【完結】婚約破棄と追放をセットでくらった件 〜神スキルで逆転人生〜

長船凪

文字の大きさ
36 / 125

36 夜中の襲撃

しおりを挟む
 日暮れ時。
 魔法使いのマーヤさんが川辺で風呂の用意をしてくれるらしい。 
 土魔法で穴と壁を作り、焼いた石を入れたらお湯になるから、その手法でやる予定だと。

 「女性達がお風呂の準備をしてくれている間に自分はステーキソースを作ることにします」
「それは楽しみです!」


 騎士達も声を揃えて楽しみにしてくれてるようで少し照れくさい。
 そう、魔物の水牛の肉を手に入れた俺達は今夜ステーキを食らうのだ。

 俺は料理のためのセッティングをした。
 フライパンや鉄板をよく熱しておき、短時間でしっかり焼きつける。焼いた肉汁は残さず赤ワインのソースと混ぜる予定。


「大きな肉をジューッと焼くと、ワクワクするね」


 ソースは俺担当だが、肉はユージーンや騎士達が焼いてくれてる。
 いいサシも入ってて、期待が持てる!


「そうなんだよ、視覚と聴覚の両方が刺激され、トドメにいいにおいで嗅覚がお祭りだ」
 

 なんて事を言いつつも、たまに撮影も挟む。
 肉の焼ける様子でまたもメシテロになるかもしれない。

 ステーキは昔ながらの庶民にはごちそう感満点のメニューだ。
 庶民とは言うまでもなく俺である。


 最初に水を入れて煮立たせてから調味料を加えると、脂が分離せずにコクのあるソースになるんだったか。

 俺は赤ワインでのソース作り担当。


「赤ワインソースは赤ワインとエシャレットをみじん切りにし、にんにく少々、バターに骨から取った出汁を入れ……あとは砂糖と塩」

 醤油があれば醤油を使うレシピにしたんだが、まだないから仕方ない。


「お肉、いい感じに焼けたよ」
「こちらのフライパンのもいけます!」
「じゃあその肉汁と合わせたソースをかけて食べようか」

「よし、お風呂は後で入るとして、とりあえず食事にしましょう!」


「待ってましたわ」
「いいにおいといい音がしていましたねぇ」


 女性二人も風呂の支度を一旦やめてウキウキと食卓についた。

 といっても野外なので立派なテーブル席ではなく、そのへんにあった丸太の椅子や石に腰掛け、魔法の収納から出したトレイと皿に乗せた肉を食うスタイル。


「魔物の肉なのにすんごい美味い!」
「想像以上に柔らかくて美味しいね、ネオの作ってくれたソースも美味しいし」

 逆にA5ランクの牛肉に匹敵する味だとは!


「お、美味しいわ!」
「ねー、マーヤさん、ほんとにこの魔水牛、美味しいですねぇ」


 今更気がついたが、こちらは巫女さんも普通に肉が食えるみたいだ。
 よかった、一人だけ菜食だったら気の毒な事にねるとこだった。


「うむ、ソースも美味いし、大変満足だ」

 ソル卿もご満悦。


 イケメンが美味そうに食事する様子も撮影する。
 顔が写ってるバージョンと、首から下の映像との二種。


「あ、ユージーン、その肉をフォークで刺したまま、ちょいと持ち上げてくれ」
「こう?」
「そう、いい肉の絵が撮れた、ありがとう」
「ネオは報告用の撮影も手を抜かないねぇ」
「当然だ、このお高い魔道具、せっかく撮影もできるんだし」



 食事の後は星を見ながら露天風呂。


「私達が先でいいのですか?」

 実力派だけど身分的にはあまり高くないらしいマーヤさんがそう訊くと、


「風呂を作っていただきましたし、我々は周囲の警戒の仕事もありますので」


 騎士達は爽やかにそう答えた。
 男前は中身も男前だ。


 そんな訳でレディーファーストで先に女性二人が風呂に入る。

 彼女らは安全と時短の為に二人一緒である。
 俺はちょっと狭いけどやはり時短の為にユージーンと一緒に入った。

「はー、気持ちいい」

 森歩きで疲れた身体に沁みる!

「いい湯加減だね」
「ああ、でも騎士達が入る頃にはだいぶ温くなりそうだから、あの焼き石を追加しないと」
「そうだね、その力仕事は僕がやっておくよ」
「ありがとう」


 騎士達は身体もでかいし、交代で見張りもするから一人ずつ入り、手早く済ませて、出てきた。

 ゆっくり入らせてやりたいけど今は仕方ないな。
 いつ魔物が出てくるか分からないし。
 

 ◆ ◆ ◆

 俺は就寝前にメシテロ動画を掲示板に上げたが、反応を見る前に明日に備えて早めに横になって目を閉じた。
 そして土魔法の四角い簡易シェルターは出入り口の扉を板で塞ぐ形で寝ていた訳なのだが、


「魔物だ!」
「コウモリ系の群れが!」


 騎士達の叫ぶ声で目を覚ます。
 就寝時になってコウモリ系の魔物が襲って来たとわかった。


『ライティング!!』
『光よ!!』
「くっ! 数が多くてすばしっこい!」
「ネオ殿は外に出ないでください!」


 光魔法で撃退してるのか、マーヤさんと騎士達の呪文が外から聞こえた!
 どうやら騎士達も簡易的な魔法が使える!
 マジックナイトってやつだったのかな?

