巻き込まれ転生

もふりす

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2章 神と魔の悪戯

お忍びさせてください。

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一週間分の食料と貴族用の衣服は調達済み。
薬草と依頼の品は納品済み。
それと、バロンさんの為にパスルナ(?)というお菓子を買った。

「後は、イグナおじさんの所ね・・・」

買い物も終盤。
私は週に一度の買い出しを、毎週この大祝日”ソール”・・・、まあ前世日本でいう所の日曜日に行っている。わざわざこの日を狙う理由は、値切りし放題だからだ!
商人達もお客が多いこの日は盛大にセールをやってくれるからというだけでなく、私・・・お得意様になってるのよね。
それもこれもあの人のせいね!!

ギリッと睨んでみせるが、甘い眼差しを返された。

「シリル、何か欲しい物でもあるのかい?」

「いりません。無駄遣いはしないし、させませんよ。
それと、私は怒ってるんですからね!」

私がプリプリ怒っていると、宥めるように頭をポンポンされた。
大体バロンさんがいるせいで周りから視線を感じるし、お忍びで買い物できないじゃないの。だから面倒も承知で、バロンさんを置いていこうとしたら、満面の笑みを浮かべて玄関にスタンバっていたのだ。

この時、バロンさんは何と言ったと思う?

無駄に色気を振りまいて私を抱き上げて、


「私のシリルをあの魑魅魍魎に野放しにできるわけないだろう?
私が守るから絶対に離れないでね?」


・・・・・・バロンさんってアホだよね。
私が注目されるわけないじゃん。バロンさんに向けられる視線の一部が私に数秒向けられるだけじゃん。バロンさんがいる時点で私は危険なの。

私と過ごすうちに、バロンさんはただの親バカかブラコンと化した。
これをどこで間違えたかって?元々そういう気があったのでは?


私の怒り等流して熱い視線をこちらに向けるバロンさんにパスルナ(前世のエッグタルトに似た焼き菓子)を渡した。腕を突き出すようにしているのだけど、バロンさんの両手が荷物で塞がっている事に今更気付いた。

「バロンさん、少し屈んで」

少しの間目を瞬かせて心得たとばかりに、その場にしゃがみ込んで荷物を床に置くと口を開いた。
いやいや、そこまで大げさに待たれると恥ずかしいんですが。

「・・・はい」
「あ~・・・ん」

バロンさんが私の手から一口齧り、舌なめずりした瞬間、周りから黄色い声が上がった。
相変わらず縁談が次々と舞い込むだけあるね。
結婚したとしても追いかけはいなくならないだろうな・・・。

追いかけ、か。

前世で一番話してたのって、連の次だと追いかけの子達だよね。
追いかけ・・・というかファンクラブを管理してたのは私なのよね。ファンクラブ会長かと思えば、「裏会長」。裏番長みたいで嫌だったんだけど。
あの子達元気にしてるかな?
・・・・・・。
いや~、連も私も死んじゃったからね。
連ロスにでもなって暫く大騒ぎかな?
ファンクラブ会長のれいちゃんくらいは私の事も偲んでくれてるかな。

あ、私の骨は墓に入ってるでしょうね。
実の子供に無関心だった両親も良識人だったはずだし・・・うん。



はむっ


「ぅえ!?何?」

指を食まれた。バロンさん、私まで食べないでください。
目を合わせたら、何だか心底ホッとしたみたいな顔をしてる。
何か心配かけた・・・?


「ふふ、目的地まで遠いからこっちから行こうか」

「ちょ、私は荷物じゃないですって!!」

片手に大きな紙袋4つ、もう片方の腕に私を乗せて歩き出した。
ねえ、皆さん。微笑ましそうな目をしてないで止めて。
この人、兄でも父でもないから。

じゃあ、何だ?

う~ん・・・、


足長おじさんだッ!!


「シリル、今私の悪口を言わなかったかい?」
「いえ、何も?・・・バロンさん、最近黒いですよ、特にお腹が」
「そうかい?いや~、お転婆な猫の世話が大変でね・・・」

お~、猫とは私ですな。
うん、私は今猫になりたい。
そしたら、お忍びで街に降りれるのに。

「これからもず~っと一緒だからね、シリル?」

「お~・・・いえすまいろーど・・・」

「ふふ、シリルは博識だね。難しい言葉を知っているなんて。
意味は知らないけど、悪い気はしないよ」

その後、イグナおじさんに会うまでバロンさんによる頬ずりの刑は終わらなかった。




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