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[ヴィル]
独房 §1
突如、布団をはがされて目が覚めた。
俺の気のせいかもしれないが、誰かに「起きろ、クソ野郎」と言われたような気がする。
バッシャと音がした瞬間、頭からずぶ濡れになっていた。鼻から水が入り、慌てて息を吸ったら口からも水を吸い込んでむせた。おかげで目は覚めたが、状況がさっぱりわからない。
俺の髪からは、ポタポタと水が滴っていた。
「俺の聖女に何をした」
アレンが俺の寝室でキレていた。その後ろではフィデルがため息をついている。
「リアは?」と尋ねた。
彼は手にしていたバケツを放り投げ、俺の胸倉をつかんだ。
「黙れ、クソ野郎」
「どうした? 何があった?」
「質問に答えろ。さもなくば半殺しにして窓からつるすぞ」
――すまないが、誰かこの状況を説明してくれ……。
視線でフィデルに助けを求めると、彼は憐れむような目で俺を見ていた。
この至近距離でアレンとやり合うのは分が悪い。返事を間違えれば、本当に半殺しにされて窓からつるされる気がする。
フィデルはコート掛けにあった俺の上着から『真実の宝珠』を取り出した。
「まさか俺を尋問する気か?」
「聖女を守るのが我々の職務だからな。団長なのに、お前は違うようだが」
「俺が何をした? リアはどこだ?」
「その話は後だ。すべて『いいえ』で答えろ」
「待て。偽りを言うつもりはない。普通に聞けば答える」
「では聞くが、昨晩の記憶はあるか?」と、フィデルは宝珠を持ったまま聞いてきた。
「当然だ。全部覚えて――ん?」
記憶はあった。しかし「全部覚えているぞ」と言い終わる前に、何かが変だと気づいた。
思い出そうとすればするほど、断片的だと言わざるを得ない。記憶の大半が舞踏会や晩餐会のことなのは気のせいだろうか。
「その記憶に一片の欠落もないと断言できるか?」と聞かれ、答えに困った。
「いや……正直に言うと、断言はできない。どうも間が飛んでいるように思える」
「聖女に乱暴を働いた記憶は?」
「俺がリアに? そんなこと、あるわけがないだろう」
「彼女の服を破いた覚えは?」
「はあっ!?」
「質問に答えろ」
「ない。そんなことは絶対にしない」
質問の意図がよくわからないが、リアに何かあったのだろうか。俺は途切れ途切れの記憶を必死でたどった。
リアの服……? どんな服を着ていた? 一緒に踊った時のドレスは覚えている。彼女が俺の部屋に来た時は何を着ていた?
――まるで思い出せない。
「破いた記憶はないし、俺にそっちの趣味はない。しかし、不思議と丁寧に脱がせたという記憶もない。というか、彼女の服そのものを覚えていない。いったいなぜだろう……」
「では、どこまで覚えているか話せ」
俺は朝からの記憶をざっと話していった。
聖女宮へは馬車で戻ってきた。風呂に入った。アレンがリアを連れてきた。
そのあたりまでは覚えている。……問題はその後だ。
「リアが来た後の記憶が、不自然なほど断片的だ」
「そうか……。故意ではないのかもしれないが、予測できた過失だな」
フィデルはひどく失望したように言うと、『真実の宝珠』をポケットに戻した。
「リアは今どこにいる? 彼女の部屋か?」と、俺は尋ねた。
「それは答えられない。しばらく夫には会いたくないと言っているから、我々の保護下に置く」
「俺に会いたくない、と? リアがそう言ったのか?」
とても彼女の口から出た言葉とは思えない。
「お前は急いで支度をして、ここを出ろ」と、フィデルは言った。
「なぜ!? まさか、また出入り禁止か?」
何がなんだかわからない理由で追い出されるのは納得がいかない。