 護衛対象の俺は中で待機していろという注意喚起があったので、中でヤキモキするだけだった。
 
 なお、シェルター内では万が一に備えてユージーンが俺を守る為に残ってる。
 扉は閉めきると外の様子が分からないのがこのシェルターのネック!!


「コウモリは反響する音で敵の位置を把握して襲うんだよな! 俺も超音波でも出せれば加勢できたかもしれないが、そんな音は流石に出せないし」

 そんなことを俺がぼやくと、

「ネオはここにいて」
「ユージーン!」

 ユージーンが板を一瞬だけ取り払い、外に出て行き、そしてしばらくしてマーヤさんの声が聞こえた。


『サモン! コダマ!!』

 コダマ!?
 マーヤさんて召喚もできるんだ!?

 そして更にホイッスルの音とクリスタルチューナーのような清涼感のある高い音がリーンと響いた。


「奴ら逃げてくぞ!」
「逃げたやつは追うな! 放っておけ!」
「私が負傷者の治療をします!」


 そんな声が聞こえた。
 撃退出来たけど負傷者が出たってことか?

 俺はついに耐えられなくなって板を外して外に出て様子を伺った。


「皆さん! 大丈夫ですか!?」

 腕などの傷口を抑える騎士達の姿が見えた。

「ネオ殿、大丈夫です、重症者はいません。ただすばしっこい敵で少しだけ傷を」
「とりあえず聖水を傷口に!」

 巫女さんが負傷者の傷に聖水をかけてから治癒魔法をかけていく。


「ああ、俺が醤油や味噌を欲しがったばかりに……申し訳ない」
「護衛が仕事なのでお気になさらないでください」

 騎士がそう慰めてくれたとこで、マーヤさんが俺の側に来て、


「ユージーンがコウモリは反響する音で敵の位置を把握して襲うと伝えてくれたのであれで撹乱出来ました」

 と、地中から突き立つクリスタルを指差して説明してくれた。

 「!! そういやそこかしこにクリスタルの柱が地面から生えてる!」
「僕はネオが言ってた事を伝えただけですよ」

「ネオ殿、あのクリスタルの柱が騎士の剣撃の音や笛の音を反響させてコウモリの聴覚を撹乱したってことです、助言ありがとうございました」

 なるほど!! 俺はコウモリの情報をぼやいただけなんだがそれを伝えたユージーンがいたのでマーヤさんが即時対応し、お礼を言われた訳だ!


「マーヤさんは土魔法どころかクリスタルなんかも生やせるんですか!?」

 水晶でボロ儲けできそうだが!?

「あれば普通のクリスタルの柱に見えるかもしれませんけどコダマという精霊なのでもう消えます」

 ほんとに目の前にあったクリスタルが消えていく。

「精霊! そうだったんですね、あと誰か笛を吹いてませんでした?」
「音がどうのと聞こえたので私が魔除けの笛を吹きました」


 巫女のレリアさんが細く小さな筒状のホイッスルを首から下げていたのを見せてくれた。
 笛を吹いたのはあなたでしたか。


「さすがレリアさん、素晴らしいアシストです」
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位 転生者のブルーノは絶大な力を持っていたが、その力を隠してダンジョンの荷役として暮らしていた。だが、教会の力で勇者を騙る卑怯下劣な連中に、レットドラゴンから逃げるための生贄として、ボス部屋に放置された。腐敗した教会と冒険者ギルドが結託て偽の勇者パーティーを作り、ぼろ儲けしているのだ。ブルーノは誰が何をしていても気にしないし、自分で狩った美味しいドラゴンを食べて暮らせればよかったのだが、殺されたブルーノの為に教会や冒険者ギルドのマスターを敵対した受付嬢が殺されるのを見過ごせなくて・・・・・・

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

空月そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】

のびすけ。
ファンタジー
気づけば侯爵家の三男として異世界に転生していた元プログラマー。 そこはどこか懐かしく、けれど想像以上に自由で――ちょっとだけ危険な世界。 幼い頃、命の危機をきっかけに前世の記憶が蘇り、 “とっておき”のチートで人生を再起動。 剣も魔法も、知識も商才も、全てを武器に少年は静かに準備を進めていく。 そして12歳。ついに彼は“新たなステージ”へと歩み出す。 これは、理想を形にするために動き出した少年の、 少し不思議で、ちょっとだけチートな異世界物語――その始まり。 【なろう掲載】

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

処理中です...