を使うか、その思考の柔軟性が問われる。」
例としてアンディルウム先生は彼女が飼っているウサギのケージを召喚した。
「ウサギの世話には手間がかかる。餌も、育てる環境もだ。こういった作業を実践魔法で済ませると、とても効率が良い。」
アンディルウム先生はそう言ってケージを消し、ウサギを教卓の上に置いた。先生が魔法をかけ始める。
ケージがどんどん出来上がっていく。きちんと一本一本の針金が重なっていく。最後には水や餌も入った。
「今年の実習で君たちには身だしなみの整え方を教える。試験も定期的にあるから、各々で努力するように。」
アンディルウム先生から実践魔法についてのいろいろな話を聞いているうちに、今日の授業が終わった。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
転生先はご近所さん?
フロイライン
ファンタジー
大学受験に失敗し、カノジョにフラれた俺は、ある事故に巻き込まれて死んでしまうが…
そんな俺に同情した神様が俺を転生させ、やり直すチャンスをくれた。
でも、並行世界で人々を救うつもりだった俺が転生した先は、近所に住む新婚の伊藤さんだった。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる