70 / 125
70 またも森の中の俺達
しおりを挟む
俺が執務室で灯籠祭りの招待状をせっせと作っていると、黒髪ぱっつんストレートヘアの女性が現れた。
彼女は大森林捜索の時にお世話になり、王弟殿下の推薦魔法使いだったマーヤさん!
「マーヤ・レイダです。魔法使い募集中とのことで申請を出し、借金も完済したのでこちらに移動が叶いました」
「あー! マーヤさんだ! お久しぶり! 君が来てくれるとは助かるよ!」
コニーとマーヤで交代で仕事がやれるからな。
「さんはおやめください」
「あ、そうか、なら……マーヤ?」
「はい、それで大丈夫です」
そういや報酬で借金が返せたんだな。
でも、王弟殿下のとこの方が給料は良さそうなんだが、そこはもう妥協したのか……。
ともかく後は騎士と兵士と神殿のゲート管理のできる神官だな。
見習い騎士だけでなく、傭兵団でも視察に行くべきなのかな。
などと、考えを巡らせていると、マーヤが部屋から退室せずにモジモジしてる。
はっと理由に思い至る俺。
「あ、せっかくだから治療しようか」
「はい、申し訳ありません、よろしくお願いします」
手を洗ってからマーヤの治療を終えた俺は、お弁当を用意して、雇われの傭兵団30人ほどがいるという森の中の砦へ向かう事にした。
何人かスカウトできるかもしれないし、丸ごと雇用できるならそれでもいい。
森に行くと言うと、アルテちゃんがついてくると騒いだ。
仕方ないから連れて行くことにした。
護衛騎士に魔法使いもいるから大丈夫だろう。
そしてなにより森だし、また何か美味しいものでも見つけてくれるかもしれない。
ちなみにエイダさんは俺の司祭服の簡易版の着替えを作ってくれるらしいから、置いて行く。
◆ ◆ ◆
しばらく森を歩いていると、アルテちゃんが声をあげた。
「あっち!」
「なんだ? またきのこの匂いでもした?」
「ちがーう」
ガサガサと秋らしい色の落ち葉や小枝を踏みながらアルテちゃんの後をついて行くと、人が倒れているではないか!
「大丈夫ですか?」
ボロくうす汚れた旅人の服を着た男性に俺に声をかけたら、
「お腹……空いた」
目の前の男性からぐうぅーという音が響く。
どうやらこの人は空腹で倒れていて、マギアストームの患者ではないようだ。
「空腹の行倒れ!?」
「も、森の中で迷ってしまい……食料も尽き……」
「おやおや、ではこのお弁当を」
魔法の布からお弁当を取り出す俺だったが、
「お、弟がその辺に……食べ物を……探しに」
「弟もその辺にいるんだ!?」
「狼煙の魔法でも上げたら弟さんも何事かと駆け付けて来るかもしれません」
魔法使いのマーヤがそう提案してくれた。
「じゃあ、それを頼む」
「はい」
マーヤさんが何言か呟くと杖の先から赤い光の玉が出て、それが上空に登り、しばらく煌々と光を放ってる。
「ついでに待ってる間、暇だし、温かいスープを作る為に火も焚いてみるか」
「ではそのへんの小枝でも拾いますか」
と、護衛騎士が周囲を見渡した。
「ああ、頼む」
それにしてもアルテちゃんには探索、斥候向きのスキルがあるのかな。
よく行き倒れの人を見つける……。
それにしてはゴブリンの背後からの襲撃にはあっさりやられたが……いや、あの時は具合の悪いエイダさんを心配するあまりに……集中力が偏っていたという可能性もある。
ひとまず空腹の男性にはお弁当の卵焼きとりんごを食べさせる。
「アルテちゃんは将来何になりたいとかある?」
「うーんと……さんしょくひるねつき!」
「三食昼寝つき! 確かにそれはいいよなー! 皆憧れるやつ」
しかしそれはペット枠!!
「人の匂いか気配に敏感ならば、斥候のスキルを磨いて子爵様の護衛でいいのではないですか?」
マーヤさんも斥候向きだと思ったようで、そう提案してきた。
「しかし護衛なら昼寝は難しいな」
「休日に寝ればよいのではないですか?」
薪を抱えてきた護衛騎士がそう言うが、
「まあ、まだ子供だから、遊ぶのとお勉強が仕事だよな」
と、また早いと擁護する俺は日本人感覚が抜けてないかな。
「お……べんきょう……」
アルテちゃんはがっくりとうなだれた。
今はマナーや簡単な読み書きなどを教わってるからそれがお勉強なのだが……その手のことは苦手なんだな……。
焚き火できのこのスープを温めつつ、そんな話をしてると、行き倒れさんと似た顔の男性が息を切らして茂みの向こうから現れた。
彼女は大森林捜索の時にお世話になり、王弟殿下の推薦魔法使いだったマーヤさん!