「落ち着け、ヴィル。単なる接触禁止令だ。ポルト・デリングへの出発まで、数日ではあるが面会を禁ず。それまでの間、周りの者の話に耳を傾けて『反省しろ』というのが聖女からの指示だ。『ここを出ろ』と言っているのはアレンで、理由は別にある」
「接触禁止……新婚なのにか?」と、俺はうなだれた。
「それをあなたが言いますか」とアレンは言った。「新婚にも関わらず、彼女の気持ちをないがしろにするからでしょう」
彼はそう言って、髪をかきあげながら軽蔑のまなざしを向けてくる。
なぜ俺は、結婚して早々、後輩から説教をされているのだろうか……。
「俺が何をした? もう少し具体的に言え」
「このまま離縁ということにならなければ、彼女の口から聞ける日もあるでしょう」
「り……離縁だと?」体が震えた。
離縁――恐ろしい言葉だ。俺を殺す言葉だ。
「彼女は恥じらいのある淑女です。他人に閨での話などしません。ただ……」
「ただ?」と、俺は身を乗り出した。
「彼女のドレスは引きちぎられていました。夫にやられたのかという質問にうなずいた。反省を促したいとも言っている。接触禁止の期限も、彼女と相談して決めました」
「俺が服を破いたと、リアが言ったのか?」
「ええ。彼女が初夜のために用意した、この国で最高のドレスが見るも無残でした」
「信じられない……」
「それは私のセリフですよ」
壁の時計を見ると、王宮で婚姻の宣誓をしてからちょうど二十四時間が経過したところだった。このわずかな時間で天から地へ落ちたかのようだ。
「私から見えていた客観的事実を、もう少し話しましょうか」
アレンがため息まじりに言った。
「頼む。もう、わけがわからない」
アレンは早口で俺の罪状を並べ立てた。
あなたは婚姻の前夜にいなかった。
男同士の飲み会などいつでもできるのに、助言を無視して出かけた。数時間で帰ってくるという選択肢もあったが、帰ったのは翌朝だった。
勝手に曲を選んでダンスに不慣れな彼女を困らせた。彼女は前日の夜遅くまで練習をしなくてはならなかった。
晩餐会の席を勝手に変え、外交を彼女に押しつけた。
舞踏会会場までのエスコートを忘れ、彼女を置き去りにした。
自分の都合で挨拶に引きずり回した。あなたが彼女に引き合わせた相手は、彼女の人生に必要のない兵部の人間ばかりだった。
それに気づいた王兄殿下が、慌てて彼女を南部と東部の貴族に紹介してくれたが、あなたは彼らとロクに会話もしなかった。
あなたのせいで彼女は自分の知り合いとほとんど話ができなかった。
大勢の国賓がいる中、あなたは舞踏会を途中で抜け出し、聖女はおろか陛下と王兄殿下をはじめとする多くの貴族に恥をかかせた。
あなたは公の場で聖女を抱きかかえて連れ去った。その結果、彼女はカルセドの大公におわびの使者を出すことになり、何通ものおわび状を書くことになった。
さらに、寝室で暴走して都合よく記憶がない。
彼は俺の後ろを指さした。
枕元に『生命の宝珠』が並んでいる。
「色の変わった宝珠が十二個あります。一回で二個できれば多いほうです」
「いつの間にこんな……」
「帰ろうとする彼女を監禁した。不同意ではないにせよ、彼女の体力を考慮していない。執拗かつ異常だとしか言いようがない」
「監禁などしていない!」
「彼女は『部屋へ戻ろうとしたが帰してもらえなかった』と話しています。俺も扉の向こうで連れ戻されていく彼女の声を聞いているので証言できます」
「いつそんなことを……?」
「早朝です。フィデルさんとミストも聞いています」
前半はさておき、夜の話は別の人間の話を聞かされているような感覚だった。
なぜ、俺にだけ記憶がないのだろう……。
「聖騎士団は我々のところで話を止めることができますが、ミストは組織が違います。彼女は報告を上げました」
「そっ、それはまずい……」
また俺の失敗が父に伝わることになる。最悪だ。
「古い友人として、意見を述べさせていただきたい」と、アレンが言った。
「ああ……」
俺はキツイ小言が飛んでくるのを覚悟した。
俺の気のせいかもしれないが、誰かに「起きろ、クソ野郎」と言われたような気がする。
バッシャと音がした瞬間、頭からずぶ濡れになっていた。鼻から水が入り、慌てて息を吸ったら口からも水を吸い込んでむせた。おかげで目は覚めたが、状況がさっぱりわからない。
俺の髪からは、ポタポタと水が滴っていた。
「俺の聖女に何をした」
アレンが俺の寝室でキレていた。その後ろではフィデルがため息をついている。
「リアは?」と尋ねた。
彼は手にしていたバケツを放り投げ、俺の胸倉をつかんだ。
「黙れ、クソ野郎」
「どうした? 何があった?」
「質問に答えろ。さもなくば半殺しにして窓からつるすぞ」
――すまないが、誰かこの状況を説明してくれ……。
視線でフィデルに助けを求めると、彼は憐れむような目で俺を見ていた。
この至近距離でアレンとやり合うのは分が悪い。返事を間違えれば、本当に半殺しにされて窓からつるされる気がする。
フィデルはコート掛けにあった俺の上着から『真実の宝珠』を取り出した。
「まさか俺を尋問する気か?」
「聖女を守るのが我々の職務だからな。団長なのに、お前は違うようだが」
「俺が何をした? リアはどこだ?」
「その話は後だ。すべて『いいえ』で答えろ」
「待て。偽りを言うつもりはない。普通に聞けば答える」
「では聞くが、昨晩の記憶はあるか?」と、フィデルは宝珠を持ったまま聞いてきた。
「当然だ。全部覚えて――ん?」
記憶はあった。しかし「全部覚えているぞ」と言い終わる前に、何かが変だと気づいた。
思い出そうとすればするほど、断片的だと言わざるを得ない。記憶の大半が舞踏会や晩餐会のことなのは気のせいだろうか。
「その記憶に一片の欠落もないと断言できるか?」と聞かれ、答えに困った。
「いや……正直に言うと、断言はできない。どうも間が飛んでいるように思える」
「聖女に乱暴を働いた記憶は?」
「俺がリアに? そんなこと、あるわけがないだろう」
「彼女の服を破いた覚えは?」
「はあっ!?」
「質問に答えろ」
「ない。そんなことは絶対にしない」
質問の意図がよくわからないが、リアに何かあったのだろうか。俺は途切れ途切れの記憶を必死でたどった。
リアの服……? どんな服を着ていた? 一緒に踊った時のドレスは覚えている。彼女が俺の部屋に来た時は何を着ていた?
――まるで思い出せない。
「破いた記憶はないし、俺にそっちの趣味はない。しかし、不思議と丁寧に脱がせたという記憶もない。というか、彼女の服そのものを覚えていない。いったいなぜだろう……」
「では、どこまで覚えているか話せ」
俺は朝からの記憶をざっと話していった。
聖女宮へは馬車で戻ってきた。風呂に入った。アレンがリアを連れてきた。
そのあたりまでは覚えている。……問題はその後だ。
「リアが来た後の記憶が、不自然なほど断片的だ」
「そうか……。故意ではないのかもしれないが、予測できた過失だな」
フィデルはひどく失望したように言うと、『真実の宝珠』をポケットに戻した。
「リアは今どこにいる? 彼女の部屋か?」と、俺は尋ねた。
「それは答えられない。しばらく夫には会いたくないと言っているから、我々の保護下に置く」
「俺に会いたくない、と? リアがそう言ったのか?」
とても彼女の口から出た言葉とは思えない。
「お前は急いで支度をして、ここを出ろ」と、フィデルは言った。
「なぜ!? まさか、また出入り禁止か?」
何がなんだかわからない理由で追い出されるのは納得がいかない。
「落ち着け、ヴィル。単なる接触禁止令だ。ポルト・デリングへの出発まで、数日ではあるが面会を禁ず。それまでの間、周りの者の話に耳を傾けて『反省しろ』というのが聖女からの指示だ。『ここを出ろ』と言っているのはアレンで、理由は別にある」
「接触禁止……新婚なのにか?」と、俺はうなだれた。
「それをあなたが言いますか」とアレンは言った。「新婚にも関わらず、彼女の気持ちをないがしろにするからでしょう」
彼はそう言って、髪をかきあげながら軽蔑のまなざしを向けてくる。
なぜ俺は、結婚して早々、後輩から説教をされているのだろうか……。
「俺が何をした? もう少し具体的に言え」
「このまま離縁ということにならなければ、彼女の口から聞ける日もあるでしょう」
「り……離縁だと?」体が震えた。
離縁――恐ろしい言葉だ。俺を殺す言葉だ。
「彼女は恥じらいのある淑女です。他人に閨での話などしません。ただ……」
「ただ?」と、俺は身を乗り出した。
「彼女のドレスは引きちぎられていました。夫にやられたのかという質問にうなずいた。反省を促したいとも言っている。接触禁止の期限も、彼女と相談して決めました」
「俺が服を破いたと、リアが言ったのか?」
「ええ。彼女が初夜のために用意した、この国で最高のドレスが見るも無残でした」
「信じられない……」
「それは私のセリフですよ」
壁の時計を見ると、王宮で婚姻の宣誓をしてからちょうど二十四時間が経過したところだった。このわずかな時間で天から地へ落ちたかのようだ。
「私から見えていた客観的事実を、もう少し話しましょうか」
アレンがため息まじりに言った。
「頼む。もう、わけがわからない」
アレンは早口で俺の罪状を並べ立てた。
あなたは婚姻の前夜にいなかった。
男同士の飲み会などいつでもできるのに、助言を無視して出かけた。数時間で帰ってくるという選択肢もあったが、帰ったのは翌朝だった。
勝手に曲を選んでダンスに不慣れな彼女を困らせた。彼女は前日の夜遅くまで練習をしなくてはならなかった。
晩餐会の席を勝手に変え、外交を彼女に押しつけた。
舞踏会会場までのエスコートを忘れ、彼女を置き去りにした。
自分の都合で挨拶に引きずり回した。あなたが彼女に引き合わせた相手は、彼女の人生に必要のない兵部の人間ばかりだった。
それに気づいた王兄殿下が、慌てて彼女を南部と東部の貴族に紹介してくれたが、あなたは彼らとロクに会話もしなかった。
あなたのせいで彼女は自分の知り合いとほとんど話ができなかった。
大勢の国賓がいる中、あなたは舞踏会を途中で抜け出し、聖女はおろか陛下と王兄殿下をはじめとする多くの貴族に恥をかかせた。
あなたは公の場で聖女を抱きかかえて連れ去った。その結果、彼女はカルセドの大公におわびの使者を出すことになり、何通ものおわび状を書くことになった。
さらに、寝室で暴走して都合よく記憶がない。
彼は俺の後ろを指さした。
枕元に『生命の宝珠』が並んでいる。
「色の変わった宝珠が十二個あります。一回で二個できれば多いほうです」
「いつの間にこんな……」
「帰ろうとする彼女を監禁した。不同意ではないにせよ、彼女の体力を考慮していない。執拗かつ異常だとしか言いようがない」
「監禁などしていない!」
「彼女は『部屋へ戻ろうとしたが帰してもらえなかった』と話しています。俺も扉の向こうで連れ戻されていく彼女の声を聞いているので証言できます」
「いつそんなことを……?」
「早朝です。フィデルさんとミストも聞いています」
前半はさておき、夜の話は別の人間の話を聞かされているような感覚だった。
なぜ、俺にだけ記憶がないのだろう……。
「聖騎士団は我々のところで話を止めることができますが、ミストは組織が違います。彼女は報告を上げました」
「そっ、それはまずい……」
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