【完結】異世界で急に前世の記憶が蘇った私、生贄みたいに嫁がされたんだけど!?

長船凪

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一方、実家の伯爵家では……。

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「お父様、どういう事なの! 支度金でギャンブルだなんて!
負けたあげくに私の毛皮や首飾りまで売る事になったじゃない!」

「うるさいぞジョイナ! 私はカジノで金を倍に増やそうとしたんだ!」
「失敗してるじゃない!」
「あれは元は私の前妻のイリーナの形見だったんだから、私の財産だ!
お前に文句を言われる筋合いはない! 生意気だぞ!」

「私にくれたんでしょ!?」
「貸しただけだ!」
「嘘!」

 父と娘の醜い言い争いの最中に、廊下からドカドカという、激しい足音が音が響いた。
 そして無遠慮に伯爵家のサロンの扉は開かれた。

「伯爵さまぁ~~!! 借りた金は返せってご両親に教わらなかったんですかぁ?」
「お貴族様の通うアカデミーでは、借金は踏み倒すものって教えているんですかぁ?」

「な、なんだ、貴様らは!? 衛兵! 不審者が!」

「ヨネシヤ・フォン・ワーグド伯爵様ぁ……給料未払いじゃあ、衛兵も門番もやる気を失って見捨てますよね~~!」

「な、なんだと!?」
「しゃ、借金取り!? 貴方、まさか借金まで!」

 後妻の顔は真っ青になったり真っ赤になったりして、忙しい。
 娘の方もガラの悪い男達の襲来に怯えている。

「使用人のきゅ、給料分を借りただけだ、もうしばらく待ってくれたら、金の工面が出来る」
 
 ワーグドの領地は天災の影響から田畑が荒れ、税収は減り、事業も失敗したくせに、伯爵の贅沢な暮らしの質を下げたく無い見栄が、伯爵家を没落させていた。

「門番からもう三か月以上給料未払いって聞きましたぁ。
嫁いだ次女の辺境伯家には嫌われていて頼れないって聞きましたが、その金はどこから湧いて来るんですかぁ?」

「ぶ、無礼だぞ、貴様ら、私は伯爵だぞ」
「落ちぶれた伯爵様は、金が無くて兵も動かせないのに、まだお貴族様気分でいるんですかぁ?」
「お、落ちぶれてなど!」

「宝石も絵画も壺も、金目の物も尽きたって聞きました、でも借金は残っているのです」
「い、今はだから出せる物が無い」
「まだあるじゃ無いですかぁ~~?」
 
 借金取りは母娘の方を舐めるような目つきで見た。

「ま、まさか、私達のドレスを!?」
「いやよ、お母様!!」
「ドレスごときじゃもう足らないのでぇ、私が金になるお話を持ってきましたぁ、親切でしょう?」

「か、金になる話だって!?」

「先日のパーティーで、お宅のその上のお嬢様、ジョイナ嬢はとある紳士とぶつかりましたね、買ってくれるそうです。母娘揃って!」

「な!? なんですって!? 私は伯爵夫人よ! 買うだなんて!」
「わ、私も伯爵令嬢よ! 犬猫みたいに買える訳ないでしょう!?」

「酒場の女とその娘はぁ~~平民なんでぇ、借金のカタに売られるんです。
ね、伯爵様? 売女の一人や二人、どうって事ないでしょ?」

「売女ですって!? 私は酒場で働いていただけで、娼館の娼婦じゃないわ!」
「でも客に誘われて二階に行って、花を売ってたでしょお?」
「………っ!!」
「場所が違うだけですよねぇ」

 後妻のイバタは屈辱で拳を握りしめた。
 爪が食い込みそうなほどに。

「こ、この二人を、イバタとジョイナを買いたい人物がいる!? それで借金はチャラになるのか?」
「ちょっと! あなた!?」
「お父様!?」

「羽振りの良いお金持ちの貴族の元に行くのですから、ここよりも良い暮らしが出来ますよ。
愛人の座を勝ち取れば良いのですよ、ね、得意でしょ?」

 借金取りはいやらしい目つきで母娘の姿を見てそう言い放った。

「……」
「こ、ここよりも良い暮らしが?」

 元賎民の母娘の虚栄心は強かったため、心が揺れている。

「お父様、私が最近使用人からバカにされるような態度を取られていたのは、給料未払いのせいだったのね……」

 ジョイナは思い出し怒りで、ぶるぶると震え出した。

「イバタ奥様、ジョイナ嬢、こちらのドレスと宝石、先方の旦那様からの贈り物ですよ。
どうです? ここよりも良いと思いませんか?」

 借金取りは鞄から豪華なドレスを出した。

「お母様、このドレス、宝石がついてるわ……」

 それは胸元が美しいルビーで飾られたドレスだった。
 他にもダイヤを散りばめたドレスが有る。

「凄く見事な刺繍やレースも……」
「どうです? 別のお屋敷で一旗上げてみませんか?」

 借金取りの男は見せ金のように豪華なドレスを見せつけて、射幸心を煽る。

「仕方ないわね、使用人の給料も払えない夫の元にいても、未来は無いわ。
良いわね、ジョイナ?」

「イバタお母様が行くなら、私も……」

「では、商談成立という事で、伯爵様と、イバタ夫人とジョイナ嬢は契約書にサインを」

 男は目を細めて契約書を取り出して、速やかに契約をさせる。

 狡猾な男は契約書の細かい記述も読まずに、この女共はアホだなと、思いつつも、元、平民で、名前を書くくらいの学しかなかったのだから、仕方ないとも思った。

 愚かな母娘は破滅への契約書に名を書いてしまった。

 この二人が売られる先は、大変なサディストで、美しい女を壊すのが大好きな成金だった。

 こうして、見た目しか取り柄の無い二人の女達は、伯爵家を出た。
 売られた先が、地獄だとは知らずに。
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