「マーヤ・レイダです。魔法使い募集中とのことで申請を出し、借金も完済したのでこちらに移動が叶いました」
「あー! マーヤさんだ! お久しぶり! 君が来てくれるとは助かるよ!」
コニーとマーヤで交代で仕事がやれるからな。
「さんはおやめください」
「あ、そうか、なら……マーヤ?」
「はい、それで大丈夫です」
そういや報酬で借金が返せたんだな。
でも、王弟殿下のとこの方が給料は良さそうなんだが、そこはもう妥協したのか……。
ともかく後は騎士と兵士と神殿のゲート管理のできる神官だな。
見習い騎士だけでなく、傭兵団でも視察に行くべきなのかな。
などと、考えを巡らせていると、マーヤが部屋から退室せずにモジモジしてる。
はっと理由に思い至る俺。
「あ、せっかくだから治療しようか」
「はい、申し訳ありません、よろしくお願いします」
手を洗ってからマーヤの治療を終えた俺は、お弁当を用意して、雇われの傭兵団30人ほどがいるという森の中の砦へ向かう事にした。
何人かスカウトできるかもしれないし、丸ごと雇用できるならそれでもいい。
森に行くと言うと、アルテちゃんがついてくると騒いだ。
仕方ないから連れて行くことにした。
護衛騎士に魔法使いもいるから大丈夫だろう。
そしてなにより森だし、また何か美味しいものでも見つけてくれるかもしれない。
ちなみにエイダさんは俺の司祭服の簡易版の着替えを作ってくれるらしいから、置いて行く。
◆ ◆ ◆
しばらく森を歩いていると、アルテちゃんが声をあげた。
「あっち!」
「なんだ? またきのこの匂いでもした?」
「ちがーう」
ガサガサと秋らしい色の落ち葉や小枝を踏みながらアルテちゃんの後をついて行くと、人が倒れているではないか!
「大丈夫ですか?」
ボロくうす汚れた旅人の服を着た男性に俺に声をかけたら、
「お腹……空いた」
目の前の男性からぐうぅーという音が響く。
どうやらこの人は空腹で倒れていて、マギアストームの患者ではないようだ。
「空腹の行倒れ!?」
「も、森の中で迷ってしまい……食料も尽き……」
「おやおや、ではこのお弁当を」
魔法の布からお弁当を取り出す俺だったが、
「お、弟がその辺に……食べ物を……探しに」
「弟もその辺にいるんだ!?」
「狼煙の魔法でも上げたら弟さんも何事かと駆け付けて来るかもしれません」
魔法使いのマーヤがそう提案してくれた。
「じゃあ、それを頼む」
「はい」
マーヤさんが何言か呟くと杖の先から赤い光の玉が出て、それが上空に登り、しばらく煌々と光を放ってる。
「ついでに待ってる間、暇だし、温かいスープを作る為に火も焚いてみるか」
「ではそのへんの小枝でも拾いますか」
と、護衛騎士が周囲を見渡した。
「ああ、頼む」
それにしてもアルテちゃんには探索、斥候向きのスキルがあるのかな。
よく行き倒れの人を見つける……。
それにしてはゴブリンの背後からの襲撃にはあっさりやられたが……いや、あの時は具合の悪いエイダさんを心配するあまりに……集中力が偏っていたという可能性もある。
ひとまず空腹の男性にはお弁当の卵焼きとりんごを食べさせる。
「アルテちゃんは将来何になりたいとかある?」
「うーんと……さんしょくひるねつき!」
「三食昼寝つき! 確かにそれはいいよなー! 皆憧れるやつ」
しかしそれはペット枠!!
「人の匂いか気配に敏感ならば、斥候のスキルを磨いて子爵様の護衛でいいのではないですか?」
マーヤさんも斥候向きだと思ったようで、そう提案してきた。
「しかし護衛なら昼寝は難しいな」
「休日に寝ればよいのではないですか?」
薪を抱えてきた護衛騎士がそう言うが、
「まあ、まだ子供だから、遊ぶのとお勉強が仕事だよな」
と、また早いと擁護する俺は日本人感覚が抜けてないかな。
「お……べんきょう……」
アルテちゃんはがっくりとうなだれた。
今はマナーや簡単な読み書きなどを教わってるからそれがお勉強なのだが……その手のことは苦手なんだな……。
焚き火できのこのスープを温めつつ、そんな話をしてると、行き倒れさんと似た顔の男性が息を切らして茂みの向こうから現れた。
115
あなたにおすすめの小説
レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない
あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。
転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。
克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位
【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』
ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。
全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。
「私と、パーティを組んでくれませんか?」
これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!
伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります
竹桜
ファンタジー
武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。
転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜
のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、
偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。
水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは――
古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。
村を立て直し、仲間と絆を築きながら、
やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。
辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、
静かに進む策略と復讐の物語。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる